めぇでるコラム
さわやかお受験のススメ<保護者編>★★第11章 お月見です 長 月(2)
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「めぇでる教育研究所」発行
2016さわやかお受験のススメ<保護者編>
~紀元じぃの子育て春秋~
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第41号-
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第11章 お月見です 長 月(2)
★★秋の七草★★
春の七草は、色彩的には黄色が多く、それに食べられるものばかりでした。
正月の7日に食べる七草粥には、春の七草が入っています。
今年1年間、息災で病気にならないようにと、払いの意味で食べたものですが、
正月にご馳走を食べすぎて、弱った内蔵をいたわる意味で食べたのでしょう。
これも昔の人の生活の知恵です。
秋の七草は、どうでしょうか。
萩(はぎ) 薄(すすき) 葛(くず) 撫子(なでしこ) 女郎花(おみなえし)
藤袴(ふじばかま) 桔梗(ききょう)をいいます。
見るとわかりますけれど、紫色が多くて観賞用です。
葛は、根は解熱剤として使われていますし、粉にした葛粉は食べられますが、
春の七草とは、大変な違いです。
万葉集八巻に、山上憶良の秋の七草を詠んだ歌があります。
この七種類の花を詠んだことから、秋の七草といわれるようになったのです。
秋の野に 咲きたる花を 指(おゆび)折り かき数ふれば 七草の花
芽子(はぎ)の花 尾花 葛花(くずばな) 瞿麦(なでしこ)の花
女郎花(おみなえし)また藤袴 朝貌(あさがお)が花
朝貌の花は、現在では桔梗のことです。
芽子といい瞿麦といい朝貌といい、昔の字は、秋の七草にしてはゴツゴツした
感じを受けませんか。
何だか花の名前の感じがしません。
今の方が、親しめます。
いや、もっと現実的な秋の七草があります。
昭和10年、菊池寛、高浜虚子などの文人や学者の推薦によって新聞社が選ん
だ「新秋の七草」があります。
菊、葉鶏頭(はげいとう)、秋桜(コスモス)、彼岸花、赤飯(あかまんま)、
白粉花(おしろいばな)、秋海棠(しゅうかいどう)、の七草です。
山上憶良と比べると、色彩豊かで華やかで、人手がかかっている感じがします。
平成にふさわしい「秋の七草」は、インターネットの投票によると、春の七草
でご紹介した左大臣四辻善成(平安時代)の真似をするとこうなります。
ハギ キキョウ コスモス ススキ ヒガンバナ
リンドウ ナデシコ 秋の七草
しかし、本来の七草は、人の手にかかることをこばむ野草という感じが伝わっ
てきますが、いかがでしょうか。
話は変わりますが、秋桜(コスモス)、漢字で書くと日本産まれのようですが、
何とメキシコ産です。
コスモスは、茎も葉も細く、花もたおやかですから、責任をもって、きちんと
保護してあげなくてはと思いがちですが、本当は、強いのです。
台風でなぎ倒されても、いつのまにか窮屈な姿勢ながらも、花を咲かせます。
さすが、メキシコ産と納得しているのは、私だけでしょうか。
しかし、コスモスを「秋桜」と置き換えたのは、一体、どなた様なのでしょう、
名人芸だと思いますね。
★★重陽って、五節句の一つではないのですか★★
9月といえば重陽の節句、とならないのが不思議です。
3月の「ひな祭りですね」を思い出してください。
9月9日を重陽といい、陰暦9月9日の節句で、「9」は陰陽道では、陽の数
とされており、この2つの数を重ねた日で、菊の節句ともいわれていると紹介
しました。
陰陽道では、このように奇数を尊び、「9」を最高の数と考え、天の数、天子
様の数として、神聖視されていました。
それでしたら、大変な日ではありませんか。
しかし、何かお祝いをした記憶がないのです。
この日は菊の節句である。平安時代に菊は「翁草」「千代見草」「齢草(よわ
いぐさ)」などといわれ、重陽の節句に寒菊の酒宴が催された。「菊酒」とい
って、酒に菊の花をひたして飲むと、長生きできるといわれ、また「菊の着せ
綿」といって、前の晩に菊にかぶせて露にしめらせた綿で身体を拭くと長寿を
保つといわれた。
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P180-181)
このように菊は、古くから薬用植物として珍重されていましたが、菊の芯を集
めて作る枕を菊枕や幽人枕(ゆうじんちん)ともいって、香りが高く、頭痛を
治し、邪気を払うといわれ珍重されていたそうです。
そういえば、「菊政宗」という日本酒がありますが、命名のいわれは、これで
しょう。
適量をたしなめば、酒も良薬の一種に違いないのですが、適量をたしなむのは
至難の業で、意志の強い持ち主でなければ難しいですね(笑)。
「菊」は漢名(中国での名称)の「菊」を音読みしたもので、「菊」の漢字は
「散らばった米を一ヶ所に集める」の意味があり、菊の花弁を米に見立てたも
の。
また、漢名の「菊」は、「究極、最終」を意味し、1年の一番終わりに咲くこ
とから名づけられた。(www.hana300.com/kiku00.htmlより)
日本の国花は、桜と菊です。
桜に始まり菊で終わる、自然に恵まれた日本を象徴する花であり、国花にふさ
わしい花であることも肯けます。
菊は、その姿が、端整で、美しく、香りにも、何ともいえない気品があります。
古くから菊は、竹、梅、蘭と合わせて四君子(しくんし)といわれ、水墨画の
画材によく使われていました。
菊の品評会などで見る菊は、華やかなムードに包まれ 十分に、手間暇が、か
かっている感じが、匂い出ています。
菊人形も、ここまでやるかと、文句のつけようのない作品もあり、うならされ
ます。
これも、秋の風物詩として欠かせません。
しかし、人里離れた山あいに、ひっそりと咲く、小さな野菊、あれも、いいで
すね。
香もふくいくとして、観賞用の人工菊に、絶対に負けません。
寒さに強く、晩秋から初冬にかけて、けなげにも咲き続けています。
花は、ひっそりと咲いているからこそ、もののあわれを誘います。
女性も、ひっそりと、ひかえめがいいのですが、今風ではありません。
これをいうのには、勇気がいります。
「ますらお不在」といわれそうだからです。
「ますらお」は「丈夫・益荒男」と書き、強くて、堂々とした、立派な男子の
ことです。
ところで、皇室の菊の御紋章、あれは十六葉八重表菊で、後鳥羽上皇が、特に
菊を好まれたために定められたものです。
そして、欲しい人には最高の価値がある勲章、舌をかみそうですが、大勲位菊
花大綬章は、朝日と菊の花を表しています。
この勲章を、断る方がいます。
確固たる理由があるのでしょう。
そういった話を聞くたびに、なぜか、さわやかな気持ちになります。
もっとも、私自身、勲章をもらえる条件が何もなく、ひがんでいるにすぎない
のですが(笑)。
リーズナブルな刺身についているプラスチック製の菊、あれは単なる飾り物で
すが、上等な刺身には、食用の生菊が、さん然と輝いています。
これは高価なものですから、必ず、頂きましょう。
菊の花をむしって、小皿の醤油に散らし、刺身と一緒に食べます。
菊は、わさび、生姜、レモン、酢橘(すだち)、蓼(たで)と同様、食中毒や
食材の腐食を防ぐ自然の優れものです。
これらの菊は、観賞用とは異なり食用として栽培されたもので、さっと湯がい
て三杯酢で食べても、おひたしにしても、なかなかおつなものです。
ところで、刺身をのせている「刺身のつま」というのでしょうか、面白い存在
ですね。
ほとんどが大根か海藻(おごのり)ですが、あれがついていないと、何か物足
りない感じがします。しかし、ほとんどの方は、決して、好んで、食べません。
明治生まれの親父は、それこそ一本も残さず食べていましたから、私も残せま
せん。
主役の鮪や鯛の刺身を引き立たせる脇役を立派に果たしているのですが、刺身
のなくなった後の姿は、何とも哀れです。
「人間、引き際が大切だと教えているのではないでしょうか」などと、「よいし
ょ」することもありませんが、何かかばってあげたくなりませんか(笑)。
話を戻して、五十円硬貨の表のデザインは、何と菊です。
さらに、兵庫県の県花は、野路菊(のじぎく)です。
ご存知のことと思いますが、菊は献花に用いますから、病気の見舞いには、タ
ブーの花となっています。
日本の三大怪談話は、「四谷怪談」「番町皿屋敷」「牡丹燈籠」ですが、「1
枚、2枚……」と夜な夜な皿を数える幽霊の名は「お菊」だからいいのであっ
て、「おなべ」「おくま」「おとら」では様にならないという話を阿刀田高氏
の本で読んだのですが、「アッハッハ!」と笑っただけで、出典を控えませんで
した、済みません。こういった幽霊なら、寝苦しい丑三つ時(午前2時ごろ)
に出てほしいですね(笑)。
最後に、ことわざを一つ。
「春蘭秋菊 ともに 廃すべからず」(両者ともに優れており捨てがたい)
蘭と菊は、四君子の二つです。
島根県にも清水寺があることを、五木寛之氏の「百寺巡礼 第8巻」(講談社
刊)を読んで知り、素晴らしい三重塔を見ようとパソコンで検索していた時に、
島根県江津市のホームページで、この解説を読んだのですが、わかりやすいの
で紹介しましょう。
中国では、「梅」「蘭」「竹」「菊」の4種の草木は「四君子」と呼ばれ、古
来より人々に愛されています。「君子」とは人徳・学識・礼儀に優れた人のこ
とですが、「梅蘭竹菊」は気品の高い美しさを備え、梅は高潔、蘭は清逸、竹
は節操、菊は淡泊と「君子」に似た特徴をもっていることから、草木の中の
「四君子」に例えられています。
筆者注 清逸(せいいつ) 清く浮世離れしていること
(島根県江津市のホームページ http://www.city.gotsu.lg.jp/6490.html)
(次回は、「菊花の約」などについてお話しましょう)