めぇでるコラム
さわやかお受験のススメ<小学校受験編>入試問題を分析する[7]記憶に関する問題
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「めぇでる教育研究所」発行
2018さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
(第39号)
新年長児のお子さまをお持ちの小学校受験をお考えの皆様を応援します!!
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★★入試問題を分析する★★
[7]記憶に関する問題
プロジェクターを使って、スクリーンに映し出された映像を何十秒か見て、
どれだけ覚えているかをみる問題です。映像は、イラスト、色、図形、位置
などがあります。
上映されている間、問題用紙は裏返しにし、本人には見えないようになって
います。問題がスクリーンに映っている間に、覚えなくてはならないのです
が、裏返しにされている答案用紙を、そっと見る子がいるそうです。そんな
暇はないのですが……。
こういった態度には、どんなチェックが入るのでしょうか。まさか、「カン
ニングの行為でマイナス5点!」などはないでしょう。ただ、不安なのです。
不安の種は、どうやら子どもの頭に浮かぶお母さんの顔のようです。
できないと、怒られるからなのでしょうか。
もし、そうだとすれば、こういったところに、普段の育児の姿勢である「満
点主義の教育ママ」の顔が、表われかねませんね。結果ばかりにこだわらな
いで、どうしてできないのだろうと、そのプロセスを考えてあげる賢いお母
さんになってほしいのです。
「私どもは、試験でさえもプロセスを大切に見極めています」
文言は正確ではありませんが、かつて、桐朋小学校の説明会で聞いた話です。
「プロセス重視」、これは家庭学習で忘れてはならない大切な心構えです。
◆絵の記憶
公園で動物たちが遊んでいる絵を20秒ぐらい見て、うさぎがいたところに
○、たぬきがいたところに×、りすがいたところに△をつける問題です。
スクリーンをボーッと見ていたら、
「動物が遊んでいたなぁ……!」
でおしまいですね。
◆色の記憶
四角や、三角、丸などの図形に、三色から多くても五色ぐらいの色を塗った
ものを見て、それと同じところに同じ色を塗る、同じ色のシールを貼るなど
の問題です。
「きれいだな!」
気持ちはわかりますが、感心している場合ではありません。
あっという間に終わります。
集中力です。
◆形の記憶
☆△□○といったように、形が並んでいるものを見た後に、下の中から同じ
ものを選んで印をつける問題です。
形は、難しいですね。
抽象的で、つかみどころがないからです。
◆ 位置の記憶
ます目の中に、動物や昆虫、花や果物、記号や図形がかかれているものを見
て、右側の解答用紙の同じ所に印をつけたり、おはじきを置いたり、シール
を貼って答える問題です。
動物や花などは、覚えやすいようですが、図形は抽象的だけに難しいのです。
◆音の記憶
例えば、太鼓が6回たたかれた音を聞き、その数だけ○を書くとか、テレビ
を使って、動物たちが順番に楽器を鳴らし、だれが、どの楽器であったか、
動物と楽器を線で結ぶ問題などがあります。
記憶の問題は、やった経験がなければ、ほとんどできないでしょう。
テストは、このように行われるからです。
(スクリーンには、動物たちが公園で遊ぶ様子が映されています)
★スクリーンを見てください。………………………(20秒経過)
「くまさんがいたところに○、うさぎさんのいたところには×をかきましょう」
「記憶の問題です」などといった説明もなく、スクリーンに問題が映り、し
ばらく沈黙が続きます。
「スクリーンを見てください」といっていますから、説明なしとは言えませ
んが、ボーッと見ていたら、それまでですね。人間の脳は、「覚えなさい!」
との明確な指示があって、初めて記憶する作業が始まりますから、これは、
心構えが必要です。
登場する動物も多く、公園の様子も複雑な問題がありましたね。
子どもは、どのようにして覚えるのでしょうか。
大人は、「ブランコにくまがいて、滑り台にパンダが、砂場にはうさぎが……」
と理詰めに記憶しようとしますから、これでは覚えきれません。
ところが、子どもは、全体をパシッと頭に収めてしまうそうです。
カメラを考えれば、いいようです。
全体を、頭に写し撮ってしまうらしいのです。
子どもの頭は柔軟ですから、記憶できるそうです。
子どもの記憶力には、驚かされることがあります。
電車の好きな子が、東海道線の全部の駅の名前を覚えた話など聞きませんか。
車博士から鉄道博士、昆虫博士と、よくぞ覚えたものだと感心させられます。
そういえば、3年間分のカレンダーを覚えている年長の子に会ったことがあり
ました。
「平成〇○年の12月31日は、何曜日?」
「水曜日!」
なぜか、去年と今年と来年分の3年間なのです。話を聞いてみると、お父さん
のもらってきた手帳が、余ったのでもらったそうです。そのカレンダーを見て
いて覚えたらしいのです。前後3年間というのも面白いですが、どの年の、月
日と曜日を尋ねても、ピタリと当たるものですから不気味でしたね。どうなっ
ているのでしょうか、子どもの頭は。
しかし、記憶の範囲は前後3年間であることから仕組みがわかりました。来年
の12月31日は水曜日と当てるのですが、再来年の1月1日は、何曜日かが
わからないのです。次の日、翌日のことです。素晴らしい記憶力には感心しま
したが、単に覚えているだけでは、余り役に立たないということです。
こういった問題があるからといって、問題集を買い、ひたすら繰り返し訓練す
るのは、考えものです。第一、面白くありません。20秒ぐらい絵を見せられ
て、サッと隠して、
「今、何がありましたか!」
「こんなことして、何になるの、お母さん?」
こういわれて説得できなければ、やっている親の立場がなくなりますね。
お気に入りの絵本の、1ページに描かれている情景をいわせてみると、驚くほ
ど細部にわたり記憶しているものです。こういったものを利用しながら、記憶
するという意識を刺激してみましょう。
トランプを使った「神経衰弱」なども、絶好の教材となります。
こういったステップを十分に踏み、それから問題集を利用すれば、お子さんも
やる気十分に挑戦するはずです。問題意識が芽生えないと、興味を示しません
から、意欲もわきません。
記憶は、本当に気ままなものです。
自分の好きなことは覚えますが、嫌いとなると、もういけません。
やはり、出発点は好奇心ですね。
そこから、注意力や集中力が働いて、記憶するのでしょう。
普段から、注意力の散漫な子は、やはり、覚えるのも苦手ではないでしょうか。
身辺の整理ができない、おもちゃ箱が乱雑な子も、どうでしょうか。
過保護、過干渉な育児も駄目でしょうね。
何でも自分でやらなければ、段取りがわかりません。
段取りは、前にやった時の経験が生きてきます。
経験は記憶されますから、自分でやることが大切です。
記憶力も試行錯誤の繰り返しで身につくもので、子どもの生活体験と深い関わ
りがあります。
自発性にとみ、自立心の身についている子の記憶力は、すぐれているはずです。
それは、いろいろなことに自力で挑戦しているからです。
小学校側も、単に記憶する能力をみているのではないでしょう。
五感を刺激されていれば、記憶力もつきます。
このことです。
ですから、机の上で、問題集だけで覚えた知識は、あまり役に立ちません。
単に、大脳神経の回路を刺激して記憶するだけですから、忘れやすいのです。
しかし、頭と体が一体となって覚えたものは、忘れません。
それは、知識ではなく知恵だからです。
身についた知恵の主語は、自分自身です。
詰め込まれた知識の主語は、多くの場合、第三者やお母さん、お父さんではな
いでしょうか。
記憶力を培うのは、五感に刺激を与える環境だと思います。
お子さんが、夢中になって取り組む遊びはありますか。
好奇心の旺盛な子は、やはり、記憶力も順調に発達しているといえるのではな
いでしょうか。
(次回は、「構成力・観察力 1」についてお話しましょう)