めぇでるコラム
さわやかお受験のススメ<保護者編>第3章(1)何といっても正月ですね 睦月
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「めぇでる教育研究所」発行
2019さわやかお受験のススメ<保護者編>
~紀元じぃの子育て春秋~
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第10号-
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第3章(1)何といっても正月ですね 睦月
物の本によれば、睦月(むつき)のいわれには、正月は身分の上下、老若男女、
分け隔てなく行き来し、親族一同、仲よく「睦み合う」という説が有力だそう
で、その他にも「元つ月」、草木が萌えいずる「萌(もゆ)月」、春陽が発生
する「生む月」、稲の実を初めて水に浸す「実(み)月」なのだとする説もあ
るようです。
お正月の歌
♪もういくつ寝るとお正月 お正月には凧あげて
こまを回して遊びましょう 早く来い来いお正月♪
正月になるとこの歌を思い出します。子どもの頃の思い出といえば、正月に
まさるものはなかったですね。恥ずかしい話ですが、お餅を食べられるのと
お年玉を貰えるからでした。今と違い餅は正月しか食べませんでしたし、小
遣いとなると現代っ子のように毎月貰えるものではなく、正月や祭りの時だ
けでしたから、本当に待ち遠しかったものです。今の子ども達がクリスマス
を待つ心境と同じではなかったでしょうか。
ところで、この歌の作曲者はどなただと思いますか。瀧廉太郎です。童謡や
唱歌には素晴らしいものがたくさんあります。お子さんと一緒に歌うべきだ
と思いますね。幼児期の思い出は、こういった歌からも残っていくものでは
ないでしょうか。
さて、元日の朝ですが、いつもの朝と違い「特別な朝」という感じがしたも
のです。いつもと変わらない朝ですが、元日の朝だけは別です。なぜか、天
気はよく、大雪とか氷雨といった経験はほとんどありません。瀬戸内海に面
した赤穂と東京、川越にしか住んだことがないからかもしれませんが、毎年、
いかにも新しい神さまがいらっしゃった朝という気持ちになったものです。
元日は、その年の神さま、年神さまがやってきて、前の年の神さまと交代す
る日でした。ですから、神さまを中心に生活が営まれていた時代には、「お
めでとうございます」と言っていたのは、人と人が挨拶をするのではなく、
新しい神さまを迎える言葉として使っていたそうです。ですから、「あけお
め」などという言葉を聞くと「何と不謹慎なことよ!」と腹が立ちますね(笑)。
門松、しめ飾り、鏡餅、そしておせち料理も、みんな神さまをお迎えするセ
レモニーに必要なものだったのです。中には何やら語呂合わせのようなもの
もありますが、「これはすごい!」と思わず膝を叩きたくなるのもあります。
★★正月の三点セット★★
◇しめ飾り◇
本来、しめ縄は、神前など神聖なものと不浄なものとの境界線を示すために
張る縄のことで、わらを左捻(よ)りにして、三筋、五筋、七筋と順々にひ
ねり垂らし、その間に四手を下げたものです。四手とは、横綱の化粧まわし
の上にしめられた綱にさがっている、あれです。
稲や麦の茎を干したわらで作ったしめ飾りで神さまを迎えるのも、農耕民族
の生活の基盤は米ですから、わかるような気がしませんか。
地方によっては、えびや橙(だいだい)を一緒に飾った豪華版もあります。
えびは「海老」とも書きますが、文字、そのものが「海のご隠居さん」で、
体が曲がっている姿からお年寄りにたとえ、長寿を祈願したものです。これ
が漢字の楽しいところで、何となくイメージが浮かんできます。
“LOBSTER”と書かれていても、何のイメージもわきませんが、字の
並びに何か意味があるのでしょうか。橙は、一家の幸せが、「代々」続いて
欲しいという語呂合わせです。
神さまを迎えるしめ縄に、いろいろとお願いするのですから、頼まれる神さ
まも大変です。
◇門 松◇
門松の方が、まだ受け継がれているかもしれません。しかし、庶民派の門松
は松だけです。銀行やデパート、大きな会社の入り口には、立派な門松が飾
られています。松竹梅、何やらのどが鳴りそうですが、これも当然、意味あ
りでしょう。
松は常緑樹ですから、葉は一年中、緑色で冬の寒さをものともしません。
竹は真っすぐ伸びていきますから、横道にそれない芯の強さがあり、雪の日
など他の木は雪の重みで折れがちですが、竹はしなって頑張り、雪の方が我
慢できずに滑り落ちます。
かぐや姫の生れ故郷は竹の中、空っぽで「腹に一物もなく」、唐竹を割ると
一直線に割れることから曲がったことが嫌い、生一本のシンボルです。ちな
みに「生一本」とは、単一の酒造で造られた混ざり物のない純米酒のことで
す(笑)。
梅は北風が吹き荒れ、他の木々は葉を落とし寒そうですが、梅は頑張って小
さな花をリンと咲かせ、「春近し」を告げています。春告鳥と書いて「うぐ
いす」ですから、春告花で「うめ」はどうでしょうか。木偏に春と書いて
「うめ」と読みたいですが、「椿」がありますからだめですね。
この椿が映えるのは、茶室ではないでしょうか。一輪挿しの椿は、和敬静寂
の雰囲気を見事にかもし出していました。
「和敬静寂」は千利休の言葉で、和して敬すると誰の心も清々しくなります。
そしてそこには、心の寂けさが生まれます。寂とは淋しいものではなく、あ
たたかな静けさなのです。そうした心境になれば、煩悩が静められ、知恵が
生まれてくるのです。そこで「和敬静寂」が禅のこころといわれ、茶のここ
ろといわれるようになりました。
(「命のことば」 瀬戸内寂聴さんの著から 利休の茶室日記 gooブログよ
り)
利休の命名は、「名利共に休す、名誉も利益も求めない」という禅語からとっ
たものといわれていますが、墓所は織田信長の菩提寺である大徳寺の隣にある
聚光院です。大徳寺の山門を寄付したのは利休で、そのお礼に寺側が利休の木
像を掲げたことが秀吉の逆鱗に触れ切腹を命じられました。年は利休が上です
が、茶道では信長の弟子で、隣同士で眠っていることは、あまり知られていな
いのではないでしょうか。
それはともかくとして、松竹梅、語呂もいいですね。この縁起物の三つを玄関
に飾り、年神さまが、確実に我が家に来ていただくための道標、表札の役をし
ていたのではないでしょうか。昔は盆にはきゅうりの馬となすで作った牛を飾
りましたが、正月は神さまを、盆には仏さまを迎えるための飾り物で、季節折
々の花や農作物を供えるところからも、農耕民族であることがわかります。
何かにつけて、事の起こりは中国ではと考えますが、松竹梅も、厳しい冬を堪
えて生きるみやびやかな木、「厳冬の三友」といわれ、それが日本に伝わり、
「長寿・節操・清廉」などの解釈を加え、めでたいもののシンボルとなったの
です。いや、それだけではありません。後程、紹介しますが、あっと驚く秘密
が隠されているではありませんか。
◇鏡 餅◇
鏡餅は、年神さまから頂いた新しい魂を表したものです。丸い形は、角を立て
ないように、みんなで仲良く暮らそうという意味が込められています。お飾り
は、地方によって勝栗、干柿、扇など多種多彩ですが、橙、ゆずり葉、昆布、
裏白などが一般的でしょう。橙は長寿、ゆずり葉は新しい葉が出てから古い葉
が落ちることから「譲り葉」、家督を子孫に譲ること、昆布は「喜ぶ」の語呂
合わせと子生(こぶ)、子どもが生まれることを願い、裏白は葉の裏側が白い
しだ類(わらび、ぜんまいの仲間)で、うしろ暗いところがなく、清らかで汚
れのない心を表しています。
★★松竹梅に隠された秘密★★
何やら週刊誌の見出し風ですが、文句なしにすごい秘密が隠されているのです。
初めて読んだときの驚きといったらありませんでした。少し長くなりますが、
紹介しましょう。
陰陽の立場から松竹梅をみると、松は陽、竹も陽、そして梅は陰で
ある。松竹梅は陰と陽が相まって完全な世界を構成するという哲理
にもかなっているわけである。さらに、植物学の上から考えると、
松竹梅が植物界を代表していることが知られている。植物を分類す
ると、顕花植物と隠花植物に分けられ、顕花植物は裸子植物と被子
植物から成り立っている。さらに被子植物は、単子葉類と双子葉類
に分類される。ところで、松は種子を裸にしているので裸子植物で
あり、竹は種子が実の中にあって、しかも子葉が一枚しかないので、
被子植物の単子葉類、梅も被子植物であるが子葉を二枚持っている
ので双子葉類というわけで、松竹梅が顕花植物の典型的な代表例と
なっている。このすばらしい事実を古代人が知っていたのであろう
か。松竹梅の意義の深さに、めでたいということよりも、頭の下が
る思いがする。
ついでに隠花植物について述べると、その代表として、正月飾りと
してすでに述べた裏白をその代表にあげることができる。こうして
松竹梅と裏白とで植物界をおおうことによって、正月をより意義の
あるものにすることができるというわけである。
■植 物 界■
◆花が咲き実を結び種を作る(顕花植物)
種が裸のもの (裸子植物)………………………………… 松
種が実の中のもの(被子植物) 葉が一枚(単子葉類)…… 竹
葉が二枚(双子葉類)…… 梅
◆花は咲かせず胞子で増える(隠花植物)………………………… 裏白
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P28-29)
いかがでしょうか。先生の書かれた図を参考に、わたし流に書き加えると以下
のようになります。植物には、梅、桜のように種を作るものと、コケやシダの
ように花を咲かせないで胞子でふえるものがあります。種には、竹や梅のよう
に種が実の中に包まれているものと、松、銀杏(いちょう)、蘇鉄(そてつ)のよ
うに種が裸のままのものがあります。種が実の中にあるものをまくと、芽を出
した時に最初に出る葉が、一枚のものと二枚のものとあります。
松竹梅というと、寿司屋などでは、上中並と同じように値段を表すのに使って
いますが、実は、こういう素晴らしい意味があるのです。本当に不思議ですね。
「なるほど!」と納得するばかりではなく、感動しませんか。昔から受け継が
れているものには、それなりの意味があるわけです。また、こういったことを
科学的に実証する先生がいらっしゃったのも、頼もしい限りではありませんか。
★★正月の食べ物★★
正月の食べ物といえば、雑煮とお節料理でした。しかし、現代っ子は、雑煮や
お節料理を食べているでしょうか。私の子どもの頃は、餅は正月しか食べられ
ませんでしたから、楽しみであり、しかもご馳走でした。今は、一年中、売っ
ていますし、いつでも食べられますから、魅力の点で引きつける力がないので
しょう。餅も季節感を奪われてしまった被害者です。非常食としても優れもの
ですけれど。
◇雑 煮◇
雑煮は、大晦日の夜に、神さまをお迎えするためにお供えをした食べ物を、神
さまと一緒に食べ、神さまの力を授かる食べ物です。雑煮は、必ず、青い葉っ
ぱを入れるのが決まりで、「葉っぱを入れる」「菜を入れる」から「名をあげ
る」「成功して名前が知られるようになる」に通じるので、青い葉っぱを入れ
るのだそうです。
餅は本来、丸いものですが、東日本では四角に切った切り餅を、関西では丸い
餅を使っています。雑煮の作り方ですが、東京では、餅を焼いてから椀に入れ、
具や汁を入れますが、大阪では、ゆでてから椀に入れます。私は父が関西の出
身でしたから、ゆでるのに慣れていますが、焼いてから食べるのも香ばしくて
おいしいものです。
織田信長に面白い逸話が残されています。ある年の元日の朝、信長の雑煮の膳
に、箸が片方しか添えられていなかったのです。あの短気な信長のことですか
ら、平穏に収まるわけがありません。しかし、怒り心頭に発した信長を、木下
藤吉郎(後の太閤秀吉)が、「今年から諸国をかたはし取りにされる吉兆でござ
います」と言い換え、ご機嫌が直ったそうです。「曽呂利新左衛門のとんち話」
の中に、病気見舞いに送られてきた松竹梅の盆栽が枯れたのを見て落胆した
秀吉を、新左衛門の機知で吉報に変えてしまう話があります。世の中、めぐり
合わせですね。
とんち話には傑作な話がたくさんありますが、おすすめは、寺村輝夫のとんち
話シリーズ「一休さん」・「吉四六(きっちょうむ)さん」・「彦一さん」
(あかね書房 刊)で、大人でもしっかりと笑えます(笑)。
(次回は、「正月の食べ物」他についてお話しましょう)
物の本によれば、睦月(むつき)のいわれには、正月は身分の上下、老若男女、
分け隔てなく行き来し、親族一同、仲よく「睦み合う」という説が有力だそう
で、その他にも「元つ月」、草木が萌えいずる「萌(もゆ)月」、春陽が発生
する「生む月」、稲の実を初めて水に浸す「実(み)月」なのだとする説もあ
るようです。
お正月の歌
♪もういくつ寝るとお正月 お正月には凧あげて
こまを回して遊びましょう 早く来い来いお正月♪
正月になるとこの歌を思い出します。子どもの頃の思い出といえば、正月に
まさるものはなかったですね。恥ずかしい話ですが、お餅を食べられるのと
お年玉を貰えるからでした。今と違い餅は正月しか食べませんでしたし、小
遣いとなると現代っ子のように毎月貰えるものではなく、正月や祭りの時だ
けでしたから、本当に待ち遠しかったものです。今の子ども達がクリスマス
を待つ心境と同じではなかったでしょうか。
ところで、この歌の作曲者はどなただと思いますか。瀧廉太郎です。童謡や
唱歌には素晴らしいものがたくさんあります。お子さんと一緒に歌うべきだ
と思いますね。幼児期の思い出は、こういった歌からも残っていくものでは
ないでしょうか。
さて、元日の朝ですが、いつもの朝と違い「特別な朝」という感じがしたも
のです。いつもと変わらない朝ですが、元日の朝だけは別です。なぜか、天
気はよく、大雪とか氷雨といった経験はほとんどありません。瀬戸内海に面
した赤穂と東京、川越にしか住んだことがないからかもしれませんが、毎年、
いかにも新しい神さまがいらっしゃった朝という気持ちになったものです。
元日は、その年の神さま、年神さまがやってきて、前の年の神さまと交代す
る日でした。ですから、神さまを中心に生活が営まれていた時代には、「お
めでとうございます」と言っていたのは、人と人が挨拶をするのではなく、
新しい神さまを迎える言葉として使っていたそうです。ですから、「あけお
め」などという言葉を聞くと「何と不謹慎なことよ!」と腹が立ちますね(笑)。
門松、しめ飾り、鏡餅、そしておせち料理も、みんな神さまをお迎えするセ
レモニーに必要なものだったのです。中には何やら語呂合わせのようなもの
もありますが、「これはすごい!」と思わず膝を叩きたくなるのもあります。
★★正月の三点セット★★
◇しめ飾り◇
本来、しめ縄は、神前など神聖なものと不浄なものとの境界線を示すために
張る縄のことで、わらを左捻(よ)りにして、三筋、五筋、七筋と順々にひ
ねり垂らし、その間に四手を下げたものです。四手とは、横綱の化粧まわし
の上にしめられた綱にさがっている、あれです。
稲や麦の茎を干したわらで作ったしめ飾りで神さまを迎えるのも、農耕民族
の生活の基盤は米ですから、わかるような気がしませんか。
地方によっては、えびや橙(だいだい)を一緒に飾った豪華版もあります。
えびは「海老」とも書きますが、文字、そのものが「海のご隠居さん」で、
体が曲がっている姿からお年寄りにたとえ、長寿を祈願したものです。これ
が漢字の楽しいところで、何となくイメージが浮かんできます。
“LOBSTER”と書かれていても、何のイメージもわきませんが、字の
並びに何か意味があるのでしょうか。橙は、一家の幸せが、「代々」続いて
欲しいという語呂合わせです。
神さまを迎えるしめ縄に、いろいろとお願いするのですから、頼まれる神さ
まも大変です。
◇門 松◇
門松の方が、まだ受け継がれているかもしれません。しかし、庶民派の門松
は松だけです。銀行やデパート、大きな会社の入り口には、立派な門松が飾
られています。松竹梅、何やらのどが鳴りそうですが、これも当然、意味あ
りでしょう。
松は常緑樹ですから、葉は一年中、緑色で冬の寒さをものともしません。
竹は真っすぐ伸びていきますから、横道にそれない芯の強さがあり、雪の日
など他の木は雪の重みで折れがちですが、竹はしなって頑張り、雪の方が我
慢できずに滑り落ちます。
かぐや姫の生れ故郷は竹の中、空っぽで「腹に一物もなく」、唐竹を割ると
一直線に割れることから曲がったことが嫌い、生一本のシンボルです。ちな
みに「生一本」とは、単一の酒造で造られた混ざり物のない純米酒のことで
す(笑)。
梅は北風が吹き荒れ、他の木々は葉を落とし寒そうですが、梅は頑張って小
さな花をリンと咲かせ、「春近し」を告げています。春告鳥と書いて「うぐ
いす」ですから、春告花で「うめ」はどうでしょうか。木偏に春と書いて
「うめ」と読みたいですが、「椿」がありますからだめですね。
この椿が映えるのは、茶室ではないでしょうか。一輪挿しの椿は、和敬静寂
の雰囲気を見事にかもし出していました。
「和敬静寂」は千利休の言葉で、和して敬すると誰の心も清々しくなります。
そしてそこには、心の寂けさが生まれます。寂とは淋しいものではなく、あ
たたかな静けさなのです。そうした心境になれば、煩悩が静められ、知恵が
生まれてくるのです。そこで「和敬静寂」が禅のこころといわれ、茶のここ
ろといわれるようになりました。
(「命のことば」 瀬戸内寂聴さんの著から 利休の茶室日記 gooブログよ
り)
利休の命名は、「名利共に休す、名誉も利益も求めない」という禅語からとっ
たものといわれていますが、墓所は織田信長の菩提寺である大徳寺の隣にある
聚光院です。大徳寺の山門を寄付したのは利休で、そのお礼に寺側が利休の木
像を掲げたことが秀吉の逆鱗に触れ切腹を命じられました。年は利休が上です
が、茶道では信長の弟子で、隣同士で眠っていることは、あまり知られていな
いのではないでしょうか。
それはともかくとして、松竹梅、語呂もいいですね。この縁起物の三つを玄関
に飾り、年神さまが、確実に我が家に来ていただくための道標、表札の役をし
ていたのではないでしょうか。昔は盆にはきゅうりの馬となすで作った牛を飾
りましたが、正月は神さまを、盆には仏さまを迎えるための飾り物で、季節折
々の花や農作物を供えるところからも、農耕民族であることがわかります。
何かにつけて、事の起こりは中国ではと考えますが、松竹梅も、厳しい冬を堪
えて生きるみやびやかな木、「厳冬の三友」といわれ、それが日本に伝わり、
「長寿・節操・清廉」などの解釈を加え、めでたいもののシンボルとなったの
です。いや、それだけではありません。後程、紹介しますが、あっと驚く秘密
が隠されているではありませんか。
◇鏡 餅◇
鏡餅は、年神さまから頂いた新しい魂を表したものです。丸い形は、角を立て
ないように、みんなで仲良く暮らそうという意味が込められています。お飾り
は、地方によって勝栗、干柿、扇など多種多彩ですが、橙、ゆずり葉、昆布、
裏白などが一般的でしょう。橙は長寿、ゆずり葉は新しい葉が出てから古い葉
が落ちることから「譲り葉」、家督を子孫に譲ること、昆布は「喜ぶ」の語呂
合わせと子生(こぶ)、子どもが生まれることを願い、裏白は葉の裏側が白い
しだ類(わらび、ぜんまいの仲間)で、うしろ暗いところがなく、清らかで汚
れのない心を表しています。
★★松竹梅に隠された秘密★★
何やら週刊誌の見出し風ですが、文句なしにすごい秘密が隠されているのです。
初めて読んだときの驚きといったらありませんでした。少し長くなりますが、
紹介しましょう。
陰陽の立場から松竹梅をみると、松は陽、竹も陽、そして梅は陰で
ある。松竹梅は陰と陽が相まって完全な世界を構成するという哲理
にもかなっているわけである。さらに、植物学の上から考えると、
松竹梅が植物界を代表していることが知られている。植物を分類す
ると、顕花植物と隠花植物に分けられ、顕花植物は裸子植物と被子
植物から成り立っている。さらに被子植物は、単子葉類と双子葉類
に分類される。ところで、松は種子を裸にしているので裸子植物で
あり、竹は種子が実の中にあって、しかも子葉が一枚しかないので、
被子植物の単子葉類、梅も被子植物であるが子葉を二枚持っている
ので双子葉類というわけで、松竹梅が顕花植物の典型的な代表例と
なっている。このすばらしい事実を古代人が知っていたのであろう
か。松竹梅の意義の深さに、めでたいということよりも、頭の下が
る思いがする。
ついでに隠花植物について述べると、その代表として、正月飾りと
してすでに述べた裏白をその代表にあげることができる。こうして
松竹梅と裏白とで植物界をおおうことによって、正月をより意義の
あるものにすることができるというわけである。
■植 物 界■
◆花が咲き実を結び種を作る(顕花植物)
種が裸のもの (裸子植物)………………………………… 松
種が実の中のもの(被子植物) 葉が一枚(単子葉類)…… 竹
葉が二枚(双子葉類)…… 梅
◆花は咲かせず胞子で増える(隠花植物)………………………… 裏白
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P28-29)
いかがでしょうか。先生の書かれた図を参考に、わたし流に書き加えると以下
のようになります。植物には、梅、桜のように種を作るものと、コケやシダの
ように花を咲かせないで胞子でふえるものがあります。種には、竹や梅のよう
に種が実の中に包まれているものと、松、銀杏(いちょう)、蘇鉄(そてつ)のよ
うに種が裸のままのものがあります。種が実の中にあるものをまくと、芽を出
した時に最初に出る葉が、一枚のものと二枚のものとあります。
松竹梅というと、寿司屋などでは、上中並と同じように値段を表すのに使って
いますが、実は、こういう素晴らしい意味があるのです。本当に不思議ですね。
「なるほど!」と納得するばかりではなく、感動しませんか。昔から受け継が
れているものには、それなりの意味があるわけです。また、こういったことを
科学的に実証する先生がいらっしゃったのも、頼もしい限りではありませんか。
★★正月の食べ物★★
正月の食べ物といえば、雑煮とお節料理でした。しかし、現代っ子は、雑煮や
お節料理を食べているでしょうか。私の子どもの頃は、餅は正月しか食べられ
ませんでしたから、楽しみであり、しかもご馳走でした。今は、一年中、売っ
ていますし、いつでも食べられますから、魅力の点で引きつける力がないので
しょう。餅も季節感を奪われてしまった被害者です。非常食としても優れもの
ですけれど。
◇雑 煮◇
雑煮は、大晦日の夜に、神さまをお迎えするためにお供えをした食べ物を、神
さまと一緒に食べ、神さまの力を授かる食べ物です。雑煮は、必ず、青い葉っ
ぱを入れるのが決まりで、「葉っぱを入れる」「菜を入れる」から「名をあげ
る」「成功して名前が知られるようになる」に通じるので、青い葉っぱを入れ
るのだそうです。
餅は本来、丸いものですが、東日本では四角に切った切り餅を、関西では丸い
餅を使っています。雑煮の作り方ですが、東京では、餅を焼いてから椀に入れ、
具や汁を入れますが、大阪では、ゆでてから椀に入れます。私は父が関西の出
身でしたから、ゆでるのに慣れていますが、焼いてから食べるのも香ばしくて
おいしいものです。
織田信長に面白い逸話が残されています。ある年の元日の朝、信長の雑煮の膳
に、箸が片方しか添えられていなかったのです。あの短気な信長のことですか
ら、平穏に収まるわけがありません。しかし、怒り心頭に発した信長を、木下
藤吉郎(後の太閤秀吉)が、「今年から諸国をかたはし取りにされる吉兆でござ
います」と言い換え、ご機嫌が直ったそうです。「曽呂利新左衛門のとんち話」
の中に、病気見舞いに送られてきた松竹梅の盆栽が枯れたのを見て落胆した
秀吉を、新左衛門の機知で吉報に変えてしまう話があります。世の中、めぐり
合わせですね。
とんち話には傑作な話がたくさんありますが、おすすめは、寺村輝夫のとんち
話シリーズ「一休さん」・「吉四六(きっちょうむ)さん」・「彦一さん」
(あかね書房 刊)で、大人でもしっかりと笑えます(笑)。
(次回は、「正月の食べ物」他についてお話しましょう)