めぇでるコラム

2016さわやかお受験のススメ<保護者編>★★第3章(1)何といっても正月ですね 睦月

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
             -第10号-
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第3章(1)何といっても正月ですね 睦月
 
物の本によれば、睦月(むつき)のいわれには、正月は身分の上下、老若男女、
分け隔てなく行き来し、親族一同、仲よく「睦み合う」という説が有力だそうで、
その他にも「元つ月」、草木が萌えいずる「萌(もゆ)月」、春陽が発生する
「生む月」、稲の実を初めて水に浸す「実(み)月」なのだとする説もあるよう
です。
 
    お正月の歌
       もういくつ寝るとお正月   お正月には凧あげて
       こまを回して遊びましょう  早く来い来いお正月
 
正月になるとこの歌を思い出します。子どもの頃の思い出といえば、正月にま
さるものはなかったですね。恥ずかしい話ですが、お餅を食べられるのとお年
玉を貰えるからでした。今と違い餅は正月しか食べませんでしたし、小遣いと
なると現代っ子のように毎月貰えるものではなく、正月や祭りの時だけでした
から、本当に待ち遠しかったものです。クリスマスを待つ心境と同じではなか
ったでしょうか。
ところで、この歌の作曲者はどなただと思いますか。瀧廉太郎です。童謡や唱
歌には素晴らしいものがたくさんあります。お子さんと一緒に歌うべきだと思
いますね。幼児期の思い出は、こういった歌からも残っていくものではないで
しょうか。
 
さて、元日の朝ですが、いつもの朝と違い「特別な朝」という感じがしたもの
です。いつもと変わらない朝ですが、元日の朝だけは別です。なぜか、天気は
よくて、大雪とか氷雨といった経験はほとんどありません。もっとも瀬戸内海
と東京にしか住んだことがないからかもしれませんが、毎年、いかにも新しい
神さまがいらっしゃった朝という気持ちになったものです。元日は、その年の
神さまがやってきて、前の年の神さまと交代する日でした。ですから、神さま
を中心に生活が営まれていた時代には、「おめでとうございます」と言ってい
たのは、人間同士が「新年あけましておめでとうございます」と挨拶をするの
ではなく、新しい神さまを迎える言葉として使っていたそうです。ですから、
「あけおめ」などという言葉を聞くと「なんと不謹慎なことよ!」と腹が立ち
ますね(笑)。門松、しめ飾り、鏡餅、そしておせち料理も、みんな神さまをお
迎えするセレモニーに必要なものだったのです。中には何やら語呂合わせのようなものもありますが、「これはすごい!」思わ
ず膝を叩きたくなるのもあります。
 
★★正月の三点セット★★  
◇しめ飾り◇                     
門松もそうですが、今はあまり飾らなくなりました。マンションでは、玄関と
いっても建物の中ですから、何かおかしな感じがします。やはり、冷たい北風
が吹きよせる玄関でなければ、さまになりません。本来、しめ縄は、神前など
神聖なものと不浄なものとの境界線を示すために張る縄のことで、わらを左捻
りにして、三筋、五筋、七筋と順々にひねり垂らし、その間に四手を下げたも
のです。四手とは、横綱の化粧まわしの上にしめられた綱にさがっている、あ
れです。地方によっては、えびや橙(だいだい)を一緒に飾った豪華版もあり
ます。   
わらは、稲や麦の茎を干したものです。それで作ったしめ飾りで神様を迎える
のも、何やら意味あり気です。農耕民族の生活の基盤は米ですからわかるよう
な気がしませんか。
このわらで、いろいろな物を作っていたもので、子どもの頃は、わらじをはい
ていました。
時代劇を見ると、みんなはいているのは、わらじか下駄です。わらじの材料は、
このわらです。昔の人は、資源を無駄にしませんでした。逆かもしれません、
資源が貧しかったから大切に使ったのでしょう。
 
えびは「海老」とも書きますが、文字、そのものが「海のご隠居さん」です。
体が曲がっている姿から、お年寄りにたとえて、長寿を祈願したものです。こ
れが漢字の楽しいところでしょう、何となくイメージが浮かんできます。横文
字にもあるのでしょうか。“LOBSTER”と書かれていても、日本人であ
る私には、何のイメージもわきませんが、字の並びに何か意味があるのでしょ
うか。
 
橙は、一家の幸せが、「代々」続いて欲しいという語呂合わせです。神様を迎
えるしめ縄に、いろいろとお願いするのですから、頼まれる神様も大変です。
                           
◇門 松◇                     
門松の方が、まだ受け継がれているかもしれません。しかし、庶民派の門松は、
松だけです。銀行やデパート、大きな会社の入り口には、立派な門松が飾られ
ています。松竹梅、何やらのどがなりそうですが、お酒ではありません。松と
竹と梅のことですね。
これも当然、意味ありでしょう。          
                           
松は常緑樹ですから、葉は一年中、青色で冬の寒さをものともしません。    
竹は真っすぐ伸びていきますから、横道にそれない芯の強さがあります。雪の
日など、他の木は雪の重みで折れがちですが、竹はしなります。しなって頑張
りますから、雪の方が我慢できずに滑り落ちます。二枚腰のお相撲さんの、見
事なうっちゃりのようです。
まだあります、「かぐや姫」の生れ故郷は竹の中、空っぽです。「竹を割った
ような性格」、曲がったことが嫌い、生一本のシンボルです。      
最後は梅です。北風が吹き荒れ、他の木々は葉っぱを落としいかにも寒そうで
すが、梅は頑張って小さな花をリンと咲かせ、「春近し」を告げています。春
告鳥と書いて「うぐいす」ですから、春告花で「うめ」はどうでしょうか。木
偏に春と書いて「うめ」と読みたいですが、椿で先輩がいるからだめですね。    
この椿ですが侍の家では嫌われていたようです。何しろ散りぎわがよくありま
せん。花が枯れ切って散るのではなく、大きな花がポトリと落ちますから、首
が落ちるように見えるらしいのです。お侍さんの首が落ちるのは、切腹のとき
ですから縁起が悪いので、正月には向かないのでしょうか。しかし、茶室で見
た一輪挿しの椿は、和敬静寂の雰囲気を見事にかもし出していましたが、これ
は素晴らしかったですね。        
 
「和敬静寂」は千利休の言葉で、和して敬すると誰の心も清々しくなります。
そしてそこには、心の寂けさが生まれます。寂とは淋しいものではなく、あた
たかな静けさなのです。そうした心境になれば、煩悩が静められ、知恵が生ま
れてくるのです。そこで「和敬静寂」が禅のこころといわれ、茶のこころとい
われるようになりました。
(「命のことば」 瀬戸内寂聴さんの著から
 利休の茶室日記 gooブログより)
 
ところで、利休の命名は、「名利共に休す、名誉も利益も求めない」という禅
語からとったものと言われていますが、墓所はどこにあるかといえば、何と織
田信長の菩提寺である大徳寺の隣にある聚光院なのです。大徳寺の山門を寄付
したのは利休で、そのお礼に寺側が利休の木像を掲げたことが秀吉の逆鱗に触
れ切腹を命じられました。年は利休が上ですが、茶道では信長の弟子で、隣同
士で眠っていることは、あまり知られていないのではないでしょうか。
 
それはともかくとして、松竹梅、語呂もいいですね。この縁起ものの三つを玄
関に飾り、神様を迎えたのです。年神様がいらっしゃってくださるときに、確
実に、我が家に来ていただくための道標、表札の役をしていたのではないでし
ょうか。お盆のときも同じことをしています。きゅうりの馬となすで作った牛
ですね。正月は神様を、盆には仏様を迎えるための行事ですが、季節折々の花
や農作物を供えるところからも、農耕民族であることがわかります。
何かにつけて、事の起こりは中国ではないかと考えますが、松竹梅も、厳しい
冬を堪えて生きるみやびやかな木、「厳冬の三友」といわれ、それが日本に伝
わり、「長寿・節操・清廉」などの解釈を加え、めでたいもののシンボルとな
ったのです。いや、それだけでは終わりません。後程、紹介しますが、あっと
驚く秘密が隠されているではありませんか。
 
◇鏡 餅◇
鏡餅は、その年の神様からいただいた、新しい魂を表したものです。丸い形は、
角を立てないように、みんなで仲良く暮らそうという意味が込められています。
お飾りは、橙と海老、ゆずり葉、昆布、勝栗、干柿、扇など、地方によって多
種多彩ですが、橙、ゆずり葉、昆布などが一般的でしょう。それに裏白も使わ
れています。ところで、なぜ、裏白なのでしょうか。お飾りにも、それぞれ意味ありなので
す。橙は長寿、裏白は葉の裏側が白いしだ類(わらび、ぜんまいの仲間)で、
うしろ暗いところがなく、清らかで汚れのない心を表し、ゆずり葉は新しい葉
が出てから古い葉が落ちることから「譲り葉」、家督を子孫に譲るのを祝う意
味があるのです。 
 
★★松竹梅に隠された秘密★★
何やら週刊誌の見出し風ですが、文句なしにすごい秘密が隠されているのです。
初めて読んだときの驚きといったらありませんでした。少し長くなりますが、
紹介しましょう。
 
陰陽の立場から松竹梅をみると、松は陽、竹も陽、そして梅は陰である。松竹
梅は陰と陽が相まって完全な世界を構成するという哲理にもかなっているわけ
である。さらに、植物学の上から考えると、松竹梅が植物界を代表しているこ
とが知られている。植物を分類すると、顕花植物と隠花植物に分けられ、顕花
植物は裸子植物と被子植物から成り立っている。さらに被子植物は、単子葉類
と双子葉類に分類される。ところで、松は種子を裸にしているので裸子植物で
あり、竹は種子が実の中にあって、しかも子葉が一枚しかないので、被子植物
の単子葉類、梅も被子植物であるが子葉を二枚持っているので双子葉類という
わけで、松竹梅が顕花植物の典型的な代表例となっている。このすばらしい事
実を古代人が知っていたのであろうか。松竹梅の意義の深さに、めでたいとい
うことよりも、頭の下がる思いがする。
ついでに隠花植物について述べると、その代表として、正月飾りとしてすでに
述べた裏白をその代表にあげることができる。こうして松竹梅と裏白とで植物
界をおおうことによって、正月をより意義のあるものにすることができるとい
うわけである。
 
 ■植 物 界■ 
◆花が咲き実を結び種を作る(顕花植物)
     種が裸のもの  (裸子植物)………………………………… 松 
     種が実の中のもの(被子植物) 葉が一枚(単子葉類)…… 竹 
                    が二枚(双子葉類)……  梅
◆花は咲かせず胞子で増える(隠花植物)………………………  裏白 
 
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P28-29)
 
いかがでしょうか。先生の書かれた図を参考に、わたし流に書き加えると以下
のようになります。植物には、梅、桜のように種を作るものと、コケやシダの
ように花を咲かせないで胞子でふえるものがあります。種には、竹や梅のよう
に種が実の中に包まれているものと、松、銀杏(いちょう)、蘇鉄(そてつ)のよ
うに種が裸のままのものがあります。種が実の中にあるものをまくと、芽を出
した時に最初に出る葉が、一枚のものと二枚のものとあります。
松竹梅というと、お寿司屋さんなどでは、上中並と同じように値段を表すのに
使っていますが、実は、こういう素晴らしい意味があるのです。本当に不思議
です。「なるほど!」と納得するばかりではなく、感動しませんか。昔から受
け継がれているものには、それなりの意味があるわけです。また、こういった
ことを科学的に実証する先生がいらっしゃったのも、頼もしい限りではありま
せんか。
 
★★正月の食べ物★★
正月の食べ物というと、雑煮とお節料理でした。しかし、現代っ子は、雑煮や
お節料理を食べているでしょうか。先にもお話ししましたが私の子どもの頃は、
餅は正月しか食べられませんでしたから、楽しみであり、しかもご馳走でした。
今は、一年中、売っていますし、いつでも食べられますから、魅力の点で引き
つける力がないのでしょう。餅も季節感を奪われてしまった被害者です。非常
食としても優れものですけれど。
 
◇雑 煮◇
雑煮は、大晦日の夜に、神様をお迎えするためにお供えをした食べ物を、神様
と一緒に食べ、神様の力を授かる食べ物です。雑煮は、いろいろな具を入れ、
一緒に煮込んだものですが、必ず、青い葉っぱを入れるのが作法、決まりです。
この青い葉っぱが、子どもに嫌われるのではないでしょうか。しかし、これに
もきちんとした意味があるのです。「葉っぱを入れる」「菜を入れる」から
「名をあげる」「成功して名前が知られるようになる」に通じますから、青い
葉っぱを入れるのだそうです。
 
餅は本来、丸いものですが、東日本では四角に切った切り餅を、関西では丸い
餅を使っています。さらに、雑煮の作り方ですが、東京では、餅を焼いてから
椀に入れ、具や汁を入れますが、大阪では、ゆでてから椀に入れます。私は父
が関西の出身でしたから、ゆでるのに慣れていますが、焼いてから食べるのも
香ばしくておいしいものです。
 
雑煮については、織田信長に面白い逸話が残されています。ある年の元日の朝、
信長の雑煮の膳に、箸が片方しか添えられていなかったのです。あの短気な信
長のことですから、平穏に収まるわけがありません。しかし、怒り心頭に発し
た信長を、木下藤吉郎(後の太閤秀吉)が、「今年から諸国をかたはし取りにさ
れる吉兆でございます」と言い換え、ご機嫌が直ったそうです。そう言えば、
曽呂利新左衛門のとんち話(傑作な話がたくさんありますから、読んであげた
い本の一つです)の中に、病気見舞いに送られてきた松竹梅の盆栽が枯れたの
を見て落胆した秀吉を、新左衛門の機知で吉報に変えてしまう話があります。
世の中、めぐり合わせですね。
 
(次回は、「正月の食べ物」他についてお話しましょう)
 

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