めぇでるコラム
さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する★★[6] 推理・思考に関する問題(1)
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「めぇでる教育研究所」発行
2016さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
(第38号)
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★★入試問題を分析する★★
[6] 推理・思考に関する問題(1)
東京は桜の開花宣言、春一番が吹かなかったのは3年ぶりだそうです。白百合
学園小学校、暁星小学校を受験される方、学校見学がてら、靖国神社、千鳥ヶ
淵を散策されてはいかがでしょうか。実に見事です。
系列完成、欠所補完、図形、科学性に関するもの、鏡映像などの問題ですが、
これもかなり難しいですね。
知能指数(IQ intelligence quotient 知能検査で得られた精神年齢を、
実際の年齢で割り百倍した数で、100が普通程度を表す)を調べる知能テス
トに、このような形式の問題があるのは、お母さん方もご存じだと思います。
かつて、この種の問題が小学校入試の基本であった頃に、「IQが120以上
でなければ合格しない!」との噂がまことしやかに流れたことがありました。
ある小学校の説明会で校長先生が、「IQが120位ないと入学してから大変
ですよ」とおっしゃったのですが、これに尾ひれがつき、「140以上なけれ
ば合格できない!」と姿を変え、指数を上げるために繰り返し練習することが
行われたものでした。
私は説明会場にいて、ことの真相を知っていましたから、無責任な噂が恐くな
り、「そんなことをしていると、お子さんの実際の知能指数がわからなくなる
から止めなさい」と、その弊害をお母さん方に話したことを覚えています。
本来、知能テストは、たとえば5歳の子どもなら、他の多くの5歳の子どもと
比べて、知能の発達の度合いを調べるテストで、訓練をし、無理に上げるもの
ではありません。今は、そういった噂も誤解も、姿を消したようですね。
[系列完成]
動物や果物、記号やさいころの目などが、ある決まりで並び、ところどころに
空欄がもうけてあり、そこに入るものを考える問題で、おもしろいことに美醜
の感覚やリズム感まで刺激を与えていることがわかります。
○△□○△○△□○△□○△○△□
●○△●▲○▲□●○△●□○▲●
上段は、見た目もきれいで、リズミカルで心も落ち着きます。
下段は、見た目も煩わしく、不協和音が聞こえそうで、心もいらだちます。
きれいな並び方には、一定の決まりや規則性があり、それを見つける問題です。
1 リンゴ・( )・ミカン・リンゴ・バナナ・ミカン
2 □○△( )□○△◎( )○△◎
↑ ↑
(左人差し指)(右人差し指)
3つか4つ、多くても5つまでの系列ですから、上の問題のように、
「リンゴ・ナントカ・ミカン・リンゴ・バナナ・ミカンだから、バナナだな!」
と口調もなめらかで、抵抗なく出てきます。
下のような問題は、ちょっと困ります。
しかし、左右の人差し指で、同じものを(この場合は□)押さえて、右へ1つ
ずつ移動させると、□○△◎の決まりであることがわかります。これを私は
「お引っ越しゲーム」といっていました。決まりを見つけるゲーム感覚でやる
と、子どもは面白がって挑戦します。
このゲーム感覚ほど、子どもの学習意欲に刺激を与えるものはないでしょう。
身の回りに注目してみましょう。
この決まりを守っているものが、たくさんあると思います。ブラウスやセータ
ーの図案、カーテンの模様、台所やふろ場のタイル、外に出れば、舗装された
道路のタイルなど、きちんとした決まりで並んでいませんか。
お子さんと一緒に、決まりを見つけるのも楽しいものです。大切なのは、こう
いったことから好奇心の芽を養うことです。好奇心は、やる気を起こす起爆剤
で、その意欲から自発性も芽生えてきます。
[欠所補完]
文字通り、欠けているところを補い完成させる問題で、ジグソーパズルの感覚
で取り組めます。
全体の中で欠けている部分を推理し、4枚程の中から、そこに入るものを見つ
けます。
正解は1枚でダミーが3枚入っていますから、それを除いていけばいいわけで
す。
直感力のすぐれている子は、サッと見つけますが、それで安心して、「うちの
子、頭、いいわ!」などと早合点をすると、後々、困ったことになりがちです。
選択肢は、わずか4枚で、確率四分の一ですから、偶然に答えが見つかる場合
もあるからです。
時間が、かかってもかまいません。
1枚、1枚、比べて、
「これは、ここが違っている! これも違う!」
と、辛抱強く比較していくことが大切です。
繰り返しますが、この違いを見つけることは、観察力を培う大切な作業です。
しかも、根気が必要ですから持久力もつきます。そこから、じっくりと物事に
取り組む姿勢も身につきます。コンピュータの基本的な原理も、一つ一つ比べ
る比較選別方式ですが、桁違いに速い結果が出るのは、電気で処理しているか
らです。
以前にも紹介しましたが、イソップ物語の「うさぎとかめ」の話を思い出して
ください。油断をいさめた寓話ですが、ひらめき型とじっくり型の話として読
むと、幼児期の教育のあり方について、重要なヒントになっているのではない
かと思います。毎度のことですが、私の勝手な思い込みですから読み流してく
ださい。
ウサギは、ひらめき方の直感派で、カメは、じっくり型の思考派です。小学校
の低学年までは、断然、直感派がリードをします。選択肢が2つか3つの場合
は、直感力の優れているひらめき型のウサギさんは、あまり苦労することなく
答えを選び出せます。じっくり型のカメさんは、選択肢が少なくても、一つ一
つ検証して答えを出しますから、時間はかかりますが、試行錯誤を繰り返すこ
とで、きちんと答えを出します。
ところが、分数や小数、光合成といった、目に見えない世界の学習が始まる中・
高学年になると、思考派が徐々に頭角を現します。じっくり型の思考派のカメ
型タイプの子は、欠所補完の問題でも、一枚一枚、きちんと比べて納得してい
ますから、慎重に考えながら物事に取り組む習慣が身につきます。しかし、ど
ちらがいいのだろうなどと、決めてかかるのはどうでしょうか。いろいろなタ
イプの子がいて、当然です。
「じっくり型の、思考派の、カメ型のタイプは理系だな!」と思い込み、「何
で、もっと、じっくりと考えないの!」となるようでは、子どもには迷惑な話
になりかねません。問題集をやる時などに、答えが間違っていると、こういい
がちではないでしょうか。しかも、そういう時のお母さん方は、恐い顔をして
いますから、子どもも考えようとせずに、隣の絵をさっと指差したりします。
それも間違っていると、
「何回、いったらわかるの。考えなきゃ駄目だといっているでしょう!」
これでは何回やっても同じです。子どもは、怒られたくない一心で答えている
だけですから考えていません。お母さんは、考える時間をあげていないことに
気づいてほしいですね。
幼児の場合、正解を求めるだけが学習ではありません。
なぜ、お母さん方は、「どうしてなの?」と聞いてあげられないのでしょうか。
不思議な気がしますね。「正解は一つしかない」と信じて疑わないからではな
いでしょうか。答えは間違っていても、意外に、面白いところへ目をつけてい
るときもありますから、その理由を聞いてあげましょう。それから間違ってい
ることを説明してあげれば、子どもも納得します。
こういったことをしてあげずに、子どもの考えを無視して、繰り返し、ひたす
ら正解なるものを求めていると、お母さんの顔色を見て答えはじめます。これ
では学習ではなく勉強です。「強いて勉めるのが勉強」であることを思い出し
てください。お母さんの気持ちを満足させるためにやっているようなものです
から、止めた方がいいですね。
「ひらめき型」には、言葉で説明するチャンスを。
「じっくり型」には、これは手を付けない方がいいでしょう。うっかり急がす
と、思考回路が混乱しかねません。
子ども達に、「お母さんからいわれる、いちばん嫌いな言葉は何かな」と聞い
てみると、「ハヤクシナサイ!」が圧倒的に多いのです。大人は何とか工夫し
ますが、できるように配線が組みこまれないと、できないのが子どもです。子
どもが「わからない」という時は、「本当にわからない」のです。そこを考え
てあげないと、お子さんはパニック状態に陥りがちです。いやな思いをさせて
は、小学校へ入る前から勉強嫌いな子になりかねません。
「忍の一字」で過ごした、おむつを外した時のことを思い出してください。
ところで、負けたウサギはどうなったかご存知でしょうか。「カメに負けた駄
目ウサギ」として、ウサギ村から追放されますが、「子ウサギをえさに差し出
せ!」と脅迫してきた狼を負かし、無事、ウサギ村へ復帰します。
脱線したついでに、なぜ、ウサギの耳は長いのでしょうか。
ウサギは弱い動物で、ほとんど抵抗できずに、強い動物の餌食になってしまい
ます。そこで神様は襲ってくる動物の存在を、いち早くキャッチして逃げられ
るように、よく聞こえ自在に動く耳と強じんな後ろ足を授けたそうです。「弱
肉強食」の世界をお創りになったのは神様でしょうけれど、いささか不条理で
はないでしょうか。入試問題で、「□肉□食」を「焼肉定食」と答えた学生が
いたそうですが、冗談だと思いたいですね。このイソップの話、明治時代の小
学生の教科書の題名は、何と「油断大敵」です。(脱帽!)
(次回は 「推理・思考」の2についてお話しましょう)