めぇでるコラム
2026さわやかお受験のススメ<保護者編>第1章(1)情操教育、難しく考える必要はありません-本を読んであげてください〔1〕
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「めぇでる教育研究所」発行
2026さわやかお受験のススメ<保護者編>
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第3号-
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第1章 (1) 情操教育、難しく考える必要はありません
- 本を読んであげてください 〔1〕 -
本を読んであげる、話の読み聞かせは、とても大切です。
安易に、テレビやDVD、スマートフォンで動画などに、子守をさせてはいけないと思います。確かに、このような教具は、映像と語りだけではなく、臨場感を盛り上げる音楽や効果音を駆使して、瞬く間に、たくさんの情報を与えてくれます。
これほど便利なものはありませんが、送信する側と受信する者は一方通行ですから、疑問を感じても質問できないといった不便な点もあります。
わからないままに、話はどんどん進みますから、疑問を残したままになり、消化不良を起こしがちではないでしょうか。しかも、伝える側に感情はありません、このことです……。
幼児には、お父さんやお母さんの生の声が何よりです。5歳頃になると、絵が主役だった絵本から、字の多くなったものに変わり、話も筋道を立てて進む物語になっていると思います。
ところで、本を読んでもらっている時の子どもの頭は、どうなっているのでしょうか。絵を見ながら読んでもらっていますから、お母さんの読んでくれる言葉を、絵に置き換えるといいますか、映像化する作業がリアルタイムで行われ、絵本や図鑑、テレビや実際に見た映像が、浮かんでいるのではないかと思います。
聞いたことのない言葉が出てくると、声がかかります。
「お母さん、オニタイジって、どういうこと?」
そこで、お母さんは、お子さんのわかる言葉に置き換えて説明をします。お子さんは、その意味を確かめ、納得し、新しい言葉を覚え、少しずつですが、確実に語彙が増えていきます。
そして一人になると、まだ、字を読めないはずですが、何やらブツブツいいながら、絵本を見ています。あれは、本当に不思議ですね。おそらく、読んでもらった本がおもしろかったので、お父さんやお母さんの言葉を思い出しながら、確かめているのだと思います。絵を見ながら、その状況を記憶した言葉をもとに映像を描き、イメージ化しているのではないでしょうか。
つまり、「言葉で考え、想像」しているのです。これは、すごいことだと思います。
それが証拠に子どもは、同じ本を、それこそ何回も何回も、飽きもせずに読んでくれとせがみます。それも、読んであげている途中に、
「お母さん、ありがとう、そこまででいいです。」
といったことが、しばしば起こりがちです。
読んでもらったところを忘れてしまったのか、思い出せないのかわかりませんが、話が先に進まなくなってしまったのでしょう。
イメージ化の中断です。
読んでもらい話がつながったので、そこまででいいのでしょう、後は覚えていますから。あれは、話を一所懸命に覚えようとしているのに違いありません。覚えようとする力、「記憶力」がつきます。
さらに、繰り返し読んでもらうことで、頭に描かれた映像は、より鮮明に具体的になり、そこから、独自の「想像力や空想力」が培われてきます。
ところで、昔話を何か思い出してください。
子どもの読む話は、「起承結」で成り立っています。「起承転結」の「転」はなく、話は複雑になっていないはずです。「起承転結」は、漢詩を組み立てる形式の一つで、転じて、「ものごとの順序・作法を表す言葉」ですが、わかりやすい例えがありますので紹介しましょう。
江戸時代後期の儒学者・詩人・歴史家であった頼山陽が作った「京都西陣帯屋の娘」です。
京都西陣帯屋の娘 (起)
姉は十八、妹は十六 (承)
諸国の大名は刀で殺す (転)
姉妹二人は目もとで殺す (結)
「ショコクノダイミョウって、なあに?」
余計なものが入ってくると、イメージ化する作業が複雑になります。帯屋の娘の話は、帯屋の娘で終わらないと、子どもは安心できません。ですから、鬼退治をした桃太郎が、ついでに海賊をやっつけることもなく、すんなりと終わって、「めでたし、めでたし」が昔話に欠かせない決まりです。
さらに、物語は、「序破急(初め・中・終わり」と快適なテンポで進みます。
浦島太郎が、竜宮城で過ごした時間が何十年であっても、何らさしつかえありません。話は、快く聞けるように仕組まれています。
しかも物語は、簡潔明瞭に展開しますから、話の世界へ引き込まれていきます。そこから、話を理解する力、「理解力」が培われてきます。
そして、何とも素晴らしいのは、自然と話に引き込んでいく、あの約束事でしょう。
イントロダクション、導入部などの言葉が、白々しくなるほど決まっています。「むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが、住んでいました」で始まりますが、これが、実に重大な役目を果たしているではありませんか!などと興奮することもありませんが(笑)。
「むかし、むかし」は「いつ」と時間の設定ですが、いつのことだかわかりません。
「あるところ」は「場所」ですが、どこだかわかりません。
「おじいさんとおばあさん」は「だれ」と大切な登場人物ですが、名前もありません。
みんなあいまいで、そのあいまいなままに「何を、なぜ、どのように」と話は展開していきます。
これも、考えてみると大変なことです。
時代はいつでも、場所はどこでも、名前がなくても、何ら不都合はありません。奈良時代だろうが平成時代であろうが、北海道だろうが、はたまた沖縄であろうが、みんな「むかし、むかし、あるところ……」で済ませてしまいます。時代考証も、場所の設定も、人物の履歴も、何も必要ありません。
ですから、子どもたちは、何ら抵抗なく、心安らかに、期待に胸を躍らせながら、話の世界へ入っていけるのです。しかも、没我の世界です。
これを、几帳面に、「江戸時代の元禄十二年、大晦日を迎える二日前の朝、上総の国、蒲郷郡、大字蒲郷、字大和村の一本杉の側に、山之上太郎左エ門という名の爺さまとお熊という名の婆さまが住んでいました」では、聞いてみようかなとはならないでしょう。
「お母さん、もう眠いから……」、こうなるのに違いありません。
読むお母さん方も疲れてしまいますね。
ところで、昔話は、
いつ(when)
どこで(where)
だれが(who)
何を(what)
なぜ(why)
どのように(how)
と文章を書くときの基本である[5W1H]から成り立っていますが、新聞記事やテレビのニュースなどを瞬時に理解できるのは、この原則に従っているからです。
ということは、昔話を聞きながら、[5W1H]を小さい時から学んでいることになります。これは、すごい知恵ではないでしょうか。
もちろん、子どもたちは「いつ・どこで・だれが」などと意識して聞いているわけではないでしょうが、話は理路整然とセオリーどおりに進んでいきますから、繰り返し話を読んでもらい、話を覚え、絵本を見ながら言葉で表現することで、物事を筋道立てて考える訓練にもなっているのです。物事を組み立てる、考える力、「構成力や思考力」が自ずと身につきます。
そして、子どもは話を覚えると話したがります。
それには、自分自身が、話をよく理解していなければできませんから、そのための訓練が自発的に始まります。話の流れをきちんと記憶し、組み立て、味わい、自分の言葉で話す訓練です。それが「表現力」につながります。
こんなに大切な能力開発を自ら積極的に挑戦しているにもかかわらず、
「パパ、『ももたろう』の話、知っている?」
「ああ、知っているよ。猿と犬と雉の家来を連れて、鬼退治に行く話だろう」
と無造作に応じてしまうと、折角、積んできたトレーニングの成果を試すこともできません。
「今までの努力は、何だったのだ!」
とは思わないでしょうが、悔しい思いをさせているのではないでしょうか。
子どもは覚えた話を、話したいのです、聞いてもらいたいのです。
「うん、パパも子どもの頃はよく知っていたけど、どういう話だったかな?」
と、やさしく受けてあげましょう。
お子さんは、一所懸命に話すはずです。
そして話し終えたときに一言、「よく覚えたな、えらいぞ!」と、褒めてあげましょう。褒められて不愉快になるはずはありませんから、さらに、話を覚えようとします。
そこから、「物事に取り組む意欲」が芽生えます。
意欲は、新しい能力を開発する起爆剤です。
しかも、「覚えなさい!」といわれて覚えたものではなく、「話してみなさい!」といわれて訓練したものでもありません。強制されずに、自発的に、楽しみながら積極的に挑戦し、能力を開発しているのですから、その効果は一石二鳥どころではなく、計り知れないものがあります。
このように話の読み聞かせは、
「語彙を増やす」だけではなく、
「イメージをふくらませる空想力や想像力」
「話を聞く力」
「構成力や思考力」
「言葉での表現力」
「物事に取り組む意欲」
といった能力などの開発に、とてつもない大きな影響を与えているのです。
しかも、これだけではありません。
続きは次回お話ししましょう。
(次回は、「本を読んであげてください 2」
についてお話しましょう)
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行事と昔話 情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本紀元
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