めぇでるコラム

さわやかお受験のススメ<保護者編>★★第11章 お月見です   長 月(1)

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2016さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
             -第40号-
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第11章 お月見です   長 月(1)
 
暦の上では、今月から秋です。
秋の読み方は、「黄熱(あかり 稲が成熟する)からとの説が一般的ですが、
秋空が「あきらか(清明)」である、収穫が「飽き満る」、草木の葉が「紅
(あか)く」なるなどの説もあるようです。
長月(ながつき)のいわれは、秋も深まり、次第に夜が長くなっていくから
「夜長月」の略が、わかりやすいですね。
これにも、いろいろな説があり、「稲刈月(いねかりづき)」の「い」と
「り」を略して「ねかづき」が「ながつき」となったものや、「稲熟月(い
ねあかりつき)」が略されたという説もあるそうです。
 
★★お月見ですね★★
9月といったら、お月見ですね。
天保暦でいうと、8月15日にあたり、今のグレゴリオ暦では、9月の15
日から20日頃が見頃です。
 
秋の澄んだ夜空に、こうこうと輝く満月を観賞する習慣は、古くから中国に
あり、それが平安時代に貴族の間に伝わり、やがて、武士や庶民にも広まっ
たものです。昔は、「中秋の名月」といい、月を眺めながら、和歌を詠み、
お酒を酌み交わし、秋の夜を過ごしました。何やら風流な趣が伝わってきそ
うですが、お百姓さんは、それどころではありません。何しろ農耕民族日本
でしたから、とにかく自然が頼みの綱です。
 
お月さまは、お百姓さんには、お日さまと同様、大変な存在でもあったので
す。
ご存知のように月は、およそ1ヵ月の間に丸くなり、また、だんだんと欠け
ていきます。新月から1週間程で半月になり、15日程で満月に、1週間後
には半月となり、再び新月に、これの繰り返しです。そこで昔の人は、満ち
欠けする月の形から、1ヵ月のおよその日にちを知ることができ、それをも
とに農作業の時期、段取りを行っていました。 
また、月の明かりで、夜遅くまで農作業ができたのです。言ってみれば、お
月さんは暦であり、時計であり、夜間の照明器具でもあったわけですから、
感謝の心は、現代では考えられないほど、深かったに違いありません。
 
さらに、旧暦の8月といえば、稲にとっては、夏の暑いお日さまを、さんさ
んと受け、しっかりと実をつける時です。しかし、台風が来ると、折角、丹
精を込めて育ててきた稲は、強風と豪雨でメチャメチャになってしまいます。
私の小学校時代(昭和20年代)の日本の景気は、米の収穫量で決まりです
から、何とか穏便にと思うのは、当然でしょう。
台風一過の秋晴れのもとで、すっかり水を被ってしまった田んぼを、ぼう然
と眺めていたお百姓さんの姿を、何回も見ましたが、子ども心にも悔しい思
いをしたものでした。ですから、お月さまに、すすきや秋の花とおだんごや
果物、芋などを供えて、自然が荒れないようにお祈りを捧げたのです。
 
なお、十五夜を見た場合には、旧暦の9月13日(現在の10月17日頃)
の十三夜も見なければならないといわれています。1回しか見ないお月見を
「片見月」といい、不吉なことが起こると嫌われていたからだそうです。十
三夜は、栗や豆を備えることから「栗名月」「豆名月」ともいい、十五夜が
中国から伝来したものに対し、十三夜は日本のオリジナルな風習です。
また、「十三夜に曇りなし」ともいわれ、晴れの夜が多く、秋の澄んだ夜空
に、こうこうと輝く月を見ることができます。丁度、10月の下旬にあたり、
秋たけなわの頃だからです。お子さんと一緒に「片見月」とならないように、
確かめてみましょう。
こういった話をするだけでも、お子さんには、楽しい思い出となるものです。
 
ご覧になったかと思いますが、7月に2回、2日と31日に満月が現われま
した。これをブルームーンと呼び、2、3年に1度の割合で起こり、次回は
2018年1月と3月にみられる天体現象です。ブルームーンの名称の由来
は、英語の慣用句に“once in a blue moon”(珍しいことやまれなことの
たとえ)があり、まれな現象を「ブルームーン」ということだからだそうで
す。
 
★★なぜ、すすきを飾るのでしょうか★★
すすきは、姿、形から見ても稲科の仲間だとわかります。
あの白い花穂が、いいですね。別名「尾花」といいますが、本当に漢字は、
説得力があります。
これは、子どもの頃に、お百姓さんから聞いた話ですが、今でもよく覚えて
います。
なぜ、お月さまにすすきを飾るのか、その理由ですが、すすきの尾花は、細
くて長く、まるでほうきのようですから、秋風に揺れながら、その穂で、し
っかりと神様を捕まえ、豊作をお願いしたいからだといっていました。
今は、郊外に出かけないと見られなくなりましたが、子どもの頃には、そう
ですね、見上げるほどの高さですから、2メートルぐらいになるのもあり、
これなら神様を絶対に逃さないと思ったものです。
 
★★なぜ、お供え物に芋があったのでしょうか★★
米で作ったおだんごや果物、それに採れたての野菜などを供えたものです。
母からよく聞いた話ですが、お日さまには天照大神(あまてらすおおみかみ 
読みについては注参照)が、お月さまには月読命(つきよみのみこと)とい
う神さまがお住みになり、お日さまを浴びていろいろな物が育つように、お
月さまの光にも不思議なエネルギーがあって、その光を浴びた物を食べると、
健康で長生きするからだといっていました。
「かぐや姫」のラストシーンで、月の光で侍が、ばたばた倒れますが、あれ
を思い出し納得していました。数々の怪獣を一撃で倒すウルトラマンのスペ
シウム光線ではありませんが、月光の威力に感嘆したものです。あの場面に
は、いつも魅せられていました、UFOの世界です。こういった空想は、時
代を超越し、夢があります。科学が、1つ1つ、その根拠を壊していますけ
れど、サンタのプレゼントと共に、幼児期の楽しい夢であり、一緒に楽しん
であげるものではないでしょうか。
 
このウルトラマンに目下、孫がはまっていて、「それはバルタン星人だろう」
と言いたら、「おじいちゃん、何で怪獣の名前を知っているの?」と尊敬さ
れてしまいました。もう40年前になりますが、長男が夢中になって遊んで
いたもので、いまだ人気が衰えないようですね。女の子には、リカちゃん人
形が人気の的で、サンタの代わりに買いに出かけたものでしたが、新作、マ
サト君が出た年は手に入れるのに苦労したことを思い出しました(笑)。
 
ところで、子どもの頃ですから、「夜露」がよくわかりませんでした。供え
てある果物や芋が、夜露に濡れて、月の明かりで光っているのです。神秘的
でした。ですから、夜露に光る果物を食べると、何やら力がつくような気が
しましたし、おいしいと思いました。感動して、母の話を信じていたもので
す。
「神秘的……」、響きのいい言葉ではありませんか。「迷信だ」といって信
じない大人は結構ですが、そういって子どもの夢を簡単に壊すようでは、空
想力や想像力も育たないのではないかと思いますね。
【注】 古事記には天照大御神、日本書紀には天照大神と明記されています。
 
 
今では、お月見に、だんごやすすきなどをお供えする家庭も少ないでしょう
が、芋を飾る話はさらに聞かないのではありませんか。ところが、私の子ど
もの頃は、芋は、欠かせなかったようでした。
でも、どうしてお月さまに芋を供えたのか、このことです。おだんごや果物
は、納得できましたが、芋はわかりませんでした。お月さまと芋は、どう考
えても結びつきません。
これも、じいさまから聞いた話ですが、米が主食になる前は、里芋や山芋が
主食でした。今は、さつま芋掘りは、秋の観光イベントに欠かせないもので
すが、その収穫が、ちょうど十五夜の頃でしたから、感謝の気持ちを表しお
供えをしたそうです。お月見は、芋などの畑作の収穫祭でもあったわけです
ね。それで、中秋の名月を「芋名月」ともいったのです。
 
川越は、さつま芋の名産地で、秋には小さな子達が、芋掘りにやってきます。
盛り付けの鮮やかな和食「芋ご膳」からソフト・クリームまで、美味しいも
のがたくさんありますが、戦後の食糧難の時代に、朝、昼、晩と三食、さつ
ま芋を食べた世代ですから、見ただけで胸焼けがし、どうしても手が出ませ
ん。などと言いながら、さつま芋から作った地ビールだけは、飲んでいます
(笑)。
妙にこだわりますが、ソフト・クリームは、正しくはsoft  ice  cream 
です。
 
★★なぜ、お月さまにうさぎが…?★★
今の小学生は、笑ってばかにしますが、私の子どもの頃は、宇宙船アポロな
どは、想像外のことでしたから、月にうさぎが住んでいると信じていました、
ある時期までは。うさぎが跳ねているように、また、杵(きね)を持ち、餅
をついているようにも見えました。
 
 うさぎ うさぎ   なに見て跳ねる
 十五夜お月さん見て 跳ねる
 
文部省唱歌です、牧歌的で、いいではありませんか。
 
ところで、私の子どもの頃のおじいさんたちは、本当に話がうまかったので
す。
いま聞くと、吹き出したくなるものばかりでしたが、夢がありました。
これもその一つなのですが、お月さまにうさぎが住んでいる証拠は、
「満月の晩に見てみ、うさぎが餅をついているように見えるのは、あれは、
うさぎの国の旗、国旗だ。お月さんはうさぎの国だと、宣告しているのだよ」
こう、いうのです。
太平洋戦争の真っ只中です。
戦争は、命を的にした領土の争奪戦ですから説得力もありました。
それで、私が、
「じゃ、おじいちゃん、地球を月のうさぎが見たら、どんな旗に見えるのか
な?」
「そりゃ、人間に決まっとるがな」
理屈でなくて、何だかおかしな話でしたが、本当のような気がするのです。
うさぎが住んでいるから「うさぎの旗」、人間が住んでいるから「人間の旗」
なのだそうです。
おじいちゃんの頭に浮かぶ人間は、絶対に日本人です。
そして、日の丸の旗を持っているに違いありません。
もしかしなくても、旗を持っているのは兵隊さんです。
こういったような、お年寄りとの楽しい会話が、懐かしく思い出されます。
昔のお年寄りは、一家の生活の一部を、きちんと担っていたのではないでし
ょうか、それも、尊敬されて、です……。
 
うさぎの住んでいる満月を見ながら、すすきやおだんごを飾り、自然に感謝
する心は、小さい時に、きちんと育んでおきたいものだと思います。これも
情操教育に欠かせない、大切な行事ではないでしょうか。
満月を、星を、しみじみと眺めたことはありますか。
お子さんと一緒に、夜空を探索してみましょう。
澄んだ秋の空には、お子さんと共有できるロマンがあふれています。
星座にまつわる伝説を知る機会になるかもしれません。
3つの星が並ぶオリオン座と宵の明星、金星しか識別できませんから、偉そ
うなことはいえませんが(笑)。
 
ところで、外国の人々も、うさぎだと見ているのでしょうか。
天の川と同じく、いろいろな見方があるもので、想像のつかないものもあり、
見る位置により、こんなに違うものかと驚かされました。
 
中国では、うさぎが薬草を作っているとも、ひきがえるやかにがすん
でいるともいわれています。ヨーロッパや北アメリカでは、女の人の
横顔やロバ、インドや南アメリカではワニ、中東ではライオン、アフリ
カではうさぎがひっかいた傷に見えるそうです。
 (心を育てる 子ども歳時記 12ヵ月  
  監修 橋本裕之 講談社 刊 P83)
 
やはり、世界中の人々も、こうこうと輝く満月に、いろいろな思いを抱いて
いたのですね。
海外へ出かけたとき、お月さまがどのように見えるか、お子さんと一緒に眺
めてみるのも、いい思い出になるかも知れません。
満天の星の主役は、北斗七星や南十字星、オリオン座などのようですが、お
月さまも加えてみてはいかがでしょうか。
手軽に出かけられませんが、南極では、逆さまに見えるそうです。
 
最後に、お月さまといえば、文部省唱歌の「月」(詩曲 作者不詳)を、懐か
しく思い出します。
 
1.出た 出た 月が  まるい まるい まんまるい  盆のような月が
2.隠れた雲に   黒い 黒い 真っ黒い   墨のような 雲に
3.また出た 月が  まるい まるい まんまるい  盆のような 月が
 
といっても、しみじみと眺めた、詩情豊かなといった高尚なものではなく、つ
まらない遊びなのですが、なぜか、思い出すのです。
この歌詞を、逆さまから歌うだけの、ばかげた話ですが、これがおかしくって……。
 
1.たで たで がきつ  いるま いるま いるまんま  なうよのんぼ がきつ
2.たれくか にもく  いろく いろく いろっくま  なうよのみす にもく
 
みんなで、なぜだか、ゲラゲラ笑いながら、品悪く歌って、面白がっていたの
です。
「いーるま いーるま いるまんま」とか「いーろく いーろく いろっくま」
と声を張り上げて。
今、歌ってみても、笑っちゃいますね、ばかばかしくて(大笑い)
何しろ、戦後の何もない時代でしたから、こんなことでも楽しかったんですね。
この歌を聞くと、いつもお腹をすかしていた、あの頃を思い出します。
 
    (次回は、「秋の七草」などについてお話しましょう)
 

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