めぇでるコラム

2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第12章 日本の神様でしょう 神無月(1)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第44号-
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第12章 日本の神様でしょう  神 無 月(1)
 
                              
神無月(かんなづき)は「かみなしづき」とも「かみなづき」ともいわれていますが、そのいわれは、この月には、全国の神さまが出雲大社に集まり、男女の縁結びの相談をすることから、神さまが留守になる「神無い月」というのがわかりやすいですね。反対に、出雲地方では「神在月」となります。
これにも異説があり、「神嘗月(かんなめづき)」「神祭月(かみまつりづき)」という説、おもしろいのには、10月は雷がならなくなるから「雷なし月」というのもあるようです。
 
 
★★神無月、風流です (1)★★ 
 
何だか、おかしなテーマです。
神無月といえば、昔の十月の呼び名ではありませんか。睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、そして師匠も忙しく走る師走ですが、何やら情緒があります。弥生賞、皐月賞というと、競馬の好きな方には、おなじみでしょう。今まで紹介してきましたように、どの月も季節感があります。詩情豊かで、こたえられません。1月、2月、3月よりも、睦月、如月、弥生といった方が、何やら、雅やかな感じがしないでしょうか。
 
その一つの神無月。
 
先程もお話しましたが、読んで字のごとく「神さまのいない月」です。とにかく、日本人ほど、神さまの好きな民族は、いないのではないでしょうか。「八百万の神」といって、何しろ八百万人、いや、神さまは人ではありませんから、八百万の神さまです。「やおよろずの神」と読みますが、八百万の神さまがいるわけではなく、たくさんいらっしゃるという意味でしょう。それにしても豪勢ではありませんか。
 
若いお父さんやお母さん方には、あまり縁がないかもしれませんが、一軒の家の中にもいろいろな神さまが住んでいらっしゃったのです。「いらっしゃった」と過去形になっているのは、最近では、神社にしか神さまはいないと思われているからです。
                                
門には門神さま、家を守ってくれる家神さま、福の神と貧乏神がいらっしゃったそうです。
台所に入ると、ガス、水道、電気のない時代ですから、あちらこちらに神さまがいらっしゃって、火の神さま、水の神さま、かまどの神さま、井戸の神さま、納戸の神さま、便所の神さまが、庭に出れば木の神さま、石の神さま、草の神さま、花の神さま、外には山の神さま、川の神さま、森の神さま、まだいらっしゃいます、日の神さま、雲の神さま、風の神さま、雨の神さま、仏教でいうところの「山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」をまねると、こんな言葉はないでしょうが、「神が宿る」と解釈して、「山川草木悉皆宿神」でどうでしょうか。(悉皆“しっかい” ことごとく)
とにかく、どこにでも神さまがいらっしゃったわけです。人の集落がある所には、必ず、その土地を守る鎮守さまがあって、人々の生活と密接な関係をもっていました。いろいろと取り上げてきた年中行事にも、こういった神さまが顔を出し、大いに楽しませてくれます。四季折々の大きな祭りから村祭りや、家ごとの祭りまで、主人公は、こういった神さま達です。ある時期まで、日本は農耕社会でした。頼りは、自然ですから、神頼みにならざるをえません。できるだけ災害が起きないように、そして、秋には豊作を願い、神さまにお祈りをしたのも当然なのです。
 
仏教が盛んになった奈良時代に、日本の八百万の神さまは、菩薩さまを始め様々な仏さまが化身して、日本の地に現れたものだと考えた本地垂迹説を唱え、神さまと仏さまを一緒にお祀りしたこともあるのですから、元来争いごとは大嫌いなんですね。仏教興隆に力をつくした聖徳太子の「和を以って貴しと為す」は、神仏の世界まで浸透しているのですから、すごい話ではありませんか。
 
そして、日本の神さまは、他の国の神さまとは違います。昔の神さまは、いってみれば人間と同居していたのです。ですから、願い事は、すごく現実的で、日々の生活に密着していました。しかし、今の神さまは、怒っています。何しろ、困った時だけの神頼みですから。正月にしか顔を見せない人が、多いのではないでしょうか。安いお賽銭で、厚かましく、いろいろと祈願しても、それは無理というものです。(笑)
 
神無月は、その神さま、八百万の神さまが、島根県の出雲大社にお集まりになる月で、盆暮れの民族大移動の比ではありません。何しろ、八百万の神さまですから、スケールが違います。
「神迎祭(かみむかえさい)」といい、集合日は旧暦の10月11日。場所は稲佐浜(いなさのはま)、八百万の神さまは、竜蛇神(りゅうじゃしん)に導かれ、海からお集まりになりまして、出雲大社へ向かわれます。滞在期間は、17日までの7日間。神々のお宿は、境内の東西に並ぶ「十九社」、何とも素朴な建物です。
 
本殿では、11日、15日、17日に「神在り祭(かみありさい)」が行われます。本殿の高さは24メートル、大社造といわれ、わが国、最古の神社建築様式で、神話でおなじみの「だいこくさま」と呼ばれている「大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)」が祀られています。
境内には、古代本殿の跡が発掘されており、何と柱の高さが8メートルもあり、復元図を見ると、古の人々、平安時代の高度な建築技術に、たまげましたね。
驚くついでにもう一つ、拝礼を行う「拝殿」には、長さ7メートル、胴回り4メートル、重さ1.5トンのしめ縄が、デーンと飾ってあります。このしめ縄ですが、普通の神社で飾る向きと逆になっています。(これを覚えておいてください)
 
話題の中心は、何といっても自然災害回避、生産性向上、五穀豊穣、家内安全です。
 
たとえば、雨の神さまには、「えこひいきせずに全国に万遍なく雨を降らせなさい」とか、風の神さまには、「稲が花を咲かせ実をつけるころには、情緒不安定にならないように配慮してほしい」とか、雲の神さまには、「日輪の神さまと仲良くしてほしい」とか、「下野の国の何々村は、信心深いので豊作になるよう心してほしい」などと話し合うのでしょう。
 
次に、何といっても神さまの大切なお仕事は縁結びです。
 
こういうところが好きですね。子孫を残さないと神さまの存在意義がなくなり、寂しいからだと推察します。いろいろな神さまが、適齢期の男女の情報を交換し合い、これがよかろうと縁組を決め、次々と赤いひもを結んでいく、これが「赤い糸」の伝説です。
 
今はキリストの前で、愛を誓う方が多いように感じますが、昔は何といっても神前結婚でした。神さまに、添い遂げることを誓ったのでした。成田離婚(新婚旅行から成田空港へ戻ってきた途端離婚する状態をたとえて表したもの)などという言葉もかつて言われていましたが、赤い糸も頼りなくなり、神さまも首を傾げているのではないでしょうか。何といっても情報過多社会です。もしかしたら、神さま方も混乱しているのではないでしょうか。そういえば、すっかり酔っ払ってしまった神さまが、変な糸の結び方をしてもつれてしまい、三角関係を作ってしまった落語があったと記憶しています。
 
誠に僭越な話ではありますが、普段、神さまは、どうやらお眠りになっていらっしゃるのではないかと思える節があるのです。
 
神前で何かが始まるとき、必ず、大太鼓をドンドンと打ち鳴らし、神主さんも「ゥ…………」と、これまた大音声を発します。仏さまも、鐘や木魚の音がお好きのようです。日本の神さまだけではありません。教会でも、ミサの始まる前に、パイプオルガンをガンガン奏(かな)で、いや、荘厳に演奏し、賛美歌を歌います。いずれも、神さまにお目覚め頂くための儀式ではないかと思えてなりません。
 
ところで、出雲の人々は、逆に「神在月(かみありづき)」ですから大変です。
何しろ八百万の神さまです。この間は、音曲、歌舞のたぐいは、一切禁止。神さまの会議が無事終了するまで、ひたすら静かにひっそりと暮らします。神さまの中には、酔っ払って人に迷惑をかけるお方もいるかもしれません。何しろ日本の神さまは、お酒の上での問題には、実にご寛容です。その証拠に、神事にはお酒を欠かせませんし、神棚にはお神酒を差し上げます。
 
ですから、民話や昔話には、実に傑作な神さまがいらっしゃいます。どう考えても神棚から見下ろしている感じがしません。どこから、こういった発想が出てくるのかと、しみじみ考えさせられる話が、たくさん残っています。夢があるのです。そうです、夢があるんですね。
 
夢や希望をもたせる、これも神さまの大切なお仕事です。
 
そして25日(原文のまま)は、神さまが出雲を去っていく日で、この日を神去日(かんさらび)といい、その夜は明るいうちから戸を閉め、外の便所にもゆかなかったとか。その頃から吹き始める季節風、西南西(あなじ)が、あたかも神さまが道路を駆け去って行く風の音と考えられ、恐ろしさに震えていたそうです。
 (「菜の花の沖 2」P242 司馬遼太郎 著 文春文庫 刊より要約)
 
朝の散歩に出かけると、秋の気配を感じるようになりました。今年はまだ赤とんぼは見ていませんが、コスモスの仲間は咲きはじめました。
 
 
 (次回は、神無月、風流です(2)についてお話しましょう)

 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
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