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めぇでるコラム 7ページ目

2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>志望校選びの10のチェックポイント(1) 

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第48号>
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★説明会情報★
成蹊小学校
  6月15日(土)
   申し込みは6月13日15時分まで。
   定員増となりましたが、既に残席わずかになっていす。
    
 
東洋英和女学院小学部
  6月13日(木)の説明会・公開授業は残席わずか。
  6月19日(水)オープンスクール
 
  いずれも本メルマガ発行時点での情報です。
  詳細は当該小学校のホームページをご確認ください。

 
志望校選びの10のチェックポイント(1) 
 
今回から3回に分けてお話します「志望校選びの10のチェックポイント」は、めぇでる教育研究所から発売されている、「さわやかお受験 面接 ここがポイント 小学校編」の第一章に紹介してあるもので、読んでいただければ、お役に立つと自負しています。詳しくは、めぇでる教育研究所のホームページをご覧ください。
 
模擬面接で「この学校を選んだ理由、志望理由をお聞かせください」といった質問に、ただ、その学校の建学の精神や校訓、教育目標などを、そのまま、淡々とおっしゃる方がいます。 
 
「それでは、校訓をどのように育児に取り入れていますか」と尋ねると、具体的な回答がない場合があります。校訓や教育方針とご家庭の育児の姿勢に共通点がなければ、なぜ、その学校を選んだのかわかりません。
これでは、学校側を説得するのは難しいのではないでしょうか。
 
「なぜ、わが子に、この学校を選んだのか」、ご両親できちんと考えていただく基礎資料として、ここでは、10のポイントについてお話しましょう。
 
小学校の受験に際し、もっとも重視されるのは、なぜ、その学校を選んだかという「志望理由」です。
 
出身者の場合は、ご自分の体験から選ぶわけですから問題ありませんが、そうではない場合は、学校に関する情報、例えば、建学の精神や教育方針、その学校ならではの特色、年間行事や課外活動、学童保育(アフタースクール)、併設校への進学状況などについて、わからないことが多いわけです。そういったハンディキャップを解消するために開かれているのが学校説明会です。
 
現在とは異なり、過去には説明会をやっていなかった学校もありました。
平成10年には慶應義塾幼稚舎が、同11年には日本女子大附属豊明小学校が、同12年には白百合学園小学校が、創立以来、初めての説明会を開催しました。
雙葉小学校も平成17年に、学園講堂で説明会を再開しました。昭和60年代には説明会をやっていましたから、16年ぶりということになります。
 
所謂コロナ禍では、動画配信という形での学校説明会も行われていました。
 
説明会は、貴重な情報公開の場ですから、必ず参加されて、これからお話しする10項目のチェックを行い、お子さまにもっともふさわしい学校を選んであげていただきたいと思います。
 
 
[一]一貫教育制度について
 
最初に考えてほしいのは、「一貫教育制度に、何を期待しているか」です。
 
併設校のない幼稚園があります。幼稚園だけなのですが、不思議なことに人気があり、入園することが、大変、難しいといわれています。
若葉会幼稚園、枝光会附属幼稚園に入園される方の目的は、慶應義塾幼稚舎、青山学院初等部、聖心女子学院初等科、東京女学館小学校などへの入学でしょう。例えば、こういった幼稚園の入園テストの倍率が、仮に2倍前後だとしても、その数字よりも限りなく重い2倍なのです。名門校への合格実績も折り紙付きですから、受験される保護者の期待を十分にかなえられていることがわかります。ちなみに東京の幼稚園御三家は、松濤幼稚園が廃園になり、現在は若葉会幼稚園、枝光会附属幼稚園、そして愛育幼稚園(港区、有栖川宮記念公園の直ぐ側)だそうです。
 
幼稚園と小学校だけの学校があります。
国立市にある国立学園です。西武が設立した学校で、小学校しかありませんから、ほとんどの生徒が中学受験に挑戦します。6年の間に実力をつけ、中学の名門校に入り、中高一貫教育で大学受験を考えている保護者が多いのでしょう。
ホームページの「進学指導」にアクセスすると進学状況の一覧表があり、麻布、開成、武蔵という、いわゆる中学校御三家をはじめ、どの学校に何名入っているといった情報が紹介されています。
 
なお、聖徳大学附属小学校も令和2年までは中高は女子だけの別学でしたので、男子は中学受験になり、幼稚園から進んだ場合は幼小一貫教育校でしたが、令和3年度からは中高も共学になりました。
       
高校までの学校は、暁星小学校、桐朋学園小学校、雙葉小学校、田園調布雙葉小学校、横浜雙葉小学校、光塩女子学院初等科、日出学園小学校、国府台女子学院小学部などです。大学へは、12年間で培われた実力でチャレンジしなさいというのが、こういった学校の教育方針の一つです。
 
また、保護者の立場からいえば、小学校は、お父さん、お母さんが選びレールを敷いてあげるが、後の進路は、自分で決めるという制度に賛成しているということです。社会へ出る前に、大学受験というハードルをクリアする関門が待ち受けています。つまり、厳しい競争の社会に出る前に、大学受験という戦いを経験しておくべきだと考える保護者に支持されているということでしょう。
なお、東京女学館大学は平成27年度末に閉鎖、高校までの学校になりました。
 
横浜雙葉小学校の以前の説明会で、雙葉系の学校は、幼子にキリスト教を教えるために創立された学校で、12年間、学んできたことを、よその大学へ行って布教することを目的としているので、大学を設立する方針はないといった話を聞いたことがありました。こういった学校から大学への進学率は、ほぼ百パーセントとなっています。布教といっても説教をするのではなく、自らを磨くことで雙葉学園の印象を広める、ということです。
 
しかし、だからといって、「名門大学への進学率が高いから高校までの学校でいい」という志望理由には、賛成できません。雙葉小学校では、進学校ではなく、そういった体制になっていないと説明会でも明言していますし、入学されたお母さん方も「のんびりとした学校です」と話しています。
なぜ、進学率が高いのか、教育方針やその内容をしっかりと把握する必要があります。
                    
学習院、青山学院、白百合学園、東洋英和、日本女子大学附属豊明は幼稚園から大学、大学院まで、昭和学院は幼稚園から短大まで、慶應義塾幼稚舎、成蹊小学校、聖心女子学院初等科は、幼稚園はありませんが、大学、大学院までの一貫教育校です。
 
「幼稚園から大学まである学校に入れてしまえば、受験準備は一回限りで済む」
というお母さんがいました。幼、小、中、高、大学と、そのたびに受験することはないでしょうが、もしそういうことがあると、受験する本人も、付き合う親も大変なのは事実です。幼稚園受験や小学校受験で、こういった考えが根底にあるとすれば、それは、過保護ではないでしょうか。
 
しかし、受験に費やすエネルギーはたいへんなものですし、精神的な戦いもすさまじいものがあります。そこを回避して、受験勉強をしない分、精神的にも、時間的にも余裕があるわけですから、それを学問や趣味に、と考えるのは親心でしょう。
 
ただし、一貫教育制度は、エスカレータ式に大学まで行ける制度ではないことも忘れてはなりません。それなりに厳しいものです。
 
大学までの一貫校の中で幼稚園のない学校があります。
慶應義塾幼稚舎、聖心女子学院初等科(開設していた時代あり)、東京女学館小学校、成蹊小学校、立教小学校には幼稚園はありません。
立教女学院短期大学附属天使園は、推薦入学制度を導入し、立教女学院小学校は幼稚園のある学校になりましたが、短期大学閉鎖に伴い、平成27年度入園児の卒園をもって閉鎖、幼稚園のない学校になりました。
 
四谷と田園調布の雙葉には幼稚園はありますが、横浜雙葉にはありません。
同じ系列校でありながら、調布にある桐朋小学校の方には桐朋幼稚園がありますが、国立にある桐朋学園小学校にはありません。      
 
では、どうして幼稚園はないのでしょうか。
 
これも一つの教育方針だと考えられないでしょうか。
たとえばの話ですが、幼稚園時代から、同じ環境で保育を受けた集団よりも、違った環境で、さまざまな保育を受けてきた、いろいろな子どもを集めて教育を始めましょう。つまり、義務教育と同じ狙いがあるのではないでしょうか。
 
学校を選ぶときに、こういった制度の目的を考えてみると、建学の精神の一端がわかるかも知れません。
 
 
[二]共学制度について
 
二番目に、「共学制度」について考えてみましょう。
共学の学校といえば、慶應義塾幼稚舎、学習院初等科、青山学院初等部、成蹊小学校、成城学園初等学校、玉川学園小学部、桐朋小学校、桐朋学園小学校、日出学園小学校、昭和学院小学校、千葉日本大学第一小学校などで、桐朋、桐朋学園などは、中高は別学になりますが、こういった学校を選ぶ理由としては、義務教育は共学であり、共学が自然であることでしょう。
多くの方は、共学の経験があるはずですが、私立校へ進まれた方には、共学の経験がないかも知れません。
男女、別学の環境で教育を受けられた方が、お子さんには共学を選ぶ理由、これについて、しっかりと話し合ってみることです。
 
参考までに、共学の良いところ、悪いところをあげておきましょう。
 
良いところは、小さいときから、自然に男子は女子を、女子は男子を理解するようになり、男子は男らしさ、女子は女らしさを身につけることができます。
つまり、お互いに助け合い、特性を生かして、それぞれの領域を分担することで、競争心が芽生え、負けないように頑張ることができることでしょう。
 
悪いところは、男子にやさしさが育まれる反面、男子を厳しく指導したくても、女子がいることで、徹底しにくい点や、女子は、言葉がきつくなり、敬語や丁寧語があまり使われなくなるといったことでしょう。
 
多様性の時代と言われ、なかなか「らしさ」と表現しなくなっている中、読者の皆様に分かりやすく説明するために敢えて使っていること、ご理解ください。
 
 
[三]男女別学制度について
 
三番目は、「別学制度」についてです。
首都圏の男子校は、暁星小学校、立教小学校の二校、女子では、ミッション系の学校は、ほとんど女子だけで、雙葉小学校、白百合学園小学校、東洋英和女学院小学部、聖心女子学院初等科、国府台女子学院小学部などへは、毎年、多くの応募者が集まり、高い倍率を示しています。いずれも伝統のある学校であり、その教育方針や校風が、圧倒的に支持されている証でしょう。
 
では、別学の学校の長所を考えてみましょう。
 
まず、なんといっても男女の特性を生かした教育ができることで、共学とは違った意味での男らしさ、女らしさが身につき、異性がいないことから、男子は女子に憧れる気持ちが、女子には男子を尊敬する気持ちが育まれやすい環境にあることでしょう。
また、共学では体験できないこと、例えば、男子がする仕事を女子がしなければならないことから、体験の幅が豊かになるとも考えられます。
 
その反面、同性同士ということから、男女がお互いに何かをすることがないので、異性を意識して助け合う気持ちが育ちにくく、羞恥心も欠けがちで、男の悪さ、女の悪さが出やすい環境にあるともいえるでしょう。
 
白百合学園へ三年保育で幼稚園に入って大学まで行くと19年間、女の園です。
田園調布雙葉も幼稚園から入ると、高校までですが、14年間、女の子だけです。
これについて、お父さんはどうお考えでしょうか。
模擬面接などで、ご両親に別学の経験がない場合、
「お父さん、別学についてどう思いますか」
と聞いてみると、
「私は、共学の方が自然でいいと考えていますが、妻が賛成ですから」
などとおっしゃるのですが、「それでは、共学の学校へどうぞ」となるだけで、適切な学校選びとはいえません。
なぜ別学を選ぶのか、よく話し合っておくことが大切です。
 
例年、立教小学校の説明会で田代先生(現校長)は、「男子に比べ女子の成長が早く、何かにつけて差が出るので、男子だけの方がいい」、「脳の大きさは18歳頃で止まり、差がなくなるといわれている。小中高と別学で学び、大学で共学になるのは、手前味噌ながら理想的な教育環境であり、皆さまのお目は高い」とおっしゃっています。
 
小学校から別学になる幼稚園もあります。四谷の雙葉幼稚園には男の子がいますし、暁星幼稚園には女の子が、東洋英和幼稚園には男の子がいます。
日本女子大学附属豊明幼稚園は、平成23年から3年保育だけに切り替えましたが、女の子が60名に対して男の子が24名います。
そこに入った男の子は、小学校は受験になります。
雙葉や暁星、英和に入った男の子、女の子は、近所にミッション系の幼稚園がないために、無理して通わせるケースもありますが、幼稚園の送迎は、保護者がついていきますから、多少の無理はききます。目的は、ミッション系の小学校へ入学させたいと考える方が多いようです。
 
 
   (次回は、
     「志望校選び10のチェックポイント(2)」
                    についてお話しましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第八章(4)何にもないのかな【六月に読んであげたい本】

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第31号-
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第八章 (4) 何にもないのかな
【六月に読んであげたい本】
 
 
梅雨というと、三題噺(お客さんから3つの題を出させ即座に一席の落語とするもの)ではありませんが、「あじさい、かたつむり、かえる」です。しかし、最近、かたつむりやかえるはどこに行きましたかね、あまり見かけなくなりました。
 
かえると雨、これにも、おかしな因果関係があるようです。おもしろい話があります。これから紹介するお話の中の「かえるの親子」、人間の親子関係にもいえそうです。
 
過保護な保護者に育てられたわがままな子が、少子化に加え核家族化も進む中、増えているようです。一人っ子では、何が過保護なのかわからないのかもしれません。しかし、やがて子どもは、一人で生きていかなければならない、“頼れるのは自分だけ”の生活が待っていることを、親は忘れてはならないでしょう。
 
自己中心的で、他人との関わりがうまくできない若者が増えているようです。
 
最近の脳科学者の話では、自己抑制力の臨界期は3歳まで、協調性や社会性の臨界期は12歳までといわれているようです。臨界期とは、その時期を過ぎると、ある行動の学習が身につかなくなる限界の時期をいい、モンテッソーリのもっとも盛んに活動し成長する時期、「敏感期」と同じであると考えればわかりやすいと思います。言葉の敏感期を過ぎると、真偽は定かではないそうですが、インドの狼少女のように、人は言葉を話せなくなります。
 
誤解を恐れずにいえば、3歳は自立の始まる時期、幼稚園は自律心を養い、社会性や協調性といった集団生活への適応力の基礎を築く時期、6年間の小学校生活は、それらをきちんと身につける大切な時期です。
 
幼児期から小学校時代に、人としての配線図は、組み立ててしまわれるわけですね。「三つ子の魂、百まで」「鉄は熱い内に打て」、先人の教えには、無駄がありません。「鉄は熱い内に打て」は、英語の“Strike while the irons hot”を訳したことわざだそうです。(「故事ことわざ辞典」より)
 
 ※マリア・モンテッソーリ
    イタリア、ローマの精神病院で働いていた女医。知的障害児へ感覚教育を実施し、知的水準を上げる効果を見せ、1907年に貧困層の健常児を対象にした保育施設「子どもの家」で独特の教育法を完成させた。モンテッソーリ教育の行われる施設を「子どもの家」と呼ぶようになった。(ウィキペディア フリー百科事典より)
 
 
 
 ◆あまがえる不孝◆   八百板 洋子 著
 
  むかし、かえるの親子がいました。母さんがえるは、子どもをかわいがったのですが、子がえるは、親のいうことを聞きません。母さんがえるが、右に行こうというと左に行くし、山に登ろうというと川にもぐり、暑い日というと寒い日と逆らうのです。             
  ある日のこと、母さんがえるは、重い病気にかかりました。助からないとあきらめた母さんがえるは、墓だけは、日のよく当たる、山の上に作ってほしいと思ったのですが、何事にも逆らう子がえるのことです。山に埋めてほしいといえば、川のそばに埋めるに違いありません。
  考えた母がえるは、
  「私が死んだら、川のそばに埋めるのだよ」
 といって、息をひきとったのでした。母さんがいなくなると、子がえるは、逆らってばかりいたことを後悔し、反省して、川のそばにお墓を作ったのです。
  雨が降れば川の水も増え、お墓は流されそうになります。心配な子がえるは、雨が降るたびに、お墓が流れないようにと、今でも鳴いているのだそうです。
   六月の話  あまがえる不孝 松谷 みよ子/吉沢 和夫 監修
                     日本民話の会・編 国土社 刊 
 
親不孝な動物話の典型ですが、中国や朝鮮にも同じ話があることから、大陸から半島を経て伝わったものと考えられます。「日本は文化の吹き溜まり」とも言われていますが、自国流にアレンジし、生活の中に取り込んでしまう知恵を、我がご先祖は、身につけていたようです。 
 
    青蛙 おのれもペンキ ぬりたてか  芥川龍之介
 
こういった情景に出会うのは、もう、無理かもしれませんね。
 
霧雨が似合うあじさい、咲いているうちに色が変わることから「あじさいの七変化」といわれ、花言葉では「移り気」「浮気」などと芳しくありません。一方で「辛抱強い愛情」「あなたは美しいが冷淡だ」などといったものもありますが、後の方が似合う気配が漂っているような気がします。
 
漢字では「紫陽花」と書きますが、これは唐の詩人白居易が、別の花(この花の名前はわかりません)に名づけたものを、平安時代の学者、源順がこの漢字を当てはめたことから、誤って広まったといわれているそうです。
 (ニッポン放送 https://news.1242.com/article/291621 より)
 
ところで、今、かえるの合唱を、聞く機会はあるでしょうか。とにかく、ものすごい鳴声です。しかし、この鳴声が、何やら豊作の雄叫びのように聞こえるものです。雨がしっかり降って、田植えが終わらないことには、かえるの合唱は聞こえませんから。ぜひ、かえるの合唱を聞かせてあげてください。
 
その田植えについてですが、おかしな話があります。
 
 
 ◆田うえねこ◆   水谷 章三 著
 
 むかし、ある家に、年を取り寝てばかりいる猫がいました。
 田植えの時期になり、おかみさんは、
 「お前さんはいいね。猫の手も借りたい忙しいときに、寝ていられるのだから」というと、猫は大きなあくびをして起き上がり、どこかへ行ってしまったのです。
 その日は、田植えのおしまいの日で、大勢の人が手伝いに来ていました。
 おかみさんもわき目もふらずに田植えをしていましたが、見知らぬ娘さんがいて、仕事ぶりが、手際よく鮮やかなのです。それに負けてなるものかと若い衆も張り切ったので、夕方にならぬ内に終わったのでした。
 娘さんにお礼をいおうとしましたが、見当たりません。探していたところ、その娘さんが背中を見せて、歩き去っていくではありませんか。追いかけていくと、おかみさんの家のところで姿を消し、探したのですが、見つかりません。ところが、今朝、拭いたはずの縁側に、猫の足跡のような泥の跡がついていたのです。足跡をたどっていくと、家の隅っこの所で、猫が泥だらけの足をなめていました。
 「お前のことを、うらやましいといったものだから、娘になって田植えを手伝ってくれたのだろうか。猫は、年をとると化けるというけれど」と、おかみさんは、猫の顔をのぞきこみました。すると、猫は足をなめるのを止めて、前足でおかみさんのひざをグイと押さえて立ち上がり、背伸びをし、そのままどこかへ行ってしまい、二度と姿を見せることはありませんでした。
   六月の話 田うえねこ 松谷みよ子/吉沢和夫 監修 
     日本民話の会・編 国土社 刊 
                  
「猫の手も借りたい」忙しいときに、猫が手を貸すのがおかしいですね。この話も全国に、いろいろな形で語り継がれています。お地蔵さまが、見知らぬ若者に姿をかえて手伝う「田植え地蔵」などは、よく知られているようです。猫の足が泥だらけだったように、お地蔵さまの足が汚れていたのでわかる仕掛けは、同じです。 
 
今度は、恐い話です。
 
 
 ◆かにの恩返し◆   根岸 真理子 著
 
 むかし、ある村に、庄屋どんと娘が住んでいました。娘は、かにが子を生む頃になると、庭の小川で米をとぎ、その汁を流してあげたのです。かには、嬉しそうに飲んでいました。
 ある年のこと、日照りが続き、田植えができません。
 庄屋どんは、雨さえ降らせてくれたら、娘を嫁にやろうというと、それを蛇が聞いていたのです。
 やがて、雨が降り出し、田植えができると、村の人たちは喜びました。
 その時、庄屋どんの足元で、
 「約束を破れば、大雨を降らせ田畑を流すぞ」
 といい残し、蛇は姿を消したのでした。しかし、嫁にやるわけにはいかず、庄屋どんは庭に頑丈なお堂を建て、娘を入れることにしたのです。
 
 嫁入りの日が来ました。
 娘は、白い着物を着て、お堂に入り、中から鍵をかけました。そこへ、若侍が現われ、お堂に戸口がないのを知り、怒り、姿を大蛇に変え、お堂を七巻きに巻きしめたのです。すると嵐になり、蛇は、雨風の力を借りて、お堂を根こそぎつぶそうと、揺さ振り始めました。
 その時、娘の耳に、タプタプと寄せる水音に交じって、サワサワ、サワサワと小さな音が聞こえてきたのです。音は、次第に数を増して、お堂のまわりを取り囲みました。すると、ドォン、ダァンと何やらのたうつ音がして、サワサワ、ドォン、ダァン、と、二つの音は、低く響き続けました。
 
 やがて音が止み、ひび割れたお堂の透き間から、朝日が射し込んできたのです。
 庄屋どんに、手を引かれて外に出た娘は、老いた松の木のような大蛇が、お堂の周りを取り巻き、転がっているのを見たのです。そして、めくれ上がったうろこの下には、娘にお米のとぎ汁をもらっていたかに達が、一匹、一匹、はさみつき、そのまま死んでいたのでした。
   六月の話   かにの恩返し 松谷 みよ子/吉沢 和夫 監修
                    日本民話の会・編 国土社 刊 
 
 
 
この他に、蛇をやっつけるのにひょうたんと針を使ったものや、蛇に変わって、猿やかっぱの場合もあります。これもお馴染みの民話でしょう。
かにの恩返し説話は、古くから語りつがれ「日本霊異記」や「今昔物語」に記録されています。京都の山城の町にある蟹満寺というお寺にもこの話とそっくりの「蟹満寺縁起」が残されています。
 
それにしても、悪役の蛇は、哀れです。
もとはといえば、約束を破った庄屋どんが、その責めを受けるべきです。
子ども達にこの話をした時に、「悪いのは庄屋さん!」と、不満そうにいった女の子達が何人もいました。子ども達は、「事の善し悪し」を考え、自分なりに判断し、それを言葉で表現できる年齢に差し掛かっています。こういったことからも、「話の読み聞かせ」は、ご両親の大切な仕事であることがわかりますね。
 
また、「安珍清姫」の話も、大きくなったら妻にしようと戯れにいったことを信じた清姫が、だまされたことを知り、道成寺に逃れ、釣り鐘に隠れた安珍を、蛇に変身した清姫が七巻にして殺しますが、これも悪いのは、戯言(ざれごと)をいった安珍です。
「か弱き女性をだますと、あとが恐いよ!」
と、その執念深さを、蛇が演じているだけに、一層、説得力がありますね。  
 
仏教には殺生、妄語、偸盗、邪淫、飲酒を戒めた五戒がありますが、庄屋は、動物の妻にするのは邪淫戒になり、嘘をついたので妄語戒と二つの戒めを破り、安珍は嘘をついたので妄語戒を犯したにことになりますから、それぞれ厳罰を受けるのですが、庄屋は助かるのは、子どもが聞く昔話だからでしょうが、子どもたちはしっかりと怒っていますね。(偉い!)
 
もう一つ紹介しましょう。
きつねが人を化かす話も、むかし話にはたくさんありますが、新美南吉の「ごんぎつね」の悲しい結末と違い、ほのぼのとなる話があります。
 
                          
 ◆きつねのかんちがい◆
 
 むかし、あるところに、惣五郎という若者がいました。
 ある年の田植どきのことです。惣五郎さんは三反御作(広さ30アール)もあるたんぼを、一日で田植えをし、家へ帰る途中、畑の中にある井戸水を飲もうと、つるべ(水を汲み上げる桶)を上げると、その中に、溺れ死んだ子ぎつねが、入っていたのでした。惣五郎さんは、かわいそうに思い、畑の隅に穴を掘って埋めてあげました。
      
 ところが、夜中に大勢の人が声を合わせて、
 「お田を引いたで惣五郎! 三反御作みんな引いただ!」
 と、怒ったような声で歌い、二、三回繰り返すと静かになったのです。惣五郎さんは、不思議に思ったのですが、そのまま眠ってしまいました。
 
 翌朝、たんぼへ行くと、田植えをしたばかりの‘三反御作’の苗が全部、引き抜かれていたのです。きつねの仕業かなと思った惣五郎さんは、子ぎつねを埋めた所へ行ってみると、穴は、掘り返されていました。きつねは、勘違いをしたなと思った惣五郎さんは、きつねの棲んでいそうな竹薮や、林の中を歩きながら、
 「死んでいた子ぎつねを拾い、お墓を作ったんだ。誤解しないでくれ!」
 と、大声で叫んだのです。
   
 すると夜中に、
 「お田引いて すまなんだ! 三反御作 また植えたあ!」
 と、二度ほど繰り返し歌い、静かになったのです。
 あくる朝、戸をあけると大きな鏡餅が一枚置いてあり、三反御作の苗も、植え直してありました。
 惣五郎さんは、きつねに気持ちが通じたことがわかり、とても嬉しかったのでした。                           
   新訂・子どもに聞かせる 日本の民話   大川 悦生 著 
                          実業之日本社 刊 
      
坪田譲治の、子どものために命をなくした「きつねとぶどう」や、新美南吉の人間と子ぎつねの心あたたまるやりとりを描いた「手袋を買いに」なども、ぜひ読んであげたい童話です。
 
また、小川未明の、信仰とは何かを考えさせられる「頭を下げなかった少年」(最後の一言が鮮やかです)や、献身的な子育ての後に子猫の幸せのために姿を消す親猫を描いた「どこかに生きながら」も、見た目の美しさより、実用を重んじて作った茶わんを褒める「殿様と茶わん」、神様からの授かりものといって可愛がっていた娘を売り飛ばし、報復を受ける老夫婦を描いた「赤いろうそくと人魚」などの童話は、大人が読むべきで、心が洗われます。
 
お母さん方にお勧めしたいのは、「小川未明童話集 赤いろうそくと人魚 新潮文庫」です。
 
ここで日本語の表現の多彩さを少々。
春雨、五月雨(さみだれ)、夕立、俄雨(にわかあめ)、驟雨(しゅうう 夕立の漢語的表現)、秋雨、時雨(しぐれ 秋から冬にかけて降る通り雨)氷雨、雨雪(みぞれのこと)、四季折々の雨、やはり、日本人の感性は繊細ですね。
 
雨で忘れられない童謡があります。昔は、蛇の目の傘をさしていました。中心部と周辺を黒、紺、赤色に塗り、中を白くして蛇の目の形を表した傘で、竹骨に紙を貼り、油をひいた粗末なものでした。
    
    あめふり
        北原白秋 作詞  中山晋平 作曲
     あめあめ ふれふれ かあさんが
     じゃのめで おむかい うれしいな
     ピッチ ピッチ チャップ チャップ ランランラン
 
     かけましょ かばんを かあさんの
     あとから ゆこゆこ かねがなる
     ピッチ ピッチ チャップ チャップ ランランラン
     
     あらあら あのこは ずぶぬれだ
     やなぎの ねかたで ないている
     ピッチ ピッチ チャップ チャップ ランランラン
     
     かあさん  ぼくのを かしましょか
     きみきみ このかさ さしたまえ
     ピッチ ピッチ チャップ チャップ ランランラン
     
     ぼくなら いいんだ かあさんの
     おおきな じゃのめに はいってく
     ピッチ ピッチ チャップ チャップ ランランラン
         (引用者注 ねかた「根方」 木の根もと)
     
2行目の「おむかい」は、原詩は歴史的仮名遣いの「オムカヒ」になっており、「おむかい」と読みます。昔の日本語は、書き方と読み方が違うからですが、東京方面の古い方言で、「おむかえ」がなまって「おむかい」になったそうです。発表された大正14年頃、白秋は小田原に住んでいたので、この言葉を使ったのですが、「改訂版 しょうがくせいおんがく」(昭和33年発行)から「おむかえ」に変えて掲載。このときから「おむかえ」と歌い始めたそうです。
(「Yahoo!知恵袋」より要約)
     
繰り返しますが、童謡は情操の発達と深いかかわりを持つ、思い出のしみこむ「成長の記録」ではないでしょうか。お子さんが一緒に歌える童謡、ありますか。
 
    (次回は「七夕祭りでしょう」についてお話しましょう)    

 
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>よくある質問

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第47号>
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★説明会情報★
 
5月、6月、7月は多くの学校で学校説明会が開かれます。
受験校を知るには、学校へ行くのが一番だけに、受験生をお持ちの保護者の皆さん方は、直接学校を訪問をできる貴重な機会を逃さないようにしたいですね。
 
慶應義塾幼稚舎は、6月に説明会、7月に学校見学が行われます。説明会は昨年同様動画配信となっています。
 
早稲田実業学校初等部も6月に早稲田大学大隈記念講堂で学校説明会、7月に学校見学会が行われます。昨年は対面の説明会を撮影したものを別の機会にオンラインで見ることができたのですが。
 
雙葉小学校は7月に2日間説明会が行われます。
 
白百合学園小学校の授業公開は終わりましたが、6月に学校説明会、9月に学校見学会が行われます。校内を見ることができる貴重な機会ですから、ぜひとも参加してみたいものです。
 
聖心女学院初等科は6月に説明会を行います。お遊び会も開催。
 
例年とは日程が変わっている学校もありますので、こまめにホームページをチェックしましょう。
 
早稲田実業学校初等部の学校説明会ですが、過去にこういった話がありました。
○どんな子どもに来てほしいか。
 ・早実、大好きな子。
 ・早稲田大学へ行って勉強をしたい子。
 ・規則正しい生活のできる子。
 ・人の話を最後までしっかりと聞ける子。
 ・自分のことは自分でできる子。
 ・基本的な生活習慣、しつけの身に付いている子。
「9月2日(土)の学校見学会に、ぜひ、お子さん同伴で参加してほしい。私の願いは、お子さんがこの学校へ来て、学びたい、勉強したい、友達と遊びたいと思っていただけることです。これだけでお子さんのモチベーションが上がるからです」
橋詰敏長、初等部校長(当時)の話です。見学して、モチベーションが上がり、「早実、大好きな子」になってくれれば、親として、これほどありがたいことはないのですが。 
 (平成29年5月28日〈日〉午後1時~2時30分 於 大隈講堂より)
 
 
 
さて、今回は、皆さんからこの時期によく受ける質問を、紹介しましょう。
 
Q「折り紙をする時、折り方が雑できちんと出来上がらないのですが、どのようなことに注意すればよいのでしょうか」
         
A「折り紙は、一枚の紙から立体を作り出す大変楽しい作業ですが、一つひとつきちんと折らなければ、本に出ているような作品にならないだけに、子ども達の失望も大きいようです。
 まず、折り紙を半分に折り、長四角を作ってみましょう。
 机の上で、上と下の辺を両手できちんと重ねます。左手の人差し指で重ねた辺の真ん中をずれないように押さえ、右手の人差し指を左手の人差し指のところから下の折り目の真ん中に向かいまっすぐに下ろしてしっかり押さえます。
 
 右人差し指で真ん中をしっかりと押さえながら、押さえた指のところへ左手の人差し指を並べ、左端まで指を滑らし、折り目をつけます。 
 次に、左人差し指を真ん中に戻し、しっかりと押さえ、右人差し指で右端まで指を滑らせながら、折り目をつけます。
 それを広げ、90度回転させ、同じ作業をし、正方形が4つできるように折ります。
 次に、今使った折り紙の角と角を合わせ三角形に挑戦しましょう、作業手順は同じです。
 
 文章にすると、敬遠したくなりますが、お母さん方がお手本を示してあげれば、難しいことではありません。
 
 折り紙がうまくできない原因は、こういった基本の折り方がきちんとできていない場合にもあるようです。
 いきなり作品に挑戦せずに、四角と三角の折り方の基本をマスターすると、折り紙も楽しくなると思います。
 何事も基本が大切ですが、その作業は退屈でつまらないことが多いものです。
 それにまじめに取り組むのが、技術を身につけるコツであることは、皆さん方も経験されていることではないでしょうか。
 「ゆっくり、じっくり、丁寧に」、これしかありませんね。
 
 
 
Q糊を使うのを嫌がるのですが。
 
A指で糊をつける作業は今の子どもが苦手とする作業ではないでしょうか。
 ご家庭では、セロハンテープやリップ・スティック型の糊を使っていると思います。
 最近は、入試でもこういった接着剤を使用することもありますが、今の段階では、ふたのついた、つぼ型の容器に入った、幼児用の糊を使ってほしいものです。
 これには、いろいろと教育的な配慮がされているからです。
  
 ふたを開けるにも、左右の微妙な力のバランス感覚を学べます。
 そして、使う量、適量を指に取るには、目分量、勘が必要です。
 多ければベタベタ、少なければはがれます。
 さらに、つけ方です。
 糊が、全体に滞りなく行き渡るには、かなりの練習が必要です。
 そして、貼ります。
 これだけのことをやり、作業が終わると手を拭き、ふたをして片付けるのですから、面倒に思うのも無理はないかもしれませんが、ここで手抜きすると不器用になるのではないでしょうか。
 
 もっとも厄介なのは、適量を取り、貼ることです。
 はじめは、折り紙を4分の1に切ったものを使い、上の真ん中に少しつけ、スケッチブックなどに貼る練習をしましょう。
 次に、四隅に糊をつけて貼り、それができれば糊を真ん中に縦に伸ばしてつけ、左右に伸ばす練習をしましょう。  
 ステップを踏んでいけば、必ずできるようになります。
 「不器用なのね!」などと、絶対にいわないことです。
 
 加えて、幼児期に身に付けておかなければならない「汚れたらきれいにする」という大切な生活習慣を身につけることができます。
 大切な、大切な生活習慣です。
 
 つぼ型の糊には、教育的な配慮がしてあるという理由は、こういったことなのですが、いかがでしょうか。
 
 
 
Q早生まれなのですが、幼い絵しか描けません。上手になるでしょうか。
 
A入試を控えると、こういった心配をする保護者が増えているようですが、お子さんの絵の描き方を思い返してみましょう。 
 
 2歳は点や線の殴り書きで、3歳から円や四角らしきものが描け、ある時、突然、頭から手足がニョキニョキと出ている人間を描いたと思います。
 やがて、頭と体が分かれ人間らしくなりますが、手は電信柱のようにまっすぐ伸びたままで、やっと年中の終り頃に手も下に降り、人間と認められる絵になったのではないでしょうか。
 このようになるまで4、5年かかる子もいますから、幼児にとって絵を描くのは、大変な仕事でもあるのです。
  
 そして、基本的な生活習慣と同じように、絵を描く作業は、速成も、いろいろなテクニックを駆使しての促成もできません。
 お子さんの成育史が、そのまま姿を現すものではないでしょうか。
 ご両親の得意、不得意もあるかもしれません。
 
 お子さんは、楽しく絵を描いていますか、そうであれば心配ありません。
 お子さんが描いている絵は、現時点で最高の作品であることを認めてあげましょう。
 
 そして、幼い絵でも描きたい目的があるのですから、そこを見つけて褒めることです。他の子ども達と比べて評価するのは、賢い保護者がすることではありません。
 ましてや、早生まれの子ども達にとっては、大変迷惑な話です。
 楽しく描ける雰囲気を作ってあげることが大切です。
 
 ところで、4、5人のグループで1枚の絵を描かせる学校があります。
 共同作業ですから、お互いにコミュニケーションが図れるかも大切なポイントになっています。使いたいクレヨンが1本しかない場合、「それが使えるようになるまで何もしないお子さんがいる」と聞きますが、学校側は、社会性や協調性といった集団生活への適応力を見ているのではないでしょうか。
 引っ込み思案の多い男の子、通っている教室の先生に聞いてみましょう。
 
余談になりますが、ある小学校のオープンスクールで、1年生全員の描いた絵が、幼い絵まで全て展示されていました。子どもの成長をありのままに受けとめている教育方針に感動したものです。展示された子どもがいやな思いをしない指導、私たち親こそ、そういった目で子どもの成長を見ることが大切ではないでしょうか。
 
  (次回は、「志望校選びのポイント」についてお話しましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第八章(3)何にもないのかな 水無月

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第30号-
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第八章 (3) 何にもないのかな   水 無 月
 
★★父の日、これもアメリカ生まれです★★
 
6月の第3日曜日は、父の日です。
母の日がアメリカ生まれですから、父の日も同じでしょう。母の日があって父の日がなくては、男女同権の国ですから、男の立つ瀬がありません。いかにもアメリカらしいですね。
 
 1910年に、アメリカのワシントン州でジョン・ブルース・ドット夫人が、妻を亡くして男手一つで育ててくれた父に感謝するパーティーを開いたのが始まりとされている。
 その後、1934年に父の日委員会が結成され、母の日にならって6月第3日曜日を「父の日」と定めたのである。日本では、母の日に遅れること4年後、昭和28年(1953年)から、一般的な行事として認められるようになった。          
 (年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P102)
 
 
父の日に贈られる花は、何でしょうか。まだ、子どもが小さかった頃にもらった記憶はありますが、花の名前は思い出せません。バラの花だそうです。たいそう気品のある花ですから、何か訳がありそうです。
 
カーネーションが、十字架にかけられたキリストを見送った、聖母マリアが落とした涙の後に咲いた花でしたから、おそらくバラもキリストと関係あるのではと考えていたら、予想どおりでした。十字架にかけられたキリストの血が落ちて、そこからバラが花を咲かせたそうです。さらに、こういった説もあります。
 
 父の日の花はバラである。バラは花の美しさと香りの気高さのため、古代から人々に愛されてきた。ローマ教皇はバラを手にし、信者はロザリオで祈りを唱える。ロザリオrosaryはラテン語rosa(バラ)、rosarium(バラ園)に由来し、尊敬と喜びのしるしであった。古代ローマでは、祭日の日には神殿も戦車もバラで飾られ、将軍は賞讃のしるしとしてバラの花束を手に持った。
 現代でも音楽会の終わりにはバラの花束を捧げて演奏を讃える風景が見られる。
 (年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P102)
 
聖なるバラです。
花言葉は「尊敬と愛の情熱」です。お父さん方は、承知してもらっているでしょうか。
承知のうえでしたら、頑張らざるをえないですね。父権は、かなり喪失したといわれていますが、やはり、お父さんは頼られる存在になりたいものです。
 
この花言葉、前回にも紹介しましたが、調べると面白いですね。インターネットで簡単に検索できますから、時間があるときに調べてみましょう。
    
ところで、小学校の入学試験に「話の記憶」といった問題がありますが、あるミッション系の学校で、「母の日にお母さんに贈る花の絵に○をつけましょう」といった出題がありました。5つの花の中から選ぶのですが、その中に、何とバラの花も入っていたではありませんか。さすがだと思いました。
事の起こりは、キリストに関係があるのですから。出題校は、暁星小学校です。
 
 
                                    
★★夏 至★★
 
二十四節気(にじゅうしせっき)の一つで、春分、秋分、冬至と、それぞれ楽しい行事がありますが、夏至には、何かあるのでしょうか。暑い盛りではありませんが、うっとうしい日が続く頃です。
 
一年中で、いちばん昼の長い日ですから、何だか疲れを感じがちです。これは、夏至のとき、お日さまは、もっとも北に寄っているからです。ですから、北極ではお日さまが沈みません、白夜です。
 
逆に、南極ではお日さまの姿を見ることはできません。土用の日のように、うなぎを食べて元気をつけることもないようですし、何だか夏至だけが、冷たくあしらわれているような気もしなくはありません。しかし、夏至だけ問題にするのは不公平です。雨水、清明、芒種などといわれても、何やらわかりませんが、これも夏至と仲間の二十四節気のことです。
 
 正しい季節を示すために作られた目印を二十四節気といった。太陰太陽暦では暦の上の月日と季節がくいちがいをおこすので、暦の月日とは別に、農事に必要な季節の標準を示す必要があったからである。1太陽年を24等分して、太陽が最も低く昼間の最も短い冬至から始めて、1年を24等分した分点を二十四節気とした。
  (年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P39)
 
二十四節気とは、正しい季節を示す目印と考えるとわかりやすいですね。日本は農耕民族です、今は疑わしいですが。昔は、太陰太陽暦を使っていましたから、今のグレゴリオ暦では、暦の上の月日と季節とが、食い違いを起こすので、暦の月日とは別に、農事に必要な季節の標準を示す必要があったのです。よく、テレビなどで、「今日は、啓蟄の日です。冬ごもりをしていた虫たちも、はい出る日といわれ……」
などとやっています、あれです。
今年の二十四節気は以下の通りです。       
 
★★二十四節気★★
 <春> 立 春  2月 4日   <夏> 立 夏  5月 6日
             雨 水  2月19日       小 満  5月21日  
     啓 蟄  3月 6日          芒 種  6月 6日  
     春 分  3月21日          夏 至  6月21日  
     清 明  4月 5日          小 暑  7月 7日  
     穀 雨  4月20日          大 暑  7月23日    
 
 <秋> 立 秋  8月 8日   <冬> 立 冬 11月 8日 
     処 暑  8月23日          小 雪 11月22日   
     白 露  9月 8日          大 雪 12月 7日   
     秋 分  9月23日          冬 至 12月22日   
     寒 露 10月 8日          小 寒  1月 6日   
     霜 降 10月24日       大 寒  1月20日   
 (「国立天文台発表」より)
 
立春 旧冬と新春の境目、まだ、寒さの厳しい頃です。
雨水(うすい) 雨水がぬるみ、草木が芽を出し始めます。
啓蟄(けいちつ) 冬眠している虫たちも、穴からはい出してきます。
春分 昼夜が等しく分かれ、昼間が長くなり、夜が短くなってきます。
清明(せいめい) 桜花爛漫、春の盛となり、天地万物に清新の気があふれる時期。
穀雨(こくう) 春雨は、田畑をうるおし、穀物の成長するときです。 
            
立夏 春は去り、爽快な夏の気配を感じる頃です。
小満(しょうまん) 日増しに暑くなり、草木が繁り天地に満ち始める時です。
芒種(ぼうしゅ) 芒(のぎ・稲や麦などについているとげ)のある穀物を植える時。
夏至 日の長きに至る、昼がもっとも長くなる日。梅雨のさかりで、田植えの時期。
小暑(しょうしょ) 日増しに暑さが加わり、この日から暑中見舞いを出し始めます。
大暑(たいしょ) 暑さがもっとも厳しくなる頃。
 
立秋 暦の上だけの秋、まだ、真夏の頃。この日から残暑見舞いとなります。
処暑(しょしょ) 暑さが止み、秋風が吹く頃。「処」は「とどまる」の意。  
白露(はくろ) 秋も本格的となり、野草に甘い露の宿る頃。
秋分 昼夜が等しく分かれ、春分とは逆に、昼が短く夜が長くなります。   
寒露(かんろ) 野草に冷たい露が宿る頃。                   
霜降(そうこう) 秋の気配も去り、朝霜のおりる頃。
 
立冬 冬の気配がうかがえる頃。
小雪(しょうせつ) 寒さもさほどでもなく、雪も少ない頃。
大雪(だいせつ) 北風が強くなり、寒さも厳しく、雪が降り始めます。
冬至 日の短きに至り、夜が長くなる日です。
小寒(しょうかん) 寒気が加わり、雪が積もる頃。
          この日を「寒の入り」とし、寒中見舞いを出し始めます。
大寒(だいかん) 冬将軍がもっとも威勢のよい時期ですが、寒さの中にも「春とおからず」の希望がふくらむ頃。
 
 
しかし、漢字って、いいですね。
「雨水」「処暑」など見ているだけで、何やら、日本を訪れる季節の兆しが、思い浮かびませんか。
 
今から2000年前の頃、中国の周王朝により華北の気象状況にあわせて作られたそうです。何と2000年前のことです、感動しませんか。感動しますが、何だか実感がありません。大暑といえば、実感としては、8月7日の立秋の頃ではないでしょうか。
 
日本でいうと、岩手県の季節と合っているそうです。東京でも、ピンとこないのですから、九州地方のみなさんは、どうでしょう。
 
この原因は、今は、グレゴリオ暦を使っているからです。二十四節気は、先程もいいましたように、むかし使われていた太陰太陽暦によって決められていますから、1ヵ月位の差が出るのです。
 
かつてある新聞に、気象協会では、新「二十四節気」を作ると出ていました。
その訳は、「寒いのに立春、暑いのに立秋―。中国伝来の二十四節気は、季節の移り変わりに彩を添える言葉だが、ちょっと違和感を感じませんか」(原文のまま)(中略)同協会は「現代の日本の季節感になじみ、親しみを感じる言葉を選びたい」のだそうです。
 
そして、「新二十四節気」という名称ではなく「季節のことば36選」として平成25年春に発表されました。
 
  季節のことば36選                  二十四節気
    1月 初詣 寒稽古 雪おろし           小寒 大寒
    2月 節分 バレンタイン 春一番         立春 雨水
    3月 ひな祭り なごり雪 朧月夜         啓蟄 春分
    4月 入学式 花吹雪 春眠            清明 穀雨
    5月 風薫る 鯉のぼり 卯の花          立夏 小満
    6月 あじさい 梅雨 蛍舞う           芒種 夏至
    7月 蝉しぐれ ひまわり 入道雲 夏休み     小暑 大暑
    8月 原爆忌(広島、長崎) 流れ星 朝顔     立秋 処暑
    9月 いわし雲 虫の音 お月見          白露 秋分
   10月 紅葉前線 秋祭り 冬支度          甘露 霜降
   11月 木枯らし1号 七五三 時雨             立冬 小雪
   12月 冬将軍 クリスマス 除夜の鐘         大雪 冬至
               (「一般財団法人 日本気象協会編」より)
 
参考までに、二十四節気も掲載しておきましたが、いかがでしょうか。
七夕が行われる7月7日、小暑といわれていますが、選ばれていませんでしたね。星の祭りである七夕も、幼稚園や保育園、小学校の夏のイベントになり、ご家庭で楽しむ年中行事ではなくなったようです。
 
ところで、「人のうわさも七十五日」といわれていますが、その語源が二十四節気と関わりがあるのですから、面白いですね。七十五日を四十五日、四十九日、七十九日というのは誤りです。
 
 「日本には二十四節気という季節の区切り方があります。365日を24等分するので、一節気はおよそ15日。昔から五節季経てばまったく違う季節になるといわれていましたから、15×5=75日となります。75日も経てばまったく新しい季節になるのだから、それまでのことは忘れようという意味なのでしょう」
     (「つい他人に自慢したくなる無敵の雑学」
           なるほど倶楽部 編 角川書店 刊 P18)
 
ちなみに英語では、“A wonder lasts but nine days”(「驚きも九日しか続かない」故事ことわざ辞典より)だそうですが、日本と違い、個人主義が定着している国では、噂の消えるのも短いということでしょうか。
 
(次回は「6月に読んであげたい本」についてお話しましょう)
 
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>学校説明会で確かな情報を(3)

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第46号>
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[入試情報]
 雙葉小学校説明会
     日 時 7月19日(金)、20日(土)
     場 所 雙葉小学校
     申 込 6月17日(月)午前10時から申し込みサイトよりお申し込みください。
 
          詳しくはホームページをご覧ください。
          
 
 
学校説明会で確かな情報を (3)
 
  ★紹介したい説明会でのエピソード(2) 
  
東日本大震災を受け、平成24年の49回目のメルマガでは、「説明会速報 立教小学校(6月9日)」で次の話を紹介していました。いずれは、いわゆるコロナ禍に関するエピソードが出てくるかもしれませんね。
 
  震災に対していろいろと対応を考えている。
  校舎は古いが理論上は震度7に耐えられる建物、震度5以上の予知情報が校内に流れるようになっている。
  乾パン二千食、水や毛布の備蓄もあり、グランドの奥にある水車小屋の下には井戸があり水は豊富。立教大学が通勤難民四千人あまりを収容、乾パンを配り、学生食堂では炊き出しをした。
  池袋周辺にいれば安全を確保で
きるので心配いただくことはない。現在、停電になっても発信できる緊急メールを準備している。
  大学院には放射線物理学科の専門の先生がいて、給食の食材、水道水の放射能値を測定するなど、学院の組織的なバックアップもあるので安心できる体制にある。
        (緊急メールは、現在完備されている)
 
その立教小学校も、立教学院創立150周年記念事業の一環として新校舎が建築されることとなりました。利用開始は2027年です。
 
さて、説明会へお子さんを連れてこないでほしいと明言している学校もありますが、そういった条件がある場合は別として、お子さんを会場へ連れていかなければならない事情のある方もいます。1時間から2時間ほどかかる学校もありますから、子どもは退屈します。
 
ある学校の説明会、体育館で行われたため、後ろの所に子ども達が遊べるような空間があったのです。そこで、子ども達が走り回りはじめました。うるさいのですが、親が注意をしません。             
見かねた校長先生が、                      
「元気な子と不作法な子は違います」               
とおっしゃったのですが、それでも注意する親が現われません。学校の教育方針と違うことをやっているにもかかわらず……、もっとも、出るに出られなくなってしまったのかも知れません。   
 
これは、その逆の話ですが、赤ちゃんを胸に抱いたお母さんが、会場の外の廊下で立ったまま話を聞いていました。恥ずかしい話ですが、「遅刻しないように」などとおこがましくもアドバイスしている私自身が、渋滞に巻き込まれ5分ばかり遅刻したことで、偶然、この光景に出会ったのでした。先生との話の様子から、会場へ入るようにすすめられても、辞退しているようでした。終わって廊下に出た時、何と同じ所にお母さんがいるではありませんか。約1時間半、大変だったと思います。この学校の教育方針は、「心身ともに強く、心のやさしい子」の育成です。お母さんは、出身者ではなかったでしょうか。
 
この話も、機会があれば、必ず、紹介することにしています。
 
 育児ないないづくし
   暖房きかせて寒さがない        冷房きかせて暑さがない  
   おやつが過ぎて空腹がない       歩かせないので疲れがない 
   おもちゃのやり過ぎで興味がない    テレビの見過ぎで考えない 
   何でもホイホイ我慢がない       点数以外に関心がない   
   わかっているけど行わない       これではまともに育たない
 育児を「育自」と置き換えて、育児を通して育自するお母さんを求めます。
 
こうおっしゃっていました。
育自は誤植ではありません、自らを育てることです。「育児を通して育自するお母さんになりましょう」と何やら偉そうに私は言っていますが、種を明かせば、その根拠はここにあるのです笑)。
 
次の話は、あるミッション系の学校で伺った話です。
母親の学歴が高くなる一方で、育児が下手になっているといわれています。核家族化、少子化の進む環境のもとでの育児ですから、決して母親だけの責任ではありません。バブル経済全盛期の頃に聞いた話ですから、かなり昔のことになりますが、今でも考えさせられてしまいます。子どもを取り巻く環境は、あまり変わっていないどころか、むしろ悪くなっていると思われるからです。
文言は正確ではありませんが、以下のような話でした。
     
  現代の価値観は多様化したとはいえ、世界各国のシスターから、日本人といえば、商売に道徳は無用とばかりに、自己の利益だけを求めるイメージが強くなるばかりと聞かされています。その歪みを正すのが教育に携わる私たちの使命です。教育が、こうまで荒廃した原因は、あまりにも豊かになり過ぎ、お金が評価の基準になって、そこには精神的な絆がないからです。教育の危機は、心を大切にしないことから発しています。
  学卒のママが多くなる一方で、いたわり合う心、思いやりの心を持った子が少なくなっているのはなぜでしょう。それは、心を育てるより知識を与えることに夢中になっているからです。無理に知識を詰め込もうとすると  過干渉になりがちで、素直な感情を押さえつけ、その結果、子どもの心は屈折してしまうのです。
 
30年以上前になりますが、すでに過保護、過干渉な育児の弊害を指摘しています。これは小学校受験だけではなく、早期教育や稽古事にもいえるのではないでしょうか。子どもが、あることを学習するために、ふさわしい成長をしていない状態で、いろいろなことを詰め込むのは、幼児に適した教育とはいえません。
 
では、幼児期にふさわしい教育とはどういうものでしょうか。
立教小学校の田中司元校長の話を、文言は正確ではありませんが紹介しましょう。
 
  0歳から6歳までの幼児期は、人間の一生でいちばん大切な時期です。最も大切なのは、対話です。子どものいうことをよく聞き、やりたいことをしっかりとつかむことです。親がしっかりと聞いてくれ、受けとめてくれることで、子どもは安心感を持ちます。人間にとって安心感ほど大切なものはありません。対話の反対は沈黙ではなく、命令と要求です。家庭内で対話が成立する、これが育児でいちばん大切だと思います。
 
  次は、本の読み聞かせです。現代の情報は映像で入ってきます。
  映像は視覚と聴覚を通して、瞬時にわかる反面、頭の中でイメージを作る想像性が欠如していく気がします。読み聞かせをする母親の、話しかける父親の言葉を聞きながら情景や動物、人間の姿を思い浮べることが、人間にとっていちばん重要な能力だと思います。イメージする力を育てることは、文学的な分野と考えがちですが、自然科学的な発想は、少ないデータをもとに発展させ、それぞれの世界をイメージすることでできたわけです。
  分子や原子は、どんな格好をしているか、太陽はどんな姿をし、宇宙はどのようになっているか見た者はいません。わずかな情報から科学者が創ったイメージの世界です。読み聞かせは、子どものイメージする力を育てるとともに、子どもの世界を一緒に楽しむ豊かな時間でもあるのです。
 
  3番目は、ご家庭の中に自然を楽しむ文化をもってほしいのです。神様が創った自然の美しさ、素晴らしさにかなうものを、人間は作っていないと思います。気をつけないと、人間が作ったものだけに囲まれて生活することが可能な時代になりました。土を踏んだことのない子もいます。土、石、葉っぱ、虫、砂といった地球を作っていく素材を、子どもが肌で感じることが大切です。休日に、森や海岸、川原や野原へ、弁当とシートを持って出かけ、自然って美しいな、風って気持ちがいいぞ、葉っぱはきれいだ、石ころにはいろんな形があって面白いな、何もプログラムを作らずに、ゆったりと、そこにいるだけで素晴らしい、そういう自然の楽しみ方、それは非常に高い文化ではないかと思います。
 
対話、読み聞かせ、自然を楽しむ文化、考えさせられることばかりですが、特にお母さん方は、「対話と読み聞かせ」については、ついこの間までキチンと実行していたはずです。
 
お子さんの赤ちゃん時代です。      
 
何もわからない乳飲み子に、一所懸命、話しかけませんでしたか。
赤ちゃん言葉を懸命に理解しようとしませんでしたか。
こういった姿は、無償のほほ笑みと共に、この世で最も美しい姿といわれています。
        
ところが、受験準備に夢中になりすぎると、「命令と要求」の日々になりがちです。でも今は、大丈夫なのです。心配なのは、夏休み以降です。
 
ちなみに、田中元校長が就任した年から、立教小学校はペーパーテストを廃止しました。
男の子の多くが苦手とする、音楽に合わせて体を動かすテストがあり、思わず笑ってしまいましたね。照れ屋で気が弱く繊細な神経の子が多いからです。運動会で楽しくダンスをしているのは女の子ではないでしょうか。お父さん方も何やら照れくさそうに踊っていますね(笑)。
 
2021年度から校長に就任した田代校長が副校長の時には、脳科学者の話を例に、18歳を超えると脳の成長の差はなくなるが、それまでは女子の成長が速いので、小中高が別学で、大学は共学が理想的な教育環境、「手前みそながら」と自慢されており、なるほどと納得できました。別学が禁止されていたアメリカでは、2006年に法が改正され、公立の学校でも別学を選択できるようになっているそうです。
 
 
最後に、平成9年6月に、白百合学園幼稚園が、創立以来、初めて説明会を開催したときにうかがった話を紹介しましょう。幼稚園を受験されるお母さん方への話ですが、小学校の受験も、基本的には同じことだからです。
 
あいにくの雨の中、熱心なお母さん方が、およそ500名、幼稚園のプレイルームは、立錐の余地なしといった状態でした。(第2回目以降は、学園内の講堂で行われていますから、園舎に入るという貴重な経験をしました!) 校訓である三訓、「従順、勤勉、愛徳」の説明、モンテッソーリ教育の目的、敏感期、縦割り保育のメリットを話された後に、幼稚園側が望む子ども像について、次のように話されたのでした。
 
  私どもの希望しておりますのは、小さいときから、入園テストですとか、面接テストを受け訓練された子ではなく、むしろ日常の生活の中で、特に、お父さま、お母さまの、生きたお手本の中で育てられたお子さま方、それから年齢相応に基本的な生活習慣が、これは、まだ完全にできませんから、ある程度、身についているお子さま、明るく、素直で、いきいきしたお子さま、そういう子ども達を期待しております。
 
いかがでしょうか。
「お父さま、お母さまの生きたお手本の中で育てられたお子さま方」云々は、幼稚園、小学校の受験は、まだ、中間報告ですが、お子さんを通して、ご両親の育児の集大成を判定しているということです。
 
ところで、小学校の受験は、「はじめにご両親の育児の方針ありき」とお話しましたが、その根拠となっている話を紹介しましょう。残念ながら、今では手に入りませんが、慶應義塾幼稚舎が願書に同封していた小冊子「第一学年入学志願者心得 入学受験について」に書いてあったことです。
 
  甚だ当たり前のことであるが、子供は手塩にかけて育てるものである。「両親が手塩にかけて、心を尽くして育ててきた我が子を、受け取らない学校があるなら、行かなくても一向に差し支えない」というように考えられないものであろうか
 
学校説明会は、建学の精神や教育理念を話すだけではなく、こういった育児についての話があることから、小学校の受験は、ご両親の育児の姿勢が問われていることが、おわかりいただけたと思います。
 
問題集だけを頼りにし、机の上だけで受験準備はできません。子どもは、ご両親の作った環境で育っていきます。基本的な生活習慣やあいさつ、言葉遣い、運動能力といったものは、ご家庭できちんとやっていかなければ、幼児教室や塾などで、受験に必要なノウハウの指導を受けても身につかないでしょう。
 
だらだらと食事をし、衣服の着脱ができないようでは、暁星小学校のような俊敏性を求めるテストに対応できません。
 
すぐ疲れておんぶをせがむようでは、筑波大学附属小学校や昭和学院小学校のような熊歩き(四足歩き)をやれといってもできないでしょう。
 
自立心や意欲が培われていないと、かつての白百合学園小学校のように立ったままで試験を受けることも難しいのではないでしょうか。
 
過保護になっていれば、話を理解し、素早く、積極的に取り組まなければならない幼稚舎のような、行動観察型の試験をクリアできるとは考えにくいことです。
 
学校側が試験を通して知りたいのは、「知育、徳育、体育の三つの能力が、就学前の子どもにふさわしく、バランスよく培われているか」であり、知的な能力だけを判定しているのではありません。こういった能力を育み、意欲のある子に育てるのはご両親であり、試験を受けるのはお子さん自身ですが、判定されているのはご両親であることを、納得いただけたのではないでしょうか。
 
数々のエピソードは、以前にもお話ししました「心を鍛える賢い子どもの育て方」などから一部を紹介したものです。説明会への参加とは別に、各校のホームページや学校案内のパンフレットだけでなく、こういった書籍なども前もってお読み頂き、万全の態勢で秋に向かってほしいと願っています。
 
めぇでる教育研究所のホームページ、「出版物・問題集のご案内」もご覧ください。
    
 
   (次回は、「よくある質問」についてお話しましょう)

 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第八章(2)何にもないのかな 水無月

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第29号-
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第八章 (2) 何にもないのかな   水 無 月
 
 
★★しみじみとうまいにぎり飯★★
 
日本人に生まれてよかったなと思うことはたくさんありますが、米の飯を食べられるのも、その一つです。米の飯ほどうまいものはありません。寿司や鰻重、すき焼きなどでは、魚や鰻、肉が主役になり、称賛を浴びがちですが、どっこい、縁の下の力持ちは、何といっても「ご飯」です。米が、まずけりゃ話になりません。トロだろうが、天然物だろうが、霜降りだろうが、米に袖にされたら、もういけません。やっぱり、米は偉い。
 
しかし、何と言ってもしみじみと米のうまさがわかるのは、「にぎり飯」ではないでしょうか。
 
炊きたてのご飯を、手につけた塩で握り、海苔をまいて食べる。中身は、梅干しやかつお節があれば、もう、それで十分。こんなに簡単で、安く出来上がり、満腹感を味わえる食べ物は、他にあるでしょうか。にぎり飯、というよりは、「おにぎり」の方がふさわしいかもしれませんが、このおにぎりには、忘れがたい思い出がしみ込んでいます。
 
何事も便利になった現代ですが、便利になりすぎると、失うものも出てきます。
 
このことを考えるべきではないでしょうか。
何事も工夫しなくなると、受け身になりがちです。コンビニやスーパーなどで売っているおにぎりを、子どもに食べさせるのも考えものです。
 
お母さんやお父さんの手作りだからこそ、「おにぎり」であり美味いのです。
手作りだからこそ愛情が伝わるのではないでしょうか。
 
ちなみに、東日本では「おむすび」、西日本では「おにぎり」と呼ばれていたそうですが、コンビニのCMの影響もあり「おにぎり」優勢のように感じます。
 
さて、おにぎりの主役であるお米はいつから日本の主食になったのでしょうか。
 
 稲はもともと中国南部の山岳地帯で生まれたとされています。そこから北へ広がったものが、現在の日本で食べられているお米の短粒種“ジャポニカ米”です。“ジャポニカ米”は縄文時代後期に中国から北九州に伝わり、そこから長い年月をかけ、明治時代になりやっと北海道まで伝わりました。ということは、お米が日本全国で主食になったのは、今からおよそ140年前、明治時代からだったのです。5月は田植えの季節です。美味しいお米ができる秋が楽しみですね。
   (平成25年5月時の「聖徳大学附属小学校のホームページ」より)
 
ところで、小学校入学後のことで気になる給食・お弁当問題。
時代の流れで、お弁当持参だった学校も注文弁当や給食を導入する学校が増えてきました。
とは言え、弁当は、おふくろの味です。
おふくろの味は真心であり、世界に一つしかない専用のレストランで調理され、しかも好みに合う美味しいメニューしかありません。その弁当ですが、やはり、ご飯ですね(笑)。
手間はかかりますが、機会を見つけてはお弁当を食べさせてあげたいものです。
 
 
                            
★★衣替え★★
 
幼稚園児から学生さん、お父さん方のスーツまで、見事に様変わりする衣替えは、ご存知のごとく6月1日と10月1日です。
 
衣替えの起こりは、宮中の行事として始まったもので、平安朝では、旧暦の4月1日と10月1日に行われていましたが、室町時代から複雑になり、江戸時代のお武家さんの世界では、何と年4回も衣替えをしていたのです。
 
4月1日から5月4日までと9月1日から9月8日までは袷(あわせ-裏地のついた着物)、
5月5日から8月末日までは帷子(かたびら-裏地のない単衣仕立ての着物)、
9月9日から3月末日までは綿入れ(表布と裏布の間に綿を入れた着物)を着るように定められていました。
 
冷暖房の施設もなかった時代ですから、衣替えで対処するのが生活の知恵だったのでしょう。
現在のようになったのは明治以降で、学校や官公庁、銀行やデパートなど制服を着る業界では、この日を境に冬装束から夏装束に改めます。
 
かつては、夏服に変わると、梅雨の湿った陽気にうんざりする心に、さわやかな涼風を肌に送り10月には冬服に着替え、やってくる冬将軍に備えて気を引き締めたものですが、今は、通勤、通学も冷暖房完備の電車ですし、家に帰ればクーラー、ヒーターと至れり尽くせりですから、ファッションとしての要素が強くなっているのではないでしょうか。
 
ところで、この衣替えには、衣類を虫やかびから守る大切な仕事が待ち受けています。お子さまに、お手伝いをさせましょう。常にクローゼットで対応できるご家庭でも敢えて「防虫剤を入れて、収納する」という体験をさせてあげましょう。小さいときから、このような季節を肌で感じることができる仕事は貴重です。整理整頓を苦手とする大人が増えているようですが、その原因は、幼児期の体験の差にあるのではないでしょうか。
 
衣類だけではなく、部屋の模様替えも一緒にやって、気分転換をしてみるのもいいですね。子ども心にも、親の手伝いをするのはうれしいものです。そして、何よりの収穫は、特にお母さんがこういった家事を、笑顔でテキパキと片付けていく姿を見て、子ども達はたくさんのことを学んでいます。「子は親の背を見て育つ」は、まさに名言ではないでしょうか。
 
以前に紹介した、世界的なベストセラーにもなったドロシー・ロー・ノルトの「子どもが育つ魔法の言葉」を思い出してください。この本こそ、親になる前に私が出会いたかった数々の著書の一冊です。
 
この時期、不安定な気候が続くことがあります。そして梅雨。
そんな時、お母さんの笑顔こそ、うっとうしい季節を乗り越える清涼剤であることを、忘れないでほしいですね。お父さんの笑顔もですが(笑)。
 
  (次回は「父の日、その他」についてお話しましょう)
 
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>学校説明会で確かな情報を(2)

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第45号>
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学校説明会で確かな情報を (2)
 
 
★説明会情報★
 昭和学院小学校
   2024年度オープンスクール日程
   第1回オープンスクール・学校説明会 5月18日(土)
   第2回オープンスクール・学校説明会 6月12日(水)
   第3回ナイト学校説明会       7月12日(金)
   第4回オープンスクール・入試説明会 9月 7日(土)
   第5回オープンスクール・入試報告会 1月18日(土)
   運動会               5月25日(土)
   体験教室(年長児のみ定員160名) 6月29日(土)
   学芸発表会            10月 5日(土)
 
 
 
紹介したい説明会でのエピソード(1) 
 
施設見学会をしているときに、「?」といったものに出会うときがあります。
例えば、
学習院初等科の入試説明会は四谷の初等科で行われますが、体育館へ渡る廊下は道路の下を貫通させたものですから、かなりの勾配になっており、しかも狭いため、「おさない・かけない・しゃべらない・もどらない」と混乱をさけるために4つの約束の語頭をつなげた「おかしもの約束」の標語が掲げられています。これは阪神・淡路大震災以後、消防庁による教育安全指導のガイドラインに紹介されたことから、防災教育の標語として全国に普及したもので、当初は「おはし(おかし)」(「は」は走らない)だったが、津波による避難の原則でもある「戻らない」が追加されたそうです。 (synodos.jp/fukkou/10522 より)
 
かつて早稲田実業学校初等部のホームページにも「おかしもの約束を守り、警察署、消防署の協力のもとに、子ども達が安全に避難できるように指導している」と出ていました。
沖縄のとよみ小学校では「おかしもちの約束」があり、「ち」は「近づかない」だそうですが、海に囲まれているだけに切実な思いが伝わってきます。
自然災害だけは、何とか穏便に願いたいものですが、同時に、その時はどうすればよいか、子ども自身でできることは、普段からきちんと教えておく、これも親の大切な仕事です。
 
さて、今回からエピソードについてお話しますが、何と言っても四ツ谷の雙葉小学校の説明会ですね。
開催されたのは、昭和61年9とかなり昔のことになりますが、とても参考になるので、お付き合いください。
 
やめていた説明会を再開した理由は、妙なうわさを学校側が否定することにあったのです。
 
以来、平成元年まで続け、その後、実施していませんでしたが、同18年から再開されました。コロナ禍はオンラインでの説明会でしたが、今では学校での開催に戻っています。
 
さて、再開された時のことですが、「何か不祥事があったのでは!」と危惧していたのですが、大勢の人々を収容する施設がなかったのが直接の理由で、新しく講堂ができたために再開したとのことでした。
 
話を戻しましょう。
うわさといったものが、どういうものであるかを明白にしてくれた説明会でしたから、当時のメモを紹介しましょう。
 
    雙葉小学校説明会
    日 時 昭和61年9月26日(金)
    場 所 小学校ホール 5階 参加者 約500名
 
およそ10年ぶりに再開された説明会でもあり、5階のホールは超満員で熱気にあふれていました。
 
入学定員に対して多数の応募者があるため、心ならずもテストを行っている事情を説明され、テストに関しては、特別に勉強しなくてもできる問題を作っており、総合的に判断して知能点だけではなく、「子どもらしく、一所懸命に頑張る意欲のあるお子さん、コツコツ努力をするお子さん」を求めており、内向的な性格でも頑張るお子さんであれば歓迎すると、雙葉小学校の求める子ども像について、具体的に話されました。
 
ついで、悪質なうわさが広まっていることに関して、雙葉学園はミッション系の学校であり、キリストの精神に反するような不正入学が許されるわけがないと明言された後に、
 
 (1)受験と宗教は別問題で、僧侶の娘さんも入学している。
 (2)学校関係者の紹介がないと不利とは、単なるうわさ。紹介者を通して面会することはあるが、それが考査に有利になることはない。
 (3)お金を積むと入れるという裏口入学は、これもまったくの嘘。正規のお金(考査料)以外は、一銭も受け取らない。合格を発表する前に、考査料以外、頂くことはない。
    
この三点について強調され、つまらぬうわさに惑わされないようにとの注意がありました。
 
また、大学への進学率が高いことから、小学校の時に入れておけばと考える方が多いのですが、授業に関して特別なカリキュラムはなく、たまたま、そのような結果が出ているだけですから、進学校とお考えにならないでくださいと述べられました。
(この件については、毎年、説明会で力説されていますし、入学されたほとんどのお母さん方も「のんびりとした学校です」とおっしゃっています。)
 
なお、登校時間は、年間を通して午前8時15分、四ツ谷駅のラッシュアワーは8時からで、その時間に通学できるかどうか、慎重に考えてくださいとのことでした。
 
裏口入学を策したお母さんが不合格になり、「どうなっているのか!」と、直接、学校へ電話をしたことから事件が発覚し、驚いた学校側が事実無根と否定するための説明会でもあったのです。       
 
当時のうわさとして、
「どこそこの神父さんの紹介状がなければダメ」    
「信者の娘さん、絶対有利」             
「合否は親の職業で決まり」             
などがありましたが、今でも根強く残っているようです。 
再開された説明会でも、うわさに過ぎないと否定されました。
うわさは、単なるうわさに過ぎないと、惑わされない強い信念を持つことも大切です。
それを支えるのはお父さんの役目ですから、きちんとサポートしてください。
お母さん方は、こういったうわさを信じてしまうくらい一所懸命になっていることがあります。
 
ちなみに、校庭の一角には、幼稚園、小学校に在籍されてから聖心女子学院へ進まれた上皇后美智子さまが、ご成婚(昭和34年4月10日)前に来校され、記念樹として贈られたメタセコイヤの苗木3本の内1本が、修道院の裏側に中高の校舎と頭を並べるほど成長した姿を見ることができます。
 
------
 
平成13年に白百合学園小学校が、創立以来、初めての説明会を開催したときも、何か不祥事があったのではと思いましたが、そういったことはなく、受験されるご父母の強い要望によりとのことでした。
 
平成25年まで学校見学会だけ行っていた横浜雙葉小学校は、26年から説明会を再開しましたが、これは昭和60年代に開催していたときにうかがった話です。
 
本校の入学試験は、「一日体験入学方式」ともいわれ、昼休みにお弁当を食べる時間が設けられていました。文言は正確ではありませんが、話の内容を再現すると、こうなるのです。
 
     「お弁当は、いつもお母さんが作ってくれるのですか」
     「ウウン、今日は特別なの」
     「そうですか、それでは、おいしいでしょうね」
     「ウン、でも、残しちゃダメといわれたの」
     「どうしてですか」
     「残すと点数が悪くなるから」
     「……?」
 
残すと、どうして減点されるのでしょうか。
 
初めて来た所で、知らない子どもばかりの中で食べるのですから、緊張して残す子もいるかもしれません。
それよりも、弁当を食べることで、子ども達はいろいろなサインを出していると思います。
ご家庭の教育方針がどうなっているのか、これほどわかりやすいものはないでしょう。
食事は三度のことですから、絶対に、つけ焼刃はききません。
 
基本的な生活習慣が、きちんと身についているかを判定することも、小学校の入学試験では、大切なポイントだからです。
 
学校側が見たいのは、
「集団生活の中で、子どもはどうあるべきかを、親がしっかりと考えて、やさしく、あるいは厳しくしつけることを、ご両親の責任において教育しているかどうか」
ではないでしょうか。
 
今の話と似ていますが、以前、紹介しましたが大切なことですから繰り返します。
 
国立市にある桐朋学園小学校の説明会で、当時の校長であった鈴村先生が、たまたま会場に現われ、こういった話をされたのです。
本校は、仙川にある姉妹校、桐朋小学校と同様、面接をやっていませんが、その理由として、
 
 「親御さんに『趣味は何ですか』とお尋ねしても、本当は、競輪、競馬が大好きでも『読書と音楽鑑賞です』と取り繕うでしょう。でも、私どもでは、お子さんを二日間預かりますから、どういった育児をなさっているかわかります。ですから、私どもは面接をしません」
 
と、例によって文言は正確ではありませんが、こうおっしゃったのです。
試験を受けているのはお子さんですが、判定されているのはご両親であることが、よくわかる話ではないでしょうか。
 
 
(次回は、「学校説明会で確かな情報を (3)」についてお話しましょう)
 

 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第八章(1)何にもないのかな 水無月

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第28号-
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第八章 (1) 何にもないのかな   水 無 月
 
暦の上では、6月から夏です。夏の読み方は、「暑(あつ)」の転化したものといわれていますが、他にも「生(な)る」「暑(ねつ)」などの転化したものという説もあるそうです。
 
水無月(みなづき)のいわれは、たくさんあります。
旧暦6月は、梅雨も終わり、炎天下の酷暑の季節に入り、文字通り、水もかれつきるという説と、逆に、田植えも終わり、田に水を張る月「水張り月」「水月」からきた説、また、農家のもっとも重要なイベントでもあった田植えが終わったことから「皆仕月(みなしつき)」「皆月(みなつき)」からきた説、そして、雷が多い季節から「かみなり月」の「か」と「り」をとり、「みな月」という説もあるそうです。最後の「ゴロ合わせ」ではなく「語呂合わせ」がおかしいですね。
 
 
 ★★大切な田植えの時です★★
 
6月といったら、「何といっても……」というものがありません。
毎日、雨が降り、むし暑くて、うっとうしい梅雨です。
この梅雨のいわれですが、梅の実が熟する頃に降る雨から梅雨、湿っぽくて黴(かび)が生えやすい気候から黴雨、この他に梅雨を「つゆ」と読む場合もあります。しとしとと降る雨が、木々の梢や葉にまとわりつき、露となって落ちていく様子から“つゆ”とも呼ばれたのではないかと私流に思い込み、趣のある言葉で好きなのですが、諸説があって本当のことはわからないようです。
 
梅雨前線が、日本列島にどっしりと腰をすえ、うんざりする毎日になります。
しかし、この時期に、しっかりと雨が降らなくては、困るものがあります。
 
お米です。
 
田植えの季節です。
菖蒲(しょうぶ)や蓬(よもぎ)、柏の葉は、端午の節句の専売特許ではありません。昔の5月は、今の6月頃にあたります。今のように、機械で苗を植えるのと違い、田植えは、お百姓さんが、苗を1本1本、手で植えていました。
ですから、時間はかかり、田んぼが広ければ、人手もたくさん必要になります。
まさに、猫の手も借りたいほどの忙しさです。
「米」という字は、「八と十と八」からできています。お米は、種から芽を出した苗を田んぼに植えて収穫し精米するまでに、人の手を八十八回わずらわすといわれるほど、手がかかるのです。
 
さらに、天気にも左右されます。
ご存知のように、稲は水稲(すいとう)といって水田で栽培しますから、梅雨にたくさん雨が降らなければ、田植えはできません。ちなみに、水稲より大量の水を必要としない畑で栽培する稲、陸稲(おかぼ)もありますが、水稲に比べ品質は劣り収穫量も少ないため、日陰の存在に甘んじているようです。
 
そして、夏に日照りが悪いと、稲はきちんと育ちません。
しかし、日が照りすぎても、田んぼの水が干上がって、稲は駄目になります。
また、稲は順調に育っても、収穫前に台風がきて、たわわに実った稲穂が強風になぎ倒され、豪雨で水に浸かってしまっては使いものになりません。自然とのかかわりは、宿命的な因果関係のごとく厳しいですから、神頼みにならざるを得ないのです。
 
そこで、昔の人は知恵を絞り、田植えが無事に済み、たっぷりとお水をいただき、夏にはしっかりとお日さまに顔を出してもらい、稲が立派に育って、秋には、おいしいお米がたくさんとれるようにと、神様にお祈りをしたわけです。
米作りは、やり直しのきかない真剣勝負、人生そのものといえるのではないでしょうか。
 
そのお祈りをするのは女性の役目で、早乙女(さおとめ)と呼ばれ、田植えをする間、悪いことが起きないように、屋根を菖蒲の葉で作った小屋に集まり、肉食を断つなどして身を清め、精進潔斎をし、一晩中、お祈りをしました。ですから、昔の5月5日は、夏負けをしないように、匂いの強い草で、魔物を追い出す日であり、田植えの準備の日でもあったのです。
 
ところで、浄瑠璃といえば近松門左衛門、そのすぐれた伝統芸能を観賞する機会はほとんどありませんが、残された名作を本で読むことはできます。代表作の一つ、どうしようもない放蕩無頼で、典型的な自己中の不良青年、与兵衛を描いた「女殺油地獄」の中に、「五月五日の一夜を女の家と言うぞかし」とあり、男の祭りではなく、無事に田植えを行えるよう祈願する女性の祭りであることがわかります。
 
その田植えですが、本当に、大変な仕事です。
泥んこの田んぼに足をつけたまま、幅1メートルほどの範囲を、10センチ間隔ほどに苗を植えていくのです、腰をかがめて。これを30分程続けると、完全に腰にきます。伸ばすと、ボリッと音がするほど、筋肉は、まいってしまいます。
 
毎年、天皇陛下が苗を植える「お田植え」、お姿をテレビで拝見しています。
収穫された米は、宮中祭祀に使われたり、伊勢神宮に奉納されるそうです。
「豊葦原(とよあしはら)の瑞穂(みずほ)の実る国(神意によって稲が豊かに実り、栄える国)」、これは日本国の美称として使われる言葉ですが、皇室の儀式とはいえ、無理をなさらないでほしいですね。
 
最近、小学生が体験授業として、田植えをやる学校が増えているようですが、米を作ることが大変な作業であることを実感できれば、「いただきます」の本当の意味、「ありがたくいただきます」と感謝の気持ちを表していることも理解できるのではないでしょうか。
 
さて、夏になると、稲のまわりに雑草が生えますが、これを取り除くのも一苦労です。また、腰をまげて、手で雑草を取ります。これが、かんかん照りの太陽のもとでの作業ですから、田んぼの水は、それこそ生ぬるく、草いきれで、むっとする匂いには、泣かされます。人の血を吸う蛭(ひる)もいて、環境のよい仕事場ではありません。日本の夏は高温多湿であるだけに、少しでも手を抜くと雑草が生え、稲の成長を妨げますから手入れが大変で、まるでわが子を育てるのと同じだとお百姓さんに聞いたことがあります。
 
子育ても手を抜いた分、親が考えもしなかった色に染まってしまうものです。
「手を抜く」といっても育児を放棄するのではなく、ちょっとした思い違いから、親子の絆にひびの入ることもあるものです。「おかしいな?」と感じた時は、親から子どもに話しかけるべきではないでしょうか。そういう時は、子ども自身も迷っているはずだからです。
 
話を元に戻しましょう。
そして最後の収穫。これも1株、1株、鎌(かま)で刈っていきます。繰り返しますが、お百姓さんの腰が曲がるわけです。刈った稲を、今度は、天日で乾かします。それを脱穀機で稲穂を取り、もみ殻にして、これを精米機にかけ、やっとお米になるのです。
 
農業の機械化というのでしょうか、田植えから脱穀まで、全部、機械でできるそうですから、これは、すごい省力化です。しかも、無人のトラクターというのも実用になっています。そういえば、最近、腰の曲がったお百姓さんを、あまり、見かけません。
 
 
 
 ★★てるてる坊主★★
 
この月は、しっかりと雨が降ってくれなくては困りますが、雨が降ってほしくない時もあります。
子どもの頃、遠足や運動会の前日に、てるてる坊主を作ったものでした。今でも、この風習は残っているようです。天気にしてくれた時には、目、鼻、口をつけてあげた記憶があります。
 
   てるてる坊主
     作詞 浅原 鏡村  作曲 中山 晋平
 
  (1)てるてる坊主 てる坊主 明日天気にしておくれ
     いつかの夢の空のように はれたら金の鈴あげよ
 
  (2)てるてる坊主 てる坊主 明日天気にしておくれ
     私の願いを聞いたなら  甘いお酒をたんと飲ましょ
 
  (3)てるてる坊主 てる坊主 明日天気にしておくれ
     それでも曇って泣いたなら そなたの首をチョンと切るぞ
             (注 浅原鏡村は、小説家浅原六郎の別名)
 
幼子の「どうしても晴れてほしいなぁ!」という気持ちが伝わってきます。
「しかし、しかしです」と何も興奮することはありませんが、「てるてる坊主は、坊主ではなく娘さんです!」と聞けば、「ナヌ!?」となりませんか。発祥の地は、またしても中国でした。
 
 てるてる坊主の起源は、中国で掃晴娘(そうせいじょ)とよばれる、ほうきを持った女性の紙人形をつるす風習からきている。娘がほうきで晴れ気を掃きよせ、晴天や幸運を招き寄せようとするまじないで、平安時代に日本へ入ってからは、なぜか坊主に代わってしまった。
  (日本の年中行事百科2 夏 民具で見る日本人のくらしQ&A P14
                  監修 岩井 宏實 河出書房新社 刊)
 
お坊さんの頭は、つるつるで、何やら光り輝いていますし、明日の天気は神頼み、いや、この場合は仏頼みで、晴れのイメージにつながったのでしょうか。
 
ところで、今はどうかわかりませんが、一時期、小学校の音楽の教科書の中にはなく、ラジオなどで流す場合は3番をカットするケースがあったようです。
その理由は、歌詞の3番に、
「それでも曇って泣いたなら そなたの首をチョンと切るぞ」
とありますが、それは自分の願いを聞き届けさせようとする「脅迫信仰」であって、童謡らしくない残酷な表現だからだそうです。
 
作詞者のイメージとしては、残酷に処刑するのではなく、「晴れなかったら承知しないからね!」と、どうしても晴れてほしい切実な願い、その気持ちを表現したかったのではないでしょうか。
 
映画やテレビ、漫画、ゲームなどでは、もっと残酷な場面を映像で見せつけているではありませんか。詩は、イメージです。こんなことまで規制されるのは、情操教育を考えると、首を傾げたくなります。残酷な犯罪は、きちんとイメージできないから起きるのではないでしょうか。
 
ですから、「イメージ化できる」ことは、非常に大切な感性です。感性こそ、子どもの時から様々な経験を積み重ね、磨いていくものです。
 
以前にもお話しましたが、イメージ化を培う力は、読書と何事にも自力で挑戦する生活体験です。
 
文字を読み取り、その世界を作り上げる作業は、人格を築き上げる大切な学習です。若者の活字離れが指摘され久しくなりますが、思考力や思想を構築する力が劣るわけです。お子さんに本を読む習慣を身にけさせるには、本の読み聞かせと、ご両親の読書をする姿をしっかりと見せておくことです。
 
そして、何事も自力で挑戦する意欲を育てましょう。失敗を恐れる子にしてはいけません。「為せば成る」ではありませんが、試行錯誤を積み重ねることから、工夫する力も忍耐力も育まれます。
 
「そんなこともできないのは、駄目な子なの!」
などという保護者がいると聞きますが、「できるように頑張る子に育てるのが親の仕事」です。
 
幼児教育に携わってきて感じるのは、多くの場合、お母さんがあまりにも不用意に、子どもに劣等感を植え付ける言葉を投げがちです。同じ言葉をご主人に言われれば、柳眉を逆立て、猛烈に反撃するでしょうに。
 
ご両親のさじ加減で、お子さんの潜在能力は開発されることを肝に銘じてほしいものです。
 
蛇足になりますが、「為せば成る」は、本当はもっと長い文章で、その頭文字の5個をとったものです。
 
江戸時代の後期、米沢藩主の上杉鷹山が、家臣に教訓として「為せば成る。為さねばならぬ何事も。成らぬは人の為さぬなりけり」と詠み与えたものですが、それより以前に、武田信玄が「為せば成る、為さねばならぬ。成る業を成らぬと捨つる人の儚(はかな)さ」と、よく似た歌を詠んでおり、鷹山の言葉は、これを変えたものだといわれているそうです。(「故事ことわざ辞典」より)
 
ところで、これは最近、知ったことですが、4番まであった「てるてる坊主」を、何と作曲者が1番を削除し、今の形にしたとか。その1番の歌とは、
 
 (1)てるてる坊主 てる坊主
    あした天気にしておくれ
    もしも曇って 泣いてたら
    空をながめて みんなで泣こう
    (www.tenki.jp/suppl/usagida/2015/05/14/3771.htmlより)
 
作詞家ではありません、作曲家の中山晋平です。
何ともやさしくて、いいと思いませんか。詳しいことをお知りになりたい方、「てるてる坊主」で検索すると、いろんな情報にヒットできます。
 
  (次回は、「しみじみとうまいにぎり飯」他についてお話しましょう)
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>学校説明会で確かな情報を (1)

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第44号>
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<説明会情報>
 成蹊小学校
  ・運動会
    2024年5月18日(土)
  ・第1回学校説明会 
    2024年6月15日(土)            
  ・オープンスクール
    2024年6月20日(木)
  ・第2回学校説明会 
    2024年9月2日(月)
  ・文化祭
    2024年10月13日(日)
 
  詳しくは、ホームページをご覧下さい。
 
 
 
学校説明会で確かな情報を (1)
 
 
小学校の受験で最も重視されるのは、「志望理由」です。
 
出身者の方には問題ありませんが、そうでない方々には、学校に関する情報、例えば、建学の精神や教育方針、その学校ならではの特色、主な年間行事やクラブ活動、合宿などの校外活動、学童保育、併設校への進学状況、併設校のない場合の進学実績やそのための対策、通学時間やご主人の転勤にともなう復学制度、自己推薦や単願等応募の方法などわからないことが多いと思います。
 
そういったハンディキャップを解消するために行われているのが学校説明会です。過去には説明会をやっていない学校もありましたが、現在では、ほとんどの学校で開催しています。
 
最近の傾向として、夏休み前に学校説明会を、休み後に入試説明会と2回行う学校が増えてきました。しかし、幼稚舎、雙葉小学校のように学校説明会だけ行っているところもあります。そして、Webでの事前予約の必要な学校が多くなりました。当日になって気づいても手の打ちようがありませんから、注意してください。
 
東日本大震災後、自然災害が注目され、多くの方が通学に不安を感じているのではないでしょうか。各学校のホームページにも「災害対策」が掲載されていますが、大切なのは、「我が家の災害対策」で、「登校・下校時に災害が起きた時の対策」です。学校側が公表する対策を、わが子の通学に、どのように活かせるか、慎重に考慮するのも保護者の義務です。今年もその説明があると思いますので、正しい情報をもとに不安を解消しておきましょう。しかし、何といっても大切なのは、お子さん自身の自立心と行動力です。そういった育児に徹することも親の仕事ではないでしょうか。
 
また、学童保育、アフター・スクールに力を入れる学校が増えています。日本女子大学附属豊明小学校、聖心女子学院初等科もそのひとつです。お母さん方がお仕事をもっている場合、具体的にどのようになっているか、情報を確認しておきましょう。
 
横浜雙葉小学校は、学外のアフタースクールと提携しました。授業後はスクールバスで施設まで送迎しています。
 
日本女子大学附属豊明小学校は、5月11日(土)に行われる学校説明会は既に受付終了していますが、5月27日(土)に行われるオープンスクールは、5月12日(日)から受付となっています。2023年は早い段階で満席になりましたので、興味があるご家庭はまず予約しておくことをお勧めします。
運動会は9月28日(土)に西生田の大学のグランドで開催されます。いずれも事前申込制。
 
雙葉小学校は、7月19日(金)、20日(土)に開催。Webで事前申し込み(6月17日10時~)。
 
白百合学園小学校は、5月18日に授業公開が開催されますが、既に満席となっています(本メルマガ発行時)。学校説明会が6月29日(土)、学校見学会が9月7日(土)にそれぞれ行われます。
 
聖心女子学院初等科は、第1回学校説明会を6月8日(土)、第2回を9月7日(土)に実施。オープンスクールが8月に予定されています。いずれもHPから予約が必要です。
 
青山学院初等部の第1回目説明会は5月18日(土)に実施されます。若干空きがあるようです(本メルマガ発行時点)。同じ内容で第2回説明会が9月7日(土)に実施されます。いずれも保護者のみ。親子で校舎を見学できる「オープンスクール」が6月29日(土)に実施。
 
東洋英和女学院小学部は、6月13日(木)に学校説明会、6月19日(水)にオープンスクールを実施。
 
東京女学館小学校は、5月18日(土)には運動会が公開されます。7月6日(土)に説明会が予定されています。なお、昨年5月に夕方から行われた説明会は本年度は実施されないようです(3月に実施済み)。
 
立教小学校は今年も3回開催。第1回6月6日(木)、第2回6月29日(土)、第3回9月7日(土)です。「(1)(2)(3)はそれぞれ内容が異なる」と明記されています。事前の申し込みはありませんが、対象は保護者のみとなっています。
 
慶應義塾幼稚舎は、学校説明会が7月1日(月)~7日(金)に動画配信の形で実施。学校見学会が7月8日(土)に実施されます。
なお、動画配信以前は、1時間程度、自尊館(講堂)で行われていました。
都会では珍しくなった土のグランドと真中に立つ大きな欅、毎年、七夕飾りを見ることができます。自尊館のエントランスには、福澤諭吉直筆の書「人間萬事戯来戯去」(人生は本来戯れにすぎないと悟ること KEIO YOCHISHA SCHOOL GUIDEより)の額が掲げられています。
 
成蹊小学校の説明会は、当初は、大学の合同授業などで使う大きな教室でやっていましたが、やがて小学校の体育館になり、それでも入場しきれなくなり学校近くの武蔵野市民文化会館で行っていました。平成26年からは学園内で開催しています。
初めて授業参観で校舎に入ったとき、何やらうなぎの寝床といっては失礼でしょうけれど、そんな感じがしましたが、新装成った校舎は、むかしの面影を一新し、すばらしい環境になっています。
第1回説明会が6月15日(土)に行われます。
 
日出学園小学校は、昼間、参加できないお父さん方に「お父さんのための説明会」を5月22日(水)、23日(木)に6時から開催します。運動会は6月1日(土)、授業体験会は6月に22日(土)に実施。
 
日出学園小学校のように夜の説明会もあります。
 
昭和学院小学校が7月12日(金)に、2020年4月より校名を小野学園小学校から変更した品川翔英小学校は6月21日(金)にナイト(学校)説明会を開催。
 
江戸川学園取手小学校は、5月25日(土)に学校説明会および1日体験入学があります。
 
暁星小学校の説明会日程は発表されていませんが、夏に行われることが多いの
で、HPをこまめにチェックしましょう。
 
 
      (以上の情報は、5月10日(金)現在のものです)
 
 
 
まず、こういった説明会や公開授業などの日程を正確につかんでおくことが大切です。
ホームページを利用すれば、説明会の開催日時や入試日程、学校の歴史や建学の精神、参加できる学校行事などの他、学校によっては、「よくあるQ&A」も用意されており、簡単に検索できますから大いに利用しましょう。
 
説明会では、学校案内や要覧などの配布があり、市販されているガイドブックなどからは得られない情報も公開され、そういった資料をもとに、学校の沿革や教育内容などの詳しい解説が行われています。
 
9月以降の説明会では願書も配布され、具体的な入試日程の説明や願書記入上の注意、健康調査書に関する諸注意、考査料の振込みに関する注意などを詳しく解説する学校もあります。
 
また、立教小学校や立教女学院小学校、成蹊小学校、白百合学園小学校のように授業を公開する学校もあります。
 
上記学校の参加者はほとんどが保護者対象となっていますが、国府台女子学院小学部、昭和学院小学校などのように、説明会中にお子さんを預かってくれるところもあります。
 
説明会は5月から始まる学校が多く、9月以降に集中して開かれていましたが、最近は、6月、7月に行う学校が増えていますから注意が必要です。こういった情報をしっかりと確保しておくことも、ご両親の大切な役目です。学校によっては、面接で説明会に参加した感想を聞かれたり、アンケート用紙に記入を求めたりすることもあります。
 
多くの学校では、質疑応答の時間を設けていますが、特別に時間を設定していない学校もあります。しかし、説明会終了後、個人的に質問をする機会はありますから、何か問題のある場合は、この時間を利用し解消しておきたいものです。「母子(父子)家庭は不利」「共働きの家庭は不利」「信者は有利」「出身者、兄弟姉妹がいれば有利」など、いわゆる噂に心を痛めている方々は、直接、処方箋をいただいて、つまらない悩みは解決しておきましょう。
 
学校によっては、「心配事がある場合は、電話で問い合わせてほしい」と、相談の窓口のあることを説明しているほどです。しかし、電話で済ませるより、説明会で直接、お聞きしておくべきでしょう。もしかすると、面接の時に再度、お会いするかもしれないからです。
 
かつては、入学後、経済的な心配が起きた場合には、奨学金制度のあることを公表している学校もありましたが、青山学院初等部のホームページのQ&Aの欄にも、「学費等の支援給付制度が定められている」と発表しています。
 
また、転勤の可能性のある場合、復学できるか確かめておきましょう。
 
問題を抱え込まずに積極的に利用し、すっきりとした気持ちで秋を迎えたいものです。
 
ところで、説明会は、小学校の講堂や体育館で行われると思われがちですが、外部でやっている学校もあります、早稲田実業学校初等部等です。
 
早稲田実業学校初等部が第一回目の説明会を行ったときは、国立の初等部の校舎は建築中で、大学の大隈講堂を使用しましたが、満員になるほど参加者が多く、初等部内には収容できる施設はないようですから、ここで開催することになったのでしょう。入学式も、当講堂で行われました。建物が古くなったために改築されていた2年間は文京シビックの大ホールで開催されたこともありました。今年は6月9日(日)に大隈講堂で開催される予定です。
学校見学会は7月20日(土)に実施。
 
思い出に残っているのは、学習院初等科の説明会です。
当初、男児と女児に分けて四ツ谷の迎賓館のすぐそばにある初等科の正堂(講堂のこと)で行っていました。現在、初等科の建物は新築されましたが、当時の校舎内はかなりの年月を経ており、歩く廊下はぎしぎしと音がし、質実剛健を教育目標とする学校らしい雰囲気を感じたものです。また、正堂の正面には菊の御紋が二つ蒼然と輝き、皇室の方々が通われる学校であることが伝わってきたものでした。こういった学校の歴史や雰囲気を実感できた貴重な体験でした。
5月の学校説明会は受付終了ですが、入試説明会が9月2日からWEBで、学校見学会が9月7日(土)に行われます。
 
 
 
◆参加するときの注意点 
 
説明会へ参加するときに注意してほしいことをお話しましょう。
 ・筆記用具、メモ用紙を持参する。
 
 ・上履きが必要な場合がありますから、スリッパ、靴を入れる袋を持参する
  かどうかを確かめておく。
 
 ・雨の日は、雨傘用のビニール袋を学校側で用意しているとは限りません。
  特に、梅雨にさしかかる時期ですから用意しておきましょう。
 
 ・ハイヒールで廊下を歩くとき、音に注意を。立教小学校は禁止しています。
  Q・なぜ、ハイヒールでの来校は禁止されているのですか。
  A・学校の校庭は人工芝になっています。その上をハイヒールなど、かかとの高い靴で歩くと、人工芝を傷つけてしまいます。また、ハイヒールなどかかとの高い靴で校舎内を歩くと、大きな音がする可能性が考えられ、授業などの学校生活に影響する可能性が考えられます。
   従って、ハイヒールなどかかとの高い靴での来校は、ご遠慮いただいております。もし、ハイヒールなどかかとの高い靴を履いてこられた場合には、校内に入る際に、運動靴などにお履き替えいただきたいと考えています。ご配慮をお願いいたします。
      (立教小学校ホームページ 「よくいただく質問」より)
 
 ・学校によっては、お子さんを連れてくることを遠慮してほしいという場合がありますから確認を。
       
 ・お子さん同伴の場合は、むずかることもありますから、いつでも外に出られるように、後方の出入口の席に座る気配りを。1時間から長いところでは2時間にもなりますから、退屈しない工夫を。
  「受験生ならびにお子様のご来場はお断りします」等明記されている学校もありますので、よく確認してください。
 
 ・授業参観の場合は、同伴者と絶対に話をしないこと。生徒は授業中です。
  これが守られていません。「学校側では、ひそかにチェックしている」ということはないとは思いますが、こういった怪情報は広めたいですね、生徒のためにも。
 
最後のことについては、あきれてしまった経験があります。
昭和61年、雙葉小学校が説明会を再開した時でした。
会場は5階のホールでしたから階段を上ることになりますが、各階の踊り場に立て札があり、そこには文言は正確ではありませんが、「生徒は授業中です。静粛に願います」と書かれてあったのです。
階段をおしゃべりしながら歩く、お母さん方の無神経さを理解できませんでした。学校側に、先を読まれているのですから。友達と一緒に参加されるお母さん方、厳に慎んでください。
 
また、立教小学校など授業参観をかねている場合、始業時間前に集合しますから、朝の交通状態を頭に入れておきましょう。
利用する交通機関は、通勤・通学時間で混雑していますし、時間も通常よりかかります。
駅からタクシーでと思っていても、簡単に乗れるとは限りません。
もちろん、自家用車での来校は禁止されています。どこの学校にも、車を収容する広い駐車場はないからです。
 
ところで、授業参観の場合、1年生の教室が人気の的になりがちですが、高学年の教室は空いていますから、じっくりと見学できます。ある学校で、非常に厳しい先生の態度に接し、「やるじゃないですか!」と感動さえ覚えたものです。見学者がいようがいまいが眼中にない先生の態度が、建学の精神そのものだったからです。
 
連休、いかがでしたか。しばらく、調子が狂うかもしれません。気をつけてあげましょう。
 
  (次回は、「学校説明会で確かな情報を(2)」を紹介しましょう)
 
 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第7章(4)端午の節句です 皐月

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第27号-
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第7章 端午の節句です(4) 
 
 
★★五月に読んであげたい本★★  
 
「桃太郎」や「金太郎」は、おなじみのむかし話ですからさて置き、こわい話を紹介しましょう。
 
 
◆めしを食わぬよめ◆   松谷 みよ子 著
 
むかし、ある村に、たいそうけちな男がいました。嫁に食わせる飯がもったいないから、飯を食わぬ嫁を探してくれというのです。
ある日のこと、十六、七の姉さまが訪ねてきて、ご飯を食べずに働くから嫁にしてくれという。暮らしてみると、ご飯を食べず、しかも働き者です。ところが、毎日、米もみそも減っています。不思議に思った男は、次の日、仕事に出かけたふりをして、戸のふし穴からのぞいてみたところ、髪をほどいた頭の中に、大きな口があり、飯にみそをつけ、にぎっては放りこみ、大がまの飯を全部、食べてしまったのです。
男は、夕方になると、知らぬふりをして家に帰り、別れ話をすると、にわかに髪をふりみだし、頭の口をパックリとあけて、恐ろしい山姥(やまんば)になったのです。逃げ出そうとする男をつまみあげ、ふろ桶の中へ放りこみ、桶に帯をかけて背負うと、山へむかって走りだしました。男は、何とか助かろうと、桶から顔を出してみると、頭の上に木の枝があったのでとびつき、木からすべりおり、山をかけおり、ふもとまで来たのですが、気づいた山姥が、追いかけてきます。男は、そばの草むらに逃げ込みました。そこには、菖蒲がたくさん生えていたのです。
「魔除けの菖蒲にはかなわない」と、山姥は悔しそうにいい、山へ帰って行ったのです。
菖蒲が魔除けの草として、五月の節句に飾られるようになったのは、この時からだといわれています。
   五月のはなし  ももたろう 松谷 みよ子/吉沢 和夫 監修
                    日本民話の会 編 国土社 刊
 
話によっては、蓬(よもぎ)も生えている草むらになっているものや、風呂桶ではなく背負いかごのもあります。面白いことに、「この日が、実は、5月5日であった」という話も残っています。
 
子どもは、こわい話を聞きたがりますが、本当は、こわがりなのです。話だけでは、頭に大口がある姿を想像できませんから聞いていますが、本の場合は絵がありますから、こわがります。
 
ある時、絵本を見せながら読んだところ、こわそうな顔をして聞いていました。
喜怒哀楽の情緒も分化されてくる時期ですから、こわいものには、本当にこわがり始めます。
この話でも、頭の口で食べるところでは、
「これからこわーくなるから、こわい人は……、耳を、ふさいで、いいのだよー」     
といかにもこわそうにいうと、耳をふさいで下を向くのは、男の子が多いですね。食い入るように話を聞いているのは、案外、女の子なのです。肝が座っているのですね、小さい頃から。
 
あまり恐怖感を与えるのも考えものですが、こういった刺激を与え、情緒を育んでいくことも、昔話の大切な役目ではないでしょうか。恐怖感も、きちんと結末で拭ってくれる配慮がしてあるからです。
 
 
 
探してみるものですね。この話を見つけたときは、本当にうれしくなりました。
鯉のぼりの制作者は、意外にも、お侍さんだったのです。
 
◆コイのぼりのはじまり◆(伝説 墨田区) 
 
江戸時代のことです。
端午の節句が近づいたある日、江戸の町を一人の侍が歩いていました。武家屋敷の庭には、祝いの旗や、のぼりが立てられ、道では、侍の子が、紙のかぶとをかぶり、しょうぶで作った刀を振り回していますが、町人の住む町の子ども達は、かぶとも、しょうぶの刀も差していないことに気づいたのです。
染め物屋の家からは、のぼりを立ててくれとせがむ子どもの声が聞こえました。
「あれは、お侍さんが立てるものだからできない」と話しますが、納得しないで、泣きじゃくっているではありませんか。
そこへ、お侍が入って来て、大きな紙4枚と太い筆を借り、1枚の紙に大きなコイを描き、別の紙には、反対向きのコイを描きあげました。2枚の絵を合わせると、1匹のコイになるのです。もう1匹描くから、節句の前日までに、黒と赤に染め上げてほしいといって店を出たのです。
約束の日に染め上げ、日に干していると、やってきた侍は、はさみと針を借り、向きの違うコイ同士を、袋縫いに縫い合わせると、黒と赤の2匹のコイになったのです。長いさおの先につけて、家の前に立てさせました。五月晴れの空を、風に吹かれる真ゴイと緋ゴイ。周りには、町人や武士の子ども達も集まり嬉しそうです。
お侍さんの名は赤荻柳和、武士というよりは俳句を作ることで知られた、心のやさしい人だったそうです。こうして、次の年の5月5日から、江戸の町にはコイのぼりが、武士の家にも町人の家にも、立てられるようなったのです。
これが、コイのぼりの始まりだそうです。
 
 県別ふるさとの民話18 東京都の民話 日本児童文学者協会編 偕成社刊 
 
 
 
 
       夏もちかづく  八十八夜
       野にも山にも  若葉がしげる
       あれに見えるは 茶摘みじゃないか
       あかねだすきに すげの笠
 
小学校唱歌「茶つみ」の歌です。最近ではあまり聞かれなくなりましたが、女の子が「せっせっせーのよいよいよい」といってから、この歌をうたいながら遊ぶ、手遊びがありました。
 
「八十八夜」「若葉」「茶摘み」「すげの笠」といいますと、かつては夏の近いことを実感したものです。しかし、今はどうでしょうか。こういった風物詩も、「テレビで拝見」で終わっているようです。もっともテレビさえ見ていないご家庭も増えているように感じます。
 
季節を感じる余裕がなくなってしまったのでしょうか、もったいないと思います。
自然が、四季折々の変化を告げてくれるのは、本当に有り難いことだからです。
 
この歌にある「八十八夜」は、暦の上で、立春の日(2月4日頃)から数えて八十八日目、5月2日頃のことで、茶摘みが始まる季節です。
新しい芽を摘んで作った新茶売りの話があります。
                   
◆お茶屋とふるい屋と古鉄屋(ふるがねや)◆(山梨県の話)
 
ある日、一人のお茶売りが、「新茶ぁ、おいしい新茶だよ!」と、売り歩いていく後から、「ふるいー、ふるいー」といってふるい屋が歩いていきます。
「ふるい」とは、粉や砂など細かなものを、網目を通して落としたり、選り分けする道具です。「新茶、ふるい」と売り声が並ぶと、新茶なのか古いのかわからず、誰も出てきません。
お茶屋さんは、新茶が売れないと怒りましたが、ふるい屋さんも、
「ここは天下の往来、文句があるなら、お前さんこそ、どこかへ行ってくれ」
とけんかを始めました。
そこへ、古鉄(ふるかね)屋さんが、通りかかり仲裁に入ったのです。古鉄屋さんは、いらなくなった金物を買い取る商売です。二人から訳を聞くと、これから三人で売り歩こうといい、順番は、
「お茶屋さん、ふるい屋さん、私だ」という。
言われて三人が売り声をあげると、
「新茶ぁ、ふるいー、古鉄ぇ(ふるかねぇ)!」
となり、今度はいい商いができたのでした。
    
  日づけのあるお話365日 
         五月のむかしの話  谷 真介 編・著 金の星社 刊
 
この話に出てくる「ふるい屋」「古鉄(ふるがね)屋」も、説明がないとわからない仕事ですね。かつて、こういった行商屋さんが、金魚、風鈴、豆腐、納豆、アイスキャンディーなどを売りに来たものです。その他に、鍋やかまなどにできた穴を修理する「いかけ屋」さん。道の片隅にござを敷き、その上に道具を並べ、小さなふいご(携帯用送風機)で火をおこし、焼けた鉄の棒で金属同士をくっつけてしまう「半田付け(はんだづけ)」をしていました。
 
落語にも「売り声」という噺があり、お茶屋さんに代わり「魚屋」さんで、いわしを売っていたと記憶しています。「いわし、ふるいー、ふるかねえ!」
 
 
 
どうしても紹介しておきたい話があるのですが、季節感が希薄なのです。棚ぼた式に出世する話、こういったうまい話は、あるところにはあるものです。観音さまのご利益なのですが、運命は、本当に、どなたが決めるのでしょう。この話は、「今昔物語」の巻16の第28話に出ている他、古本説話集、宇治拾遺物語、雑談集にも、「長谷寺観音の霊験譚」として残されています。思いがけない交換から利益を得ることを主題にした致富譚(ちふたん)の一つで、原作を読むのは、少々しんどいですが、子ども向けに翻訳された本は、おもしろく読めます。芥川龍之介の愛読書であることもわかります。
 
◆わらしべ長者◆   阿部 律子 著
 
むかし、あるところに、お父にもお母にも死なれ、独りぼっちの貧乏な若者がいました。
ある日、村の観音さまに祈っているうちに寝てしまったのですが、夢の中に観音さまが現われ、
「ここから東に行き、初めに手につかんだものを大切にすべし」
と、お告げがあったのです。
急いで戻ろうとしたとき、石につまずき転びましたが、起き上がると、片手にわらしべを握っていたのです。観音さまのお告げは、このことかもしれないとわらしべを懐にしまい、東の方に歩いて行くと、1匹のあぶが飛んできたので捕まえ、わらしべの先にくくりつけました。すると、牛車に乗っていた男の子が欲しいというのであげると、ただでもらってはと、みかんを3つくれたのです。
しばらくいくと、男が道端に倒れていて、水がほしいという。みかんを差し出すと、お礼に反物をくれたのでした。これも観音さまのお陰かもしれないと、なおも東へ向かって行くと都に出たのです。
すると、倒れた馬を囲んで、人々が騒いでいました。馬の持ち主が、若者に、急用があるので、馬をやるから好きなようにしてくれというので、ただでもらうわけにはと、反物をあげたのです。
若者は、馬を引きながら、さらに東の方へ行くと、大きな家から、旅支度をした主人が出てきて馬をくれ、もし、3年たってもわしがもどらなかったら、この家も畑も、お前にやると言い、返事も聞かずに行ってしまったのです。若者は、田畑を耕しながら、主人の帰りを待ったのですが、帰ってきませんでしたので、若者は、その屋敷に住み、やがて、わらしべ長者と呼ばれる大金持ちになったのです。
(わらしべ  米や麦など稲科植物の茎を乾燥させたもの。引用者注)
 
  日本むかしばなし 12
    ふしぎなゆめ 民話の研究会 編 田木 宗太 絵 ポプラ社 刊
     
このように、安物が高価な物と交換されていく話は、ヨーロッパにはあまり見られず、なぜか、インド、ベトナム、朝鮮、日本といったように東南アジアに分布しているようです。そういえば、インドの原始仏典「ジャータカ」には、ねずみ1匹から交換が始まり、豪商の婿さまに納まる出世物語が収められています。
「ジャータカ物語」や「パンチャタントラ物語」(世界で最も古い子ども向けの物語集)もお勧めしたいのですが、最近、図書館でも見かけなくなりました。
パソコンで検索すると、かなり出版されているようです。あらすじを紹介しているものもあり、内容を把握できますから、のぞいてみましょう。
 
   (次回は、「何もないのかな 水無月」についてお話しましょう)

 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
 
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