めぇでるコラム
さわやかお受験のススメ<保護者編>第11章 お月見です 長 月(2)
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「めぇでる教育研究所」発行
2023さわやかお受験のススメ<保護者編>
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第41号-
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第11章 お月見です 長 月(2)
★★秋の七草★★
春の七草は、色彩的には黄色が多く、それに食べられるものばかりでした。
正月の7日に食べる七草粥には、春の七草が入っています。今年1年間、息災
で病気にならないようにと、払いの意味で食べたものですが、正月にご馳走を
食べすぎて、弱った内蔵をいたわる意味でも食べたのでしょう。これも昔の人
の生活の知恵です。
秋の七草は、どうでしょうか。
萩(はぎ)、薄(すすき)、葛(くず)、撫子(なでしこ)、女郎花(おみな
えし)、藤袴(ふじばかま)、桔梗(ききょう)をいいます。見るとわかりま
すが、紫色が多くて観賞用です。葛は、根は解熱剤として使われていますし、
粉にした葛粉は食べられますが、春の七草とは、大変な違いです。
事の起こりは万葉集で、山上憶良が秋の七種の草花を詠んだことから、秋の七
草といわれるようになったのです。
秋の野に 咲きたる花を 指(おゆび)折り かき数ふれば 七草の花
芽子(はぎ)の花 尾花 葛花(くずばな) 瞿麦(なでしこ)の花
女郎花(おみなえし)また藤袴 朝貌(あさがお)が花
(万葉集八巻 山上憶良)
朝貌の花は、現在では桔梗のことです。
芽子といい瞿麦といい朝貌といい、昔の字は、秋の七草にしてはゴツゴツした
感じを受けませんか。何だか花の名前の感じがしません。今の方が、親しめま
す。いや、もっと現実的な秋の七草があります。
昭和10年、菊池寛、高浜虚子などの文人や学者の推薦によって新聞社が選ん
だ「新秋の七草」があります。菊、葉鶏頭(はげいとう)、秋桜(コスモス)、
彼岸花、赤飯(あかまんま)、白粉花(おしろいばな)、秋海棠(しゅうかいど
う)の七草です。山上憶良と比べると、色彩豊かで華やかで、人手がかかって
いる感じがします。
平成に行われたインターネット投票による「秋の七草」は、春の七草でご紹介
した左大臣四辻善成(平安時代)の真似をするとこうなります。
ハギ キキョウ コスモス ススキ ヒガンバナ
リンドウ ナデシコ 秋の七草
しかし、本来の七草は、人の手にかかることをこばむ野草という感じが伝わっ
てきますが、いかがでしょうか。
話は変わりますが、秋桜(コスモス)、漢字で書くと日本産まれのようですが、
何とメキシコ産です。
コスモスは、一見、葉もきゃしゃで弱々しく、花もたおやかですから、責任を
もって、きちんと保護してあげなくてはと思いがちですが、茎は太く、本当は、
強いのです。台風でなぎ倒されても、いつのまにか窮屈な姿勢ながらも、花を
咲かせます。
★★重陽って、五節句の一つではないのですか★★
9月といえば重陽の節句、とならないのが不思議です。
3月の「ひな祭りですね」を思い出してください。9月9日を重陽といい、陰
暦9月9日の節句で、「9」は陰陽道では、陽の数とされており、この2つの
数を重ねた日で、菊の節句ともいわれていると紹介しました。陰陽道では、こ
のように奇数を尊び、「9」を最高の数と考え、天の数、天子様の数として、
神聖視されていました。それでしたら、大変な日ではありませんか。
しかし、何かお祝いをした記憶がないのです。
この日は菊の節句である。平安時代に菊は「翁草」「千代見草」「齢草(よ
わいぐさ)」などといわれ、重陽の節句に寒菊の酒宴が催された。「菊酒」
といって、酒に菊の花をひたして飲むと、長生きできるといわれ、また「菊
の着せ綿」といって、前の晩に菊にかぶせて露にしめらせた綿で身体を拭く
と長寿を保つといわれた。
(年中行事を「科学」する 永田久 著 日本経済新聞社 刊 P180-181)
このように菊は、古くから薬用植物として珍重されていましたが、菊の芯を集
めて作る枕を菊枕や幽人枕(ゆうじんちん)ともいって、香りが高く、頭痛を
治し、邪気を払うといわれ珍重されていたそうです。
日本の国花は、桜と菊です。
桜に始まり菊で終わる、自然に恵まれた日本を象徴する花であり、国花にふさ
わしい花であることも肯けます。
菊は、その姿が、端整で、美しく、香りにも、何ともいえない気品があります。
古くから菊は、竹、梅、蘭と合わせて四君子(しくんし)といわれ、水墨画の
画材によく使われていました。
菊の品評会などで見る菊は、華やかなムードに包まれ 十分に手間暇のかかっ
ている感じが、匂い出ています。菊人形も、ここまでやるかと、文句のつけよ
うのない作品もあり、うならされます。
いずれも、秋の風物詩として欠かせません。
しかし、人里離れた山あいに、ひっそりと咲く、小さな野菊、あれも、いいで
すね。
香もふくいくとして、観賞用の人工菊に、絶対に負けません。寒さに強く、晩
秋から初冬にかけて、けなげにも咲き続けています。花は、ひっそりと咲いて
いるからこそ、もののあわれを誘います。
ところで、皇室の菊の御紋章、あれは十六葉八重表菊で、後鳥羽上皇が、特に
菊を好まれたために定められたものです。
そして、欲しい人には最高の価値がある勲章、舌をかみそうですが、大勲位菊
花大綬章は、朝日と菊の花を表しています。
そして五十円硬貨の表のデザインは、何と菊です。さらに、兵庫県の県花は、
野路菊(のじぎく)です。ご存知のことと思いますが、菊は献花に用いますか
ら、病気の見舞いには、タブーの花となっています。
最後に、ことわざを一つ。
「春蘭秋菊 ともに 廃すべからず」(両者ともに優れており捨てがたい)
蘭と菊は、先ほども出てきた四君子の二つです。
中国では、「梅」「蘭」「竹」「菊」の4種の草木は「四君子」と呼ばれ、
古来より人々に愛されています。「君子」とは人徳・学識・礼儀に優れた人
のことですが、「梅蘭竹菊」は気品の高い美しさを備え、梅は高潔、蘭は清
逸、竹は節操、菊は淡泊と「君子」に似た特徴をもっていることから、草木
の中の「四君子」に例えられています。
筆者注 清逸(せいいつ) 清く浮世離れしていること
(島根県江津市のホームページ http://www.city.gotsu.lg.jp/6490.html)
5月にも紹介しました「六日の菖蒲」、それに加えて「六日の菖蒲、十日の菊」
があります。菖蒲は5月5日の端午の節句に、菊は9月9日の重陽の節句に用
いるもので、6日と10日では間に合わないことから、「時期に遅れて役に立
たないこと」のたとえです。類義語としては「後の祭り」「夏炉冬扇」、ちな
みに英語では“a day after fair”だそうです。
(kotowaza-all guide com 故事ことわざ辞典より)
(次回は、「江戸時代の時の数え方」などについてお話しましょう)
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