めぇでるコラム

さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>なぜ、ペーパーテストを行わない学校が増えたのでしょうか 

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        「めぇでる教育研究所」発行
 さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>
            (第17号)
 現年中児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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なぜ、ペーパーテストを行わない学校が増えたのでしょうか
 
いささか古い話で恐縮ですが、平成4年の秋のことです。
当時、大手の幼児教室で、志望校別指導部門の慶應義塾幼稚舎を担当していま
した。試験を受けてきた子ども達が、こういったものです。
「先生、ペーパーは1枚だけでした」
事実、その年のペーパーテストは、「話の記憶」1枚だけでした。
 
同じ年の12月のことです。
今度は、お茶の水女子大学附属小学校の試験を受けてきた女の子が、
「先生、試験はありませんでした」
正しくは、「ペーパーテストはありませんでした」ですが、正直なところ、び
っくりしました。幼児教室で志望校を担当している者にとり、傾向を読めなか
ったのですから、これほど恥ずかしい話はありません。名誉挽回とばかりに、
その原因を探してみました。
 
この年から新しい学習指導要領が実施され、同時に幼稚園の保育も「幼稚園教
育要領」の改訂が行われ、今までの一斉保育から自由保育となり、一人ひとり
の個性を伸ばしていく保育に変わりました。ですから、皆さんのお子さんが通
っている幼稚園は自由保育であり、ここに注目してみると、おぼろげながら、
ペーパーテストを廃止した理由の一端がわかってきたのです。
 
ご存知のように、自由保育といっても自由奔放、何でもありの保育ではありま
せん。一口に言えば、みんなで一斉に同じことを強制的にやるのは止め、自発
的に活動できるように導く保育のことです。例えば、知識や理解力を培うにも、
自分自身で考えたり、工夫する機会や経験をたくさん持たせたり、自分勝手な
考えではなく、客観的なものの見方や考え方を身につけるように指導する保育
のことです。
 
もっと簡単に言えば、一斉保育は他律の保育で、自由保育は自律の保育のこと
です。他律と自律の保育については、わかりやすい歌があります。以前にも紹
介しました文部省唱歌、「雀の学校」です。
 
雀の学校
作詩 清水かつら  作曲 広田龍太郎 
チイチイパッパ チイパッパ       雀の学校の 先生は 
むちを振り振り チイパッパ       チイチイパッパ チイパッパ
生徒の雀は 輪になって         お口をそろえて チイパッパ
まだまだいけない チイパッパ      もう一度一緒に チイパッパ
チイチイパッパ チイパッパ
 
先生がムチを振りながら、「こっちを向きなさい!」とやるのが他律の保育で、
自由保育にはムチを持った先生はいません。こういった保育内容を踏まえ、ここ
からは私の勝手な解釈ですから、深くお考えにならずに、読み流してください。
 
新指導要領の狙いは、偏差値教育の弊害などを見直すことでした。
大胆に言えば、今までの学習指導の基本的な考え方は、ペーパーテストのように
持ち点を100として、「これもできない、あれもダメ」と点数を引く減点方式
であり、主に知力だけを判定したものでした。改訂された「幼稚園教育要領」で
は、持ち点ゼロから始め、子ども一人ひとりの個性を見極め、「これもできた、
あれもいいぞ」と点を積み重ね、合計で何点取れたかと点数を積み重ねていく保
育に変えましたが、ペーパーを使わない行動観察型のテストは、この加点方式な
のです。
 
ペーパーテストは、取れた点数で子どもの限られた能力を評価しますから、個性
の出る幕はありませんが、行動観察型のテストは、絵を描いたり、自分の意見を
発表したり、課題に取り組む子ども達の様子を観察し採点しますから、プロセス
を重視し個々の能力を評価します。つまり、個性の尊重です。
 
また、こんな定義はありませんが、計算の問題から考えてみました。ヒントにな
ったのは、「ママ、生まれたらこんなふうに育ててね」(家庭教育システム研究
会 著 横山ふさ子 画 サンマーク出版 刊) の育児の本で、「画」とある
ように漫画です。
1+9=□は、答えは1つしかありませんから、全員で同じことに取り組む集中
思考型保育、□+□=10は、答えが10通りありますから、一人ひとりを育て
ていく拡散思考型保育と考えると、
一斉保育(他律の集中思考型保育)→減点方式→ペーパーテスト
自由保育(自律の拡散思考型保育)→加点方式→行動観察型テスト
となり、幼稚園の保育の方針が、他律の一斉保育から自律の自由保育に変わった
ことから、小学校の入学試験の形式も減点方式だけではなく、加点方式を加えた
と言えるのではないでしょうか。
 
ペーパーテストを実施している学校も、制作や課題遊び、自由遊び、運動テスト
などを通して、社会性や協調性など集団生活への適応力を評価、採点し、バラン
スの取れた成長をしているかを判定しています。ですから、入試に必要な知識な
るものを、記憶だけに頼って詰め込む知育偏重型の受験対策は、どこの学校から
も歓迎されないと言えるわけです。
 
前回でもお話ししましたが、現在、国立附属校では、筑波大学附属小学校を除き、
お茶の水女子大学附属小学校、東京学芸大学附属竹早小学校等はペーパーテスト
をやっていません。私立校では、慶應義塾幼稚舎、青山学院初等部、学習院初等
科、成城学園初等学校、桐朋学園小学校、川村小学校などもやっていません。
(平成28年10月現在)
 
おもしろいのは、以前は運動テストもなく、ペーパーテストしかやっていなかっ
た立教小学校が、今ではペーパーテストを廃止して行動観察型に切り替え、運動
テストは勿論のこと、男の子が苦手とするダンスまで取り入れています。校長先
生は学校説明会で、文言は正確ではありませんが、「私学がよい子を取り合った
時期があったが、それは間違いでした」と指摘され、翌年の説明会では、「取り
っこではなく分けっこの時期に入った」とおっしゃっていました。
 
少し古くなりますが、「ペーパーテストを廃止した理由」を公表した学校があり
ます。慶應義塾幼稚舎の舎長が、以前、こうおっしゃったのです。これはわかり
やすい話ですから紹介しておきましょう。余談になりますが、舎長は校長のこと
で、東洋英和女学院小学部、青山学院初等部は部長、学習院初等科は科長、光塩
女子学院初等科は校長、国府台女子学院小学部は副学院長の名称となっています。
 
「受験という現象がある以上、その競争の社会の中で、人より抜きん出て勝利
を占めようと、どんどんエスカレートします。競争社会は、結果を争うわけです。
だから、私たちは、結果を争うようなテストをしません。結果を点数に直して、
点数で序列をつけるような教育をしていない。点数で子どもの序列をしないとい
うことは、ペーパーテストはしませんというのが、一番わかりやすいということ
です」  (週間ポスト 平成6年4月3日号)
 
辞任されて教員に復帰された加藤三明元舎長は説明会で、毎年「幼稚舎の教育目
標は、他人との競争ではなく自分との戦いである」とおっしゃっていました。
 
さらに注目したいのは、東京女学館小学校です。
平成12年に就任された田浦桂三校長(同15年に退任)は、面接と推薦状だけで
入学を決めるAO方式(アドミッションズ オフィス)を始めました。文言は正
確ではありませんが、「受験のために子ども達に大きな負担をかけたのは、塾や
親の責任ではなく、そういう環境を作った学校にある」と言い切った方です。募
集人員80名中、AO方式20名からスタートし、平成28年10月現在、AO
方式45名(内3名「国際枠」)、一般入試35名になっています。「やがてはす
べて、この方式に変えていきたいと」先生は抱負を語っていましたが、もし、こ
れが実現すると、「私学もやがて抽選で!」といった夢のような話……まあ、夢
でしょうけれど。子ども達のために頑張ってほしいと期待しています。残念なが
ら大学は、在学生全員が卒業した今年の3月に閉鎖されました。
 
ところで、皆さんご存知のごとく、平成14年度から実施されていた学習指導要
領ですが、学習内容が削減された問題などを含め、早々と改訂されました。しか
し、すべてが悪かったわけではありません。「ゆとりの教育」を目指し、私学の
大きな特徴であった週五日制、英語教育も始まりました。少人数制に至っては、
私立の小学校は都心の公立校にかなわなくなっているでしょう。この状態を「公
立校の逆襲が始まった」と、東洋英和女学院小学部の寺澤東彦前部長は説明会で
おっしゃっていました。ですから、私学には脅威でもあったわけです。
 
事実、日本女子大学附属豊明小学校、立教女学院小学校、東洋英和女学院小学部、
青山学院初等部、成蹊小学校、昭和学院小学校、日出学園小学校、国府台女子学
院小学部など、最近の私学の教育環境整備には、目を見張るものがあります。
 
また、桐朋小学校は1クラス24人、成蹊小学校では4年生まで1クラス28人、
日出学園小学校は2年生まで4クラス編成(1クラス25名、26人編成)、3
年生以上は今年より3クラス編成(1クラス34名)の少人数制を実施するなど、
私学ならではの対策が顕著になっているのも事実です。
 
さらに、2013年に慶應義塾横浜初等部、2014年に茨城県取手市に江戸川
学園取手小学校、そして2015年には神奈川県藤沢市に日本大学藤沢小学校が、
茨城県つくばみらい市には開智望(のぞみ)小学校が開校され、今年4月には千
葉県流山市に暁星国際流山小学校が開校されました。受験者が減る中で、なぜ新
しく私学が創立されるのでしょうか。誤解を恐れずに言えば、画一的な教育より
ユニークな教育環境で、そして東日本大震災以降、通学に安全な地元の学校で学
ばせたいと、希望する保護者が増えているからではないでしょうか。
 
そこで問題になるのは、志望校の選び方です。
なぜかと言えば、小学校選びは聖書の「始めに言葉ありき」ではありませんが、
「始めにご家庭の教育方針ありき」であるべきだからです。これが「始めに名門
校ありき」では、かつてバブル経済全盛期の頃、マスコミがお受験騒動と指摘し
たように、ブランド志向によって起きた「受験戦争の低年齢化」、「幼い子ども
を受験戦士に仕立てていいのか」などと批判の対象になりかねないからです。本
当は、こういったことが起きること自体、異常なのですが、いわゆる「受験地獄」
に陥らないためには、ご両親でよく話し合いをし、受験に取り組むことが大切で
す。
 
小学校の受験は、前回お話ししたスケ―ジュールをもとに、慎重に計画を立て、
「ゆっくり、じっくり、しっかり」と、ゆとりをもって挑戦するものであること
を、肝に銘じて頂きたいのです。
(次回は、「小学校の入学試験の内容」についてお話しましょう)

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