めぇでるコラム

2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第5章(4) 雛祭りとお彼岸ですね

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第19号-
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第5章(4) 雛祭りとお彼岸ですね
 
【三月に読んであげたい本】 
 
◆たまごから生まれた女の子◆(長崎県の話)
 
 むかし、ある所に、金持ちの夫婦がいましたが、子どもに恵まれません。奥さんは、子どもを授かるように神さまに願をかけていました。
 ある日のこと、家の前に手まりほどのたまごが50個、置かれていました。
 神さまのお恵みと喜び、たまごをかえそうという奥さんに、主人は反対するので、いきさつを紙に書き、川へ流したのです。それを貧しい漁師の夫婦が拾い、書付を読み、たまごをかえすことになりました。やがて、たまごから赤ちゃんが生まれ、夫婦は50人もの子持ちとなったのです。そして10年たち、50人の子どもは元気に育ちますが、働きすぎたお父さんは病気でなくなります。そこで、子ども達はお母さんから川上から流れてきた話を聞き、もう一人の母さんを訪ね、会うことができたのです。50人の娘に囲まれ幸せでしたが、育ててくれた川下のお母さんの恩を忘れられず、娘達は、川下と川上の二人のお母さんが亡くなるまで、親孝行をしたのでした。
 この話は、村々へと伝えられ、女の子が生まれた家では、この娘達にあやかろうと、たくさんの人形を飾り、よもぎとお米を供え、祝うようになったのです。三月三日のひな祭りの始まりを伝える話となっています。    
          日づけのあるお話 365日
             3月のむかし話 谷 真介 編著 金の星社 刊    
 
たまごから50人の娘が生まれるのも不可思議な話ですが、「つぶの長者」のように、たにしに変身した若者が登場するおとぎ話の世界ですから、理屈は抜きです。
 
 
 
◆ももの花酒◆   常光 徹 著
 
 むかし、長者の家に、器量がよく、気だてのやさしい、一人娘がいました。
 ある晩のこと、訪ねてきた若者と仲良くなり、親も喜んでいたのですが、不思議なことに、若者は、日が暮れると姿を現し、明け方になると音も立てずに帰ってしまい、どこに住んでいるのかわかりません。変だと思い始めた頃、娘の顔が青白くなり、やせほそってきました。心配したお母さんは、糸を通した針を娘に渡し、若者が寝ている間に、この糸を着物につけておくようにいったのです。その夜のことでした。寝ていた若者の着物のすそに針をさすと、若者は大声をあげてとび起き、何やら叫びながら暗やみの中を走り去っていったのです。翌日、お母さんが、若者に付けた糸をたどって行くと、山奥の大蛇が棲むといわれている淵に、吸い込まれるように入っているではありませんか。すると、淵の底から、うなり声がするのです。お母さんが聞き耳を立てると、娘は蛇の子をみごもっているというのです。驚いたお母さんでしたが、この災難から逃れる方法を、大蛇の親子の話から聞き出し、見事に解決します。その方法とは、不気味な話ですが、三月の節句に、ももの花酒を飲むいわれが語られています。              
      おはなし12ケ月 三月のおはなし
          「かえるとぼたもち」 松谷みよ子/吉沢和夫 監修
                    日本民話の会・編 国土社 刊 
 
ももの花酒に代わり白酒を飲み始めたのは江戸時代頃だからだそうですから、この話はそれ以前から伝えられてきた話であることがわかります。
 
恐い話ですが、この種の話は、よく聞きます。日照りが続き、農作物が駄目になってしまうことを心配したお百姓さんが、「雨を降らせてくれたら、娘を嫁にやってもいい」とつぶやいたのを、やはり蛇が聞いてしまい、雨を降らせ、娘を嫁にもらう話も、主人公は、蛇。その蛇を退治する方法は、針とひょうたん。
 
妖怪蛇、蛇のたたり、蛇の執念など、蛇ほど悪者扱いされるのも珍しいですね。
聖書でも禁断の木の実を食べるようにそそのかし、その罰として神さまから地をはって生きるように定められたのも蛇でした。しかし、蛇は水の神さまのお使いだそうで、干支(えと)にも堂々と選ばれていますが、見た感じからもなかなか親しむのは難しいですね。
 
古事記にも似たような話があります。
 
男の着物に針をさすのは同じですが、男の正体が神さまであるところが古事記らしく、糸がわずか三輪しか残っていなかったことから、神さまが宿るといわれた奈良の三輪山の命名の由来となっているそうです。三輪山に登り、そこにいた蛇とにらめっこをした怖い話が、黒岩重吾の「古代史の旅」(講談社刊)に出ていましたが、蛇は、まばたきをしないから余計に恐ろしいですね(笑)。
 
 
 
ところで、民話といえば柳田国男、柳田国男といえば「遠野物語」を忘れることはできません。面白い話があります。原作は文語体ですから読みづらいですが、口語体で書かれた小学生上級用のものは、楽しく読めます。
 
◆ふえふき三太とオイヌ◆
 
 むかし、遠野盆地の東にオイヌ(狼)の群れの棲む笛吹峠があり、その近くに住んでいた笛の上手な三太わらし(子どものこと)の話が伝わっています。
 三太は、父(とう)ちゃも亡くなり、後から来たまま母(かぁ)ちゃと暮らしていましたが、母ちゃは、三太につらくあたり、笛吹牧場の二才駒の守り役をさせて、オイヌに食われればいいと考えました。牧場に住むことになったある日のこと、のどにとげを引っかけたオイヌの子を助けたことから、オイヌ達が三太の周りに寄って来るようになったのです。三太は淋しくなると、父ちゃ譲りの横笛を吹き、心をまぎらせていましたが、オイヌ達が、その音色を聞くようになり、二才駒の守り役をしてくれるのでした。様子を見に来た母ちゃは、三太も二才駒も、オイヌ達と遊んでいるのにびっくり。腹を立てた母ちゃは、三太を焼き殺そうと、牧場に火をつけたのですが、オイヌ達は、火をくぐり、三太と二才駒を、気仙沼の竜神洞に通じるといわれる風穴の方へ導くのでした。炎に包まれ、逃げ回っていた母ちゃを見た三太は母ちゃも助けようとしました。オイヌ達も一緒になって、風穴へ誘い込み、底へと進んでいったのです。 そして、三太達は、二度と風穴から出て来なかったのですが、時折、風にのって、笛の音が聞こえてくるという。そこで里の人達は、この峠を笛吹峠と呼ぶようになったのです。                
 この話には続きがあり、桃の節句に、気仙沼の竜神洞には、不思議な神楽人達が集まって、竜神神楽を奏でる伝えがあり、火事があった後には、笛の上手な若者が加わり、母ちゃと十頭の二才駒とオイヌ達の群れが、神楽人達を守るように控えていたそうです。
  「遠野物語」の国へ 平野直 著  つぼのひでお 絵 講談社 刊
 
柳田国男が民俗学の研究に生涯をかけたきっかけは、少年の日に、川べりの地蔵堂に奉納されていた、母親が赤ん坊を殺す様子を描いた絵馬を見た時の印象と、「その絵馬が何のために掲げられているか」に疑問を持ったときに始まると、本書の読書ガイドに黒沢浩教諭は指摘しています。原文を紹介しておきましょう。                            
 
 「国男には、ふと目にした絵馬から、かつて、恵まれない暮らしに苦しんでいた人々に思いがおよぶ誠実な心があったのです。国男が伝説や世間話に興味や関心を持ち、それを記録して発表したのは、名もない人々の間に、語り伝えられてきた話の中に、人々のさまざまな願いがこめられていることを、広く知らせたかったからではないでしょうか。」
 
「遠野物語」は広く知れ渡っていますが、案外、読まれていない方が多いのではないかと思います。原作を読むのはしんどいですが、小、中学生用に書かれたものがあり、これで十分に原作の雰囲気を味わえます。民話は、祖先が残してくれた貴重な文化遺産であることも忘れたくないものです。
 
笛の出てくる話で忘れられないのは、ロバート・ブラウニングの「ハメルンの笛吹き」でしょう。笛吹き男は、その音色でネズミを退治したにもかかわらず、正当な報酬をもらえなかったために、足をけがしていた一人を除き、町中の子ども達を笛の音色で誘い出し、姿を消してしまった恐ろしい話です。ドイツのハメルンで実際にあった事件で、その原因は何であったかわかっていないそうです。
 
 
 
ところで、狼は犬の祖先になるわけですが、アメリカの民話に、その経緯を描いた「草原の狼と高原の狼」があります。
                      
 食べ物のなくなった森に棲む二匹の狼が、インディアン部落を訪ね、親切なおじさんから食料を分けてもらいます。食料のありかを知った一匹の狼は、それを全部盗もうといい、もう一匹の狼はとめますが、聞く耳をもちません。
 狼は仲間を誘いに森に帰ります。インディアンに知らせれば友を失うことになり、悩んだ末に、おじさんに事の次第を話します。仲間と襲撃してきた狼を、インディアンは「この恩知らずめ!」と撃退します。「お前は、正しい心を持っているから、我々と一緒に暮らそう」ということで、食べ物の心配がなくなった草原の狼は犬となり、人間と暮らすようになったのでした。
 
動物の恩返し、心温まる触れ合いは、メルヘンの世界でしか経験できないだけに、子どもたちは新鮮な驚きを感じるようですね。
人間と動物のロマンを描いた作品は、間違いなく子どもの心を揺さぶります。
 
狼を主人公にした話で、椋鳩十の「丘の野犬」を紹介しましょう。
 
◆丘の野犬◆ 
 
 野生の狼が人間と親しくなり、家で飼われるようになったのですが、鶏が盗まれる事件が起き、村の人々はアカ(狼の名前)ではないかと疑い、毒の入った肉を食べさせ殺そうとします。利口なアカは、それを見抜き食べようとしません。
 アカを捕まえに来た役人は、主人が与えれば食べるだろうと考え、実行を迫ります。「食べないでおくれ!」と祈りながら毒の入った肉を与えます。一口食べたアカは、苦しそうに叫び、一目散に森の中へ駆け込んでしまったのでした。
 アカと知り合った森の丘で、意気消沈し、しょんぼりと過ごしていたある日のこと、そのアカが、突然、姿を現したのです。「アカ!」と叫ぶ主人公を、じっと見つめていたアカは、そのまま森の中へ姿を消し、二度と現れませんでした。しばらくたって、鶏を盗んだのは、町のならず者だったことがわかったのですが……。
            「野犬物語」 椋 鳩十 著 フォア文庫の会 刊
 
 
「母と子の20分間読書」を始め、読書の素晴らしさ、楽しさを普及する運動に力をつくした椋鳩十。
この「丘の野犬」のほかに、戦争で殺さなければならなかった飼い犬と子どもとの交流を描いた「マヤの一生」、子熊を助けようと滝つぼに飛び降りた母親の勇気を描いた「月の輪熊」、追っていた人間を助ける「片耳の大シカ」など、人間と動物のロマンを描いた作品があります。子どもにもわかるように読んであげましょう。
 
   (次回は、「花祭りでしょうね 卯月」についてお話しましょう)
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
 
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