めぇでるコラム
さわやかお受験のススメ<保護者編>第13章 七五三でしょうな 霜月(3)
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「めぇでる教育研究所」発行
2018さわやかお受験のススメ<保護者編>
~紀元じぃの子育て春秋~
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第49号-
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第13章 七五三でしょうな(3)
【11月に読んであげたい本 2 終わりにあたり】
学生時代に映画で見た記憶があります。迫真の姥捨ての世界を描いた深沢七郎
の「楢山節考」を、木下惠介がメガホンを取ったもので、捨てられるおばあさん、
おりん役を田中絹代、背負っていく息子は高橋貞二といっても50年ほど前の
話ですから、若い皆さん方には、何のことやらわからないかもしれませんが、
歌舞伎を見ているような導入部が印象に残った、怖い映画でした。映画は恐か
ったのですが、ここでは、殿様を諌める話になっています。
◆うばすて山◆ 吉村 輝夫 著
むかし、ある所に、年を取ったおっかあと息子が暮らしていました。その頃、
年寄は60歳になると山へ捨て、守らないと殺される掟があったのです。おっ
かあが60歳になったとき、山の奥までおぶって行ったのですが、捨てること
は出来ず、山を下り、家の裏に穴を掘って、隠したのです。
ある時、殿様が村の者に、「灰で縄を作ってこい」といってきました。灰は燃え
かすですから、縄などなえません。みんなが困っているのでおっかあに相談す
ると、「わらで縄をきつく縛って、塩水につけてから燃やしてごらん」というの
で、やってみると出来たのです。
すると今度は、「きれいに磨いた丸い棒を出して、どっちが根っこか調べてこい」
というのです。太さも堅さも同じですからわかりません。また、おっかあに相
談すると、「水に入れて、先の沈んだ方が根っこだ」と教わり解決します。
今度は、「玉に糸を通してこい」という。見ると、玉に糸の通る穴があいていま
すが、曲がっているので、糸など通るわけがありません。そこで、おっかあに
聞くと、「小さな蟻を捕まえて糸の先に縛り、穴の口に蜜を塗り、塗っていない
方の穴へ蟻を入れると、蟻は蜜の匂いに誘われ穴の中を進むはずだから、糸を
通せる」というのでした。やってみると、糸は通ったのです。
喜んだ殿様は、「こういった知恵は、どうして生まれたのか」と尋ねます。そこ
で、「60を過ぎたおっかあに教えてもらい、年寄は、何でもよく知っているも
のです」と、震えながら告白したのです。決まりを破っていますから死刑です。
しかし、殿様は感心し、掟を改めたのでした。息子は褒美をもらって家に帰り、
穴蔵からおっかあを出し、仲良く暮らしたのです。
寺村 輝夫のむかし話
日本むかしばなし 4 寺村 輝夫・文/ヒサ クニヒコ・絵
あかね書房 刊
これと、そっくりな話が、チベットにあります。「賢い大臣」です。中国の唐の
時代の話で、皇帝の1人娘をめぐり、7つの国の王子さまが結婚を争うのです
が、その知恵比べとして皇帝から出された問題が、この話に出てくる殿様の難
題と同じでした。灰で縄をなう代わりに、五百頭の親馬と子馬を放ち、それぞ
れ親子に分ける課題になっています。チベットの人は、馬の扱いになれている
からでしょう。その親子の分け方ですが、チベットの賢い大臣は、親馬におい
しい牧草をたっぷりと与え、それから子馬を放します。すると親馬は、子馬に
むかっていななきます。その声を聞いて、子馬は母馬のところへ、一頭も間違
わずに行くのです。後の二題は同じで、見事に解決し、お姫様はチベットへ嫁
ぐ話です。
何度もいいますけれど、こういう話に出会うと嬉しくなります。遠くチベット
から陸を旅し、海を渡り、何百年も時を費やし、日本に伝わってくるのですか
ら、これは大変なことです。このように、昔話が長く語り継がれるのは、時代
が変わっても、共感する心に変わりがないからでしょう。
この話の馬の親子の様子が目に浮かぶ童謡、「おうま」があります。
(1)おうまのおやこは なかよしこよし いつでもいっしょにポックポック
リあるく
(2)おうまのかあさん やさしいかあさん こうまをみながらポックリポッ
クリあるく
最近、知ったのですが、この歌の作曲者、松島彝(つね)は、国府台女子学院
の校歌の作曲者で、暁星学園、東洋英和女学院は、北原白秋、山田耕筰の大御
所コンビ、日出学園は、西条八十、山田耕筰、聖徳大学附属小学校は、サトウ
ハチローの作詞と、私学の校歌も、有名人の手がけたものがあり、うかつにも
見逃していました(苦笑)。
ところで、年寄が増える高齢化社会です。
老後こそ人様に迷惑をかけないで生きたいものです。核家族化が進み、老後の
世話を誰が見てくれるのかと、老人受難の時代と嘆いても、若者からみれば、
これだけ多くなった年寄りの面倒をみるのですから、若者受難の時代だといわ
ざるを得ないでしょう。頼りは親子の絆ですが、これは小さい時に決まるよう
な気がします。過剰な愛情からは、強い絆は生まれないのではないでしょうか。
アルツハイマーになったら、頼りは連れ合いです。何だか寂しい話ですが、現
代版、「姥捨て山」、あちこちで聞かれます。年取ってからの生き方にこそ、充
実感を持ちたいものだと思います。体の健康も大事ですが、心の健康も大切で
す。生きがいは、自分で作るものです。歳月で培われた知恵があるではないで
すかなどと、いきがることもありませんが(笑)。子どもの成長だけを生きがい
にするのは、子どもにとっても迷惑な話です。ましてや、「老後の面倒を子ども
に」と願うのは、年寄りのエゴではないかと考えます。「幼子に自立心を養え」
などと偉そうなことを言ってきましたが、年寄りこそ健康である限り、自立心
を強く持つべきではないでしょうか。ただし、若い皆様方には、「孝行のしたい
時分に親はなし」とならないようにお願いしておきましょう。
それはさておき、秋も深まってきました。紅葉狩りも、日本の風物詩に欠かせ
ない絶景の一つでしょう。♪秋の夕日に照る山もみじ♪ 童謡「もみじ」の世
界ですが、もみじという木があるわけではなく、カエデ科の木、ナラ、クヌギ
など赤や黄色に色づく落葉樹をもみじといい、「紅葉狩り」は「梨狩り」「きの
こ狩り」「潮干狩り」などと違い、木の枝や葉を取るのではなく、色づいた木の
葉を見て楽しむものですね。枝を折る不心得者もいますが、やめてほしいです
ね。
♪ちいさい秋 ちいさい秋 ちいさい秋 見つけた♪
私の住む川越市の郊外には、こういった秋の気配を楽しめる自然が残っていま
す。一幅の絵になるような、郊外でよく見かける素朴な晩秋の景色です。柿が
たわわに実り、桜の落ち葉からは、ほのかな匂いが漂う、そんな雑木林を散歩
できる幸せを、月並みな表現で恥ずかしい限りですが、噛みしめています。こ
こ数年、やってくるようになった鴨が、間もなく今年も近くを流れる不老川に
戻ってくるでしょう。どういう仕組みになっているのでしょうか、不思議です
ね。今年の春のことでしたが、その鴨親子に石を投げている子ども達がいて叱
りつけましたが、何と女の子でした。愕然としましたね。家庭での教育をしっ
かりとやらねばいけないと思うのは、年寄りの愚痴であればいいのですが。
ところで、近所の雑木林を散歩していたら、ポトンと何か落ちてくる音がした
ので探してみると、かなり大きな丸いどんぐりでした。風が吹くたびに、ポト
ン、ポトンと落ちて来るのでびっくりしましたね。その時に思い出したのは、
「どんぐりころころ」の歌でした。私は、「どんぐりころころ どんぐり子」だ
と思っていたのですが、進学教室の歌姫こと、まいちゃんが、「先生違うよ。♪
どんぐりころころ どんぶりこ♪ですよ」といって歌ってくれたことでした。
向田邦子さんもある随筆で、野口雨情の「赤い靴」の歌詞、「異人さんに連れら
れて」を「いい爺さんに連れられて」、土井晩翠の「荒城の月」の「めぐる盃」
を「ねむるさかづき」と覚えていたと読んだことがありますが、誤って覚えて
しまうことは結構あるようですね(笑)。
枯葉といえば、私たちの世代では、イブ・モンタン、ジュリエット・グレコの
歌ったシャンソン「枯葉」と、マイルス・デイビスの名演奏を忘れることはで
きません。シャンソンもモダンジャズも、どこかへ消えてしまったようでさみ
しい限りですが、夜中、ひそかにレコード盤へ針を下ろし聴いているファンも
いるのではないでしょうか。私もその一人です。モンタン、グレコの心にしみ
る歌声、デイビスのミュートをきかせたトランペットの音色と小粋なソロ(即興
演奏)も、静かな秋の夜が似合います。月を肴に人肌のかん酒で過ごすひと時、
晩秋は、人生をゆっくりと考えさせる自然の恵みかもしれません。
やはり、日本の四季は、素晴らしいですね。(感謝)
【最終回にあたり】
思い返せば、幼児教育ほど難しく、奥の深いものはないと痛感させられること
ばかりでした。むずかる子ども達を、巧みにあやしてしまうお母さん方や保育
園、幼稚園、幼児教室の先生方を見るにつけ、「これはかなわない」と何度も弱
気になったものでしたが、その度に心の支えとなったのは、この言葉でした。
心に火を点ける
凡庸な教師はただしゃべる。
少しましな教師は理解させようと説明する。
優れた教師は自らやってみせる。
本当に優れた教師は生徒の心に火を点ける。
ウィリアム・アーサー・ワード (19世紀のイギリスの教育学者)
おこがましくも、教師の代わりに「親」を、生徒の代わりに「子ども」と置き
換えると、「本当に優れた親は子どもの心に火を点ける」となりますが、親を4
0数年やって、「まさにその通りだな」とうなずかざるを得ません。私の好きな
響きのいい言葉に置き換えると、「わが子の心に火をともす」となりますが、こ
れこそ育児の究極の目的、ご両親の仕事ではないでしょうか。
本メールマガジンの情報の基礎となっている「年中行事を『科学』する」(産経
新聞社 刊)のまえがきで永田久先生は、「年中行事は民族を象徴する。年中行
事を知ることは民族の歩みを知ることである」と述べています。将来に目を向
けることも大切ですが、私達の祖先が、どのように歩んできたかを、日常生活
を通して知ることも、意義があると思います。なぜなら、年中行事やむかし話
には、幼い子ども達が、楽しく生きるために心の糧となるヒントが、たくさん
詰まっているからです。
思惑通りになったかどうかわかりませんが、お子さんの小さな心に、ささやか
な灯火を点火できればと願い挑戦してみました。若い皆様の育児の参考になれ
ば幸いです。最後まで拙文をお読みいただきまして有難うございました。
お子さんの健やかな成長を、心からお祈りすると共に、素敵なお父さん、お母
さんになっていただきたく、一遍の詩を紹介しましょう。ここ数年、雙葉小学
校の説明会で配布されているものです。「この詩のプリントと入学試験は関係あ
りません」と校長先生はおっしゃっていましたが、私には、とても難しいこと
でしたが……(苦笑)。
★親の祈り★
神さま
もっと よい私にしてください。
子どものいうことを よく聞いてやり
心の疑問に 親切に答え
子どもを よく理解する私にしてください。
理由なく 子どもの心を傷つけることのないように
お助けください。
子どもの失敗を 笑ったり 怒ったりせず
子どもの小さい間違いには目を閉じて
よいところを心から褒めてやり
伸ばしてやることができますように。
大人の判断や習慣で
子どもを しばることのないように
子どもが自分で判断し
自分で正しく行動していけるよう
導く智恵をお与えください。
感情的に叱るのではなく
正しく注意してやれますように。
道理にかなった希望は、できるかぎりかなえてやり
彼らのためにならないことは
やめさせることができますように。
どうぞ 意地悪な気持ちを取り去ってください。
不平を言わないように助けてください。
こちらが間違ったときには
きちんとあやまる勇気を与えてください。
いつも穏やかな広い心を お与えください。
子どもといっしょに成長させてください。
子どもが心から私を尊敬し慕うことができるよう
子どもの愛と信頼にふさわしいものとしてください。
子どもも私も 神さまによって生かされ
愛されることを知り
他の人々の祝福となることができますように。
平成29年10月吉日
めぇでる教育研究所
所長 藤本 紀元
お断り
本文中に紹介しました作家名を、現役の男性には氏、亡くなられた方は敬称を
略しました。女性には、清少納言を除き全てさんをつけましたが、呼び捨てす
る勇気がなかったからです(笑)。