志望校選びの10のチェックポイント(2)
★説明会情報★
6月22日(水)10:00~昭和学院小学校
13:00~国府台女子学院小学校
6月24日(金) 8:30~立教女学院小学校(授業参観あり)
8:30から始まる「朝の礼拝」の少し前に、礼拝堂の
前で生徒たちの様子を見ておきましょう。ただし、8時以
前には入校できません。
6月25日(土)10:00~白百合学園小学校 参加票(パソコンからダウ
ンロード)持参。
(詳しくは、各学校のHPで確認をしてからお出かけください)
[四]宗教教育について
第四は「宗教教育に、何を期待しているか」です。
「宗教教育について、よく分からないのですけれども」とか「信者にならなけ
ればいけないのでしょうか」とおっしゃる方がいます。宗教教育、例えば、キ
リスト教の場合は、キリストの教えに基づいた教育が行われますから、入学試
験に際しても、信者でなければ不利といった噂のもとになっているようです。
本来、ミッション系の学校は、宗教を布教することを目的としていますが、だ
からといって、信仰を強制することはありません。「在学中に洗礼を受けなけ
ればならない」といった怪情報もあるようですが、それも単なる噂に過ぎませ
ん。
説明会でも、
「信者でなくても結構ですし、お坊さんや神主さんのお子さんもいます。国籍、
宗教、学歴、職歴、一切、関係ありませんが、条件といえば、日本語がわかる
ことです」
とおっしゃっています。
入学後、お子さんは、キリストの教えにしたがった生活を始めます。例えば、食
事の際にお祈りをしますが、その時に、「私は知らん」と、勝手に食事をしても
らっては困るということであり、学校の行事は、イースター、みこころ祭のよう
に、宗教が中心となっていることを了解してほしいといったことなのです。また、
信者でない方のために「宗教講座」などを設けて、親子で学んでほしいといって
いますから、何ら心配はありません。
それよりも大切なのは、宗教教育を通して、お子さんに何を学ばせたいかなので
す。
皆さんは、普段から、
「嘘をついてはいけません」
「自分のことは自分でしなさい」
「人に迷惑かけてはいけないよ」
「ありがとうという気持ちを大切にしようね」
と言っているのではないでしょうか。これは全て宗教教育の基礎、基本です。キ
リスト教にしても、イスラム教にしても、仏教にしても、全ての宗教に共通して
いる教えです。キリスト教は愛を、イスラム教は施与(施し与えること)を、仏教
は慈悲の心を教えると考えるとわかりやすいでしょう。こういったことを大切に
していれば、学校側の指摘している「ご家庭の育児の方針と学校の教育方針が一
致していること」になるのです。
最近では、価値観の多様化する世の中で、小さい時から絶対的な価値観、例えば、
幼稚園で、「これは白色です」と教わったことは、大学へ行っても変わらない指
導を受けられる教育、「心の教育」といいますか、そういったブレのない建学の
精神に基づいた教育を受けさせたいと考えるご両親が増えていることも確かです。
知識だけを詰め込む知育偏重型から、感情と意志を育む情意育成型の教育、これ
が私学の大きな特徴でもあるわけです。
宗教教育について、非常にわかりやすい話があります。あるミッション系の学校
の説明会で聞いた話で、文言は正確ではありませんが紹介しましょう。
この学校は日記指導に力を入れているのですが、ある年のこと、一年生が絵日記
に、
「昨日、お父さんとお母さんがけんかして、私は、さみしかったです」
と書いてきたそうです。読んだ先生は、一年生の子が「さみしかった」と表現し
たことに感激して、五重丸の花丸をつけて返しました。喜んだ子どもは、家に帰
って来て、
「ママ、見て!」
と嬉しそうに見せたものです。ほめられると思っていた子どもは、お母さんから、
「あなたは、なぜ、こんなことを書いたの!」
と怒られてしまいました。日記を書くもう一つの目的は、「嘘をついてはいけな
い」ことを教えることなのです。日記を通して、宗教教育を実践しているわけで
す。
「昨日、帰ったら、ママに叱られました」
と、子どもは、あくまでも正直に書くわけです。すると、もっと大きな花丸がつ
いて返ってきたので嬉しいのですが、お母さんには、もう見せません。怒られる
とわかっていますから。
後日の父母会の折り、お母さんは先生から、こう言われたそうです。
「この間、こういうことがあったのではないでしょうか。実は、私たちは、作文
を通して、子どもに嘘をいってはいけないと教えています。正直に書いたお子さ
んを叱るのは、お母さんが、『都合の悪いことは嘘をついてもいいのよ』と教え
ているのと同じではありませんか。『嘘をついてはいけない』というのが私達の
教育の基本ですから、ご家庭でも、きちんと守ってください」
いかがでしょうか、これはわかりやすい話だと思います。宗教教育は、学校の礼
拝堂や日曜学校の教会でお祈りをして讃美歌を歌うといった表面的なことではな
く、日常生活に、限りなく密着しているわけです。
また、説明会で、讃美歌を歌い、牧師さんの講話(聖書の話)を聞き、お祈りをし、
「アーメン」と唱和する学校があります。教会へ一度も行ったことがなく、ミッ
ション系の学校を希望されるお父さん方に、是非とも参加してほしいのです。
それは、青山学院初等部の説明会です。
第2回目の学校説明会は、9月3日(土)に米山記念礼拝堂で午前9時30分から
行われますが、 セキュリティーの都合上、運転免許証、健康保険証など氏名と
住所を確認できるものを持参することになっています。違和感を覚えたら、志望
校選びを真剣に考え直すべきでしょう。
最近では、立教小学校も「開会(閉会)礼拝」を行っていますが、「アーメン」
と唱和される方は少ないですね。今年は2階席の右側にいましたが、私の周り50
名ほどの参加者で、手を合わせ唱和された方はいませんでした。前任のチャプレ
ンは、「宗教の香りのする学び舎」と言っていましたが、説明会会場の上にある
礼拝堂で、しばし時間を過ごすと、何となく思いは伝わってきます。今年は例年
になく多くの方が参加していましたが、実感されたのではないでしょうか。
かつて、あるミッション系の説明会で校長先生は、「信者でない方々に宗教上の
儀式、お祈りなどを強制するのはいかがなものか考え、私どもはやりません」と
おっしゃったことがありました。宗教の香りは、入学後から、ほのかに漂ってく
るのが自然ではないでしょうか。
[五]通学距離と所要時間
次は、「通学距離と所要時間」についてです。
国立大学附属小学校の場合は、地域指定や通学時間に制限がありますから、条件
を満たさない場合は、受験できません。
私立でも、桐朋小学校は通学地域を指定し、所要時間は60分以内、乗車時間は
40分程度、乗り換えは2つまで、桐朋学園小学校も60分程度、雙葉小学校、
立教女学院小学校は1時間以内、入学後引越しされてもこの条件を守ることにな
っていますが、多くの私学の場合、通学時間、距離は、ご父兄の判断に任せてい
ます。
通学に1時間かかるとして考えてみましょう。8時までに登校するには、遅くと
も7時前には家を出ます。その前に食事、着替えなどの準備が必要ですから、お
子さんは6時に起床、お母さんは、朝食の支度のため5時半には起きることにな
るでしょう。週五日制が徹底されても、毎週五日間、この時程が繰り返されます。
さらに、学校が都心にあれば、ラッシュアワーに通学ということも考えられます。
心身共に健康でなければ、通い切れません。
ここで、三つだけ質問しておきましょう。
その一、お子さんは、十分ぐらい歩くと、「おんぶして!」と言いませんか。
その二、遊園地などで迷子になった時に、係の人に名前と住所を聞かれたら言え
ますか。
その三、電話をかけられますか。
私が担当している模擬面接で、住所も、電話番号も言えるお子さんに、
「ディズニー・ランドへ行ったとき、迷子になったらどうしますか」
と聞くと、答えられない場合があります。こういったちぐはぐなことが、入試準
備として行われているようです。迷子になったら、制服を着ている係の人に、住
所と名前を言えば、場内に放送して、親に知らせてくれます。何のために住所や
電話番号を覚えておくかを教えずに、面接のために記憶させているから、言える
けれども、それを使って何をするかがわからないのです。これが、記憶だけに頼
る受験準備のマイナス点ではないでしょうか。目的が分からないで知識だけを詰
め込んでしまうと弊害が起きるもとだと思います。「覚えさせておけば事足りる」
といって教え込んだことは、幼児期には余り役に立たないものです。
かつて、ある学校の説明会で、「登下校中に、関東大震災級の地震が起きた場合、
学校としては、とるべき手段がありません」と言ったことから、「学校の近くに
住む子が有利、遠方からの通学者は不利」といった噂が流れました。東日本大震
災以降、安全に通学出来ることも、学校選びの重要な条件になったようですが、
近くに住む子が有利といった噂が、再び流れ始めているそうです。9日の立教小
学校の説明会でも、田代教頭から「震災対策」の話がありましたが、私学の小学
校へは、多方面から時間をかけて通学するのですから、各校も万全の体制で臨ん
でいます。
そんな噂に心を惑わされる前に、そういった災害が起きた場合を想定し、もし、
電車やバスに乗っている時はどうしたらよいかなど、幼い子どもなりに対処出来
る、そういった育児をしっかりと心がけ、自立心を育てるべきではないでしょう
か。
以前にも紹介しましたが、早稲田実業学校初等部は、保護者が同伴できるのは、
入学式と翌日の始業式だけで、三日目から一人で通学します。安全のために出来
る限り保護者の同伴を望む傾向にあるようですが、それはともかくとして、子ど
も達の自立を妨げる過保護、過干渉の育児は、絶対に止めるべきです。
通学距離、所要時間は、単に物理的な距離、時間ではなく、こういった精神的な
面も考慮すべきではないでしょうか。
[六]健康状態
「健康状態」についてですが、これは小学校受験で、もっとも大切なことです。
健康といっても体だけではなく、心身共に健康であることです。
小学校受験は、「初めての場所で、初めて会った同世代の子どもの集団に入り、
初めて会った先生の指示を聞き、理解し、即座に対応する」ことです。自分だけ
が頼りの戦いです。
まず、話を聞く姿勢が身についているかです。
前にもお話しましたが、小学校の試験は、中高大学の試験と比べて、著しく異な
ることがあります。
ペーパーテストを考えてみましょう。通常、テストには、設問があり、それを読
んで答えるわけです。ところが、小学校のテストには設問がなく、逆に、答えが
全部、出ています。後は、スピーカーから流れてくる先生の指示を聞いて解答し
ていきます。
中高大の試験では、やっているうちに、「あぁ、これは苦手だから飛ばそう。時
間が余ったら後でやろう!」と自分のペースで挑戦出来ますが、小学校の試験は、
これが出来ません。「用意、ドン!」ではありませんが、始まればそのまま流れ
ていきます。途中であっても、「ハイ、そこまで!」と言われれば、そこでやめ
ないと、次の設問の説明が始まりますから、ついていけなくなります。マイペー
スは、認められません。
話を聞く力を身につける、これは試験だけではなく、何かを学習するためにもっ
とも必要な基本的な態度です。話を聞けなければ、何事も始まりません。話を聞
く姿勢は、親子の対話から、話の読み聞かせから、指示をきちんと出すことから
身についてくることを、くどいほどお話してきた理由は、ここにあるのです。
次に、お母さんの手を借りないで、どのくらいのことが出来るかです。
お子さんの一日の行動をチェックしてみましょう。お母さんが、どのくらい手を
貸しているかを知ってほしいのです。衣服の着脱、歯磨き、洗顔、食事、排便、
身辺の整理など、就学前には身につけておかなければならない「基本的な生活習
慣」ですが、いかがでしょうか。こういった生活習慣が身についていることは、
子ども自身が、試行錯誤を積み重ねながら学習をした結果です。幼児期は、この
試行錯誤こそ大切な学習なのです。試行錯誤は、工夫をすることから起こります。
手作業の得意な子の知的な能力が高いのは、試行錯誤を積み重ね、その手順を、
きちんと学習し、覚えているからです。単なる記憶ではありません。
自分の頭と体を使って、
「こうしたらこうなるぞ、こうしたらまずいかな、こうやったらうまくいったぞ!」
と学習しているのです。
オーバーに言えば、「誰にも頼らず、一人で生きていくための生活の知恵」を学
んでいるのです。
小学校の受験は、問題集を買って、勉強して、「合格!」とはなりません。その
ことを、ものの見事に表現した言葉があります。この話も何回も紹介しましたか
ら、もう耳にたこができているかも知れませんね。ある年のミッション系の学校
の校長先生のおっしゃったことです。
「受験に必要な知識や礼儀作法なるものを泥縄式に詰め込んで、『受験準備、こ
と足れり』とお考えでしたら、それは誤りであることに気付いてほしい」
日常生活での積み重ねが、5歳か6歳の秋に表れるのです。つまり、ご両親の育
児の姿勢が、そのまま表れます。これが小学校の受験なのです。
最後に、社会性や協調性といった集団生活への適応力が培われているかです。
これは幼稚園や保育園の先生方に聞けば、すぐにわかります。先生方は、お母さ
ん方に遠慮して、なかなか本当のことを言ってくれませんが、例えば、
「うちの子、集団生活ではどうでしょうね」
と尋ねたとき、
「多少、問題があるようですよ」
といった返事が返ってきたときは、ものすごく問題があると考えて、日常生活を、
きちんとチェックすべきです。多くの場合、集団生活に問題が起きるのは、ご家
庭の育児の姿勢に原因があります。繰り返しますが、過保護、過干渉の育児です。
3歳を過ぎてもお子さんのやっていることを見て、手を貸したくなれば過保護で
あり、口を出したくなれば過干渉の育児と言われています。過保護な育児からは、
わがままで、我慢のできない子に、過干渉の育児からは、消極的で引っ込み思案
な性格の子になりがちです。こういった環境で育てられていると、集団生活への
適応力は、育まれません。困るのは、お子さん自身です。
ちなみに、最近の脳科学者の研究によれば、集団生活への適応力の基本は、6歳
頃までに身につくもので、その時期を逃すと臨界期といって、どうにも修正が効
かなくなり、社会性や協調性を身につけるために、本人が非常に苦労すると言わ
れています。
夏休みには「お泊り保育」があると思いますが、どういった状態であったか、必
ず聞くようにしてください。親の元を離れたお子さんの本当の姿を見ることが出
来るからです。最近、行動観察型のテストで、集団生活への適応力を判定する問
題が増えていますが、学校側は、何を見たいのか、おわかりいただけたのではな
いでしょうか。
お子さんの心身の健康状態は、いかがですか。
梅雨に入ってやっと雨が降りましたが、関東地方のダムの貯水量が心配な状態に
なっているようです。自然相手では手の打ちようもありませんが、日常生活は、
心がけ次第でコントロールできます。受験準備に無理は禁物、心身共に健康であ
ることに留意し、頑張りましょう。
しかし、おかしな言い訳を考えるものですね。「不適切だが違法ではない」、庶
民をコケにした上からの目線。今度は「記憶にない」、「羞恥心」などかけらも
ない。お子さんはどう思っているかな。
(次回は「志望校選びの10のチェックポイント3」についてお話しましょう)