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めぇでるコラム : 2024年9月

2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>★★手は第二の脳 2 ★★

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         「めぇでる教育研究所」発行
2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2026年度入試(2025年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第12号
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★★手は第二の脳 2 ★★
 
 
 ●切る●
 
「切る」は、はさみの場合、ナイフのように押して切るのではなく、文字通りチョッキン、チョッキンと音がするように、上下の刃をしっかりと開閉させて切るようにします。
最初は、5センチほどの細長い紙を切らせ、はさみの操作をマスターしましょう。
できるようになれば、はじめは直線からです。
これもスピードは、必要ありません。 
チョッキン、チョッキンと音がリズミカルになったら、曲線や円、三角、そして複雑な形に挑戦しましょう。
 
新聞に挟まれてくる広告やダイレクトメールには、上質紙を使い、デザインの凝ったものがありますから、利用させてもらいましょう。
「ママが、後で使うから切り取っておいてください!」
お母さんのお手伝いだと聞けば、子ども達は頑張ります。
ただし、はさみは、操作を誤ると危険な道具になりますから、必ず、一緒にやりましょう。
 
そして慣れてきたら、チョッキンと歯が閉じ切る前に開き、前に進んでまた切るという風にできるようにしましょう。
 
成蹊小学校や学習院初等科では、2本の線で囲まれた中心をはさみで切る問題がありましたが、これは難しいですね。きちんと操作できるようになってから、挑戦してみましょう。
 
そして、はさみを相手に渡す場合、どうすればよいかを教えてください。
聞いた話ですが、新入社員がはさみを渡すときに、相手に刃の方を向けているのに驚き、その訳を聞いたら、
「だって、私が刃の方を持つと危ないではないですか!」
といったそうです。
しつけやマナーは、小さい時から身につけさせるべきで、これは家庭の文化だと思いますが、いかがでしょうか。
 
 
 ●貼る●
 
次は、「貼る」です。
貼るは、現代っ子の苦手とする作業の一つと言われていますが、そうならざるを得ないでしょう。
家で糊を使っているでしょうか、主役はセロテープでしょうね。
リップスティック型の糊は、あるかもしれませんが、少しつけただけでピタリと貼れますから、幼児用の糊とは、接着力も使い方も違います。
 
幼児の使う「つぼ型の容器」に入った糊には、いろいろと教育的な配慮がなされています。
 
ふたを開けることを考えてみましょう。
右利きの子なら、左手に糊の入った容器を持ち、右手でふたについている取っ手を持ち上げ開けます。
両手を使っていますから、目も手元の作業を監視しています。 
司令塔からの命令です。
 
次に、使う量ですが、これが難しいですね。
 
適量を取れるようになるには、ある程度の経験をつまなければなりません。貼る面積を計算し、分量を計りで量るわけではなく、目分量、勘です。
 
分量を間違うと、多ければベタベタに、少なければ直ぐにはがれます。
数を見極める直感と同じです。
 
まだ、あります、糊のつけ方です。
 
左手で糊をつける紙をしっかりと押さえ、右手人差し指は、表面全体に、のりが滞りなく行き渡るよう、ノビロ、ノビロとつけていきます。
これは練習が必要ですし、根気がいります。
このことです……。
 
根気のいる作業を丁寧に続けることで、持久力や忍耐力も培われてきます。
 
ところで、作業に時間がかかるお子さんや、器用ではないお子さんに、言ってほしくない言葉があります。
 
「ハヤクシナサイ!」、この一言です。
 
子ども達が、お母さんから言われたくない嫌な言葉の第一位といっていいのは、これです。
子ども自身は、一所懸命にやっているにもかかわらず、うまくできないからです。
苦戦している時に、せかされるのですからあせります。
あせるとプレッシャーがかかり、うまくできません。
こんなことが続くと、やがて、苦手意識を持ちはじめ、手作業を嫌がるようになります。
 
第二の脳の発達は、これでとまります。
お子さんにとって大変な損失であることを、肝に銘じて下さい。
 
お子さんには、大雑把に分けると「ウサギ型」と「カメ型」があります。
 
「ウサギ型」は、器用に物事をこなしますが、根気に欠けます。
「カメ型」は、作業の一つ一つを納得しながら取り組みますから、時間はかかりますが、根気があります。
「ウサギ型」は、小学校の低学年までは光り輝いています。
「カメ型」は、中学年頃から光りはじめ、やがて、立場は逆転します。「カメ型」は、試行錯誤を積み重ねていますから、じっくりと考える習慣が身についてくるからです。
 
カメ型のお子さんは、せかさないことです。
ウサギ型のお子さんには、「うちの子、頭がいいわ!」で安心せずに、考えさせる工夫をしましょう。
 
ところで、イソップ物語にある「ウサギとかめ」の話、明治時代の教科書では、どのようなタイトルがついていたと思いますか。
「油断大敵」です。
明治時代の漢字文化が生きていますね。
 
「面倒だな。お母さんのを借りよう!」
楽をしようとしていますが、これだから不器用になるのでしょう。
はっきりと言わなくても、これは手抜きです。
「手が汚れるから、セロハンテープにしようかな!」
こういった発想は、いただけませんし、この場合の「かな!」は、子どもらしくありませんね。
 
最後は、事後処理です。
 
手を拭き、糊の容れ物にふたをして、終わりです。
糊で汚れた手を拭く作業までも含まれていますが、「汚れたらきれいにする」は幼児にとって清潔感を身につける、大切な、大切な学習です。私が手の汚れない糊が気にいらない理由は、これで
す。
 
このように、糊を使う一連の手作業には、深い教育的な配慮がなされていることが、おわかりいただけたのではないでしょうか。
 
ですから、だじゃれのようですが、使わない手はありません。
こういった手順を踏んだ作業は、子どもの成長に欠かせない大切な経験です。
手順は記憶され、作業に流れのあることがわかり、やがて、手際よく進める工夫をする、基本的な訓練になっているのです。
 
使いやすく、便利になるのは結構ですが、子どもの発育段階を考え、今は面倒でも、糊を使うべきだといった見識を持つのも、親の役目ではないでしょうか。
 
幼児教室では、授業時間の関係で「つぼ型の容器」に入った糊を使う代わりにリップスティック型の糊を使うことがありますが、ご家庭では「つぼ型の容器」に入った糊を使う機会を多く持って
ください。
 
また、糊を使うのを嫌がる子は、泥んこ遊びをやらせていないと思います。
砂場で遊べない子は、糊を使うのを嫌がるはずです。
お子さんは、いかがですか。
 
最後に貼る練習ですが、切るところで紹介しました新聞に入ってくる広告など切り取ったものを、スケッチブックに貼ってみましょう。
 
初めは少量の糊で貼れる面積の狭いものを選び、中心に糊をつけ、ノビロ、ノビロと満遍なく伸ばす練習をすることです。
同じ大きさのものを扱うことで、適量をとるコツもわかってきます。そして、次第に大きなものへといった段階を踏むことが大切です。
 
最後に、セロテープについて、気にかかることをお話ししておきましょう。
 
なかなか適切な長さに切れないものです。
これも難しい作業ですから、少し無駄になりますが、2,3センチの長さに切れるように練習することです。
練習しなければ、何ごともうまくなりません。
うまくできない時は、切り取るぎざぎざの部分にセロテープを固定させ、右端から少し斜め下へ引っ張るように切ってみましょう。
ねじる動作ですね。
慣れてくれば、必要な数だけ切り、テーブルの端などに軽く貼っておくと「切る」と「貼る」の作業が、スムーズにできます。
 
 
 ●結ぶ●
 
「ひも」もそうですね。
昔は、寝巻でしたから、毎日、ひもと付き合っていました。
結ばなければ、格好がつきません。
パジャマはボタンですが、ボタンかけにも苦労している子、いますね。
お父さん、お母さんが、いつまでも手を貸しているからではないでしょうか。
お子さんにさせましょう。
過保護からは、自立心は育ちません。
 
箱にひもをかけて、結び方を練習しておきましょう。
あやとりもいいですね。
 
巧緻性ばかりか記憶力も刺激されます。
複雑な作品では、手順を忘れるとどうにもなりません。
ところが不思議なもので、遊びとなるとかなり複雑なものでも、積極的に練習をし、覚えてしまうものです。
おばあちゃんに教わったといって、三段梯子をこしらえたお子さんがいましたが、お子さんが、どのような環境で育てられているかわかりますね。
 
お母さんが作って見せ、お子さんに好奇心を持たせることです。
「ママ、すごい!」と間違いなく賞賛され、お子さんの知的な能力も開発されます。
一石二鳥ではありませんか!
 
 
●摘まむ●
 
「箸を使った問題」
 
 :お椀の中のものを、別のお椀に箸を使って、一つずつ移してください。
 
これが試験です。
立教女学院小学校や白百合学園小学校などで出題されています。
豆を買ってきて、割り箸を使い、懸命に練習する話を聞きますが、何かおかしくないでしょうか。
これは練習をして身につけるものではなく、身体の運動機能的な発達にかかわることですし、基本的な生活習慣の一つですから、しつけと関係あります。
 
一応の目安として、箸は3歳頃から使えるようになり、5歳頃には巧みに使えるようになるといわれています。
練習用の工夫された箸がありますから、もっと早く使えるようになっているかもしれません。
問題集を読むと、箸でカラーボールや玩具のミニチュアの果物、大豆、ビー玉、落花生、金平糖を摘まむ、積み木をハンカチで包むなどの課題があります。
 
なぜ、学校側がこんな試験をするのでしょうか。
 
手先の器用な子は頭もいいから、箸を持たせて選抜しようとは、考えにくいことです。
 
しかし、箸を満足に持てない子が多いからとすれば、これこそ問題です。
園児がペーパーテストに強くても、箸を使って食事をできない方が、よほど恐ろしい話ではありませんか。
こんなことまで試験で調べるのは、幼き戦士たちは、頭が良くても、こういったことが苦手なのでしょうか。
 
誤解を招いてはいけませんから、立教女学院小学校の学校説明会での話を紹介しておきましょう。
 
「あえてこの場で申し上げますが、テストの中でお箸を使う場面がありましたら、お箸で物を運ぶ速さを競っているのではなく、正しい箸の持ち方ができているかを見ていることをご理解
いただきたい。テストの主旨はそこにあります。日本の文化でもある箸の持ち方を、きちんと身につけてほしいと考えています。」
 
五感に刺激を与え、脳を鍛えましょう。
言葉は使わなければ進歩しないと同様、手作業もやらなくてはうまくできません。
しかも、この二つの能力は、ご家庭で楽しみながらできることです。
 
例えば、もっとも得意とする料理を作るとき、レシピを見ながら作るでしょうか。
素材選びから料理の手順、味付けまで、きちんと頭に入っているはずです。
司令塔の脳と実戦部隊の手との共同作業がスムーズに行われるのは、積み重ねた経験が、頭脳にしっかりと記憶され、手が指示通りに反応しているからです。
 
失敗を恐れず、試行錯誤を積み重ねながら挑戦することで、第二の脳は鍛えられます。
 
鍛えられると同時に、自力でできるようになることで、自立心が育まれます。
 
「手は第二の脳」といわれるのは、こういった仕組みになっているからです。
家庭でやらないとは、もったいない話ではないでしょか。
 
以上が、ご家庭でやってほしい基礎トレーニングです。
 
しかし、手作業は、月齢差が無残なほど表れますから、その点をきちんと判断しながら、あせらずに頑張ってください。
これまでのトレーニングだけでも、脳の活性化はかなり進み、お子さん自身、物を作ることに興味を持ち始めているのではないでしょうか。
 
物を作る楽しさを体験させる、絶好のチャンスです。
 
市販されている幼児用もしくは小学校低学年用の制作、折り紙、お絵描き等の本を参考に、お子さんと一緒に取り組みましょう。
 
季節折々の年中行事も、格好の教材になります。
門松、鬼の面、ひな人形、かぶと、紫陽花、朝顔、七夕飾りなどを作り、楽しい思い出をたくさん残してあげましょう。
その思い出から、独特の家庭の文化が間違いなく築かれていくのです。
 
ところで、お勧めしたい手作業は折り紙で、お金をかけずに、これほど楽しめる遊びはありません。
 
模擬テストを受けたお子さんには、12枚や30枚の折り紙で作ったくす玉をあげることがあります。このくす玉、一度ご家庭で挑戦してみてはいかがでしょうか。糊を使わずに組み立て
るのでやりがいがあります。(笑)
 
 
(次回は、「鍛えてほしい第二の脳3」についてお話しましょう。)
 

 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>面接編4

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第63号>
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面接編4
 
今回は、ご両親の面接についてお話をしましょう。
 
◆父親編◆
 
ほとんどの学校で、お父さん方には、志望理由と職業を尋ねられています。
ですから、合否の鍵を握っているのは、お父さん方といっても過言ではないでしょう。
責任重大です、何しろお父さんは、一家を代表して面接に臨むわけですから。
 
「なぜ、この学校を選んだのか」をきちんとおっしゃってください。
 
そして、私学の運営は、ご家庭に経済的な負担をかけることで成り立っていますから、学校側は、その基盤がしっかりと築かれているかを確認しなければなりません。
職業を尋ねられるのも、このためです。
会社名と所属課、仕事の内容によっては簡単な説明も必要です。
しかし、専門家でなければわからない言葉を使うべきではありません。今では普通に使っていますが、模擬面接で「システムアナリストです」と言ったお父さんがいましたが、これだけでは不親切で、誠実とはいえません。簡単な説明も必要です。
自営業の場合は、仕事の内容がわかるようにまとめておきましょう。
時には、営業年数、年商、従業員数など必要になる場合もあるかもしれません。
 
お父さんの応答で気になることがあります。
仕事柄、人と接する機会の多い方、営業関係の方は、話に如才のない分、長くなりがちです。
面接は、限られた時間内で、手際よく済ませるべきです。
1分間で、相手にどのくらい情報を伝えることができるか、一度、録音し、聞いてみましょう。
すると、聞く人には、どのくらい負担がかかるかがわかります。
そうすれば、簡潔明瞭な回答こそ、思いやりのある、誠実な態度であることが理解できるはずです。
 
制限時間のあることを、常に頭に入れておきましょう。
 
最後に、お子さんの姿勢が崩れたときに、恐い顔をして「駄目!」を出すお父さんもいますが、前にお話したお母さんのように、「やわらかくたしなめるサイン」を考えておきましょう。
 
 
 
◆母親編◆
 
「あがって話せなかったらどうしよう!」
などと考える必要はありません。
参加しているお母さん全員が、同じ不安な気持ちでいるのですから。
そんな心配をせずに、「私は保護者です!」と言い聞かせることです。
男には、よくわかりませんが、「出産のことを考えれば恐いものなし」とおっしゃったお母さんがいました。
 
それはともかく、一所懸命、お話しできれば、道は開けます。
誠意です。
 
ただし、その学校を選んだことに自信がなければ、不安になり、緊張しますから、あがります。
そこがポイントであり、全てです。
 
お父さんのところでも触れましたが、話がくどくて、長く、まとまりに欠ける場合があります。それを避けるために、例えば、お子さんの長所、短所を話すことを想定して、話し言葉で文を書き、録音し、聞いてみましょう。
ご自身で聞き、長いと思えば、相手にとっては、とてつもなく長いものです。
質問事項にもよりますが、あまり長く話すのは、私学の求めているであろう謙虚さにふさわしいでしょうか。
 
また、言葉遣いも、気になるところでしょうが、普段、あまりなじみのない敬語や、「……参りました」「……存じます」などの謙譲語を使って話すのは、かえって緊張のもとになりますから考えものです。
何事も、不自然な感じを与えない、自然体がいいのではないでしょうか。
ところで、最近、気になるのですが、若いお母さん方の中には、「そういったこととかにぃー、興味を持ち始めましたぁー」といったように、語尾をのばし、妙なアクセントで話す方がいます。
お母さん同士ではいいでしょうが、やはり、初対面の学校の先生方と話をするには、ふさわしいとはいえません。
 
また、自分のことしか考えずに、お子さんやお父さんが話されたことを、よく聞いていないお母さん方がいます。
 
例えば、面接の先生に、
「お子さんの言っていることは、こういうことですか」と確認を求められるかもしれませんし、「お父様がおっしゃったことについて、どう思いますか」と聞かれることもあるようです。
そんなときに困った顔をするようでは、保護者とはいえないでしょう。
質問事項を想定し、うまく言えるだろうかなどと心配していると、「心、ここにあらず」といった状態になり、お子さんやお父さんの回答を聞き逃すことになりがちです。
お母さん自身も、気を静め、落ち着くためにも、しっかりと話を聞きましょう。
 
そして、お父さんが、例えば、間違ったことを言っても、即座に訂正しないことです。「お子さんが、成長したと感じられることはありますか」といった質問に、「去年の秋、予防接種に行ったとき、泣かずに頑張ったときのことです」と答えたお父さんに、少し顔をしかめて、「パパ、今年の春でしょ!」と、静かに、きっぱりと訂正したお母さんがいました。
お父さんは、気分を害されたような表情をして、お母さんの方を見ましたが、二人の間に、なにやら気まずいムードが漂いはじめたのは、言うまでもありません。
予防接種の時期を間違えたから、育児に関心のない父親で減点などされるわけがないでしょう。
即座に訂正をしたお母さんの態度こそ問題です。
私学には、古い道徳観念が残っているとはいいませんが、やはり、初対面の人の前で、どうでもいいようなことで、お父さんの間違いを訂正するのは、私学の求めているであろう「謙虚なお母さん」としていかがでしょうか。
もっとも、お父さんが同様なことをするのも、言わずもがなですね。
 
 
 
◆退室◆ 
 
「本日は、ご苦労さまでした」
「失礼します」
立ち上がり、礼をして退室するわけですが、お父さんが先頭で、お子さん、お母さんという順が良いでしょう。
そして、出口で、立ち止まり、面接官の方を向いて、「失礼します」とあいさつをしましょう。
この時、お子さんは、一刻も早く外へ出たい気持ちから、あいさつどころではありません。
しかし、ここは面接の最後の場ですから、「お世話になりました」といった気持ちを伝えたいものです。
お父さんが一言、声をかけ、あいさつを促しましょう。
入室の時と違い、これから始まる面接にプレッシャーをかけるわけではありませんから、お子さんも、あいさつできるはずです。
「ごあいさつは」より「さよならしようね」といった言葉がけの方が、お子さんにも抵抗がなく、自然にできると思います。
最後に、お母さんがあいさつをし、ドアを閉めて、部屋を出ます。
 
これで終わったわけですが、うまく進んだ場合は、緊張から開放され、ほっとされたお母さんから、
「ご苦労さまでした」
などと、ねぎらいの言葉がかかるのですが、結果が思わしくないときは、部屋を出たとたんに、
「なぜ、私が願書に書いたとおりに言ってくれなかったの!」
などと、非難をするお母様もいるそうです。
「壁に耳あり、障子に目あり」ではありませんが、先生方が見ていないとは限りません。
 
しかし、聞いているお子さんが、どんな気持ちになるかを考えられない母親であるなら、受験はやめるべきでしょう。
面接の後にお子さんの試験があり、もう一度、学校へ来る場合、悪い印象を与えると、同じ場所へ行きたがらないものです。
本番の入試にも影響しかねません。
 
また、お子さんが、うまく応答できなかったとしても、そのことには触れずに、嘘でもいいですから、次につながる言葉がけを忘れないことです。
 
「初めての先生と、よくお話できていたね。お父さんもびっくりしたほどだったよ。今度はね、一人でどんなことができるか、お友達と楽しく遊べるかを見てくれるんだって。お父さんは来ないけれど、頑張るんだよ。ママ、今夜は、ユキの好きな焼肉がいいね」ユキちゃんが、好んで挑戦した受験ではないことを、保護者は、決して、忘れてはなりません。 
 
掛け持ち受験について、まだわかりませんが、10月に入ると、受験日と面接の日が決まり、学校から通知も来ますし、出願してみなければわからなかった、受験可能な学校も判明します。
どういったスケジュールになるか作戦を立てることになりますが、掛け持ち受験は、お子さんにとって大変な負担になります。
精神的にも、肉体的にもタフなお子さんばかりとは限りません。
ご両親で、しっかりと話し合いましょう。
 
また、試験のために早朝に家を出なければいけない場合もあります。
少しずつ、起きる時間を早めてみるとか、ベストコンディションで臨めるように工夫しましょう。
 
幼稚園も始まりました(保育園はいつも通りですね)。元気に通っていますか。
生活のリズムが戻るまで、あまり無理されないことです。心身ともに健康第一です。
 
そして、お母さん方へ。妙なうわさなどに心を惑わされない、賢いお母さんになりましょう。
もうあとわずかです、頑張ってください。
 
 
(次回は、「鍵を握るのは志望理由」についてお話します)

 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第12章 日本の神さまでしょう  神無月(3)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第46号-
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第12章 日本の神さまでしょう  神無月(3)
 
       
【十月に読んであげたい本】
 
神無月ですから、この話がいいでしょう。舞台は諏訪湖、といえば一大音響とともに湖面にできる氷の山脈「御神渡り(おみわたり)の現象が思い浮かぶのではないでしょうか。寒さで亀裂の生じた氷の隙間から噴き上げた水が凍り、裂けた方向を見て吉凶を占う「御神渡り拝観式」は、約600年の歴史をもつ伝統行事だそうで、昔の人は、本当に驚かれたことだと思います。
その諏訪湖に棲む龍神様の話です。
 
 
◆神在(かみあり)祭りと諏訪の竜神◆  谷 真介 著
 
毎年、旧暦の1月にあたる11月には、全国の神様が出雲の国(島根県)に集まるため、留守になる地方が多く神無月といわれ、反対に全国の神様が集まる出雲は神在月といいます。神様の集まる場所は出雲大社で、八百万の神様が集まります。この集いを「神在祭り」といい、出雲の人々は11月19日から1週間、静かに過ごすことになっていました。ところが、出席しなくてもいい神様がいます。信濃の国(長野県)の諏訪湖にいる竜神様もその一人で、こんな訳があったのです。
ある年のこと、竜神様だけが姿を見せません。待ちくたびれた神様達から文句が出始めると、「夜明けまえからここにいるぞ!」と声がしたので見上げると、天井の梁に身体の太い竜が巻きついていました。「降りてこられよ」というと、「私の体は長く、尻尾は湖畔の松にかかっていて、この社に入るまいが下りて行こう」と言ったのですが、下りてこられては神様の居場所がなくなるし、尾が国にあるならば全体が来るまでに相談は終わるので、「これからは国にいてほしい。決められたことは、こちらから知らせるから」ということになり、竜神様は大喜びして帰ったそうです。神在祭りが始まる夜には、近くの浜に海蛇が押し寄せてきました。これは神様たちの使者である竜蛇様といわれ、頭に「あり」という神様の紋がついていたそうです。
 (日づけのあるお話三百六十五日  11月のむかし話 谷 真介 編著 金星社 刊)
 
出雲大社の神様は、日本にいた神様、大国主命(おおくにぬしのみこと 大黒様)で、伊勢神宮の神様は、高天原から天孫降臨された天照大神です。大国主命は、後から来られた天照大神に国を譲り、その代わりに壮大な神社を出雲に建立してもらったそうです。大黒様が社から出られないように、しめ縄は逆向きに飾り、柏手は4拍手(普通は2拍手、4回は死を意味する)、正面ではなく、右の御座所に左向きに祀られて、参拝者とは正面を向いていないことなどから、怨霊として祟られないように封じ込めた説もあります。
 
 平安時代に源為憲の書いた「口遊“くちずさみ”」に、日本の三大建築を意味する言葉が出ています。“雲太(うんた)、和二(わに)、京三(きょうさん)というのですが、(中略)実際はそうだったかは別にして、そう信じられていたことが重要だと思います。雲太は出雲太郎の略で出雲大社、和二は大和次郎で大和、すなわち奈良にある東大寺の大仏殿、京三は京三郎で京都御所の大極殿です。つまり日本で一番大きいのは出雲大社、次が大仏殿、三番目が京都御所の大極殿というわけです。
 (神道から見たこの国の心 樋口清之 井沢元彦 共著 P109 徳間書房 刊)
 
当時の大仏殿の高さは15丈で、出雲大社は現在の社の2倍の16丈(48m)あったそうで、古代出雲史博物館に復元された模型が展示されていますが、48mの社まで伸びている階段を見た時は魂消(たまげ)ましたね。
 
ところで、出雲大社では、平成25年5月に60年ぶりに「平成の大遷宮」、本殿の修造が終わり「本殿遷座祭」が、10月には伊勢神宮の社殿を作り替える20年に一度の大祭、「式年遷宮」が執り行われました。出雲大社といい伊勢神宮といい、神話の世界が現在まで受け継がれ、日常生活の中に自然と溶け込んでいるのは、世界広しといえども日本だけでしょう。皇紀2674年の時空を経て実現したのが、平成26年10月に行われた高円宮典子さまと出雲大社宮司、千家国麿氏のご成婚。典子さまは天照大神、天孫族の末裔で、国麿氏は国を譲った大国主命を祀る出雲国造(祭祀を司る職)の末裔、国粋主義者ではありませんが、悠久の歴史を感じないわけにはいきませんでした。
 
次は、伊勢神宮の霊験あらたかな話です。
伊勢神宮には、皇室の主神である天照大神が内宮に、外宮には食物を司る神、豊受(とようけ)大神が祀られています。参拝された方はお気づきかと思いますが、神社には必ずあるしめ縄、狛犬、賽銭箱、おみくじなどはありません。
 
しめ縄のない理由は不明。狛犬は江戸時代頃から神社に設置されるようになったもので当時はなかったから。賽銭箱がないのは、神宮の祭儀を主宰するのは天皇陛下であり、天皇以外のお供えは紙幣禁断といって許されていないから。おみくじがないのは、お参りすることが吉日で、おみくじは国の重要な問題を解決するために神さまにお伺いするもので、個人的には吉兆を占うのは憚(はばか)られるという理由だからだそうです。どうしてもおみくじのほしい方は、「おかげ横丁」で買えます。
(伊勢神宮の豆知識 http://matome.naver.jp/odai/2138915798271580401 より要約)
 
 
 
次です。落語にも同じ話があり主人公は犬ですが、この話は猫です。猫というと、妖怪変化など恐ろしい話が多いのですが、昔話だけに、ほのぼののとした構成になっている珍しい話です。
 
◆ねこのよめさま◆   中本 勝則 著
 
むかし、心のやさしい若者がいましたが、貧乏で嫁のきてもありません。ある日、庄屋さまが猫を捨てようとしていたので訳を聞くと、ねずみも取らずに飯ばかり食べる猫だからという。若者は猫を貰い、「たま」と名付け、わずかな食べ物を半分あげかわいがりました。
ある時、若者が畑から帰るとたまが寝ていたので、「留守の間に、そばでも引いてくれ」といってみました。次の日、帰ってくると、うすの取っ手にしっぽを巻きつけ、うすを引いているのです。あんなことをいったので、そばを引いてくれているのかと、そばだんごを作り、たまにも食べさせました。
それから、うすを引くのは、たまの仕事になったのです。
ある晩のこと、「かわいがってもらいましたが、猫のままでは、恩返しができません。お伊勢さまにお参りすれば、人間に変えていただけるそうですから、お暇をください」といったのでした。若者は、それも一理あると考えて、銭を首に結びつけて旅に出したのです。しかし、若者は心配でくわを持つ手にも力が入らず、畑に出る日が少なくなったのでした。                             
それから一年たったある日のこと。若者が畑でぼんやりしていると、若い娘の声が聞こえたではありませんか。何と伊勢参りに行ったたまが、かわいい娘になって帰ってきたのでした。若者は大喜び、娘を嫁にして畑仕事に精を出し、幸せに暮らしたのです。
  十一月のお話 きつねのよめさま 松谷 みよ子/吉沢和夫・監修  日本民話の会・編 国土社 刊 
 
 
池波正太郎氏の「鬼平犯科帳」には、浅草の回向院に建てられた猫塚の話があります。両替屋に飼われていた猫が、小判を盗み出した現場を押さえられ、殺されてしまいます。この猫は両替屋にやってくる魚屋さんから、いつも魚をもらっていました。ところが、魚屋さんが風邪をひいて寝込んでしまい、一人暮らしで薬どころか三度の食事まで事欠く始末だった時、心配した猫が、店から小判三両を盗み出し、魚屋さんへ持っていったことが後でわかったのです。猫の恩返しをした心がわからずに殺されてしまったのを不憫に思い、建てた猫塚だそうです。動物の恩返し、真剣に聞く子ども達の目は、いつも輝いています。
 
ところで、この回向院には、義賊といわれた鼠小僧次郎吉の墓があり、墓石の欠けらを持っていると、「賭け事に勝つ」「運がつく」、受験生などには「するりと入れるご利益がある」といわれ、墓石を欠きとる人が絶えず、現在は墓前に真っ白な「欠き取り用の墓石」が置かれています。インターネットで見ることができますが、次郎吉は今でも有名人なんですね。織田信長父子の供養塔がある京都市の大雲寺には、安土桃山時代の大盗賊、石川五右衛門の墓があり、墓石を削って呑ませると盗癖が治ると信じられ丸くなっているそうで、二人ともお役に立っているようです。
 
 
 
ひな祭りに欠かせないのは桃の花、神さまに捧げる榊(さかき)も訳ありでしょう。少し恐ろしいですが、その言われを残した昔話があります。
      
◆鬼退治◆   おざわ としお 再話
 
むかし、ある村に元気のいい若者がいました。ある時、村に誰も来なくなり、若者は峠に化け物でも出ていると思い、家に伝わるやすりを持って退治に出かけたのです。山道の途中、たき火をしている老人に会いましたが、若者の行く手をじゃまするので腹をたて、けとばしました。すると、「わしには娘が三人いて、威勢のいい若者を婿にしたいと探していたのだ」と言うので若者は承知し、老人の家に行ったのです。立派な家でしたが、若者が門を入ると閉まり、かんぬきの掛かる音がするのです。鬼の家かもしれないと老人についていくと、家の前に二頭の馬がつながれ、裏には人間のしゃれこうべが積まれています。老人は、若者を座敷に招き、三人の娘がもてなしてくれました。夜になると、誰を嫁にするかと言うので末の娘を指名すると、「奥へ行って休みなさい」と娘には赤い星の、若者には白い星の模様の布団を用意したのです。若者は何かあると思い、娘が寝こむと自分の布団を娘にかけ、娘の布団を自分にかけ眠ったふりをしました。真夜中に鬼となった老人は、槍を持って現れ、白い星の模様の布団を刺すと、「料理は明日の朝だ」と戻っていったのです。若者は逃げようとしましたが、戸にはかんぬきがかかり出られません。そこで、やすりでこするとかんぬきは切れ、若者はつないであった馬に乗り逃げたのです。気づいた鬼は馬に乗り追いかけていきました。
倒れていた大木を若者の馬は跳び越えましたが、鬼の馬は大木に足をひっかけ、鬼もろとも下の滝に落ちたのです。倒れていた大木をみると榊でした。
無事に家へ帰った若者は、それから神さまを拝む時には、榊を使うようになったのです。うりや、うんぷんだりょん。
   日本の昔話 5 ねずみのもちつき おざわ としお 再話  赤羽 末吉 画  福音館書店 刊 
 
最後に出てくる「うりや、うんぷんだりょん」は、「これで話は終わり、めでたし、めでたし」という意味で、いろいろなのがあり、「とっぴんぱらりのぷぅ」といった奇妙なものがあったと記憶していますが、地方によって違うようです。
 
 
 
次の話は笑えますね。一休さんをはじめ、和尚さんと小僧さんの話には傑作がそろっています。いわゆる「とんち話」ですが、これも素晴らしい。「山川草木悉皆(しっかい・ことごとく)神性」などと冗談ですが、「至る所に神さまあり」ならではの話です。
 
◆かみがない◆   鶴見 正夫 著
 
むかし、あるお寺の小僧さんが、和尚さんのお供で出かけました。途中まで行くと、小僧さんは小便をしたくなり、道端によって着物の前を広げました。
和尚さんは、「そこには道の神さまがおられるので駄目だ」といいます。小僧さんはこらえました。少し行くと畠があったので飛び込み小便をしようとすると、和尚さんは、「そこには、作物の神さまがおられるから駄目だ」といいます。少し行くと川があったので、川へむかってかけ出しました。すると、「川には、水の神さまがおられるから駄目だ」といいます。どうにも我慢できなくなった小僧さんは、下っ腹を抱えて土手に登りました。そこには地蔵さまがありましたが、構ってはいられません。地蔵さまの前で小便をしようとすると、土手の下から和尚さんは、「駄目だ!」と怒鳴りましたが、小僧さんはもう我慢ができません。すると、何を思ったのか道の方へ向きかえ、着物の前をひろげてシャーと小便を飛ばしました。小便は、土手の下の和尚さんの、つんつるてんの頭にかかりました。「何をするんだ」と和尚さんは、びしょ濡れの頭で怒鳴りました。すると小僧さんは、すました顔でこういったのです。「和尚さんの頭は、つんつるてん。そこには、髪がないからよろしいでしょう」
 とんちでころり 鶴見 正夫・文 ヒサ クニヒコ・絵 ポプラ社 刊 
                    
人間の周りは、神さまだらけを実証した話ですが、落ちの語呂合わせ(神と髪)には、神さまも吹き出すことでしょう。
 
 
 
睦月、如月、弥生と懐かしい陰暦の月の名称が出てきましたが、昔はどんなことをしていたかわかる話があります。「鬼の目玉」(2月)にもありましたが、全部の部屋を説明しませんでしたから、ここで全てを紹介しましょう。
 
◆見るなの座敷◆   浜田 廣介 著
 
むかし、ある村の若者が、庭の梅の木の小枝に足をはさまれていたウグイスを助けたことがありました。秋に若者はキノコを取りに行って迷子となり、ある家の所へ出たので声をかけると、娘が出てきたのです。道を尋ねると方向違いだとわかり、途方に暮れていると、「今晩、ここに泊り、明日、いらっしゃれば」と。喜んだ若者を庭の縁側に招き、「母を呼んでくるので待っていてほしい。しかし、座敷の中を見ないでください」と言って出かけたのです。時間が経ち手持ちぶさたになった若者は、透き間から座敷の中をのぞいてみました。そこは一月の座敷で、床の間に松竹梅の鉢植えと鏡もちが供えられ、子どもが晴れ着をきてすご六遊びをしているのです。不思議に思った若者は、次の座敷をのぞきました。そこは二月の座敷で、稲荷様の初午祭りの様子でした。隣は三月の座敷でひな祭り、次は四月の座敷で花祭り、次は五月の座敷で端午の節句、次は六月の座敷で山開きの日の様子が、次は七月の座敷で七夕祭り、次は八月の座敷でお月見の様子が、次は九月の座敷で豆が実りアワも穂を下げて揺れています。次は十月の座敷、刈り入れ時でお百姓さんの働いている様子が見えるのです。次は十一月の座敷で、枯れ木が目立ち山には雪がかかり寂しい眺めです。最後は十二月の座敷で、人々は正月を迎える支度をしています。一年続きの座敷を見た若者は、元へ戻ろうとしたとき娘が現れたのです。「私は、助けていただいたウグイスです。お礼をしようと思っていましたのに、どうして、のぞきなさったの、見るなの座敷を。ホー、ホケキョ!」と鳴くと、娘も家も庭もなくなり、若者一人が、ぼんやりと林のやぶの中に立っていたのでした。     
   世界民話の旅 9  日本の民話 浜田廣介著 さ・え・ら書房 刊 
 
 
日常生活を快適に過ごすために、やってはいけないことを定め、破ると破局を招く話は、「古事記」に豊玉姫の出産をのぞいたことから離別する神話があるほどで、「他言してもらっては困るのだが」といった約束と同様、守られないようです。「千夜一夜物語」にも同じような話「アジプと40人の美女」があり、部屋は40で「のぞいてはいけません」の約束を破りとんでもない結果になるのですが、好色な話なので割愛します。アラブの世界では40という数は「たくさんある」という意味で使われるそうです。中国では「白髪三千丈」、日本では「八百万」となりますが、ちっちゃな島国にしては何とも大げさな表現で、笑ってしまいますね。
 
「世界民話の旅 9」には「見るなの座敷」の他に28の作品があり、「泣いた赤オニ」の作者、浜田廣介の手になる再話集です。ただし、現在は絶版となっていて気軽に手に取ることができないのが残念です。こういった民話や神話は、私達祖先の精神的な文化遺産です。幼い子どもの情操を培う大切なエッセンスが、こういった昔話ではないでしょうか。
 
子どもは親が解説しなくても、分化されはじめたさまざまな情緒を育みながら、自分なりに解釈し、自分のものにしていきます。そこから幼いなりに自我が芽生え、自立心が育まれます。
 
わが子を溺愛する過保護な育児や、四六時中目を光らせ管理する過干渉な環境からは、情操豊かな子など育ちません。自立心や積極的に取り組む意欲を育てることです。そのためにも、お子さんをじっくり育てるゆとりを持ちましょう。子どもへの保護、干渉は、ほどほどに済ませるべきで、干渉していいのは、しつけです。「他人に迷惑をかけない」は共生の掟で、教えるのはご両親です。
 
例えば、携帯電話やスマートホンの使い方を見るにつけ、しつけが出来ていないと痛感する場面に出くわします。
何でも自分を中心にしか考えず、「思いやる気持ち」が薄れていくそのもとは、幼児期の育児に問題があるのでは、と思います。「褒める時にはやさしく褒め、叱るべき時には厳しく叱る」、これは親の真心であり、子どもにとっては、最高の有難い手本ではないかと考えますが、皆さん方はどうお考えでしょうか。  
 
 
 (次回は、「第13章 七五三でしょうな」についてお話しましょう)
 

 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
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2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>★★手は第二の脳 1★★

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         「めぇでる教育研究所」発行
2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2026年度入試(2025年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第11号
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★★手は第二の脳 1★★
 
 
ペーパーテストの対策は、ご家庭でも問題集などを使い、十分過ぎるくらい行われているようですが、ものを作る作業、制作やモールにおはじきを通す、糸を結ぶ、箸を使うといった手作業の問
題に関しては、教室や塾の指導にお任せの場合が多いのではないでしょうか。
 
いわゆる、巧緻性の問題です。
 
辞書を引くと、「きめこまかく上手にできていること」となっています。
聞き慣れない言葉ですが、小学校の入学試験では、きちんとやっておかなければならない重要な項目の一つです。
 
「塗る、折る、切る、貼る、結ぶ、摘む」などの手作業の他に、制作や絵を描く、手本と同じものを書く模写の問題などがあります。
 
なぜ出題されるのかというと、このような手作業からは、誰かに手伝ってもらわずに自分で思っているように作らなければならないので、自立の状態がわかります。筆記用具の持ち方からは基本
的な生活習慣やしつけの状態が、制作やお絵描きからは、幼児が自分の考えを表す大切な方法、手段ですから情緒の発達状況が、模写からは、観察力、模写力、集中力が判定できるので、出題さ
れるわけです。
 
こういった作業は、子どもの発育段階と密接な関係があり、その年令にふさわしい経験を積んで身につくものですから、手を抜くとできません。
学校側は、年令にふさわしい経験を積んでいるかを見たいのです。
 
さらに、もう一押ししておきましょう。
 
なぜ、筆記用具の持ち方から基本的な生活習慣やしつけがわかるのでしょうか。
それは、食事をするように箸を持ち、一本抜くと、正しい筆記用具の持ち方になっているからです。
 
妙なボールペンの持ち方で字を書いている人がいますが、小学校の勉強が始まる前に、身についてしまう場合が多いようです。
「名は体を表す」ともいいますが、字もそうではないでしょうか。
メールではわからなくても、書いた字を見れば一目瞭然です。
 
かなり先の話ですが、履歴書を書く時にあわてても間に合いません。デジタルの時代ですが、まだまだアナログ、ペンで字を書くということは残るのではないでしょうか。
「たかが筆記用具の持ち方」などと思う前に、お子さんのための大切なしつけと考え、取り組みましょう。ご両親もお子さんと一緒に、今一度、正しい持ち方を確認してみましょう。
 
巧緻性の問題が、「ご両親の育児の姿勢を評価している」といわれる理由は、ここにあるからです。
年中から年長にかけて、たいへん重要なことですから、4回に分けてお話しましょう。
 
ただし、巧緻性は、子どもの発育状態と密接な関係がありますから、お子さんの月齢を十分に考慮しながらお読みください。
 
 
 
◆基礎作業編◆
 
 ●塗る●
まず、「塗る」から考えてみましょう。
簡単なようですが、子ども達は、大変な作業をやっているのです。
たとえば、クレヨンで、円の中をはみ出さないように塗ることを考えてみましょう。
まず、左手で紙を押さえます。
そして、右手でクレヨンを持ち、はみ出さないように注意しながら、できるだけ丁寧に、白い部分が残らないように、まんべんなく塗ります。この一連の作業を、試験の場合を想定し分析してみ
ましょう。
 
まず、最初に、先生の模範演技を見て、頭脳の司令塔にある何とかいう神経に、目と耳から情報がインプットされます。
説明終了と同時に、きちんと理解した脳から指示が出ます。
 
 「右手で赤のクレヨンを持って、左手は、画用紙が動かないように、しっかりガードしなさい。
 まず、黒く印刷されている円の内側を、円に沿って、はみ出さないように描きなさい。 
 次に左から右へ塗る反復作業を根気よくやりなさい。
 左上の方、少し塗りが足りません、至急、補足しなさい。
 残り時間は、あと30秒程です。
 スピードを上げなさい」
 
目は手元を、指示どおりにやっているか見ています、監視カメラですね。
リアルタイムで、次々と正確な報告が届きます。
それに従い、即座に指示が出ます。
話を聞き取る力が備わっていないと、こうはいきません。
きっちりとした指示が出ないことには、手の方も、動きません。
このことです……。
 
手先の器用な子の知的な能力は高いといわれています。
それは、持って生まれたものではないと思います。
頭も使わなければ、よくなりません。
試行錯誤を積み重ねることで手順を覚え、その度に司令塔から指示が出、手先もそれに応えて頑張ります。
記憶する力がつき、手先も器用になるのです。
 
いってみれば、頭と目と耳と手の合同訓練ですね。
 
これがバラバラでは、おかしなことになります。
目がきちんと見ていないと、状況がわかりません。
耳がしっかりと聞いていないと、指示されていることが理解できません。
わからない状態ですから、脳からの指示も、不正確になります。
この意味不明、「……わかりません」の状態で作業が始まると、どうなるでしょうか。
 
色を塗れば線からはみ出します。
折り紙を折れば、グチャグチャに折ります。
はさみで切れば、ギザギザだらけです。
糊を使えば、量を無視してベタベタに貼ります。
紐を結べば、ユルユルです。
 
こうなるでしょうね、合同練習不足です。
最近、こういう子が増えているそうです。
この責任の一端は、ご家庭の教育にありではないでしょうか。
過去問などを買い求めて知的なトレーニングは、積極的になさっているようですが、こういったことこそ、ご家庭で時間をかけ、ゆっくりと、じっくりやってほしいのです。
お子さんと一緒にやりましょう、簡単にできますから。
それに、問題集を使っての勉強と違い、腹を立てないで済みます。
 
たとえば、色塗りです。
5センチの正方形を縦、横4個ずつ作って、色を塗らせましょう。
色を決めて、斜めに塗ると、きれいな模様ができます。 
最初は、この程度から始めて、ます目を増やしてあげましょう。
後で出てくる系列完成の学習にもなります。 
 
・・・・・・・・・・・・・
・ 赤 ・ 緑 ・ 青 ・ 赤 ・
・・・・・・・・・・・・・
・ 緑 ・ 赤 ・ 緑 ・ 青 ・
・・・・・・・・・・・・・
・ 青 ・ 緑 ・ 赤 ・ 緑 ・
・・・・・・・・・・・・・
・ 赤 ・ 青 ・ 緑 ・ 赤 ・
・・・・・・・・・・・・・
 
こういった遊びから、脳も手先も鍛えられ、美醜の感覚も育ってきます。
塗り絵の苦手な男の子は、こういった遊びをしていないのではないでしょうか。
大人には何でもないことが、幼児にはとてつもなく難しいということがたくさんあります。
何事もそうですが、基本的な作業をおろそかにしないことです。
 
塗る問題でも難しいものがあります。
 
★鉛筆を使い、一番目の四角を最も濃く塗り、二番目は少し薄く、三番目はそれより薄く塗りなさい。
 
日本女子大学附属豊明小学校で、よく出題されています。
今の段階では、まだ難しいですが、こういった問題もあることを覚えておきましょう。
 
 
 
●折る● 
 
「折る」は、折り紙の登場です。
これから折り紙には、いろいろな領域でお世話になりますから、常備しておきましょう。
折ってみるとわかりますが、メーカーにより色が微妙に違い、厚さにも変化があり、硬いもの、柔らかいものがあります。
柔らかいものだけ使っていると、硬いものは折りにくくなります。
最初は柔らかいものを使い、うまく折れるようになれば硬いものも使ってみましょう。
 
折り紙は、楽しいものです。
何しろ、1枚の紙から、立体作品ができるのですから、すぐれものです。
簡単なものから始めましょう。
 
大切なのは、最初の一折りで、ここを、キチンと押さえましょう。 
スピードは、必要ありません。
 
丁寧に、しっかりと折ることが大切で、一つ一つの作業は、まさに巧緻性そのものです。
さらに、折り紙は、手順を忘れると完成しませんから、記憶力もつき、一石二鳥の効果を期待できます。
基本は、折り紙の角をきちんと揃えて半分に折り、長四角と三角を作ることです。
 
正確にきれいに折るには、指先の力も鍛えなければなりません。
うまく折れない場合には、紙をちぎりましょう。
 
新聞紙で十分です。
最初はうまくちぎれなくても心配ありません。
きちんとちぎれるようになるには、いろいろと工夫する必要があります。
これは、とても大切なことで、教える前に挑戦させてください。
 
「子どもが、考え、工夫する前に、教え込んでしまう」のは、決してよいことではありません。
育児が過保護や過干渉のタイプのお母さん方は、とかく教えがちですが、まず、子どもにさせることです。
 
うまくちぎれるようになるには、工夫が必要です。
工夫してできるようになれば、やる意欲も育ちます。
できたことから達成感を味わえるからです。
 
大人から見れば「何だ!」と思えることが、子どもにはすばらしい発見でもあるのです。
ちぎった紙を使って、1つに丸めた後折り紙などで包み、ボールを作ってみましょう。
はさみを使わずに、紙をちぎってものを作るテストがあることも覚えておいてください。
なお、「千切る」であって、「裂く」ではないのでご注意ください。
 
また、機会があれば、お母さんが折ったものを広げて、どういった線ができているか見せてあげましょう。
あまりにもきれいな幾何学的な模様に、きっと驚くと思います。
左右、上下が対称になっているなどと難しい説明はいりませんが、やがて挑戦しなければならない対称図形の学習に役に立ちます。
 
以前、暁星小学校では、少し工夫しないと難しいと思える折り方をさせました。
日本女子大学附属豊明小学校では、座布団に正座をして折り紙をしたこともありました。
 
ところで、最近では、鶴を折れない保護者がいるようです。 
お子さんは、さみしがりませんか。
お子さんばかりに要求せず、練習し、お子さんの期待を裏切らないようにしてください。
 
    (次回は「手は第二の脳 2」についてお話しましょう)

 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>面接編3<お子さん編>

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第62号>
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★説明会情報★
 
 国府台女子学院小学部
  学校説明会 9月14日(土)10時~11時30分
  学院祭見学 9月21日(土)、22日(日)
   
     詳しくはホームページをご覧ください。
 
 
 
 ■ 面接編(3)
 
<お子さん編>
 
ほとんどの場合、質問は、お子さんから始まります。
緊張をほぐすために、名前や生年月日、幼稚園(保育園)のことなどから聞くようです。
しかし、住所や電話番号は、通常、あまり聞かれませんから、うまくいえない場合があります。
そんな時、ほとんどの子ども達は、お母さんを見ます。
すると、お母さんは、
「東京都新宿区………」とやりがちです。
 
これはどうでしょうか。
 
住所や電話番号を、面接のために記憶させていると、こうなりがちです。
言えないと「減点される」と思っているのではないでしょうか。
ですから、答えなるものを、すぐに教えてしまうのです。
「ほら、迷子になったとき、どうする約束でしたか」などと、二人だけでわかるヒントを出せるお母さんであってほしいのです。
遊園地やデパートなどで迷子になったとき、何が頼りになるでしょうか。
名前と住所を言えば、すぐに探してもらえることを知っていれば、お子さんも覚えるはずです。
 
自然災害を含め、緊急事態が発生した場合、電話は連絡に欠かせないものです。
いずれも、面接のために覚えることではなく、自力で物事に対応しなければならない時のために、身につけておかなければならない知恵ではないでしょうか。
 
「幼稚園(保育園)は、楽しいですか。仲良しのお友達の名前を教えて下さい」
幼稚園や保育園が楽しく、友達がたくさんいれば、すぐに答えられるでしょう。
こういった質問からは、集団生活への適応力である社会性や協調性が育まれているかがわかります。
 
幼児への質問は、日常の生活が中心となっていますから、難しい質問はないはずです。返答に詰まったときは、「答えられなくてもよい」とは言いませんが、面接官が、ご両親の態度を見ていると思えばいいでしょう。
 
余計な口出しをせず、温かく見守ることが基本ですが、状況に応じてお子さんがわかるヒントを出せる保護者であってほしいのです。
その時には、面接官に、「よろしいでしょうか」と一言、確かめることもお忘れなく。
 
絶対にやってほしくないのは、お子さんの回答を訂正することです。
 
親子面接の指導をしているときに、こういったことがありました。
「何人家族ですか」
「はい、5人です」
お父さんが、あろうことか、「えっ!」といって、少しですが、笑ったのです。
「違うでしょ、4人ですよ」
お母さんが、あわてて、恐い顔をしながら、間違いであることを指摘しました。
びっくりしたのは、答えたお子さんです。
これはまずいと思い、すぐに質問をしました。
「5人家族なのですね。では、どなたがいらっしゃるのかな」
「お父さん、お母さん、お姉ちゃん……、ぼくと……、ポチです」
お母さんを気にしながら、小さな声で答えました。
ポチは、いうまでもなく犬ですが、みんなでポチを可愛がっている様子が伝わり、微笑ましいではありませんか。
犬を家族に入れたから、「常識外れで減点!」などと考えにくいことです。
あわてて訂正したお母さんこそ、「保護者として失格!」、マイナス点がつくと思います。なぜなら、その質問を境に、お子さんはそわそわし始め、それまでの元気な姿が見られなくなったからです。
笑ったお父さんは、その後のお子さんの様子を見て、後悔したのは言うまでもありません。
 
お子さんは、質問の内容を理解し、自分の言葉で、堂々と答えたのですから、うなずいてあげるべきです。
お子さんの回答を訂正することはもちろん、笑うなどとは、保護者としてすることではありません。
 
お父さんやお母さんに関する質問で、お子さんが困った顔になるのは、保護者の仕事です。
「お父さんは、どのようなお仕事をしているのですか」の質問に、「国家公務員です」と「みんなのために役に立つお仕事です」との答えでは、どちらが子どもの答えとして、ふさわしいでしょうか。
「サラリーマン」では、わかりません。
お子さんは、お父さんやお母さんの仕事を、きちんと説明できますか。
こういった質問から、普段の親子関係がわかるとは言いませんが、仕事はご自身の生きがいと考えれば、あだやおろそかに出来ないのではないでしょうか。
「お父さんやお母さんは、ぼく達のために一生懸命に頑張っているんだ!」
と思っていないお子さんは、いません。
 
お父さん方、「お子さんがわかるように、お父様のお仕事を説明して下さい」といわれた場合、どうお話ししますか。模擬面接でも戸惑うお父さん方が多いですね。「お子さんがわかるように」が、難しいのです。
お母さんにも同じ質問をしてみると、どうしたわけか、お父さん以上に説明ができないことが多いですね。
ご両親共に、お子さんにわかるように説明しておきましょう。
 
姿勢の崩れるお子さんもいます。
 
質問を聞きながら、足をぶらぶらさせたり、手を机の上に乗せたり、女の子は、スカートを握りしめるなど、落ち着かなくなり、姿勢の乱れる場合があります。
普段から、食事のときなど、だらしなく食べているお子さんは、その通りにしますから問題外として、心配なのは、緊張のあまり、本人が気づかずに、そのようにふるまうことがあるのです。
 
姿勢の乱れた姿など見たこともないお母さんは、びっくりしてしまい、あわてて手足をたたいたり、手を膝に戻したり、心配のあまり、膝をつねってしまうお母さんもいます。もっとすごいお母さんになると、恐い顔をして、にらみつけます。
これもどうでしょうか。
本人は緊張しきって、無意識にそういった動作をしているにすぎないのです。
何もしなくてよいとは言いませんが、やはり、修正をしなくてはならないでしょう。
 
これはいいなと思ったお母さんがいました。
 
「タロウくん、足が笑っていますよ」
と、やさしくいったのです。
気づいた本人は、お母さんを見て、手で頭をかくような仕草をし、照れ笑いしながら、腰を少し前に進めて、足をしっかりと床につけ、手はお膝になりました。
お母さんは、「申し訳ありません」といった気持ちを表すかのように、軽く会釈をしたのです。
 
見事でした。
 
お子さんが緊張した場合、どのようなことをするか、よくわかっていて、椅子に浅く腰掛けて訂正する方法を、親子で体験済みだったのでしょう。
これが保護者の役目ではないでしょうか。
 
また、本人の質問が終わり、ご両親の番になると、今度は緊張感から開放され、退屈になり、姿勢の崩れることがあります。
模擬面接のときに、男の子には、「お父さんやお母さんがお話をしている間は、手をひざに置き、背を伸ばして聞いているのが、一番、かっこいいのだよ」、女の子には、「一番、かわいいのですよ」と話しています。
「じっとしているんですよ!」だけでは、ほとんど効果はありません。
親が話をしているとき、終わるまで静かに待てる方法を考えてあげましょう。
 
かつて、暁星小学校では、お父さんとお子さんがゲームをし、その様子を両親に聞くといった形式で行いましたが、狙いは、3人が醸し出す雰囲気から、日常生活の様子を判断したのではないでしょうか。つまり、面接のための定番的な訓練は、「役に立ちませんよ」と言いたかったのだと思います。暁星小学校ですが、今年も面接は保護者面接、また、保護者に作文の提出があります。
 
最後に一言。
 
家庭学習で苦手な問題にとり組む時には、細心の注意が必要です。
繰り返しますが、幼児がわからないといった時は、本当にわからないのです。
お子さんがわかるように工夫してください。
「何でできないの!」といった不用意な言葉がけは、今までの自信を崩すことにもなりかねません。
お子さんが萎縮するようなやり方だけは、絶対にやめましょう。
 
夏の疲れが出やすい時期です。健康管理には、十分に気をつけてください。       
 
 
   (次回は、「ご両親の面接」についてお話をしましょう。)
 

 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第12章  神無月、風流です(2)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第45号-
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第12章  神無月、風流です(2) 
 
 
今でも仏壇と神棚が家の中にあるご家庭もあるのではないでしょうか。
仏壇には先祖のお位牌が、神棚には天照大神のお札が鎮座ましまして、さらに庭には氏神さまを祭った小さな祠があるかもしれません。
仏さまと神さまが同居しているのです。
 
でも、不思議でも何でもないのでしょうね。
生まれた時には、神社へお参りして神さまに報告し、結婚式では、キリストに永遠に愛し合うことを誓い、死して後は、阿弥陀さまのもとでやすらぎを願うことに、何ら不都合を感じないのが、日本人の信仰心ですから。
 
キリスト教やイスラム教のように、唯一つの神を信仰する一神教は、やたらにもめたりしていますが、いろいろな教えや信条などの、よいところを少しずついただきながら、自前の信仰心を作り出し、お互いに仲良くやっていきましょうというのですから、合理的なのかもしれませんね。
 
世界の四大聖人の教え、キリスト教の愛、イスラム教の施し、仏教の慈悲、儒教の仁(相手を思いやる心)を理解しているのも、もしかすると、日本人だけかもしれません。言い過ぎでしょうか。
 
資源の乏しいわが民族が、経済大国に発展したのと同じで、独特の知恵だと思います。日本は文化の吹き溜まりといわれていますが、選択の自由はあるわけで、ただ、ひたすら迎合しているわけではありません。これだけはいえると思います。
 
さて、木がうっそうと茂る伊勢神宮の参道を、玉砂利を踏みしめながら歩くときや、出雲大社の古色蒼然とした社を参拝するときの、何とも表現のしようのない気持ち、荘厳とか厳粛などの言葉では表せない心情、これは、一体、何なのでしょうか。
 
松江の中学の英語の教師であったラフカディオ・ハーン、小泉八雲は、西洋人として初めて出雲大社の昇殿参拝を許されたのですが、その感動をこう述べています。
 
 仏教には百巻に及ぶ教理と、深遠な哲学と、海のような広大な文学がある。
神道には哲学はない。体系的な倫理も、抽象的な教理もない。しかし、まさしく「ない」ことによって、西洋の宗教思想の侵略に対抗できた、東洋のいかなる信仰もなし得なかったことである。
 (神々の国の首都 小泉八雲 著 平川 裕弘 編 講談社学術文庫 刊)
 
寺院に仏像はありますが、神社にはありません。ご神体は、なぜか、1枚の鏡です。にもかかわらず、神社には、「かたじけなさ」に頭を下げざるを得ないものが、確かにあります。「己の姿を映し、襟を正す」、これが日本人の信仰の源ではないでしょうか。
 
「無念無想に低頭できる」とありますが、正式な作法は、「二拝二拍手一拝」で、二度おじぎをし、ポンポンと二度手を打ち、最後にもう一度おじぎをします。出雲大社では4度打ち、伊勢神宮では、何と八開手(やひらで)といって八度打ちますが、参拝した時に伺ったところ、これは神職の方がなさることで、一般の方は「二拝二拍手一拝」でいいそうです。これは、神さまとご対面させていただくための儀式でしょうが、柏手を打つのは、日本だけだといわれています。
 
また、神社の参道には玉砂利が敷かれていますが、昔は、川で体を清めてから参拝した名残で、玉砂利は川を表しているそうです。その参道も、真ん中を「正中(せいちゅう)」といい神さまの通り道で、人間は左右の端を歩くのが正しいとされているそうです。
 
まったくの蛇足ですが、「私は無信仰です」などと平気で言う方がいますが、れは外国人と話すときには注意が必要です。無信仰とは、「私は平気で人を殺せます」というのと同じだそうです。
 
 
 
★★酉の市★★
 
「酉の市、11月ではありませんか?」と言われそうですが、何でもありの歳時記です。
 
酉の市は、何と日本誕生と深い関係があるのです。日本誕生となると、どうしても神話の世界に入っていかなければなりません。戦後、神話のすべては作り事と否定され、神代に関する「おとぎ話」さえ、子ども達の周りから消えてしまいました。ここで紹介する神話は、古事記(講談社学術文庫 刊)から要約したもので、神話の真偽はともかくとして、「おとぎ話」としてお読みください。僭越な話ですが、神さま方のお名前は読みやすくするためにカタカナで表記しました。
 
◆イザナギノミコトとイザナミノミコト◆
イザナギノミコトとイザナミノミコトは、神さまから授かった天沼矛(アマノヌボコ)を、雲の上の天の浮き橋からさし降ろし、海の水をかきまぜ引き上げました。すると、矛先から落ちた海水が固まってオノゴロジマができ、島に下りた二人が結婚し、大小八つの島、大八洲国(おおやしまのくに)を生み、日本列島が出来たのです。そして、岩や土、砂、風、海、川、水、山、船、穀物の神さまを生みますが、最後に火の神さまを生んだのが原因で、イザナミノミコトは亡くなります。
 
◆黄泉(よみ)の国の話◆
イザナギは黄泉の国を訪ね、国造りは終わっていないので現生に戻ってくれとイザナミに頼みます。ところが、イザナミの体にうじがわき、8匹の鬼が生まれるのを見て逃げ出したのです。姿を見られたイザナミは、恥をかかせたと怒り、黄泉の国の醜女(しこめ)に後を追わせます。最後に、イザナミ自身が追いかけてきて、黄泉の国とこの世を結ぶ岩をはさみ、夫婦別離の宣言をします。
イザナミは「いとしいわが君が、こんなことをするなら、あなたの国の人々を一日千人絞め殺しましょう」といい、「あなたがそうするなら、私は一日に千五百の産屋を建てよう」とイザナギはいい、この時から地上では一日千人の人が死に、千五百人が生まれることになったのでした。
 
醜女をやっつけるために桃を3個投げたと書かれていますが、桃太郎で紹介したように、桃は神話の世界でも、何やら神秘的な果物なんですね。また、ギリシャ神話にもそっくりな話があります。黄泉の国から脱出する際に、「振り向かないで!」という約束を破り、振り向いたためにご破算になる結末も同じです。
 
◆アマテラスオオミカミ◆
黄泉の国から逃げてきたイザナギは、身を清めるために体を洗い、いろいろな神さまを生んだのちに、左目を洗うと高天原(たかまがはら)を治めるアマテラスオオミカミが、右目を洗うと夜の国を治めるツクヨミノミコト、鼻を洗うと海原を治めるスサノウノミコトが生まれたのです。アマテラスオオミカミ、ツクヨミノミコト、スサノウノミコトは、禊(みそぎ)から誕生しました。
 
◆天の岩戸の伝説◆
スサノウは、海原を治める仕事をせず、母のイザナミのいる黄泉の国へ行きたいと、泣きわめいては乱暴を働くので、イザナギはひどく怒り追放します。アマテラスオオミカミに話してから、根の国へ行くことになったのですが、スサノウはここでも乱暴なふるまいをし、皮をはいだ馬の死骸を機織り小屋へ投げ込み、機織り娘にけがをさせ死んでしまいます。怒ったアマテラスは、天の岩屋に閉じこもり、この世は真っ暗闇になり、悪い神さまが悪事を働き、病気も広がりました。相談をした八百万の神さまは、岩戸の前でお祭り騒ぎを始めたのです。「私が姿を隠し世の中が暗くなっているのに、何を楽しそうに騒いでいるのだろう」と岩戸を少し開けた時、力持ちの神さまタジカラオが、岩戸をひきはがし、再び世界は明るくなったのでした。投げ飛ばされた岩は、信濃の戸隠山となったということです。
 
この天の岩戸の前で舞われた時、弦という楽器を演奏した神さまがおられ、岩戸が開いた時に、その弦の先に鷲(おおとり)が止まったのです。
 
神さま達は、世の中を明るくする瑞兆、よいしるしを現した鳥だとお喜びになり、以来、この神さまは、鷲の一字を入れ、鷲大明神、天日鷲命(アマノヒワシノミコト)と称されるようになったのです。このアマノヒワシノミコトが、諸国の土地を開き、開運、殖産、商売繁盛に御神徳の高い神さまとして、当地、浅草にお祀りされたのでした。
 
後に、日本武尊(ヤマトタケルノミコト)が、東夷征伐の際に社に立ち寄られ戦勝を祈願し、志を遂げての帰途、社前の松に武具の「熊手」をかけ勝ち戦を祝い、お礼参りをされました。その日が11月酉の日であったので、この日を鷲神社例祭日と定めたのが酉の祭り、「酉の市」です。この故事により日本武尊が併せて祀られ、ご神祭の一柱となりました。(「鷲神社 後由緒」より)
 
また、こういう説もあります。
 
鷲神社は、もともとは、大阪府堺市の大鳥神社が本社で、大鳥の起源は、日本武尊の魂が白鳥になって、陵(みささぎ 貴人の墓)から飛び立ったという伝説によるものと言われています。
[子どもに伝えたい年中行事・記念日 P98 
萌文書林 編集部編 刊]
 
酉の市は、「お酉さま」の名前で親しまれており、境内では福をかき集める縁起物の熊手が、威勢のいい掛け声と共に売られ、冬の到来を告げる風物詩ともなっています。何事も訳ありですが、酉の市の由緒が、神代の時代までさかのぼるとは驚きです。日本武尊の武具であった熊手が、開運、商売繁盛のお守りになったとは。。。
 
熊手は、時代と共に形も飾り物も変わり、江戸中期より天保初年頃までは、柄の長い実用品の熊手に、おかめの面と四手(しめ縄についている細く切った紙)をつけたのだそうです。その後に、いろいろな縁起物をつけ、今のようなおかめや宝船、千両箱、大判小判などの紙を張り付け種類も多くなり、その年の流行を入れた熊手も話題を集めています。
江戸時代の頃は、商人や庶民の信仰の対象となっただけではなく、お武家さんにも空高く舞い上がる鷲を出世のシンボルとしてあがめられ、大いに賑わったそうです。
 
 
 
★ハロウィーン★
 
最後に、外国のお祭りを紹介しましょう、10月31日に行われるハロウィーンです。
キリスト教の祝日である「万聖節(ばんせいせつ)」の前夜祭で、秋の収穫を祝い、悪霊を追い出す祭り。
 
当夜には、日本のお盆と同じで親族の霊が各家に帰ってきますが、一緒に悪霊もやってきて悪さをするために、町中でたき火をして追い払ったのでした。紀元前からケルト人が行う宗教行事が、ハロウィーンの始まりといわれているそうです。
アメリカでは、悪霊を追い払うためにカボチャをくり抜いた提灯(ちょうちん)、ジャコランタンを飾り、魔女やお化けなどに仮装した子ども達が、「お菓子をくれないと悪戯をするぞ!」と近所の家を回る楽しいお祭りになっていますが、日本ではどうでしょうか。コロナでの自粛までは、仮装行列など、若者や大人が楽しんでいましたね。
 
※ジャコランタンの由来
 「昔アイルランドに、ジャックという名のケチなずるい男がいた。あまりにも狡猾であったため、ジャックは死んでも天国に入れてもらえず、仕方なく地獄へ向かったが、悪魔に追われて追い返されてしまった。ジャックは悪魔がくれた炭火を、くりぬいたカブに入れ、夜道を照らして歩いた。今でもジャックはそのランタンをもって、あの世とこの世の間をさまよい歩いている」という言い伝えが、ジャコランタンの始まりだそうです。今ではカブの代わりにカボチャを使うようになり、ジャコランタンはハロウィーンのシンボルになりました。(『和のこころ』 日本の年中行事 :So-net ブログより) 
 
当初はカブだったんですね。
トルストイの作品に出てくるような「大きなカブ」でなければ、提灯は無理ですね(笑)。
 
 
   (次回は、10月に読んであげたい本についてお話ししましょう)
 

 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
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2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>ご家庭で楽しくできる受験準備(3)★★養ってほしい数感覚 2 ★★

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         「めぇでる教育研究所」発行
2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2026年度入試(2025年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第10号
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★★養ってほしい数感覚 2 ★★
 
 
[アバウトから正確に] 
 
さて、何回も続けていく内に、お子さんは、たとえば10と5では、10の方が多いとわかると、今度は数字で多少の判定をはじめます。
そこまでわかってきましたら、「では、いくつ違いますかゲーム」に切り替えましょう。
ゲームのやり方は、同じです。
 
最初は、同じマークから始めましょう。
1枚ずつカードをめくり、お子さんが8、お母さんは3が出たとします。
お子さんは、「ぼくの勝ち!」と宣言して、その違いを調べます。
この場合も、[8-3=5]ではなく、数の少ない方のカードの[3]を覚え、数の多い[8]のカードのマークを3個、指で押さえて隠します。
 
そして残ったマークを数え、「ぼくの方が5個多い」と、必ず、言葉で判定結果を言うようにします。
 
今度は、お子さんのカードが4、お母さんのカードが7で、お母さんが勝った場合も、「ぼくの負け!」とお子さんに宣言をさせ、お母さんのカード[7]を使い、4個を指で押さえ、残ったマークを数えて、「ぼくの方が3個少ない」とお子さんに判定させ、結果を言うようにします。
 
お母さんは、一切、言葉をはさむ必要はありません。
 
正解の場合は「ピン、ポン!」、間違った場合は「ブッ、ブー!」と警告する程度にし、ゲームの進行は、お子さんに任せます。
このゲームは、正確に「いくつ違うか」を判定するものですから、スピードは必要ありません。 
先程も触れましたが、[10と9]、[8と7と6]のカードでは、マークの配列が[4と3]の違いに気づけば、どこをどう押さえて隠せばよいかもわかり、真ん中のマークの数だけで判定で
きるようになると、自然とスピードアップしますが、答えは、必ず、口頭でキチンと言えるようにします。
 
4種類のカードをまぜてやるのは大変ですから、2種類、10回戦で十分ですが、お子さんが希望する場合は挑戦してみましょう。
 
これができるようになれば、次に同じマークのカードを4枚並べ、「一番多いものと少ないもの」を見分けるゲームをやってみましょう。
指でさして、答えさせます。
これも直感で判定させたいのですが、ここまで、かなりゲームの量をこなしたことになりますから、数字とマークの数の関係で、わかるお子さんも出てくるでしょう。
 
例えば、[5、3、7、9]のカードが、並んだとします。
「9が一番多くて、3が一番少ない」と、数字でいえるようになれば、もう、カードでのゲームは、卒業してもいいでしょう。
 
ところで、数字は抽象的ですから、数詞がつかなければ、幼児には具体的な数は、わかりにくいものです。
 
[1]といってわからないことでも、「りんごが1個」となると、頭にりんごが1個浮かび、具体的な数を把握できるわけです。
トランプは、5のカードであれば、数字の5とマークが5個ありますから、抽象的な数字をマーク5個で具体的に表しています。
 
小学校の入試では、数字を使った計算はやりません。
 
ですから、1は○が1個、2は○が2個、10は○が10個であることが理解できれば、十分なのです。
数の多少がわかれば、トランプでのゲームを卒業し、数字のない遊びへ進みます。
しかし、お子さんがゲームを面白がるようでしたら、楽しみながら続けてあげましょう。
 
ここまで進むと、数字を書きたいお子さんも出てくるでしょう。
その場合、[0・5・7・8・9]の書き順を、きちんと教えてください。0は上から左回りで書き、下から右回り、時計回りで書くのは○(マル)です。
8は〇を2個縦に書きがちで、自己流で覚えてしまうと、直すことになりますから、小学生になってから苦労します。
 
そして、数字を覚えても、問題集や模擬テストなどでは、「絶対に数字を使って答えてはいけない」と約束しましょう。答が合っていても、得点にはならないからです。当然のことですが、入学
試験で数字を使って答えては、絶対に合格しません。設問のどこにも、数字で答えなさいとの指示はないからです。新しいことを覚えると、つい、使いたくなるものです。ここで、きちんと押さ
えておきましょう。
 
次の遊びは、お母さんが教材を作ります。
 
トランプより少し大きい長四角のカードを20枚(1から10まで各2枚ずつ)作り、ハートやスペードの代わりに●で表します。
トランプに慣れていますから、最初はマークと同じ配置にしましょう。
慣れてきたら、市販されている問題集などを参考に、オリジナルカードを作ってあげましょう。
市販されているシールを貼って作ると、きれいなカードができます。
 
最初のゲームは、直感で見分けた「多少の違い」をやってみましょう。
今度は数字がありませんから、直感が頼りです。
きちんと見分けられれば、「いくつ違うか」のゲームに挑戦しましょう。
今度は、トランプより大きいですから、答えも出しやすいと思います。
 
それもできるようになれば、4枚並べ、直感で「一番多いものと、一番少ないもの」を当てるゲームに進みますが、お母さんが意図的にカードの配置をした方がいいと思います。
 
[1・2・3・4][1・10・5・8]のように、[1と10]が入ったものばかりでは、緊張感に欠けるからです。カードをうまくアレンジしてあげましょう。
市販されている「数量の問題集」などを参考にされるのもいいですが、難易度を考えて選んでください。
 
慣れてきましたら、「二番目に多いものと、二番目に少ないもの」に挑戦してみましょう。
やり方は「一番多いものを見つけ、それより少ないもの(その次に多いもの)が二番目」になり、「一番少ないものを見つけ、それより多いもの(その次に少ないもの)が二番目に少ないもの」になります。
最初は戸惑うかもしれませんが、あくまでもゲーム感覚で、楽しみながらやってください。
ここではお子さんとお母さんでのゲームを題材としましたが、お父さんと対戦しても良いですね。
 
それから、幼児の場合は、何事においても誕生日、生まれ月を考慮する必要があります。
衣服の着脱、歯磨き洗顔などの基本的な生活習慣はもちろんのこと、こういった遊びを通した知的なトレーニングにも、十分に注意してほしいと思います。
「隣の○○ちゃんができるのに、なぜ、うちの子はできないのかしら」と思う前に、必ず、生まれ月を考えましょう。
早生まれのお子さんには、無理をしないように気をつけてください。
 
「できなくても、できるまで待ってあげる」、この気持ちが大切です。
 
お子さんのおむつを外すとき、お母さん方はどうしましたか。
粗相をしても、叱り飛ばさなかったはずです。
その心は、「まだ、できないから待ってあげる」であり、その心は「今に、必ずできる」ではなかったでしょうか。
待ってくれたから、お子さんは期待に応えたのです。
 
知的な能力の開発も、同じです。
いや、知的なことだけに慎重な対応が必要なのです。
できなくても、あせる必要はありません。
 
幼児は、体験を積んでいないからできない場合が多く、決して能力だけに問題があるわけではありません。
 
いろいろと体験させ、待ってあげましょう。
待ってあげるお父さんやお母さんのやさしい心が、必ず、できるように導くからです。
待ってあげるやさしい思いやりから、頑張る意欲は育ってきます。
お子さんの、今ある姿を見て、自信を持ちましょう。
 
こういった遊びで、十分に数感を養ってから、○を使った数の多少、和(合わせていくつ)、差(いくつ違うか)、対応(いくつ必要か)、分割(分けるといくつ)といった問題に進むのが、幼
児にふさわしい算数の学習であることを、ご理解いただけたのではないでしょうか。
ゆっくり、じっくり、しっかりと、ゲーム感覚で楽しんでください。
 
最後に、トランプの絵札は、普通、11はJ、12はQ、13はKとアルファベットで表されています。
Kはキングで王さま、Qはクイーンで王女さまの頭文字であることはわかりますが、Jは何を表しているのでしょうか。
これは、「ジャック」という名前の頭文字からとったものだそうです。
ジャックとは、イギリスではありふれた名前の代名詞で、日本では「太郎」にあたると考えればわかりやすいでしょう。
よくある名前を付けることで、名もない一兵士を象徴させているそうです。
騎士道の精神ではないでしょうか。
 
連日の猛暑が少しやわらぎ、台風が来るなど、少しずつ秋の気配が漂い始めたようです。
体調を崩さないように注意してあげましょう。
 
 
  (次回は、「第二の脳を鍛えましょう1」についてお話しましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>面接編2

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第61号>
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◇説明会等情報◇
 
 立教小学校 説明会(3)
  9月7日(土)のミニ学校体験は満席
  9月11日(水)以降、入試に関する動画公開
 
 日本女子大学附属豊明小学校 
  豊明秋の運動会
   日程:9月28日(日)
   申込:ホームページから申込
     
  ※それぞれホームページで確認してください。
 
 
 
面接編(2)
 
 
今回は、面接当日のお話をしましょう。
 
 
[学校へ到着]
 
★緊張する様子が見えたら★ 
 
面接の日でも、多くの人が集まりますが、試験当日は、その比ではありません。
それを見ただけで、しり込みをするお子さんも出てきます。こういった経験がないからです。公開模擬テストを受ける目的の一つは、知らない子ども達の中に入って、いろいろなことを経験できるからです。
 
また、過保護に育てられていると、こういった時に拒絶反応を示しがちです。
手をかけ過ぎていると、自分でやることが少なく、失敗の経験が少ないですから、こういった事態に対処できません。過干渉な環境では萎縮してしまい、「ママ、助けて!」となりがちです。
 
何度も繰り返しますが、小学校の受験は、お子様の成育史、言い換えれば、ご両親の育児の姿勢が、そっくり出てくるものです。
 
普段、元気いっぱいのお子さんでも、大勢の人をみてびっくりする場合もあるでしょう。その時は、お子さんが、いちばん安心する様子を、お子さんに示してあげることです。世界で一番強いと思われているお父さんの出番です。たくましいお父さんであってください。間違っても、「しっかりしなさい!」などと言わないことです。それだけでパニックに陥ってしまうお子さんもいま
す。
しゃがんで目を合わせ、
「いつもの教室でやるのと同じだから、心配することはないんだよ」
と、やさしく教えてあげましょう。
 
 
★所定の手続きを的確に★ 
 
何事も初めてとなると、緊張しがちです。
しかし、心配はありません。学校側も、全員、初めての受験を想定して、マニュアルを作ってありますから、難しい手続きはありません。落ち着いて取り組めば、何でもないことです。
ミスをしがちなのは、指定された時間間際に来て、手続きをする時でしょう。
気持ちに余裕がありませんから、どうしてもあせりがちで、ミスも起きがちです。そんな時は、おそらく、普段、お子さんが見たこともないご両親の姿になっていると思います。それを見たお子さんは、どのような心境になるでしょうか。
面接は、まだ、ご両親がそばにいますから、ショックも少ないでしょうが、試験当日は、そこから一人で行動しなければなりません。普段どおり、というわけにはいかないでしょう。
余裕を持って出かけ、こういった気持ちにさせないのも、ご両親の大切な役目です。
 
 
 [控室]
 
★静かに待つ工夫を★ 
 
幼児にとって、静かに待つのは、大変、苦手なものです。
ここでも、普段の育児の姿勢が姿を現します。ましてや、緊張していますから、いつもよりテンションもあがり、舞い上がってしまうお子さんもいます。普段のしつけが大切です。 
最近、よく見かけますが、幼児用の図書室で、大きな声でしゃべったり、走り回ったりする子もいます。親も注意しません。お菓子を食べている子さえいます。
また、電車などでも親同士が話に夢中になり、子どもが騒いでいても、知らん顔をしています。こういうことが許されていて、面接に来たときは、「静かにしなさい!」では、無理というものです。 
 
面接当日は、しばらく待つ時間がありますから、退屈させない工夫をしましょう。
 
お子さんの好きな本を控室で読み聞かせするわけにはいきませんから、自分で読める本がいいでしょう。そういう本であれば、気に入っているはずですから、静かに待てることになります。
一人で静かにできる折り紙やあや取りなどもいいでしょう。手先を使って遊ぶ折り紙やあや取りは、手順を間違えると遊びは成り立ちません。楽しみながら脳に刺激を与えるすぐれもので、口頭試問の準備運動にもなるはずです。
 
お子さんが気にいっているからといって、ぬいぐるみの人形や恐竜のおもちゃ、ゲーム類はどうでしょうか。5、6歳の幼い子ですが、それなりの自立ができているはずですから、公の場に人形を持ち歩くのは、よい印象を与えないものです。また、おもちゃやゲーム類は、他のお子さんに迷惑がかかりますから、持ち込むことすら常識を疑われます。 
 
しかし、何と言っても大切なのは、ご両親の落ち着いた悠揚迫らぬ態度です。
お子さんの学校選びが確かであれば、面接に臨んでも、何ら心配はないはずです。そして、保護者としての自覚があれば、そこから余裕が生れ、お子さんに安心感を与えるものです。
 
 
 [入室] 
 
面接会場は、学校によって設定が異なりますから、一概には言えませんが、ドアが閉まっている時はノックをして、ドアが開いている場合でも、開いているドアをノックして、カーテンの場合は、「失礼します」と声をかけて、様子を見ましょう。
そして、「どうぞ、お入り下さい」といった返答があってから、「失礼します」といって入ります。こういった余裕を持ってほしいのです。
お父さん、お子さん、お母さんの順で入るのが自然でしょう。主人公は、お子さんです。
お父さんが露払いをし、お母さんはお子さんをしっかりガードして入ることをお勧めします。
 
また、入室の時にお子さんが、「失礼します」ということがありますが、これもどうでしょうか。日常生活で、盛んに使われている言葉とはいえません。不自然ですから、こういった言葉は
教えこまないことです。「おはようございます」や「こんにちは」で十分です。
 
模擬面接でも、白百合学園小学校を受験する場合、「ごきげんよう」という女の子もいますが、入学後でいいのではないでしょうか。普段、幼稚園などで、そういったあいさつをしていなければ、やはり、とってつけたようで、さまになっていない場合が多いからです。考え直した方がいいのではとアドバイスはしますが、お母さん方が不満げな態度をしがちですから、後はお父さんにお任せしています。 
 
入室の際に、あいさつのできないお子さんが、かなりいます。
特に、男の子は、できません。
すると保護者が、「ごあいさつは!」と催促をしがちです。
すごい保護者になると、言葉だけではなく、頭を押さえつけるようにして、あいさつをさせようとします。これもどうでしょうか。  
あいさつができなかったから、マイナス何点などと採点するはずはないと思います。
 
お子さんが、初めての所へ来て、初めて会う人の前に立っているのですから、それだけ緊張しきっています。あいさつができなくても、当たり前ではないでしょうか。
 
それを考えずに、あいさつを無理強いするのは,保護者としてふさわしい態度とは思えません。あいさつができなかったら、保護者が面接官に黙礼して、静かに頭を下げておけばいいのではないでしょうか。保護者の態度を見ていると思います。
 
そして、入室しても、いきなりテーブルもしくは椅子が置かれているところまで直進せずに、入った所で横一列に並び、次に指示を待ちます。あわてることはありません。
「お父さんは、こちらへ」などの指示に従い、椅子の後ろに並び、三人がそろったところで、お父さんから、「失礼します」といって席に着きましょう。
お父さんを見て、お子さんも座り始めます。
お母さんは、お子さんが着席するまで見守り、それから座りましょう。
(お子さんが座ってからご両親が座ることができれば、より良いですね。)
 
お子さんには、椅子に浅く腰をかけさせ、両足をきちんとそろえ、手を膝に置くようにすれば、座る形も決まり、姿勢も崩れにくくなります。わずか、これだけのことですが、普段の生活習慣が見事に現れます。食事の時、いい加減な姿勢で、テレビなどを見ながら食べていると、だらしのない座り方になり、座れても、すぐに姿勢がくずれがちです。
 
言うまでもないことですが、お母さん方へ一言、長い髪は、お辞儀をするときに、バサッと前に落ちてきます。これも感じのいいものではありませんから、きちんとまとめておきましょう。また、ミニスカートでは、膝が気になり、面接どころではなくなりがちですから、やめた方がいいと思います。 
そして、着席後は、お子さんの様子を見守るために、視線の中に入れておきたいものです。お子さんが不安そうにお母さんを見たときなど、知らん顔をせずに、笑顔で応じてあげましょう。これが何よりの精神安定剤になるからです。
 
9月に入ったとはいえ、今年は残暑も厳しいようです。疲れが出ないように、あせらず、ゆったりとした気持ちで、家庭学習を続けてください。
 
 
  (次回は、「面接編3 子ども編」についてお話しましょう)

 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第12章 日本の神様でしょう 神無月(1)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第44号-
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第12章 日本の神様でしょう  神 無 月(1)
 
                              
神無月(かんなづき)は「かみなしづき」とも「かみなづき」ともいわれていますが、そのいわれは、この月には、全国の神さまが出雲大社に集まり、男女の縁結びの相談をすることから、神さまが留守になる「神無い月」というのがわかりやすいですね。反対に、出雲地方では「神在月」となります。
これにも異説があり、「神嘗月(かんなめづき)」「神祭月(かみまつりづき)」という説、おもしろいのには、10月は雷がならなくなるから「雷なし月」というのもあるようです。
 
 
★★神無月、風流です (1)★★ 
 
何だか、おかしなテーマです。
神無月といえば、昔の十月の呼び名ではありませんか。睦月、如月、弥生、卯月、皐月、水無月、文月、葉月、長月、神無月、霜月、そして師匠も忙しく走る師走ですが、何やら情緒があります。弥生賞、皐月賞というと、競馬の好きな方には、おなじみでしょう。今まで紹介してきましたように、どの月も季節感があります。詩情豊かで、こたえられません。1月、2月、3月よりも、睦月、如月、弥生といった方が、何やら、雅やかな感じがしないでしょうか。
 
その一つの神無月。
 
先程もお話しましたが、読んで字のごとく「神さまのいない月」です。とにかく、日本人ほど、神さまの好きな民族は、いないのではないでしょうか。「八百万の神」といって、何しろ八百万人、いや、神さまは人ではありませんから、八百万の神さまです。「やおよろずの神」と読みますが、八百万の神さまがいるわけではなく、たくさんいらっしゃるという意味でしょう。それにしても豪勢ではありませんか。
 
若いお父さんやお母さん方には、あまり縁がないかもしれませんが、一軒の家の中にもいろいろな神さまが住んでいらっしゃったのです。「いらっしゃった」と過去形になっているのは、最近では、神社にしか神さまはいないと思われているからです。
                                
門には門神さま、家を守ってくれる家神さま、福の神と貧乏神がいらっしゃったそうです。
台所に入ると、ガス、水道、電気のない時代ですから、あちらこちらに神さまがいらっしゃって、火の神さま、水の神さま、かまどの神さま、井戸の神さま、納戸の神さま、便所の神さまが、庭に出れば木の神さま、石の神さま、草の神さま、花の神さま、外には山の神さま、川の神さま、森の神さま、まだいらっしゃいます、日の神さま、雲の神さま、風の神さま、雨の神さま、仏教でいうところの「山川草木悉皆成仏(さんせんそうもくしっかいじょうぶつ)」をまねると、こんな言葉はないでしょうが、「神が宿る」と解釈して、「山川草木悉皆宿神」でどうでしょうか。(悉皆“しっかい” ことごとく)
とにかく、どこにでも神さまがいらっしゃったわけです。人の集落がある所には、必ず、その土地を守る鎮守さまがあって、人々の生活と密接な関係をもっていました。いろいろと取り上げてきた年中行事にも、こういった神さまが顔を出し、大いに楽しませてくれます。四季折々の大きな祭りから村祭りや、家ごとの祭りまで、主人公は、こういった神さま達です。ある時期まで、日本は農耕社会でした。頼りは、自然ですから、神頼みにならざるをえません。できるだけ災害が起きないように、そして、秋には豊作を願い、神さまにお祈りをしたのも当然なのです。
 
仏教が盛んになった奈良時代に、日本の八百万の神さまは、菩薩さまを始め様々な仏さまが化身して、日本の地に現れたものだと考えた本地垂迹説を唱え、神さまと仏さまを一緒にお祀りしたこともあるのですから、元来争いごとは大嫌いなんですね。仏教興隆に力をつくした聖徳太子の「和を以って貴しと為す」は、神仏の世界まで浸透しているのですから、すごい話ではありませんか。
 
そして、日本の神さまは、他の国の神さまとは違います。昔の神さまは、いってみれば人間と同居していたのです。ですから、願い事は、すごく現実的で、日々の生活に密着していました。しかし、今の神さまは、怒っています。何しろ、困った時だけの神頼みですから。正月にしか顔を見せない人が、多いのではないでしょうか。安いお賽銭で、厚かましく、いろいろと祈願しても、それは無理というものです。(笑)
 
神無月は、その神さま、八百万の神さまが、島根県の出雲大社にお集まりになる月で、盆暮れの民族大移動の比ではありません。何しろ、八百万の神さまですから、スケールが違います。
「神迎祭(かみむかえさい)」といい、集合日は旧暦の10月11日。場所は稲佐浜(いなさのはま)、八百万の神さまは、竜蛇神(りゅうじゃしん)に導かれ、海からお集まりになりまして、出雲大社へ向かわれます。滞在期間は、17日までの7日間。神々のお宿は、境内の東西に並ぶ「十九社」、何とも素朴な建物です。
 
本殿では、11日、15日、17日に「神在り祭(かみありさい)」が行われます。本殿の高さは24メートル、大社造といわれ、わが国、最古の神社建築様式で、神話でおなじみの「だいこくさま」と呼ばれている「大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)」が祀られています。
境内には、古代本殿の跡が発掘されており、何と柱の高さが8メートルもあり、復元図を見ると、古の人々、平安時代の高度な建築技術に、たまげましたね。
驚くついでにもう一つ、拝礼を行う「拝殿」には、長さ7メートル、胴回り4メートル、重さ1.5トンのしめ縄が、デーンと飾ってあります。このしめ縄ですが、普通の神社で飾る向きと逆になっています。(これを覚えておいてください)
 
話題の中心は、何といっても自然災害回避、生産性向上、五穀豊穣、家内安全です。
 
たとえば、雨の神さまには、「えこひいきせずに全国に万遍なく雨を降らせなさい」とか、風の神さまには、「稲が花を咲かせ実をつけるころには、情緒不安定にならないように配慮してほしい」とか、雲の神さまには、「日輪の神さまと仲良くしてほしい」とか、「下野の国の何々村は、信心深いので豊作になるよう心してほしい」などと話し合うのでしょう。
 
次に、何といっても神さまの大切なお仕事は縁結びです。
 
こういうところが好きですね。子孫を残さないと神さまの存在意義がなくなり、寂しいからだと推察します。いろいろな神さまが、適齢期の男女の情報を交換し合い、これがよかろうと縁組を決め、次々と赤いひもを結んでいく、これが「赤い糸」の伝説です。
 
今はキリストの前で、愛を誓う方が多いように感じますが、昔は何といっても神前結婚でした。神さまに、添い遂げることを誓ったのでした。成田離婚(新婚旅行から成田空港へ戻ってきた途端離婚する状態をたとえて表したもの)などという言葉もかつて言われていましたが、赤い糸も頼りなくなり、神さまも首を傾げているのではないでしょうか。何といっても情報過多社会です。もしかしたら、神さま方も混乱しているのではないでしょうか。そういえば、すっかり酔っ払ってしまった神さまが、変な糸の結び方をしてもつれてしまい、三角関係を作ってしまった落語があったと記憶しています。
 
誠に僭越な話ではありますが、普段、神さまは、どうやらお眠りになっていらっしゃるのではないかと思える節があるのです。
 
神前で何かが始まるとき、必ず、大太鼓をドンドンと打ち鳴らし、神主さんも「ゥ…………」と、これまた大音声を発します。仏さまも、鐘や木魚の音がお好きのようです。日本の神さまだけではありません。教会でも、ミサの始まる前に、パイプオルガンをガンガン奏(かな)で、いや、荘厳に演奏し、賛美歌を歌います。いずれも、神さまにお目覚め頂くための儀式ではないかと思えてなりません。
 
ところで、出雲の人々は、逆に「神在月(かみありづき)」ですから大変です。
何しろ八百万の神さまです。この間は、音曲、歌舞のたぐいは、一切禁止。神さまの会議が無事終了するまで、ひたすら静かにひっそりと暮らします。神さまの中には、酔っ払って人に迷惑をかけるお方もいるかもしれません。何しろ日本の神さまは、お酒の上での問題には、実にご寛容です。その証拠に、神事にはお酒を欠かせませんし、神棚にはお神酒を差し上げます。
 
ですから、民話や昔話には、実に傑作な神さまがいらっしゃいます。どう考えても神棚から見下ろしている感じがしません。どこから、こういった発想が出てくるのかと、しみじみ考えさせられる話が、たくさん残っています。夢があるのです。そうです、夢があるんですね。
 
夢や希望をもたせる、これも神さまの大切なお仕事です。
 
そして25日(原文のまま)は、神さまが出雲を去っていく日で、この日を神去日(かんさらび)といい、その夜は明るいうちから戸を閉め、外の便所にもゆかなかったとか。その頃から吹き始める季節風、西南西(あなじ)が、あたかも神さまが道路を駆け去って行く風の音と考えられ、恐ろしさに震えていたそうです。
 (「菜の花の沖 2」P242 司馬遼太郎 著 文春文庫 刊より要約)
 
朝の散歩に出かけると、秋の気配を感じるようになりました。今年はまだ赤とんぼは見ていませんが、コスモスの仲間は咲きはじめました。
 
 
 (次回は、神無月、風流です(2)についてお話しましょう)

 
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