めぇでるコラム
2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第9章(1)七夕祭りでしょう 文月
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「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第32号-
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第9章(1) 七夕祭りでしょう 文 月
物の本によると、文月(ふみづき)のいわれは、七夕の短冊に、字がうまくなるようにと書いてお願いをすることから文月になった、といわれているようですが、七夕は、日本で始まったものではなく、中国から伝わってきた行事ですから、これはおかしいとして、稲の「穂含月(ほふみづき)」「含月」からとする説もあるそうです。
★★何といっても七夕祭り★★
7月といえば、何といっても七夕祭りでしょう。
たなばたさま
作詞 林 柳波 作曲 下総 皖一
一、笹の葉さらさら 二、五色の短冊
軒端にゆれる 私が書いた
お星さまきらきら お星さまきらきら
金銀砂子 空から見てる
何とものどかで、暑さも吹き飛び、夜空が浮かんできますね。
しかし、今はどうでしょうか。都会では、天の川も、逢瀬を楽しむ彦星も織姫星も、よく見えません。
明かりのせいでしょう。プラネタリウムで見ると、あまりに鮮やかすぎて、イメージが壊れそうですね。七夕は、古来、多くの人々に夢を与え続けた祭りの一つです。万葉集の中にも、星祭りとして七夕を詠んだ歌が残されています。
かの、紀貫之も一首、『新古今和歌集』に詠んでいます。
七夕は 今や別るる 天の川 川霧立ちて 千鳥鳴くなり
「川霧立ちて 千鳥鳴くなり」、千鳥が鳴くのを、別れを惜しむ織姫の忍び泣きと詠ったものでしょう。しかし、紀貫之が生きていた時代の田園風景を再現するのは無理でしょうが、残された和歌の世界で味わえるのは、やはり素晴らしいことで、大切な文化遺産です。
「幾星霜」とはいささか大げさですが、年月を刻んで受け継がれてきた文化は、遺伝子として心の中に組み込まれているようで、日本人には和歌や俳句を作ることもその一つではないでしょうか。
小学生になると、特に教えなくても、「五七五」の俳句を作るのですから。
さて、その七夕ですが、ご家庭で、短冊に願いごとを書いて、笹に飾り、お祝いをしているでしょうか。
30号で紹介しました「季節のことば36選」でも、七夕祭りは選ばれていませんでしたし、幼稚園や保育園、小学校での夏のイベントになってしまったようです。それはさておき、七夕祭りの事の起こりは、中国の星の伝説でおなじみの「織姫と彦星」の話です。
★★七夕のルーツ★★
中国の歳時記に、こういう話が残されているそうです。
天の川の東に織女が住んでいた。天帝の子である。いつも機織りをして、鮮やかな天衣を織りなした。天帝が独身であるのをかわいそうに思って、天の川の西に住んでいる彦星と結婚することを許した。しかし結婚した後は、機織りをしないので、天帝は怒って二人を別れさせ、天の川の西と東に帰らせた。ただ7月7日の夜だけ、川を渡って逢うことを許したのである。日本で最もよく知られた七夕の星の物語である。おりひめとひこぼしが愛し合っていながら一年に一度しか会えないという物語が日本人の共感を呼んで、万葉集の時代から「星祭」として、七夕にさまざまな思いを馳せたのである。
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P134-124)
天衣は、“あまごろも”、羽衣(はごろも)のことで、日本でもおなじみの天女の証(あかし)です。
「天衣無縫」という四字熟語がありますが、これは、「物事に技巧などの形跡がなく自然なさまをいい、天人・天女の衣には縫い目がまったくないことから、文章や詩歌がわざとらしくなく、自然に作られていて巧みなこと。また、人柄に飾り気がなく、純真で無邪気なさまをいう」(goo辞書より)意味に用いられていますが、語源は「天衣」なんですね。ちなみに英語では、“To be natural and flawless”「自然で完璧」(「故事ことわざ辞典」より)だそうで、類似語は、今でもよく使われている「天真爛漫」です。
ところで、七夕の2つの星、彦星と織姫星は、どんな星でしょうか。
彦星、牽牛星は、鷲座の1等星アルタイルのことで、地球から17光年の彼方にあり、太陽の約10倍の明るさがあります。1光年は、9兆4605億キロで、その17倍です。本当にはるか、はるか、かなたです。アルタイル星の両側にある2つの星を牛に見立てて「牽牛」と名付けたのです。
面白いことに、あの清少納言も「枕草子」に書いています。
星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ。よばいぼし、すこしおかし。
おだになからましかば、まいて」
(第二百三十九段 角川文庫 下巻 角川書店 刊)
「すばる」は、牡牛座にある星団プレアデスの和名、「ひこぼし」は、牽牛です。「ゆふづつ」は、日没後、すぐに西の空に輝く、宵の明星、金星で、「よばいぼし」は、流れ星のことです。「尾がなければよいのですが」ということでしょうが、尾は流れ星が大気圏に突入して、燃えつきる現象です。さすがの才媛も、まだ、ご存知なかったことでしょうね。
織姫、織女星は、琴座の1等星ベガのことで、地球から25光年離れ、明るさも太陽の40倍以上もある北天第一の星ですが、もう想像外の明るさと距離です。ベガと天の川をはさんだアルタイル星が、天の川の中にある白鳥座のデネブ星とで作るのが、夏の大三角形です。小学校時代に、理科で習ったと思いますが、覚えていますでしょうか。
この2つの星が、7月7日に際立って、美しく輝きます。それを見た昔の人が、天の川にさえぎられているために、1年に1回しか会えない、恋人の話に仕立てたのでしょう。作者は、何ともロマンチストではありませんか。中国生まれの伝説らしく、スケールが大きいですね。
ところで、天の川は、中国や日本の専売特許ではありません。昔から世界中の人々の注目を集めていました。
エジプトでは天のナイル川、インドでは天のガンジス川、中国では銀色の川で銀河と呼びます。ところが、ヨーロッパでは川ではなく道にたとえられ「乳の道(ミルキーウェイ)」と呼ばれています。これはギリシャ神話で、力持ちのヘラクルスが赤ちゃんのとき、お母さんのおっぱいを力強く吸ったため、こぼれてできたといわれているからです。
(心を育てる子ども歳時記12か月 監修 橋本裕之 講談社 刊 P65)
★★なぜ、短冊にお願いごとを書くのでしょう★★
こういうことらしいのです。
中国には「乞巧奠」(きこうでん)といって、星祭りの他に、七夕には、大変、重要な行事があり、こう書いてあるそうです。
「7月7日は牽牛と織女が相会する夜だ。夫人たちは7本の針に5色の糸を通し、庭にむしろをしいて机を出し、酒、肴、果物、菓子を並べて織物が上手になることを祈った」
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P132)
これが、そもそもの始まりらしいのです。
牽牛は、牛飼いで畑仕事をし、織女は、機織りです。そこで、男の人は畑仕事が、女の人は機織りや縫い物が上手にできますようにと、お祈りをするようになったのでしょう。それが、時とともに、織物の切れ端を短冊のように切って、笹の葉につけ、歌にあるように「軒端」に出すようになり、それが、今のように布から紙に変わり、笹竹は長い竹となり、お願いごとも、裁縫や字が上手になることよりも、ピアノが上手く弾けるようになど、願望成就希望達成型に変身したようです。
ところで、なぜ、笹竹なのでしょうか。
笹竹は、日本独自の祭り方で、竹は1日に1メートル伸びるといわれるほど成長が早く、人々は、その秘められたすばらしいエネルギーに願いを托し、天に届くようにと気持ちをこめたのです。
(絵本百科 ぎょうじのゆらい 講談社 刊 P21)
祈るだけではなく、強烈なエネルギーまで取り込んでいるんですね、恐れ入りました。
梅雨に入ります。気温、湿度ともに高くなりますので、体調にはくれぐれも気をつけてください。
(次回は「なぜ、仙台の七夕は、8月なのですか」他についてお話ししましょう)
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