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めぇでるコラム : 2022保護者: 2021年8月
さわやかお受験のススメ<保護者編>第11章 お月見です 長月(3)
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「めぇでる教育研究所」発行
2022さわやかお受験のススメ<保護者編>
~紀元じぃの子育て春秋~
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第42号-
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第11章 お月見です 長 月(3)
★★江戸時代の時の数え方★★
何かないものかと探していましたら、やはり、ありました。
江戸時代の「時の数え方」です。当時は、午前零時、午後零時(正午)を「九
つ」といい、「2時間を一時(いっとき)」とし、そこから2時間ずつ、ずら
して八つ、七つ、六つ、五つ、四つという数え方をしていました。面白いこと
に、「九つ」から始まって、「八つ」 「七つ」と減っていくのですから、現
代人の感覚だと戸惑います。しかし、これにはきちんとした理由があるのです。
掛け算の九九のお出ましです。
まず、鐘を9つ打つ時刻、午前零時、午後12時を「九つ」どきとして、次に
9の2倍の18を打つのですが、真夜中に18も鐘を打たれては、おちおち寝
ていられません。18では多すぎるので、十の位を除いて、2時間後の午前2
時に8つ打ち「八つ」として、以下、
9×3=27で、十の位を除いて午前4時に7つ打ち「七つ」、
9×4=36で、十の位を除いて午前6時に6つ打ち「六つ」、
9×5=45で、十の位を除いて午前8時に5つ打ち「五つ」、
9×6=54で、十の位を除いて午前10時に4つ打ち「四つ」、
元に戻って、午前12時が「九つ」、午後2時が「八つ」、午後4時が「七つ」、
午後6時が「六つ」、午後8時が「五つ」、午後10時が「四つ」、そして午前零時
が「九つ」と、こういう仕掛けなのです。
素朴な疑問ですが、なぜ10から始めなかったのでしょうか。
その理由は、陰陽思想では十を完全な数として数の頂点と考え、十は最上のた
め満ち足りると次はなくなってしまう、満月が欠けていくのと同じで、九を陽
(奇数)の最上、八を陰(偶数)の最上の数と考え神聖視していたことによるもの
です。
余談になりますが、聖徳太子の「十七条の憲法」は陰と陽の最上の数を足した
もので、陰陽思想の影響を受けてできたと言われているそうです。
また、時刻の決め方も世界標準時間などない頃ですから、こういったことで決
めていました。
江戸の時刻は、太陽の上るのを明(あけ)六ツとして、日没を暮六ツとして、
その間を六等分して昼の一刻を決める。夜は日の入りから翌朝の日の出まで
をやはり六等分して夜の一刻は決められた。従って、夏は日が長いので、昼
の一刻が夜の一刻より実際には長くなった。
(御宿かわせみ 16 八丁堀の湯屋 P250 平岩弓枝 著 文春文庫刊)
ところで、東京地方の民謡に、この時を表した「お江戸日本橋」があります。
「七つ」を現代の時刻7時と考えると、おかしな歌になってしまいます。東海
道五十三次を歌った長い歌で、全部残っている資料もあるそうで、興味のある
方、パソコンでご覧ください。
お江戸日本橋 七つ立ち
初のぼり
行列そろえて アレワイサノサ
コチャ 高輪`
夜明けて 提灯(ちょうちん)消す
コチャェ コチャェ
大名の参勤交代の行列を表した歌で、七つ(午前4時)に日本橋を出発し、「下
に~、下に~」の掛け声でゆっくりと進み、高輪で明け六つ(午前6時)を迎え
て提灯の火を消す、のんびりとした行列であることがわかります。正月恒例の
箱根駅伝、スタートの有楽町から高輪まであっという間ですから。歌詞に「初
のぼり」とありますが、江戸時代は京都へ行くのを上りといい今とは逆になっ
ています。当時の都は京都で、明治に東京へ遷都されて東京が都となり、東京
へ行くのが上りになりました。
日本橋は現在のコンクリートの橋を架けてから百年以上になりますが、橋の上
を高速道路が走り、窮屈で無残な姿になっています。あの関東大震災や東京大
空襲にも耐えた橋であり、親柱には「東京市の守護神・獅子像」と「15代将
軍徳川慶喜の揮毫(きごう)した銘板」が設置されている由緒ある橋で、もっ
と優しく保存してあげるべきではないでしょうか。
所変わって、小江戸と呼ばれる川越には、江戸時代の風情を今に残す蔵造りの
家並みを見下ろすように「時の鐘」がそびえたっています。鐘楼の高さは15.
9メートル、トタン屋根三層作りの木造で、階段はありますが上れません。毎
日6時、正午、15時、18時の4回、時を告げ、平成4年(1996)に環境
庁主催の「残したい日本の風景百選」にも選ばれています。
時の鐘は、今から400年前に創建されたといわれ、現在建っているのは4代
目。明治26年に起きた川越大火災後に再建されたもので、耐震診断の結果、
「倒壊の恐れあり」と判明。明治27年の再建当時の姿に戻す復元工事も実施
され、平成29年1月、工事は無事終了。
さて、「時」つながりで、最近、きかれなくなった落語に、「時そば」と題し
た噺があります。
ちょうど九つどきに、屋台のそば屋で勘定を払う男が、細かい銭で済まないが
と、数えながらおやじさんに渡します。
「ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう、なな、やあ」
ここまできたとき男が、いきなり、時間を聞きます。
「何どきだい?」
「へぇ、ここのつで…!」
とおやじがいうと、九文目を払わないで、
「とお、じゅういち、じゅうに、じゅうさん、じゅうし、じゅうご、じゅうろ
く、ごちそうさん!」
と、九をうまくとばして、お客さんが一文、見事にごまかします。
これをまねた男が、今度は時を間違えて、多く払うはめになる話です。
この噺は、関西では「時うどん」になりますが、薄く透き通った関西風の味も、
こたえられません。やはり、この時の数え方も、訳ありでした。
「ひい、ふ、みい」は、漢字の訓読みですが、これを覚えておくと、日付の読み
方に役に立ちます。
一日を除き、「ふつか、みっか、よっか、いつか、むいか、なのか、ようか、
ここのか、とおか」となっています。十一日、十二日、十三日と音読みになり、
十四日は「じゅうよっか」と音訓読みになり、二十日は「はつか」となり、幼
児には、難しい読み方になっています。「ついたち」は、一月に紹介しました
「十二支の話」を思い出してください。毎日、カレンダーを見ながら、「今日
は、9月4日、金曜日」とやっていると、無理なく覚えらます。以前、「日づ
けの歌」を紹介しましたが、お役に立ちましたか。お読みにならなかった方、
YouTubeで見ることができます。
★★防災の日★★
9月1日は防災の日です。
ご存知のように、大正12年(1923)に、関東大震災が起きた日です。
「災害は、忘れた頃にやってくる」と言いますが、8年前に東日本大震災が起
きました。当時、防災非常袋などに、飲料水や非常食、着替え、乾電池などを
用意し、万が一に備えていた方は、少なかったのではないでしょうか。用意し
た飲料水などの消費期限(Use by date)をチェックし、想定外の災難に遭わ
ないように心がけましょう。
幼稚園や小学校でも避難訓練をやっていますが、小さい子ども達は、自分で身
を守るすべを知らないものです。幼稚園、小学校にいる場合は、万全の態勢で
臨んでいますから心配ありませんが、一人で外にいる場合どうしたらよいか、
しっかりと教えておきたいものです。
東日本大震災が起きるまでの学校選びは、「子どもの足で通える学校」でした
が、「子どもが安心して通える学校」となりつつあるようです。
私立小学校は、埼玉県は5校、神奈川県では30校に、茨城県では7校ありま
す。千葉県は7校です。ちなみに東京は53校でしたが、平成31年4月に東
京農業大学稲花(とうか)小学校(世田谷)が開校しましたから54校になり
ました。
就学児童が減っている中で開校する学校側の狙いは、「安心して通える近くの
学校」ではないでしょうか。「教育は国家百年の計」ともいわれていますが、
地方の教育が充実するのは、長い目で見れば、わが国の教育のためにも歓迎す
べきことだからです。
最後になりましたが、今年の二百十日(立春から数えて210日目)は8月3
1日。この時季に、稲は花開き実を結びますが、台風が日本列島を襲い、農作
物が被害を受けるため、お百姓さんには厄日といわれ、奈良県大和神社の「風
鎮祭」、富山県の「おわら風の盆」など、各地で台風に暴れられないように、
風雨を鎮めるお祭りが行われています。
(次回は、「9月に読んであげたい本」についてお話しましょう)
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話
情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、
制作したものです】
さわやかお受験のススメ<保護者編>第11章 お月見です 長月(2)
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「めぇでる教育研究所」発行
2022さわやかお受験のススメ<保護者編>
~紀元じぃの子育て春秋~
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第41号-
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第11章 お月見です 長 月(2)
★★秋の七草★★
春の七草は、色彩的には黄色が多く、それに食べられるものばかりでした。
正月の7日に食べる七草粥には、春の七草が入っています。今年1年間、息災
で病気にならないようにと、払いの意味で食べたものですが、正月にご馳走を
食べすぎて、弱った内蔵をいたわる意味でも食べたのでしょう。これも昔の人
の生活の知恵です。
秋の七草は、どうでしょうか。
萩(はぎ) 薄(すすき) 葛(くず) 撫子(なでしこ) 女郎花(おみなえし)
藤袴(ふじばかま) 桔梗(ききょう)をいいます。見るとわかりますが、紫色が
多くて観賞用です。葛は、根は解熱剤として使われていますし、粉にした葛粉
は食べられますが、春の七草とは、大変な違いです。
事の起こりは万葉集で、山上憶良が秋の七種の草花を詠んだことから、秋の七
草といわれるようになったのです。
秋の野に 咲きたる花を 指(おゆび)折り かき数ふれば 七草の花
芽子(はぎ)の花 尾花 葛花(くずばな) 瞿麦(なでしこ)の花
女郎花(おみなえし)また藤袴 朝貌(あさがお)が花
(万葉集八巻 山上憶良)
朝貌の花は、現在では桔梗のことです。
芽子といい瞿麦といい朝貌といい、昔の字は、秋の七草にしてはゴツゴツした
感じを受けませんか。何だか花の名前の感じがしません。今の方が、親しめま
す。いや、もっと現実的な秋の七草があります。
昭和10年、菊池寛、高浜虚子などの文人や学者の推薦によって新聞社が選ん
だ「新秋の七草」があります。菊、葉鶏頭(はげいとう)、秋桜(コスモス)、
彼岸花、赤飯(あかまんま)、白粉花(おしろいばな)、秋海棠(しゅうかいど
う)の七草です。山上憶良と比べると、色彩豊かで華やかで、人手がかかって
いる感じがします。
平成に行われたインターネット投票による「秋の七草」は、春の七草でご紹介
した左大臣四辻善成(平安時代)の真似をするとこうなります。
ハギ キキョウ コスモス ススキ ヒガンバナ
リンドウ ナデシコ 秋の七草
しかし、本来の七草は、人の手にかかることをこばむ野草という感じが伝わっ
てきますが、いかがでしょうか。
話は変わりますが、秋桜(コスモス)、漢字で書くと日本産まれのようですが、
何とメキシコ産です。
コスモスは、一見、葉もきゃしゃで弱々しく、花もたおやかですから、責任を
もって、きちんと保護してあげなくてはと思いがちですが、茎は太く、本当は、
強いのです。台風でなぎ倒されても、いつのまにか窮屈な姿勢ながらも、花を
咲かせます。
★★重陽って、五節句の一つではないのですか★★
9月といえば重陽の節句、とならないのが不思議です。
3月の「ひな祭りですね」を思い出してください。9月9日を重陽といい、陰
暦9月9日の節句で、「9」は陰陽道では、陽の数とされており、この2つの
数を重ねた日で、菊の節句ともいわれていると紹介しました。陰陽道では、こ
のように奇数を尊び、「9」を最高の数と考え、天の数、天子様の数として、
神聖視されていました。それでしたら、大変な日ではありませんか。
しかし、何かお祝いをした記憶がないのです。
この日は菊の節句である。平安時代に菊は「翁草」「千代見草」「齢草(よ
わいぐさ)」などといわれ、重陽の節句に寒菊の酒宴が催された。「菊酒」
といって、酒に菊の花をひたして飲むと、長生きできるといわれ、また「菊
の着せ綿」といって、前の晩に菊にかぶせて露にしめらせた綿で身体を拭く
と長寿を保つといわれた。
(年中行事を「科学」する 永田久 著 日本経済新聞社 刊 P180-181)
このように菊は、古くから薬用植物として珍重されていましたが、菊の芯を集
めて作る枕を菊枕や幽人枕(ゆうじんちん)ともいって、香りが高く、頭痛を
治し、邪気を払うといわれ珍重されていたそうです。
日本の国花は、桜と菊です。
桜に始まり菊で終わる、自然に恵まれた日本を象徴する花であり、国花にふさ
わしい花であることも肯けます。
菊は、その姿が、端整で、美しく、香りにも、何ともいえない気品があります。
古くから菊は、竹、梅、蘭と合わせて四君子(しくんし)といわれ、水墨画の
画材によく使われていました。
菊の品評会などで見る菊は、華やかなムードに包まれ 十分に手間暇のかかっ
ている感じが、匂い出ています。菊人形も、ここまでやるかと、文句のつけよ
うのない作品もあり、うならされます。
いずれも、秋の風物詩として欠かせません。
しかし、人里離れた山あいに、ひっそりと咲く、小さな野菊、あれも、いいで
すね。
香もふくいくとして、観賞用の人工菊に、絶対に負けません。寒さに強く、晩
秋から初冬にかけて、けなげにも咲き続けています。花は、ひっそりと咲いて
いるからこそ、もののあわれを誘います。
ところで、皇室の菊の御紋章、あれは十六葉八重表菊で、後鳥羽上皇が、特に
菊を好まれたために定められたものです。
そして、欲しい人には最高の価値がある勲章、舌をかみそうですが、大勲位菊
花大綬章は、朝日と菊の花を表しています。
そして五十円硬貨の表のデザインは、何と菊です。さらに、兵庫県の県花は、
野路菊(のじぎく)です。ご存知のことと思いますが、菊は献花に用いますから、
病気の見舞いには、タブーの花となっています。
最後に、ことわざを一つ。
「春蘭秋菊 ともに 廃すべからず」(両者ともに優れており捨てがたい)
蘭と菊は、先ほども出てきた四君子の二つです。
中国では、「梅」「蘭」「竹」「菊」の4種の草木は「四君子」と呼ばれ、
古来より人々に愛されています。「君子」とは人徳・学識・礼儀に優れた人
のことですが、「梅蘭竹菊」は気品の高い美しさを備え、梅は高潔、蘭は清
逸、竹は節操、菊は淡泊と「君子」に似た特徴をもっていることから、草木
の中の「四君子」に例えられています。
筆者注 清逸(せいいつ) 清く浮世離れしていること
(島根県江津市のホームページ http://www.city.gotsu.lg.jp/6490.html)
5月にも紹介しました「六日の菖蒲」、それに加えて「六日の菖蒲、十日の菊」
があります。菖蒲は5月5日の端午の節句に、菊は9月9日の重陽の節句に用
いるもので、6日と10日では間に合わないことから、「時期に遅れて役に立
たないこと」のたとえです。類義語としては「後の祭り」「夏炉冬扇」、ちな
みに英語では“a day after fair”だそうです。
(kotowaza-all guide com 故事ことわざ辞典より)
(次回は、「菊花の約」などについてお話しましょう)
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話
情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、
制作したものです】
さわやかお受験のススメ<保護者編>第11章 お月見です 長月(1)
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「めぇでる教育研究所」発行
2022さわやかお受験のススメ<保護者編>
~紀元じぃの子育て春秋~
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第40号-
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第11章 お月見です 長 月(1)
8月はまだまだ「夏」という感覚ですが、暦の上では、今月から秋です。
秋の読み方は、「黄熱(あかり 稲が成熟する)からとの説が一般的ですが、
秋空が「あきらか(清明)」である、収穫が「飽き満る」、草木の葉が「紅
(あか)く」なるなどの説もあるようです。
長月(ながつき)のいわれは、秋も深まり、次第に夜が長くなっていくから
「夜長月」の略が、わかりやすいですね。
これにもいろいろな説があり、「稲刈月(いねかりづき)」の「い」と「り」
を略して「ねかづき」が「ながつき」となったものや、「稲熟月(いねあか
りつき)」が略されたという説もあるそうです。
★★お月見ですね★★
9月といったら、お月見ですね。
天保暦でいうと、8月15日にあたり、今のグレゴリオ暦では、9月の15日
から20日頃が見頃です。
秋の澄んだ夜空に、こうこうと輝く満月を観賞する習慣は、古くから中国にあ
り、それが平安時代に貴族の間に伝わり、やがて、武士や庶民にも広まったも
のです。昔は、「中秋の名月」といい、月を眺めながら、和歌を詠み、お酒を
酌み交わし、秋の夜を過ごしました。何やら風流な趣が伝わってきそうですが、
お百姓さんは、それどころではありません。何しろ日本は、農耕民族でしたか
ら、とにかく自然が頼みの綱です。
お月さまは、お百姓さんにとって、お日さまと同様、大変な存在でもあったの
です。
ご存知のように月は、およそ1ヵ月の間に丸くなり、また、だんだんと欠けて
いきます。新月から1週間程で半月になり、15日程で満月に、1週間後には
半月となり、再び新月に、これの繰り返しです。そこで昔の人は、満ち欠けす
る月の形から、1ヵ月のおよその日にちを知ることができ、それをもとに農作
業の時期、段取りを行っていました。
また、月の明かりで、夜遅くまで農作業ができたのです。言ってみれば、お月
さんは暦であり、時計であり、夜間の照明器具でもあったわけですから、感謝
の心は、現代では考えられないほど、深かったに違いありません。
さらに、旧暦の8月といえば、稲にとっては、夏の暑いお日さまを、さんさん
と受け、しっかりと実をつける時です。しかし、台風が来ると、折角、丹精を
込めて育ててきた稲は、強風と豪雨でメチャメチャになってしまいます。台風
一過の秋晴れのもとで、すっかり水を被ってしまった田んぼを、お百姓さんは
ぼう然と眺めるしかありません。ですから、お月さまに、すすきや秋の花とお
だんごや果物芋などを供えて、自然が荒れないようにお祈りを捧げたのです。
なお、十五夜を見た場合には、旧暦の9月13日(現在の10月10日~30
日頃)の十三夜も見なければならないといわれています。1回しか見ないお月
見を「片見月」といい、不吉なことが起こると嫌われていたからだそうです。
十三夜は、栗や豆を備えることから「栗名月」「豆名月」ともいい、十五夜が
中国から伝来したものに対し、十三夜は日本のオリジナルな風習です。
また、「十三夜に曇りなし」ともいわれ、晴れの夜が多く、秋の澄んだ夜空に、
こうこうと輝く月を見ることができます。丁度、10月の下旬にあたり、秋た
けなわの頃だからです。お子さんと一緒に「片見月」とならないように、確か
めてみましょう。こういった話をするだけでも、お子さんには、楽しい思い出
となるものです。
★★なぜ、すすきを飾るのでしょうか★★
すすきは、姿、形から見ても稲科の仲間だとわかります。
あの白い花穂が、いいですね。別名「尾花」といいますが、本当に漢字は説得
力があります。これは、お百姓さんから聞いた話ですが、なぜ、お月さまにす
すきを飾るのか、その理由は、すすきの尾花は、細くて長く、まるでほうきの
ようですから、秋風に揺れながら、その穂で、しっかりと神さまを捕まえ、豊
作をお願いしたいからだ、といっていました。
★★なぜ、お月さまにうさぎが…?★★
今の小学生は、笑ってばかにするかもしれませんが、昔は、宇宙ステーション
や月面探査など想像外のことでしたから、月にうさぎが住んでいると信じられ
ていました。満月を見ると、うさぎが跳ねているように、また、杵(きね)を
持ち、餅をついているようにも見えていたようです。
うさぎ うさぎ なに見て跳ねる
十五夜お月さん見て 跳ねる
文部省唱歌です、牧歌的で、いいではありませんか。
うさぎの住んでいる満月を見ながら、すすきやおだんごを飾り、自然に感謝す
る心は、小さい時に、きちんと育んでおきたいものだと思います。これも情操
教育に欠かせない、大切な行事ではないでしょうか。
満月を、星を、しみじみと眺めたことはありますか。お子さんと一緒に、夜空
を探索してみましょう。
澄んだ秋の空には、お子さんと共有できるロマンがあふれています。星座にま
つわる伝説を知る機会になるかもしれません。まずは、分かりやすく、3つの
星が並ぶオリオン座、ですね。
ところで、外国の人々も、うさぎだと見ているのでしょうか。天の川と同じく、
いろいろな見方があるもので、想像のつかないものもあり、見る位置により、
こんなに違うものかと驚かされました。
中国では、うさぎが薬草を作っているとも、ひきがえるやかにがすんでいる
ともいわれています。ヨーロッパや北アメリカでは、女の人の横顔やロバ、
インドや南アメリカではワニ、中東ではライオン、アフリカではうさぎがひ
っかいた傷に見えるそうです。
(心を育てる 子ども歳時記12ヵ月 監修 橋本裕之 講談社 刊 P83)
やはり、世界中の人々も、こうこうと輝く満月に、いろいろな思いを抱いてい
たのですね。
海外へ出かけたとき、お月さまがどのように見えるか、お子さんと一緒に眺め
てみるのも、いい思い出になるかも知れません。満天の星の主役は、北斗七星
や南十字星、オリオン座などのようですが、お月さまも加えてみてはいかがで
しょうか。手軽に出かけられませんが、南極では、逆さまに見えるそうです。
そして子どもから、「お父さん、どうしてうさぎさんは、いつも同じ格好をし
ているのかな」とかなり大人を困らせる質問があるかもしれません。裏側はど
うなっているかなんですね。言われてみればその通りで、大人は不思議に思い
ませんが、そこは探求心の旺盛な子ども。良い質問です。
「月の自転周期と月が地球の周り回る公転周期が一致しているから、常に表し
か見えない」ということのようですが、子どもにどう説明すれば良いか、悩み
ますね。
皆さんなら、どう説明しますか。
(次回は、「秋の七草」などについてお話しましょう)
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話
情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、
制作したものです】
さわやかお受験のススメ<保護者編>第10章 終戦記念日、このことです 葉月(4)
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「めぇでる教育研究所」発行
2022さわやかお受験のススメ<保護者編>
~紀元じぃの子育て春秋~
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第39号-
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第10章 終戦記念日、このことです 葉 月(4)
間もなく終戦記念日。小さな子ども達には難しい話ですから、今回の配信を機
に、戦争についてご両親はどう考えているか話し合ってみましょう。
【八月に読んであげたい本】
昭和20年3月10日、東京大空襲。たった一晩で、10万人もの尊い命が失
われました。
その東京大空襲を描いた「東京大空襲ものがたり」は、年長さんでも理解でき
るのではないでしょうか。当時の世相や風習もわかりやすく解説されています。
ダイジェストにするのはおこがましいと思い、本文を少し紹介することにしま
す。
◆東京大空襲ものがたり◆ 早乙女 勝元 著
「電柱だけが知っている炎の夜のこと。
ゆかりと進一の家の近くに、真っ黒こげの電柱があります。
これは、咲子おばさんにとっては、たった一つだけの、大事な目印なのです。
東京大空襲の炎の夜に、おばさんは、赤ちゃんの螢子ちゃんと、ここではぐ
れてしまったのです。
二人は父さんから、その話を聞かされ……」
これが物語の始まりで、真っ黒こげの電柱の叫び声で終わります。
亡くなった人は、何も語ることができませんが、どれだけたくさんの、つら
く悲しいできごとがあったことでしょうか。焼け残りの電柱は、今も東京下
町の、あの町角に立っています。北風の吹く寒い日も、夏のカンカン照りの
日も、電柱は亡くなった人たちに変わって、「炎の夜」のできごとを、私に、
そしてみんなに語り続けているように思われます。
でも、その声は聞こえません。ですから、ゆかりと進一は、電柱にかわって、
こう呼びかけるのです。
誰もが、平和を守るための努力を、
そのための、小さな勇気を、
わすれてはいけない、と。 花房ゆかり 眞一
(東京大空襲ものがたり 早乙女勝元著 有原誠治絵 金の星社 刊)
今となっては、空襲の辛い体験をされた多くの方々は、すでに冥界へ旅立たれ
たのではないでしょうか。こういった現実があったことを、しっかりと子ども
に伝えることも、親の仕事ではないかと思います。
◆長崎のピカ◆
昭和20年の8月6日に、広島に原子爆弾が落とされたの。
一発で広島中が燃え、何10万の人が死んだの。
3日後の8月9日、今度は長崎に落ちて、私の家族8人は一人ずつ順々に死
んでいったの。
最初に死んだのは、おばあちゃん。外出中に被爆し、真っ黒になり、はらわ
たを出して死んだの。次の日に、父さんと母さん、兄ちゃんと死んでいった
けれど、上の妹、ゆみ子は、ずうっと見ていたの。次の日の明け方、きれい
な船に、父さんと母さんと、おばあちゃんと兄ちゃんが笑って、おいで、お
いでしていると、かぼそい声で言うの。「船に乗ったらだめ!」と叫んだけ
れど、「みんなで迎えに来たよ」と言って亡くなったの。顔はボールのよう
にはれあがり、歯ぐきはまっ黒にただれ、紫色の斑点が身体中に出て、口も
動かないの。でも、そう言って死んだの。気がついたら、弟も死んでいたの。
下の末っ子の妹、すず子は、防空壕で体を寄せ合っていたら、冷たくなって
いくので、マッチをつけてみたら、もう死んでいたの。その身体を、一晩中
だいて寝ていたの。冷たくて、皮がべろべろとはげるの。
次の日、お隣のおじさんがきて、一人ずつ焼いたの。
私は、12歳でした。
夏休みのはなし
「海ぼうず」 松谷みよ子/吉沢和夫監修 日本民話の会・編 国土社刊
12歳の無残な夏、平和な時代に生かされていることに、ただ感謝するだけで
す。
もう一冊、戦時下を舞台にした話を紹介しましょう。
◆ホタルになった兵隊さん◆ 堀田 貴美 著
前の戦争のとき、九州南端の知覧に陸軍の飛行場があり、戦争末期、そこは
特攻基地でした。
特攻機は人間爆弾で、搭乗員は、二十歳前後の若者達だったのです。基地の
近くに、おばさんと二人の娘が手伝う富屋食堂があり、隊員達に親しまれて
いました。その中に、出撃後に飛行機が故障して、帰ってきた宮川三郎軍曹
がいました。再び、出撃しましたが、二度とも機械が故障し、引き返したの
です。整備隊長に、いい飛行機をくださいと訴えました。仲間が戦死し生き
残るのは辛かったのでしょう。同じ頃、やはり、一人生き残った滝本軍曹が
配属され、宮川さんと知り合い、富屋に一緒に顔を見せるようになりました。
昭和20年6月5日の夕方、二人は、明日出撃するため、富屋へ別れにきた
のです。
娘たちは、出撃の鉢巻きを贈り、話もつきません。帰りがけに宮川さんが娘
達に、「明日の晩9時に、ホタルが2匹入ってくるから、中に入れてやって
ね」と言いました。
翌日は天気が悪く、富屋の人達は、案じていましたが、夜8時頃、滝本さん
が現われ宮川さんは行ったという。2機並んで飛び立ったが、雨雲にさえぎ
られ、帰ろうと合図しました。宮川さんは、「お前は引き返せ」と、別れの
合図をし、雨雲の中へ飛び去ったのです。娘達は、宮川さんの気持ちが、痛
いように伝わってきました。
その時、一匹のホタルが天上にとまり、時計を見ると、9時でした。宮川さ
んが言った時刻と何秒も違いません。店にいた隊員もよってきて、滝本さん
達は、ホタルを見ながら、宮川さんの思い出を話しました。ホタルは、話を
聞いているようでした。
「宮川さん、やっぱり帰ってきたんじゃねえ。」
おばさんは、ぽつんと言いました。
日本むかしばなし 23
ジェット機とゆうれい 日本民話の会 金沢祐光 絵 ポプラ社刊
最後の、おばさんのつぶやきが、悲しく、何とも言えません。多くの人達の犠
牲でつかんだ平和を、私達は、無駄遣い、浪費していないでしょうか。
戦争の話から離れ、盛夏、真夏に怪談話を一席。
むかし話にも怪談はありますが、現代っ子は、昆虫を殺しても、「電池、取り
替えてよ、お母さん!」というそうですから、こんな話、恐がらないかもしれ
ませんね。
◆あめかいゆうれい◆ 中本 勝則 著
ある夏の暑い晩のこと。
あめ屋のじいさんのところへ、青ざめた顔をした一人の女が、あめを買いに
きたのです。
それからというもの、決まったように、夜遅く、あめを買いに来ます。七日
目の晩のことでした。
「あめをください」と差し出した手に、銭はありません。いつもより、青ざ
た顔は、悲しそうに見えるのです。じいさんは、何もいわずに、あめをあげ
ました。
「どこの人だろう」と後をつけると、不思議なことに、山寺の山門まで来る
と姿を消したのです。
すると、寺の中から、赤子の泣き声が聞こえるのでした。驚いたじいさんは、
和尚さんに訳を話すと、まだ新しい墓にじいさんを連れていったのです。
先日、赤子を身ごもったまま女の人が亡くなり、それがこの墓だというので
す。掘り出してみると、棺桶の中で、玉のような男の子が、母の胸にしがみ
つき、見れば男の子は、あめをにぎっているではありませんか。じいさんが
売ったあめでした。
昔、死んだ人には、一文銭を六枚、手に握らせ墓に埋めたそうです。死んだ
ら渡る「三途の川」の渡し賃でした。しかし、母親の手の中には、六文銭は
なかったのです。
和尚さんは、泣いている男の子を抱き上げて、「母さまは、わしが供えた銭
で、毎晩、お前のために、あめを買いに行ったのだ」と言って、静かに念仏
を唱えたのでした。
海ぼうず 松谷 みよ子/吉沢 和夫 監修
日本民話の会・編 国土社刊
妖怪やお化けの話は、たくさんあります。幼児用に、怖くない話が多いですか
ら、お子さんが興味を持ったときは読んであげましょう。無理なく、勧善懲悪
を教えるように構成されているからです。
( 次回は、「お月見です」についてお話しましょう。)
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話
情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、
制作したものです】
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