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めぇでるコラム : 2024年8月

2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>ご家庭で楽しくできる受験準備(3)養ってほしい数感覚 1

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         「めぇでる教育研究所」発行
2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2026年度入試(2025年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第9号
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ご家庭で楽しくできる受験準備
(3)養ってほしい数感覚 1           
 
 
[数感はアバウトの感覚から]
   
奇妙なタイトルだと思われるかもしれませんが、「話の記憶」と共に、ほとんどの学校で出題されている「数量」の問題に対処するには、語感と同様に数感を養っておくことが大切です。
 
受験準備となると、すぐに問題集を使用した勉強と考えられがちですが、幼児の場合は、その前にやらなければならないことがあります。
 
物を使った具体物での学習です。
 
これをきちんと体験しておかないと、「お勉強は覚えるもの」、記憶に頼るものとなり、幼児にとっては、つらい受験準備となりがちだからです。
前にもお話しました「学習と勉強の違い」を思い出してください。
特に、年中から年長にかかる時期には、教える人、特にお母さん方は、「すずめの学校の先生」にならない注意が必要です。
 
トランプを用意してください。
トランプはさいころと共に、数感を養う優れた教具です。
 
問題集に取り組む前に、数に関する感性、数感を鍛えておきましょう。
「数感教育」の大切なことを教えてくれたのは、香川大学名誉教授だった故小林茂広先生でした。
後で紹介しますが、「幼稚園の年長さんでもつるかめ算を解けますよ」と、実に衝撃的な学習の仕方を教えてくれた先生です。
 
その時のことです。
「2歳の幼児でも数がわかるよ」と、2つのさいころを使った、面白い遊びを見せてくださったのです。
 
幼児が、さいころをふると6が出ました。
次に先生がふると3が出たのです。
すると先生は、
「キミの勝ちだよ」
といって、幼児に勝ったことを教えます。
最初は、きょとんとしていましたが、数回続けているうちに、どうやら、たくさん黒丸のある方が勝ちであることが、幼児にもわかってきました。
しばらくすると、先生がいわなくても、
「ぼくの勝ち?」
といい始めました。
 
数字を使った引き算ができなくても、「数の多少」を理解できるのです。
1と6であれば、●と●●●●●●であり、2と3のときは●●と●●●で、子どもの頭の中は、おそらく、「6の方に黒い丸がたくさんあるぞ!」であり、2と3のときは、「3の方が少しだ
け多いかな?」といった、おおよその見当、推量であり、「アバウト(about)の感覚」なのです。
見た感じで「どっちが多いかな」と直感で判断するわけです。
 
大切なのは、この直感力を培うことです。
       
例えば、2枚のお皿にクッキーを5個と4個に分けて入れておき、お子さんに、
「多い方をとっていいよ」
といったときに、数えずに5個入ったお皿をとれば、直感力は順調に発達しているといえます。
おやつの時に試してみましょう。数の多少を見分ける力が身についているかがわかります。
       
この直感力を鍛える遊びを紹介しましょう。
 
数えなければ不安で、答えを出せない子ども達と、よく一緒に遊んだゲームです。
トランプは、4種類のマークの数と同じ数字が書かれていますから、これを利用します。
まず、1から10までのカードを用意してください。
1はA、エース(ACE)のAとマークが1個しかありませんが、1個だけ書かれていますから、1と説明します。
そして、マークの数を数えながら、1から10まで並べ、マークの数と数字は同じであることを確かめます。
この時の数え方は、「イチ、ニ、サン」と漢語読み、音読みにします。11・12・13と10以上の数え方にも対応できるからです。なお、7は掛け算を思い出してください、「シチ」です。
 
最初は、ハートのマーク1組でいいでしょう。
よくきって積み上げ、ジャンケンで順番を決め、1枚ずつめくり、勝ち負けを争います。
例えば、お子さんが先にめくり、8が出たとします。
お母さんがめくると4が出たとします。
そこで、どちらが勝ったかお子さんに聞きます。
そのとき、[8-4=4]でお子さんの勝ちとするわけではありません。
また、ハートの数を数えて、8個と4個ですから、多い方の8のカードを4個押さえ、8の方が4個多いとするのでもありません。
 
数の多少を、見た感じ、直感で決めることを約束します。
初めは戸惑いもあるでしょうが、やっている内に、トランプのマークの並び方に、ある決まりがあることがわかるはずです。
それに気づけば、瞬時に判断できるようになるでしょう。
 
間違えたときは、「ブッ、ブー」と警告をします。
答を教える必要はありません。カードは2枚ですから、すぐわかります。勝者が2枚のカードをもらえます。これを繰り返していると、直感で見分けられるようになり、数えなくては不安であっ
たことも解消できます。 
 
終わったところで、お互いのカードを2段に並べて比べます。
 
 お子さんのカード □□□□□□
          ││││
 お母さんのカード □□□□
 
1対1対応で差が出ますから、計算しなくても、その差が答えになります。
 
直感で判断することに慣れれば、カードを増やしましょう。
ハートとダイヤといった組合せがいいでしょう。
マークの色が違うと混乱する場合もあるからです。
10枚増えると5回戦から10回戦になり、慣れてくればスピードもあがります。
 
次に、スペードとクローバーでやってみましょう。
形や色が違っても、数は同じであることがわかれば、いよいよ4組のカードを使います。
40枚で争いますからゲームとしても面白くなり、スピードがあがれば集中力も働き、俊敏な判断力もついてきます。
 
40枚になると、結果を判定するのに、横に並べるのも大変ですから、一工夫します。 
お互いに自分で取ったカードを1枚ずつ置きながら、5枚単位で段を作ります。
5枚で一固まりに分ける習慣がつくと、数の合成、分解にも役立ちますし、算数の足し算、引き算の計算に、すぐに対応できます。
 
手持ちがなくなったときにストップをかけ、そこから「1枚、2枚」と数え勝負を決めます。
下の図のように、■のカードの部分で、8対0でお子さんの勝ちとなります。
 
 お子さんのカード    
 □□□□□ □□□□□  
 □□□□□ □■■■■
 ■■■■
 
 
 お母さんのカード
 □□□□□ □□□□□ 
 □□□□□ □
 
 
5枚の固まりに分けるのに慣れれば、10の固まりで数えてみましょう。
算数の勉強で最初につまずく、繰り上がりや繰り下がりの計算にも、スムーズに対応できます。
 
余談になりますが、このカードの並べ方を、あまり手先の器用ではないお子さんにさせると、面白がってやることから優れたトレーニングになり、器用になるといった効果も期待できます。
 
本題に戻って、過去の入試問題集などで、例えば
「みかん10個と8個の絵があり、多い方に○をつけなさい」
といった多少の判定をする問題が5問あり、制限時間は15秒であれば、1つ1つ数えていては、とても時間内に終わりません。
学校側が知りたいのは、計算して答えを出すのではなく、「直感力が養われているか」ではないでしょうか。
 
数の多少だけではありません。
2枚のハンバーグや2つのコップに入ったジュースを見て、
「ぼくの方が小さいじゃん!」
「私の方が少ないわ!」
とこだわるのは、アバウトの感覚で「量の違い」を見分けているのであり、決して卑しいのではなく、直感力が順調に養われている証(あかし)ですから心配ありません。
 
この違いを小学校へ入ってから「数」は加減乗除で、「量」はデシリットル(dL)、リットル(L)、「重さ」はグラム(g)、キログラム(kg)、「長さ」はセンチメートル(cm)、メートル(m)、キロメートル(km)と正確な計算、単位として学んでいくわけです。
 
年中から年長の頃は、直感で見分ける機会をたくさん持つことが大切です。
なぜなら、「直感は、経験の積み重ねで養われる力」だからです。
 
室外と室内との温度差に体も驚くでしょうから、体調には気をつけてください。
 
 
   (次回は、「養ってほしい数感覚 2」についてお話しましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>面接編1

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第60号>
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面接編1 
 
 
今回から4回に分け、面接についてお話しましょう。なお、面接に関する話は、当研究所発売の「面接、ここがポイント ~That’s a Plenty 小学校編」から抜粋したものです。
 
 
 ★面接当日の服装★
 
ある年のミッション系の学校説明会で、「子ども達から、『先生、今日はお葬式があるのですか』と聞かれました」と、校長先生が苦笑いしながら話されたことがありました。
面接のために訪れた皆さん方の服装が、申し合わせたように紺や黒だったからです。子どもたちには、異様に思えたのでしょう。
「○○小学校は、紺で統一しなければ失礼にあたる」などといった噂があるようですが、これも単なる噂に過ぎません。
 
雙葉小学校の説明会でも、かつて「よくある質問」の中から、
「入学試験時の服装は、親子とも紺でなければいけないのでしょうか」
に対し
て、文言は正確ではありませんが、以下のような説明がありました。
「そんなことはありません。その場に応じた服装であればよいと思います。紺や黒でなければいけないということはありません」
説明がなかったとしても、「紺や黒の服装で決めてほしい」といっているわけではないと信じていますが、これは受験者の判断にお任せしましょう。
 
ある年の立教小学校の説明会で、「服装で判断しているわけではありません」とおっしゃっていましたし、かつて、ある小学校の面接の折に学校側から、「皆さんが同じように紺の洋服では、不自然とは思いませんか」といった質問もありました。
 
しかし、だからといって、人と違った服装をするには、勇気が必要でしょうし、抵抗もあるでしょう。
 
学校も幼稚園も、「服装などどうでもよい」といっているのではありません。
やはり、初めての方と、しかも、これからお世話になるかもしれない先生方とお話をするのですから、それなりの礼を尽くすのは、当然のことです。
 
問題は、普段、お子さんは、紺の洋服を着ることに慣れているでしょうか、このことです……。面接当日、初めて袖を通した服になりがちです。大人でも、新調した服を着ると気持ちが変わるのではないでしょうか。しかも、ご両親も、普段と違った服装で決めています。お子さんが、「あれっ!」と思わないわけがないのです。これだけで緊張するのが子ども達です。
「お子さんに、余計なプレッシャーをかけないで下さい」
といった、学校側の配慮ではないかと思います。
 
ですから、面接や試験の日だけ着せるのではなく、何回も着て慣れておくことです。そして、お父さんにはひげを剃ってもらい、当日と同じ服を着て、食事や買い物などに出かけることです。
 
また、受験される学校まで出かけるのもいいでしょう。そういった経験をしておけば、お子さんは、特別な気持ちにはならないはずです。「特別な気持ちにさせないでほしい」という学校側の配慮が、伝わってきませんか。このことだと思います。
 
そして学校側は、昔風に言えば、「堅実な家庭を築くお父さん、それを支える謙虚なお母さん」を求めています。それが身だしなみとして現れます。装飾品はマリッジリングだけにし、化粧も香水も控えめになさるのが、賢明でしょう。
服装や身だしなみに自信がもてないときは、ご両親に見てもらうことです。面接される先生方と同じセンスで判断してくれるはずだからです。
 
 
 
 ★面接前夜★
 
〔お子さんに緊張感を持たせないこと〕
まず、ご両親が、絶対に忘れてならないのは、小学校の入学試験は、ご両親の意志で始めたことです。そして、ご両親はいうまでもなく、お子さんの保護者です。保護とは、「(外からの危険などに対し)気をつけて、かばい守ること」であり、保護者とは、「(児童などを)保護する義務のある人」(岩波国語辞典)です。
 
多くのお子さんは、生れて初めて、大事業に挑戦するわけです。その緊張感は、計り知れないものがあり、小さな胸は、張り裂けんばかりに波打っているはずです。
 
この緊張感をやわらげるのは、難しい注文であることは確かですが、ご両親の、普段と変わりのない姿であり、笑顔です。専業主婦であれば、交際範囲も限られていますから、初対面の人と話をするのは、やはり、相当のプレッシャーとなるでしょう。
「きちんと話せるかしら…!」などと不安を感じていると、それが態度に表れ、「普段のママと、何だか違うみたいだなぁ?」お子さんは、微妙な変化を見逃さないものです。
こういう心境になっている時に、
「明日は、面接ですから、ちゃんとお話しするのですよ!」
などといいがちで、これが、お子さんに余計な緊張感を持たせることになるのです。
こういった不安を感じてしまう原因は、志望校選びが適切ではないからではないでしょうか。
 
ご家庭の育児の姿勢と学校の教育方針に違和感がなければ、自信をもって、面接に臨めるはずです。ご両親でよく話し合い、万全の態勢で臨まなくては、保護者としての役目を、果たせるわけがないのです。ご両親は、保護者であることを肝に銘じて、面接に臨むべきです。緊張したり、あがったりする時ではありません。仕掛け人は、ご両親であることを絶対に忘れないでほしいのです。
 
 
[持参するものを再点検する]
 
信じられない話ですが、ある小学校の説明会で「試験当日に受験票を忘れた方がいる」といった話を聞いたことがあります。普段では考えられないことですが、緊張のあまりおかしてしまったミスでしょう。こういったことのないように、持ち物のチェックをしましょう。それには、「面接日に持参するもの一覧表」を作っておくことです。
 
(1)面接票(受験票 お子さんが受験している間に面接のある場合)
(2)アンケート用紙 
(3)募集要項や試験当日のスケジュール表(学校から提示される資料)   
(4)筆記用具や消しゴム、携帯用の辞書
   その年だけ突然、アンケートの記入を求められる場合もありますから、用意しておきたいものです。鉛筆と消しゴムは、下書きのための必需品です。書き損じても消せますし、薄く書いて、ボールペンなどで清書すれば、出来栄えも違います。慣れているといってもサインペンは除外します。  
(5)上履きや運動靴、体操着などは、新しいものは避けましょう。特に、新品の靴は、運動のときなどに足を痛めがちですし、当日だけ履く革靴は、まめなどができて痛々しいものです。履きなれた靴を用意して下さい。
   両親も上履き持参かどうか確かめておきましょう。名前は見えないところにといった指示はきちんと守って下さい。
(6)雨に備えて、雨具を入れるものやズボン、ソックスなどの着替えも用意しましょう。ある学校では、体操着に着替えますが、それをしまう紙袋にも、○○製のものなどという噂があるとか、そんなのは、嘘です。
(7)あってはいけないことですが、万一の病気に備え、解熱剤や整腸剤の用意を。お子さんは、ちょっとしたことから体調を崩しがちです。ピアノの発表会などで、前夜に、突然、発熱や腹痛を訴えたことはありませんでしたか。お母さんの気配りは、万が一に備える用心深さです。
(8)スイカ、パスモなどを用意しておくと便利です。
   スマートフォンや携帯電話は、交通機関などで事故など非常事態が起きた場合に欠かせません。
   受験する学校の電話番号を登録しておきましょう。ただし、校門をくぐる前に、電源を切るか、マナーモードにしておきましょう。充電もお忘れなく。
   控室でスマホを見るなどとんでもないことです。
 
 
 
 ★当 日★
 
〔いつもと変わらない朝を〕
当日は、いつもの朝と同じように迎えたいものです。 
こんな涙ぐましい話まであります。普段、あまり冗談など言わないまじめなパパが、今日に限って陽気にふるまうので、「ママ、パパ、どうかしたの?」と、かえって怪しまれ、何かあるなと思わせてしまったのです。平常心で迎えましょう。
ピクニック気分とはいいませんが、
「今日は、学校の先生に、どういったお話ができるのかを見ていただくのだよ」
こういった雰囲気を演出できればいいのではないでしょうか。
 
そうすれば試験当日は、
「この間は、よくお話ができたから、今日は、どういったことができるかを見てくださるそうだよ」
となれば、お子さんも緊張することなく、試験場で普段の力を発揮できると思います。
 
「一所懸命、頑張らなければ駄目よ!」
これだけで、どれほどプレッシャーがかかると思いますか。こういうときのお母さんは、言葉は励ましていますが、顔は緊張しているものです。それに加えて、受けた公開テストなどで、成績がよくなかったときの「顔」になりがちなものです。どれだけプレッシャーがかかり緊張するか、考えてあげましょう。 
 
 
〔遅刻は、認めてもらえません〕
ある学校の説明会では、「たとえ、交通ストのために遅れても認めません」といっているほどです。面接は、限られた短い時間に、網の目のような密度で、スケジュールが組まれています。一組の遅刻者のために、時間を変更すると、多くの人に迷惑がかかりますから、できない相談です。
交通上のトラブルがあった場合は、速やかに連絡をし、学校側の指示に従いましょう。 
早めに出発し、15分か20分ぐらい前には着くようにしたいものです。志望校の決め方でも触れましたが、試験当日に使用する交通機関を、その時間に合わせて試乗しておくべきです。
 
また、少し遅れても、タクシーを使えばと考えるのはやめましょう。渋滞に巻き込まれれば、それまでです。バスも同じです。都心のバス路線は、いつ、どこで、渋滞が始まるかわかりません。特に、雨の日は注意が必要です。 
 
自家用車での来校は、説明会へ参加するときでも、ご遠慮くださいといっています。
面接日、試験日とも、禁止されています。「私どもだけ……」は、困ることになるだけです。学校周辺は、多くの場合、駐車禁止ですし、学校にも大きな駐車場はありません。
 
面接や試験の時間が、昼食にかかる場合は、軽食を持参しましょう。小学校の周辺には、食事をするレストランなどは少ないものです。あったとしても、当日は混雑が予想されますし、日曜日は、休日の所が多いのではないのでしょうか。一口で食べられるサンドイッチやおにぎり、温かいお茶やお絞りなども用意しておけば、万全でしょう。
 
心配なお父さん、お母さん方へ、面接での質問事項に回答を用意し、声に出して読み、録音をして聞いてみることです。要領を得ない長い話は、聞いてもらえないでしょう。自己中心的な親は、どこでも歓迎されません。また、お子さんには普段、使わないような言葉を教えこまないことです。
 
少し気になることがあるのですが、こういった答え方をする子が増えています。
「お名前を教えてください」
「私の名前は、△△○○です」
「お誕生日を教えてください」
「私の誕生日は、平成○○年△月□日です」
「幼稚園の名前を教えてください」
「私の通っている幼稚園は○△幼稚園です」
 
普段、こういった答え方をしているでしょうか。常にお子さんが、こういった丁寧な答え方をしているのであれば、もっと自然な答え方になるはずですが、どうにも様になっていない場合が多いのです。大人の受験対策的な思惑から教え込んだ場合、どうしても不自然になるのは否めない事実ではないでしょうか。
 
お子さんが緊張して固まってしまい言葉が出なくなれば、それまでです。これは、ご両親が決めたことですから、模擬面接でも「やめなさい」とはいえません。今更仕切り直しでは混乱するだけですから。「ご両親が面接を担当する先生であった場合、どういった印象をもたれるでしょうか」とアドバイスはしています。
 
ゴールを目指し、直前の各種講習会も始まりました。まだまだ暑い日が続くでしょう。昼寝は気分転換にもなります。お子さんの健康管理には、十分に気を付けましょう。
 
 (次回は、面接編2 面接当日の留意点などについてお話しましょう)

 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第11章 お月見です 長月(4)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第43号-
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第11章  お月見です   長 月 4
 
 
【九月に読んであげたい本】
 
なぜ、お月さまに、うさぎが住むようになったか、そのいわれを伝える話があります。主役は、あの良寛さんです。原作は、良寛さんの略歴や性格などの説明がありますが、ここでは、月とうさぎということで省略しました。
 
 ◆良寛と月とうさぎ◆   良寛 著
 
秋になると、お月さまの好きな良寛さまは、子ども達にこんな話をしました。
大むかし、猿ときつねとうさぎが、仲良く、助け合って住んでいると聞いた神様は、本当かどうか知りたいと思いました。ある日、神様は、ぼろぼろの服を着た老人に化け、三匹の住む林にやってきました。杖をつき、ひょろひょろと歩いてきた老人は、長い間、何も食べていないので、食べ物を恵んでくれと言うのです。
そこで、猿は木の実を少し見つけ、きつねは川魚を捕ってきましたが、うさぎだけは、何もとらずに戻って来ました。老人は、三匹は、心を一つにして暮らしていると聞いたが、うさぎは、物を恵む心が薄いようだと言ったのです。
うさぎは、猿に芝を刈ってきてくれと頼み、きつねには、芝を燃してくれと、悲しそうに言いました。
猿は芝を担い、きつねは、火をつけたのです。すると、うさぎは、「何もあげられないので、私の肉を食べてください」と、火の中へ飛び込み、死んでしまったのです。驚いたのは、神様です。かわいそうなことをしたと、泣き伏し、猿も、きつねも、泣きました。立ち上がった老人は、「三匹は、感心なものだ。中でもうさぎの心は、立派で、美しい」と言ったのです。
やがて、老人の姿は神様になり、杖でうさぎの体に触ると、もとの真っ白な体になったのです。
しかし、うさぎは目をつむったままでした。
 「お前を天の月の宮へ送ろう。お前は、これから、いつまでも、あの月とともに輝くのだ」と神様は言ったのでした。       
 「それだから、まるいお月さまを、よく見てごらん。お月さまの中で、うさぎが跳ねているのが、見えるだろう」と良寛さんは、子どもたちに話すのでした。
   少年少女・類別/民話と伝説-二九  日本の心をうつ話
                    関 英雄 編著 偕成社 刊 
    
この話は、良寛さんが作ったのではなく、原作は、龍樹(リュウジュ 2世紀に生まれたインド仏教の僧)の主著の一つ「大智度論」(般若経の百巻に及ぶ注訳書)にあるものだそうです。修行中のお坊さまが、空腹でふらふらになっているのを見た鳩が、焼き鳥になるから食べてくれといって火に飛び込み、涙ながらに食べる話です。鳩は、お釈迦さまの化身という教えであり、インド、中国を経て、日本へ伝わったもので、「今昔物語」の巻の五にも出ています。
それを良寛さんが、子ども達に話してあげたのでしょう。月の中で、うさぎが跳ねていたり、もちをついたりしているように見て楽しむのと、月の表面のまだらなクレーターが、そのように見えるだけと片付けてしまうのとでは、どちらが子どもの感性を育むのでしょうか。
 
うさぎといえば、童謡「うさぎとかめ」を思い出す方も少なくないのではないでしょうか。夏目漱石の「吾輩は猫である」でも、くしゃみ先生の子どもが歌っています。その二番の歌詞ですが、
 二、なんと おっしゃる うさぎさん  そんなら おまえと かけくらべ
   むこうの 小山の ふもとまで  どちらが さきに かけつくか
とあります。
 
ところで、かめさんに負けたうさぎさんは、どうなったかご存知ですか、実は、続きがあるのです。
負けたうさぎさんは、うさぎ村から追放されるのですが「子うさぎをよこせ!」と脅迫してきた狼を、知恵を働かせてやっつけ、名誉を回復し、うさぎ村へ帰ることができたのです。「負けたうさぎ」で検索すると、「新潟県の民話 福娘童話集」が出てきますが、これが傑作で、思わず1時間ばかり読んでしまいました(笑)。
このイソップ物語、驚いたことに、明治時代の教科書に掲載されたときの題名は、何と「油断大敵」とあるではないですか。(脱帽!)
 
 
    
 ◆てんとうさまと金のくさり◆   おざわ としお 再話
 
むかし、あるところに、母さんと太郎、二郎、三郎の三人の子どもが住んでいました。
ある日、母さんは、「山へ仕事に行くから、だれが来ても戸を開けてはいけない」と言って出かけましたが、母さんは、鬼ばさに食われてしまいます。母さんに化けた鬼ばさは、家に来て、「戸を開けておくれ」と言うのですが、「母さんはきれいな声なのに、がらがら声じゃないか」と開けません。鬼ばさは、きれいな声のでる草を食べ、「開けておくれ」と言うと、太郎は、少し開けて手を見ると毛むくじゃらなので、「母さんの手は、すべすべしてきれいだ」と、閉めてしまいます。鬼ばさは、山芋を塗ってすべすべにし、いい声で「開けておくれ」と言うので、見ると、すべすべした手なので戸を開けたのです。鬼ばさの化けた母さんは、三郎を抱き上げ、寝間へ入り寝てしまいました。
夜中に、太郎と二郎は、かじるような音で目を覚ますのです。
 「何を食べているの?」と聞くと、母さんは、三郎の指を投げたのです。
 「あいつは鬼ばさだ、三郎は食われた」と、二人は逃げ出しました。
夜が明ける頃、川に出ましたが渡れないので、木に登り隠れました。追いかけてきた鬼ばさは、川面に二人が写っているのを見つけ、「どうやって登ったの」と聞くので、「木に油をつけて登ったのだ」と言うと、鬼ばさは、その通りにしますが登れません。見ていた二郎が、「木に、なた目をつければ登れるのに」と言ってしまうのです。鬼ばさは、なた目をつけて登ってきて、天辺まで追い詰められた太郎は、「お天道さま金の鎖を下ろしてください」と叫びました。
すると、金の鎖が下がってきて、それにぶら下がり、天に登ったのです。鬼ばさも、「鎖をよこせ!」と叫ぶと、腐った縄が下がってきて、それにぶらさがりましたが、天に届く前に切れ、畑に落ちて死んでしまいました。鬼ばさの血で、そばの茎が真っ赤に染まったので、今でも、そばの茎は赤いのです。
天に登った太郎と二郎は、お星さまになったのでした。
  日本の昔話 3 ももたろう おざわとしお 再話 赤羽末吉 画 
                            福音館書店 刊 
    
兄弟が七人で、全員、空に登れて、お月さまのそばで、七つの兄弟星になり、鬼は、すすきの原に落ちて死んだために、今でも、すすきの根が赤いという話もあります。2月に紹介しました「まめをいるわけ」と「ヘンゼルとグレーテル」の話といい、あまりにも似ているので、びっくりさせられます。グリムの「狼と七匹の子やぎ」を読んでみましょう。思わず、「グスッ!」と、笑いたくなるはずです。
 
 
 
もう一つ紹介しておきましょう、これも世界中の子どもたちに親しまれている話とそっくりです。
 
◆ぬかふくとこめふく◆
 
むかし、あるところに、母親と二人の娘が住んでいました。妹のこめふくは実の子で、姉のぬかふくは、ままっ子でした。
ある日、こめふくには小さい袋を、ぬかふくには穴の空いた大きな袋を渡し、「栗をとってこい」と言われ出かけました。ぬかふくは、いくら拾っても穴から落ち、それをこめふくが拾いますから、間もなくいっぱいになり、帰ってしまったのです。しばらくすると、大きな栗が落ち、拾おうとすると亡くなった母親が現れ、穴を縫い、何でも出してくれる宝の小袋を授けました。その小袋に「栗よ、出ろ!」というとたくさん出たので、袋に入れて家に帰ったのですが、今頃まで何をしていたと怒られ、つらい仕事ばかりさせられる毎日が続きます。
祭りの日、母親と妹が見にいった芝居を見たいと思っていると、尼さんが来て、「芝居がもう一幕で終わるところで帰ってきなさい」と言うのです。ぬかふくは、宝の小袋に頼んで、着物や帯、かんざしを出し、出かけました。ぬかふくが、きれいなので、人々は見とれました。こめふくが見つけて、「ぬかふくではないか」と言いますが、母親は信じません。ぬかふくは、もう一幕で終わることに気づき、あわてて帰ったために、片方の足袋が脱げ、そのまま家へ帰ったのです。尼さまが、仕事を片付けてくれたので、汚い着物に着替え、仕事をしていました。帰ってきた母親は、まったく気づきません。
ところで、足袋を拾ったのは、村の大旦那の息子で、嫁にほしいと、作男たちが足袋を持って探しにきたのです。こめふくにはかせましたが合いません。ぬかふくにはかせてみると、ぴったり合うのですが、母親は、「この子は、お祭りには行っていない」と言いはります。
そこで、お盆の上に皿、皿の上に塩を盛り、塩の上に松葉をさして、歌の詠み比べをして決めることになりました。見事な歌を詠んだぬかふくが嫁に決まり、小袋から嫁入り衣装を出して着飾り、かごに乗って若旦那のところへ嫁いだのでした。     
  おばばの夜語り(平凡社6 名作文庫) 新潟の昔話  
                 水沢 謙一/水野庄三・絵 平凡社 刊
 
シャルル・ペロー作の「シンデレラ」ですね。
魔法使いのお婆さんが尼さまに、ガラスの靴の代わりに足袋が、午前零時の刻限の代わりに、芝居の最後の一幕前に帰る約束、傑作ではありませんか。最後の決着の方法が「歌の詠み比べ」であるのも、日本人らしいですね。
こめふくの詠んだ歌は、
  よんべな こいた ねこのくそ  水けだった 毛だった
              今朝 こいた ねこのくそ  息 ほやほや
何やらに臭ってきそうな歌に対し、ぬかふくは、
  ぼんさらや さらさら山に 雪ふりて
              雪を根として そだつ松かな
ときれいに決め、作者の意図に拍手を送りたくなります。ぬかふくに、宝の小袋を渡すのが、生みの親であるところも泣かせます。日本のむかし話、すばらしいではありませんか。
 
ちなみに、シンデレラ型の類似話は、ヨーロッパだけでも五百を越えるそうです。口伝え話をシャルル・ペローが「過ぎた昔の物語ならびに小話」の中に、「サンドリヨン、または小さなガラスのくつ」として再話したもので、グリム兄弟の作品にも「灰かぶり」があります。「シンデレラ」が有名になったのは、どうやら、ディズニーのアニメが世界的にヒットしたためだと言われているそうです。
「シンデレラの本名はエラ(ELLA)」という記事を見た記憶があるのですが、その真偽は定かではありません。
  注 再話 昔話・伝説などを、言い伝えられたままではなく、現代的な表現の話に作り上げたもの。
 
 
 
鬼と並んで「やまんば」は、むかし話に欠かせません。
山姥(やまうば)のことで、地方によって、さまざまな呼び名があります。共通しているのは、山に住み、その容姿は、髪の毛を長く伸ばし、ぼさぼさで、口は耳までさけており、背は高くて、力持ちということでしょう。恐いのですが、親しみの持てる話が多く、これもその一つです。そして、面白いことに、兄の「だだ八」、弟の「ねぎそべ」、おばあさんの「あかざばんば」という妙な名前を、たちどころに覚えてしまう子がいます。興味を持ったことは、即座に記憶してしまうようですね。
 
◆ちょうふく山のやまんば◆   今村 素子 著
 
むかし、ちょうふく山のふもとに小さな村がありました。ある年の十五夜の晩、お月見の最中に、突然、激しい雨風となり、
「やまんばが、わらしこを持った。もちをついて持ってこい。こなければ、人も馬も殺すぞ!」
と叫びながら、何者かが屋根を飛び回るのでした。声が聞こえなくなると、もとの月夜となったのです。夜が明け、もちをつきましたが、届ける人がいません。そこで庄屋さんが、普段から威張っている、だだ八とねぎそべ兄弟に役をいいつけ、道案内に、あかざばんばを付けてもらい、届けることにしました。
三人とも、やまんばに殺されると思いながら、山を登って行ったのですが、途中で、血なまぐさい風が吹き、兄弟はおびえてしまい、再び強風が吹くと、もちを放り出し、逃げてしまったのでした。ばんばは、もちを届けなければ、人も馬も食われる。寿命も近いのだから、村人のために役立とうと、登っていきます。
やまんばの家に着くと、
「もちを食いたくなり、ガラを使いにやったが、村人達が迷惑をしたのではと心配していた。やまんばは、恐ろしいものではない」
と言うのです。ガラは、四、五才になる子どもで、放り出したもちを取ってこいというと、アッという間にかついできますし、すまし汁を作るから、くまを捕ってこいというと、捕まえてきます。村で暴れたガラだと、ばんばも納得したのです。夕方になり、帰るというと、手伝いする者がいないので、二十一日だけ助けてほしいと頼まれ、暮したのでした。帰る日が来ると、いくら使っても、もとの一ぴきにもどる不思議な錦をくれたのです。
家に着くと、何と、ばんばの葬式をしていたのですが、元気な姿をみてお祝いとなりました。貰った錦を分けてあげましたが、次の日には、もとの一ぴきに戻っていたのです。   
その後、村には悪い病気も流行らず、楽しく暮らしたのでした。
  日本むかしばなし 7  おにとやまんば 民話の研究会 編 
      松本 修一絵 ポプラ社 刊
 
「さばうりとやまんば」「山んばの桐のはこ」「もちのすきなやまんば」なども読んであげたい本です。
この本の挿絵では、やまんばは優しい顔をしたお母さんだったと記憶しています。なぜ、やまんばは、恐ろしい容貌になってしまったのか、その経緯を述べた話が、澤田ふじ子さんの作品にありました。引用文を読むと遠慮したくなりますが、全編、肩の凝らない傑作な事件簿です。
 
 公家達は、己の腕を顕示するのを欲せず、武士とは逆に、秘匿するのを心得としていた。それが日本人だけではなく、東洋の文化の精髄というべきだろう。
今でもこの気風は、京都市民の中に脈々と受け継がれている。
 その精神を一言でいえば、すべてにおいて世間から目立つことをはばかるのがそれで、知者は山に隠れて〈仙人〉となり、意識的女性は〈山姥〉となるのだ。山姥は山に住み、怪力を発揮するという伝説的な女。鬼女とも考えられているが、図様として描かれている山姥が、童子(金太郎)を伴っているのは、知恵の伝承や再生を願う意味が、そこに込められているからである。
 近世から近代に及ぶ民俗学的考察の誤りが、山姥を醜悪で凄惨な女性として決め付けてしまった。長澤蘆雪の代表作、厳島神社に蔵されている〈山姥図〉(重文)は、美術史研究の中で、今もこうとしか捉えていないのだ。
  (祇園社神灯事件簿 四 お火役凶状 P278-279 澤田ふじ子著
                            中央文庫 刊)
  (引用者注 長澤芦雪 江戸時代の絵師、丸山応挙の高弟)
 
インターネットで検索して見ましたが怖い絵で、なぜか、西洋の魔女に似ていて、子ども達が読む絵本から描いていた山姥のイメージと異なり、意外に思いました。
澤田さんの人気シリーズの一つである「足引き閻魔帳 第4巻 山姥」の表紙が、長澤芦雪の〈山姥図〉です。アップになっていましたが、すさまじい形相で、子ども達には見せられません。
 
 
  (次回は、「日本の神様でしょう 神無月」についてお話しましょう)
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
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2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>ご家庭で楽しくできる受験準備(2)「話の読み聞かせ」のすばらしい効用 2

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         「めぇでる教育研究所」発行
2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2026年度入試(2025年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第8号
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(2)「話の読み聞かせ」のすばらしい効用 2
 
前回お話しましたように、話の読み聞かせは、「語彙」を増やし、「イメージをふくらます空想力や想像力」「話を聞く力」「構成力や思考力」「表現力」「物事に取り組む意欲」といった能力の開発に、はかりしれない影響を与えています。
しかも、誰かに命令され、要求されて、やっているわけではありません。
子どもは、自発的に、積極的に楽しみながら能力を培っているのです。
 
これだけではありません。
さらにもっとすばらしい能力の開発に貢献しているのです。
しかもそれは、小学校の入学試験で、重要なものばかりなのです。
 
「竜宮城って面白い所だな。絵に描いてみようかな?」
となると、絵画の領域です。
ファンタジーの世界で夢もふくらみます。
絵を描こうとする動機は純粋です。
幼児にとって、この「……かな?」と思ったときが、好奇心の芽を育む、絶好のチャンスなのです。
「小学校の入学試験に、絵を描かせる学校があるから、絵画教室へ行きましょう」
 
これでは、動機が不純です。
 
絵を描くことが好きになれるとは思えません。
これは何も絵だけではなく、ピアノや英会話といった早期教育にも同じことがいえるのではないでしょうか。
応接間の飾りものになっているピアノを見かけますが、ショパンやリストの名曲を弾いてほしいと、怒っているかもしれませんね。
 
ところで、最近、絵を描くことを、嫌がる子どもが増えていると聞きます。
その原因は、想像力が培われる前に、大人の求める望ましい上手な絵を描くことを、期待するからではないでしょうか。
感性が磨かれていなければ、絵は描けません。
 
[(環境+五感が受けた刺激)×(好奇心+観察力)÷そしゃく力=描かれた絵]
 
妙な式らしきものですが、冗談です。
専門家の先生方に、叱り飛ばされますね。
でも、感性は、子ども自身が、与えられた環境の中で、自らの力で養ってきた自前の性能ではないかといいたいのです。
親が、注文をつけ始めると、面白くない絵になると思います。
そこには、子どもにはない、大人の感性が入り込むからではないでしょうか。
どなたがおっしゃったのかわかりませんが、大人の手垢のついた絵です。
 
まだ、あります。
 
昔話をはじめ、子どもの読む本の多くは、善いことを勧め、悪いものを懲らしめる「勧善懲悪」から成り立っています。
正義は、必ず勝ちます。
倫理、道徳、善悪について、襟を正して教えなくても、きちんと学習しています。
いってみれば、お子さま用の「修身、道徳講座」です。
「情操教育の基礎、基本」を学習しています。
このことです……。
 
これからは、わたしども流の勝手な解釈ですから、深く詮索なさらずにさらっと読み流してください。
 
3歳頃から、自立が始まります。
そして、毎日、いろいろな経験をしながら、さまざまな感情も培われてきます。
これが、情緒です。
未分化であった情緒が、5歳頃から分化されます。
 
今までは、いってみれば、玩具箱の中に乱雑に入れられていた玩具が、「自動車はここ」、「縫いぐるみはこっち」、「ままごと道具はあっち」というように、次第に整理される状態になるので
す。
まだ、整然とはいきませんが。
つまり、未分化だった情緒が分化され、大人にみられる情緒が現れてきます。
喜び、悲しみ、怒り、恐れ、心配、快いといった情緒です。
ついこの間までは、嬉しくても、悲しくても、お腹がすいても、泣くしか表現できなかったことを思えば、格段の進歩です。
 
ですから、いろいろな話を聞き、喜怒哀楽など心の動きを誘い起こされ、幼いなりに、自我を作っていると思います。
大胆にいえば、正しいこと、悪いことの分別を学習しているのです。
修身、道徳講座のシミュレーション学習ではないでしょうか。
 
まだ、あります。
これがもっとも大切だと思います。
 
お父さんやお母さんが感情をこめて読んであげると、子どもは真剣に聞きます。
気持ちをこめて聞くものです。
 
そこから、人の話を静かに、行儀よく聞く姿勢が身につきます。
 
これは、小学校へ入って勉強するために、きちんと身につけておきたい「基本的な学習態度、心構え」です。
話が聞けないようでは、いくら漢字が読めても、足し算や引き算ができ、九九をそらんじていても、学習効果をあげることはできません。
小学校の先生方に聞いてみると、みなさん、そうおっしゃっています。
 
それほど、話を聞く姿勢を身につけることは、大切なのです。
 
小学校の入学試験も、同じです。
大切なことですから繰り返しますが、ペーパーテストには、答えは書いてありますが、どこにも設問はありません。
話を聞いていなければ、何も答えられません。
行動観察型や他の試験も同じです。
話をきちんと聞き、理解していなければ、どうにもなりません。
 
合否の鍵は、「話を聞く姿勢ができているかどうか」にかかっているのです。
 
それを、あまり本を読んであげずに、
「人の話はきちんと聞きなさいと、いつもいっているでしょう!」
恐い顔をして、厳しく、何十回いっても、無駄です。
 
子どもは、自分の好きな本を読んでもらい、静かに聞くことで、話を聞く姿勢を、意識することなく、身につける訓練になっているのです。
話を聞けない子になる原因の一つに、話を聞きたがる大切な時期に、読み聞かせが少なかったことも、あるのではないでしょうか。       
 
さらにすごいと思うのは、前にも少し触れましたが、
「言語能力を高めるためのお勉強ですよ!」
といった意識は、ご両親にも子どもにも、まったくないはずです。
自主的に、積極的に、しかも楽しく学習しています。
 
これこそ「教えない教育」のもっとも効果的な方法ではないでしょうか。      
 
「教えない教育」とは、誤解を恐れず、わたし流にいえば、「本人は勉強だと思わないのに、ものすごい勉強をしている」ことです。
何かを学ぼうとする気持ち、「学習意欲」が身につきます。
 
しつこいですけれども、まだ、あります。
 
ご両親、特にお母さんの表情豊かな、優しい語りかけが、何よりのスキンシップとなります。
ですから、子どもの好きな本をたくさん読んであげるお母さんは、子どもに慕われます。
それは、お母さんとお子さんが、同じ土俵に上がり、同じ気持ちで、物語の世界を楽しんでいるからです。
お母さん方は、こんな荒唐無稽な話などありえないと思っても、また、少し抵抗を感じる言葉があっても一切、無視して、子どものレベルに合わせて読んであげています。
 
視線は同じ高さですから、心が通うのです。
視線の高さが違ってくると、命令と忍従の関係になりがちで、そこには、教えてあげるという姿勢が表われ、子どもがもっとも嫌う母親に変身するからです。
 
しかし、一つだけいっておきましょう。
 
いくら本の読みきかせがすばらしいといっても、お子さんが興味を示さない本では、あまり効果はありません。
「少年少女 世界名作全集 全十巻」など買いそろえても、無駄かもしれませんね。
「本当は、『かちかち山』の話をしてほしかったのに……」
こういったずれは、小さいときからありがちです。
気をつかってください、無神経は駄目です。
(お断り 実際に「少年少女 世界名作全集 全十巻」が発売されていたとしても、その本とは一切関係ありません)
 
一緒に図書館へ行って、最初は、お父さんやお母さんが選んであげ、あとは、お子さんに任せてみましょう。
そして、お子さんが選んだ本は、たとえ年齢にふさわしくない幼い内容であっても、いやな顔をせずに読んであげ、自分で選べたことをほめましょう。
それから、お父さん、お母さんの勧める本を選んであげる、こういった手続きも必要です。
読書の芽は、自主的に育まれなければ、親が期待するように育たないからです。
 
また、図書館には、紙芝居がたくさんあります。
本に興味を示さない場合は、これを利用しましょう。
動画と違い紙芝居は、親子で向き合いますから、お子さんの表情がよく見え、話を理解しているかだけではなく、どういったことに感情が刺激されるか、何に興味があるかなどがわかるからです。
 
このように幼児期は、知識を詰め込み、文字や数字を使った計算を教えるより、心をこめて本を読んであげ、心の通った会話がたくさんできる環境を作るべきです。
そういう時期なのです。
 
小学校受験でもっとも重視されるのは、「話を聞く姿勢ができているかどうか」なのです。
 
そこから、ご両親の育児の姿勢がわかります。
普段から、会話が弾み、本をたくさん読んであげる環境であれば、自ずと培われてくる能力だからです。
これは、塾や幼児教室だけに任せて身につく力ではありません。
ご両親が、ご家庭で育てていくものです。
  
小学校受験の第一歩は、ここから始まり、合格を勝ち取る力となることを忘れないでいただきたいと思います。
 
まだまだ暑い日が続きます。健康管理には十分、注意してあげましょう。
 
 (次回は「数感をみがこう」についてお話しましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>願書の書き方

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第59号>
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◇説明会情報◇
 桐朋小学校
  学校説明会・学校体験会
  日時:8月31日(土)
   ※本メルマガ発行時点で説明会は満席、体験会は受付中
 
 光塩女子学院初等科
  日時:9月7日(土)10時15分
   ※当日8時20分から授業公開も行われます。
 
 ※満席の場合でも空きがでることがありますので、こまめにHPを確認して
  ください。
  
 
 
★★願書の書き方★★
 
志望校も決まれば、願書の記入となります。
 
願書は、保護者の考え方や性格など、いろいろなことが浮かび上がってくるものです。
面接される先生方は、この願書を読まれて面接に臨むわけですから、いってみれば、学校側が知ることのできる唯一の情報であり、書き方によっては、それが決め手となりかねません。
志望理由やご家庭の教育方針、お子さんの性格や育児の留意点、職業、通学経路など、記入されたデータをもとに質問が始まるのですから、親としての責任は、限りなく重いものです。
 
簡潔で、的を射た表現から、面接は和やかな雰囲気で進み、お互いのコミュニケーションが成り立ちます。
逆に、要領を得ない、冗漫な表現では、悪い印象を与えかねません。
 
WEB出願の場合は問題ないですが、手書きの願書の多くは、「楷書で丁寧に記入し、使用する筆記用具は黒の万年筆かボールペン」と注意を促しています。
達筆な草書で書かれた願書は、注意を無視することになり、見た目はきれいであっても、簡単に読み切れませんから、何百通の願書を読む立場になれば、これほど思いやりの欠けた願書もないでしょう。
また、記入欄いっぱいに小さすぎる字で書き込むのもどうでしょうか。
もし、あなた自身が面接を担当する先生の立場でしたら、どういった願書を歓迎するか考えましょう。
やはり、一点一画を丁寧に、読みやすく書くことが大切だと思います。
 
また、書き慣れているからと、サインペンを使用することは避けましょう。
サインペンは水に弱く、にじんで願書を汚したり、字、そのものが消えたりしがちだからです。
 
このことは、面接資料や参考票、アンケートといったものも同様です。
 
●願書記入に関しての留意点
 
・氏名で齋(斎、斉)、澤(沢)、邊(辺)、壽(寿)など、普段、略字で書き慣れている方は注意しましょう。
 氏名の「ふりがな」は、ひらがなで書かれている場合は「ひらがな」で、カタカナの場合は「カタカナ」で記入します。
 
・現住所は、住民登録票に記載されている通りに記入します。
 やりがちなミスは、
 〔東京都新宿区○○町4ー5ー6 メゾン△△△△ ××号〕
 といった住所の記入です。
 住民登録票には、以下のように表記されているはずです。
 〔東京都新宿区○○町4丁目5番地6-メゾン△△△△ ××号〕
 
・職業は、簡潔に記入しますが、説明をしなければわからない場合もあります。
 記入欄は限られていますから、面接の折りに質問を受けることを考え、わかりやすく説明できるようにしておきましょう。
 自営業の方は、年収や従業員数等を尋ねられたケースもありましたから、まとめておきましょう。
 私学はご家庭の経済力に依存しており、経済的な基盤が安定しているかを確認していると考え、的確に応じることが大切です。
 
 職業を持っている母親は不利といわれているので、書くことを躊躇されるお母さん方がいると聞きますが、これもうわさの一つです。
 学校によっては共働きのご家庭の方が多いのでは、という現状です。
 入学後の送迎や、緊急時のお迎え、学校の行事や参観授業など、きちんと出席し、協力できれば問題ありません。
 
 都内でも、日本女子大学附属豊明小学校、聖心女子学院初等科などには学童保育があり、仕事を持つお母さん方を応援しています。
 
 ただし、緊急時のお迎えについては、東日本大震災以後、速やかに対応できることも求められています。
 学校側に不安を与える条件がなければ、専業主婦より、苦労をするわけですから、もっと自信を持ってください。
 
・通学方法、所要時間は、電車の場合は、各駅停車を利用した時間を、乗り換えがある場合は、それに要する時間、自宅から最寄りの駅、駅から学校まで歩く時間は、子どもの足でかかる時間を記入します。
 駅から学校までの時間は、学校側から○○分と指定している場合もありますので、読み落とさないように注意しましょう。
 
 通学時間は、多くの場合、ラッシュアワーを避けるようにはなっていますが、お住まいによっては、その時間帯になることもありますし、バスの場合は渋滞などから、時間がかかることもあります。
 正確な時間を知るためにも、登校時間に合わせて出かけ、所要時間を把握しておきましょう。
 乗り換えがある場合、特に地下鉄などは、迷路のような所もありますから、注意が必要です。
 
・写真は、カラーでも白黒でも可、写真屋さんで撮らなくてもスナップ写真でも可、といっている学校もあります。
 制限があるとすれば、3ヵ月以内に撮影されたもので、本人と確認できるものです。
 「○○写真館ご用達の写真でなければ合格しない」は、単なるうわさですが、気になさる方は、ご利用ください。
 ホームページに受験用の家族写真を載せている写真館がありますから、参考にされると良いでしょう。
 最終的にはご家庭の判断でお願いします。
 
・性格、長所、短所は、正直に書きましょう。
 子どもは、演技できませんから、試験場のどこかで、あらわれるものです。
 短所の表現には、十分に気をつけてください。
 「気が短くて飽きやすい」などと書かれる方はいないと思いますが、これでは、保護者として失格でしょう。
 
 「だれが、そのように育てたのか」と思われるだけです。
 
 親の愛情の伝わる表現の仕方があるものです。
 短所は、育児でうまくいかなかったところが表われているといえますし、遺伝もあると考えられますから、お子さんだけの責任ではありません。
 
・誤字や略字に注意が必要です。
 働(仂)、卒(卆)、言(云)、その他 問、職、点、第など。
 
 
願書の記入上の注意に関しては、9月から始まる説明会でお話がある学校があります。また、WEBでも公開している学校もありますので、ホームページ等でご確認ください。
 
学習院初等科、青山学院初等部では、記入例を細かく記した資料も同封されていましたが、今年はどうでしょうか。
それでも、印鑑の押し忘れや、記入漏れなどがあると注意を促していますから、記入例や注意書きにしたがって、慎重に書くべきです。
 
書き損じた場合は、修正液を使用してもよいという学校もありますが、やはり、願書は「お願いの書」ですから避けるべきで、そのためにも何部かコピーを取り、下書きをすべきでしょう。
 
WEB出願の学校も増えてきています。出願登録後に願書等のダウンロードという学校の場合は、「予備の願書を購入しなければ」ということがなくなりました。
暁星小学校も願書だけを販売していましたが、出願サイト「miraicompass」からの出願となり、学校での願書発売はしません。出願サイトの案内は、8月下旬に本校のホームページにアップする予定。今年もテーマ作文がありますが、テーマタイトル、気になるところです。
 
慶應義塾幼稚舎や早稲田実業学校初等部などの願書のように、志望理由などを書く欄に線の引いてあるものは書きやすいのですが、雙葉小学校や白百合学園小学校(両校ともにWEB出願併用となり、今後変更されるかもしれません)、昭和学院小学校、日本女子大学附属豊明小学校の面接書類のように、白紙で線がなく、書く欄も広い場合は、あらかじめ鉛筆で薄く線を引き、万年筆かボールペンで記入した後、完全にインクが乾いてから消しゴムで線を消せば、字も揃い、読みやすくなります。
 
なお、こういった願書に関する情報は、昨年以前のものであることをお断りしておきます。
 
最後に、「夫は字が下手なものですから、私が書いた方がよいでしょうか」といった質問をよく受けますが、一点一画、丁寧に書けば、決して読みづらい願書にはならないと思います。
また、「父親が書かなければ合格しない」ともいわれているようですが、これもおかしな話で、どうやら、願書の最後のところなどに、雙葉小学校のように「記入者」と書かれているところから、こういったうわさが流れているようです。
 
「字が下手」「主人が書く」などは、どうでもよいとはいいませんが、一点一画、丁寧に書かれ、志望理由などが要領を得たものであれば、それで十分ではないでしょうか。
 
「形を繕うより心」です。
 
わが子のために心から、その学校への入学を希望されているならば、そこには、自ずとご両親の心意気が表われているはずです。
 
「願書は、ご家庭の顔」といわれる理由は、ここにあるのです。
 
猛暑が続いています。体調を崩さないように、お子さんの健康管理には十分に注意してあげましょう。入試直前講座も始まります。頑張ってください!
 
 
     (次回は、「面接について」お話ししましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第11章 お月見です 長月(3)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第42号-
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第11章  お月見です   長 月(3)
 
  
★★江戸時代の時の数え方★★
 
何かないものかと探していましたら、やはり、ありました。
江戸時代の「時の数え方」です。当時は、午前零時、午後零時(正午)を「九つ」といい、「2時間を一時(いっとき)」とし、そこから2時間ずつ、ずらして八つ、七つ、六つ、五つ、四つという数え方をしていました。面白いことに、「九つ」から始まって、「八つ」 「七つ」と減っていくのですから、現代人の感覚だと戸惑います。しかし、これにはきちんとした理由があるのです。
掛け算の九九のお出ましです。
 
まず、鐘を9つ打つ時刻、午前零時、午後12時を「九つ」どきとして、次に9の2倍の18を打つのですが、真夜中に18も鐘を打たれては、おちおち寝ていられません。18では多すぎるので、十の位を除いて、2時間後の午前2時に8つ打ち「八つ」として、以下、
   9×3=27で、十の位を除いて午前4時に7つ打ち「七つ」、
   9×4=36で、十の位を除いて午前6時に6つ打ち「六つ」、
   9×5=45で、十の位を除いて午前8時に5つ打ち「五つ」、
   9×6=54で、十の位を除いて午前10時に4つ打ち「四つ」、
元に戻って、午前12時が「九つ」、午後2時が「八つ」、午後4時が「七つ」、午後6時が「六つ」、午後8時が「五つ」、午後10時が「四つ」、そして午前零時が「九つ」と、こういう仕掛けなのです。
 
素朴な疑問ですが、なぜ10から始めなかったのでしょうか。
その理由は、陰陽思想では十を完全な数として数の頂点と考え、十は最上のため満ち足りると次はなくなってしまう、満月が欠けていくのと同じで、九を陽(奇数)の最上、八を陰(偶数)の最上の数と考え神聖視していたことによるものです。
 
余談になりますが、聖徳太子の「十七条の憲法」は陰と陽の最上の数を足したもので、陰陽思想の影響を受けてできたと言われているそうです。
 
また、時刻の決め方も世界標準時間などない頃ですから、こういったことで決めていました。
 
 江戸の時刻は、太陽の上るのを明(あけ)六ツとして、日没を暮六ツとして、その間を六等分して昼の一刻を決める。夜は日の入りから翌朝の日の出までをやはり六等分して夜の一刻は決められた。従って、夏は日が長いので、昼の一刻が夜の一刻より実際には長くなった。
 (御宿かわせみ 16 八丁堀の湯屋 P250 平岩弓枝 著 文春文庫刊)
 
ところで、東京地方の民謡に、この時を表した「お江戸日本橋」があります。
「七つ」を現代の時刻7時と考えると、おかしな歌になってしまいます。東海道五十三次を歌った長い歌で、全部残っている資料もあるそうで、興味のある方、インターネットで調べてみてください。
 
   お江戸日本橋 七つ立ち
   初のぼり
   行列そろえて アレワイサノサ
   コチャ 高輪`
   夜明けて 提灯(ちょうちん)消す
   コチャェ コチャェ
              
大名の参勤交代の行列を表した歌で、七つ(午前4時)に日本橋を出発、「下に~、下に~」の掛け声でゆっくりと進み、高輪で明け六つ(午前6時)を迎えて提灯の火を消す、のんびりとした行列であることがわかります。正月恒例の箱根駅伝、スタートの有楽町から高輪まであっという間ですから。
歌詞に「初のぼり」とありますが、江戸時代は京都へ行くのを上りといい今とは逆になっています。当時の都は京都で、明治に東京へ遷都されて東京が都となり、東京へ行くのが上りになりました。
 
日本橋は現在のコンクリートの橋を架けてから百年以上になりますが、橋の上を高速道路が走り、窮屈で無残な姿になっています。あの関東大震災や東京大空襲にも耐えた橋であり、親柱には「東京市の守護神・獅子像」と「15代将軍徳川慶喜の揮毫(きごう)した銘板」が設置されている由緒ある橋で、もっと優しく保存してあげるべきではないでしょうか。
 
所変わって、小江戸と呼ばれる川越には、江戸時代の風情を今に残す蔵造りの家並みを見下ろすように「時の鐘」がそびえたっています。鐘楼の高さは15.9メートル、トタン屋根三層作りの木造で、階段はありますが上れません。毎日6時、正午、15時、18時の4回、時を告げ、平成4年(1996年)に環境庁(現環境省)主催の「残したい日本の風景百選」にも選ばれています。
時の鐘は、今から約400年前に創建されたといわれ、現在建っているのは4代目。明治26年に起きた川越大火災後に再建されたもので、耐震診断の結果、「倒壊の恐れあり」と判明。明治27年の再建当時の姿に戻す復元工事も実施され、平成29年1月、工事は無事終了。
                              
さて、「時」つながりで、最近、きかれなくなった落語に、「時そば」と題した噺があります。
 
ちょうど九つどきに、屋台のそば屋で勘定を払う男が、細かい銭で済まないがと、数えながらおやじさんに渡します。
「ひい、ふう、みい、よう、いつ、むう、なな、やあ」
ここまできたとき男が、いきなり、時間を聞きます。
「何どきだい?」
「へぇ、ここのつで…!」
とおやじがいうと、九文目を払わないで、
「とお、じゅういち、じゅうに、じゅうさん、じゅうし、じゅうご、じゅうろく、ごちそうさん!」      
と、九をうまくとばして、お客さんが一文、見事にごまかします。 
これをまねた男が、今度は時を間違えて、多く払うはめになる話です。
 
この噺は、関西では「時うどん」になりますが、薄く透き通った関西風の味も、こたえられません。やはり、この時の数え方も、訳ありでした。
 
「ひい、ふ、みい」は、漢字の訓読みですが、これを覚えておくと、日付の読み方に役に立ちます。
 
一日を除き、「ふつか、みっか、よっか、いつか、むいか、なのか、ようか、ここのか、とおか」となっています。十一日、十二日、十三日と音読みになり、十四日は「じゅうよっか」と音訓読みになり、二十日は「はつか」となり、幼児には、難しい読み方になっています。「ついたち」は、一月に紹介しました「十二支の話」を思い出してください。毎日、カレンダーを見ながら、「今日は、9月4日、金曜日」とやっていると、無理なく覚えらます。以前、「日づけの歌」を紹介しましたが、お役に立ちましたか。お読みにならなかった方、YouTubeで見ることができます。
 
 
 
★★防災の日★★
 
9月1日は防災の日です。
ご存知のように、大正12年(1923年)に、関東大震災が起きた日です。
「災害は、忘れた頃にやってくる」と言いますが、平成23年(2011年)に東日本大震災が起きました。当時、防災非常袋などに、飲料水や非常食、着替え、乾電池などを用意し、万が一に備えていた方は、少なかったのではないでしょうか。用意した飲料水などの消費期限(Use by date)をチェックし、想定外の災難に遭わないように心がけましょう。
 
幼稚園や小学校でも避難訓練をやっていますが、小さい子ども達は、自分で身を守るすべを知らないものです。幼稚園、小学校にいる場合は、万全の態勢で臨んでいますから心配ありませんが、一人で外にいる場合どうしたらよいか、しっかりと教えておきたいものです。
 
東日本大震災が起きるまでの学校選びは、「子どもの足で通える学校」でしたが、「子どもが安心して通える学校」ということも考慮されるようになっています。
 
私立小学校は、埼玉県は5校、神奈川県では31校、茨城県では7校あります。
千葉県は9校です。東京は、平成31年4月に東京農業大学稲花(とうか)小学校(世田谷)が開校するなど、現在では56校となっています。
なお、私立ではありませんが、令和4年に全国初の「公立」小中高一貫校として東京都立立川国際中等教育学校附属小学校が開校しました。
 
就学児童が減っている中で開校する学校側の狙いは、「安心して通える近くの学校」ではないでしょうか。「教育は国家百年の計」ともいわれていますが、地方の教育が充実するのは、長い目で見れば、わが国の教育のためにも歓迎すべきことだからです。
 
最後になりましたが、今年の二百十日(立春から数えて210日目)は、8月31日。この時季に、稲は花開き実を結びますが、台風が日本列島を襲い、農作物が被害を受けるため、お百姓さんには厄日といわれており、奈良県大和神社の「風鎮祭」、富山県の「おわら風の盆」など、各地で台風に暴れられないように、風雨を鎮めるお祭りが行われています。
 
 
  (次回は、「9月に読んであげたい本」についてお話しましょう)
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
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2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>ご家庭で楽しくできる受験準備(2)「話の読み聞かせ」のすばらしい効用(1)

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         「めぇでる教育研究所」発行
2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2026年度入試(2025年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第7号
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ご家庭で楽しくできる受験準備
(2)「話の読み聞かせ」のすばらしい効用 (1)
 
 
本を読んであげる「話の読み聞かせ」は、とても大切です。
 
動画で見る「フランダースの犬」や「アルプスの少女ハイジ」などのアニメの作品は、映像と語りだけではなく、臨場感を盛りあ
げる音楽や効果音まで駆使し、瞬く間に物語の世界へ誘い込まれ、楽しいものです。
 
これほど便利なものはありませんが、反面、幼児が疑問を抱いても、教えてくれない不便な点もあります。
 
幼児には、ご両親の「生」の声が何よりです。
 
5歳頃になると、絵が主役であった絵本から、字の多い絵本に変わり、話も筋道立てて進む物語になっていると思います。
 
ここで、お父さんやお母さんに本を読んでもらっていることを少し考えてみましょう。
読んでもらっているときの子どもの頭の中は、どうなっているのでしょうか。
 
絵を見ながらですから、大人が読んでくれる言葉を絵に置き換える、映像化するといった作業が、フルスピードで進んでいるので
はないかと思います。
 
絵本や図鑑、テレビや実際に見た映像が浮かんでいるのでしょう。
ところが、聞いたことがない言葉が出てくるとストップがかかります。
「お母さん(お父さん)、オニタイジって、どういうこと?」
やさしいお母さんは、お子さんの言葉に置き換えて説明します。
そこでお子さんは意味を確かめ、納得し、新しい言葉を覚えて、「語彙」が増えます。
 
そして、一人になると、まだ、字を読めないはずですが、何やらブツブツと言いながら絵本を見ています。
あれは、本当に不思議ですね。
おそらく、読んでもらった本が面白かったから、お母さんの言葉を思い出しながら確かめているのだと思います。
絵を見ながら、記憶した言葉をもとに映像を描き、イメージ化しているのです。
考え、想像しているのです、しかも「言葉」でです。
 
これは、すごいと思いませんか。
 
それが証拠に子どもは、とかく同じ本を何回も繰り返し、飽きもせずに読んでくれとせがみます。
それも読んでいる途中に、
「ママ(パパ)、ありがとう。そこまででいいです」
といったことが、しばしば起こりがちです。
そこまでのところを忘れてしまったのかどうかわかりませんが、それ以降、話が進まなくなり、イメージ化が中断してしまう、と
大人は考えてしまいます。
 
しかし、子どもとしては、読んでもらって全てがつながったから、そこまででいいのでしょう、あとは覚えていますから。
話を一所懸命に覚えようとしていることに違いはありません。
 
そこから「記憶力」がつきます。  
 
さらに繰り返し読んでもらうことで、描かれた映像は、より鮮明になり、そこから、「空想力や想像力」が培われるのではないで
しょうか。
 
ところで、昔話を何か思い出してください。
昔話だけではありませんが、幼児の読む本は、「起承結」で成り立っているのではないでしょうか。
「起承転結」の「転」はなく、話は複雑になっていません。
 
江戸時代の漢学者、頼山陽が、漢詩を説明するために「京都西陣帯屋の娘」と題して、面白い例を残しています。
 
   京都西陣帯屋の娘   (起)
   姉は十八、妹は十六  (承)
   諸国の大名は刀で殺し (転)
   姉妹二人は目もとで殺す(結)
 
「ショコクノダイミョウって、ナンですか?」
余計なものが入ってくると、すっきりしなくなります。
帯屋の娘の話は、帯屋の娘で終わらなければ、子どもは承知しません。
 
桃太郎が、鬼退治をしたついでに、海賊までやっつけるとはなりません。すっきりと終わって、「めでたし、めでたし」が、昔話
には欠かせない決まりです。
 
さらに物語は、「序破急」と快適なテンポで進みます。
 
浦島太郎の竜宮城で過ごしたひと時が、何十年であっても何ら差し支えありません。話は快く聞けるように仕組まれていますし、
簡潔明瞭ですから、「話を理解する力」がついてきます。
 
しかも、話は、「むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました」で始まります。
 
「むかし、むかし」は、「いつ」と時間の設定ですが、いつのことだかわかりません。 
 
「あるところ」は「場所」ですが、どこだかわかりません。
 
「おじいさんとおばあさん」は「だれ」と大切な登場人物ですが、名前もさだかではありません。
 
みんな「あいまい」です。
 
その「あいまい」なままに、話は、「何を」「なぜ」「どのように」と展開します。
これも考えてみると大変なことです。
 
時代はいつでも、場所はどこでも、名前がなくても、何ら不都合なことはありません。
奈良時代であろうが平成時代であろうと、北海道だろうが沖縄であろうと、みんな、「むかし、むかし、あるところに」で済ませ
てしまいます。
 
時代考証も、場所の設定も、登場する人物像をイメージ化する面倒な説明もありませんから、すっきりとした気持ちで話に入って
いけるのです。
 
これを仮に、
「江戸時代の元禄十五年、大晦日をむかえる二日前の朝、上総の国は蒲郡、大字蒲、字大和村の一本杉の近くに、四代目の山之上
太郎左衛門というじいさまと花というばあさまが住んでいました」
とやられては、聞いてみようかなという気持ちにもなれないでしょう。
 
「ママ、もう眠いから……」
こうなるに違いありません。
                
ところで、昔話は、
   いつ(when)
   どこで(where)
   だれが(who)
   なにを(what)
   なぜ(why)
   どのように(how)
といった[5W1H]から成り立っていますが、これは文章を書くときや情報を伝える時の基本で、小説や新聞、テレビのニュー
スなども、この形式(フォーム)で構成されています。
 
ということは、話を聞きながら[5W1Hのフォーム]を、小さいときから学んでいることになります。
 
これは、すごい知恵ではないでしょうか。
 
もちろん、子ども達が、「いつ、どこで、だれが」などと意識して聞いているわけではないでしょうが、理路整然とセオリーどお
りに話は進んでいきますから、楽しく話を聞き、その話を覚えることで、筋や物事を考える、「思考力や構成力」が、おのずと身
についてきます。
 
そして、子どもは、話を覚えると話したがります。
 
誰かに聞いてもらいたいのです。
それには、自分自身が話をよく理解しなければできませんから、そのための訓練が、自発的に始まります。
 
それが、「表現力」につながります。
 
しかも、「覚えなさい!」といわれて覚えたのでもなく、「話してみなさい!」といわれて訓練したものでもありません。
自ら、積極的に努力して得た力です。
 
こんなに大切な能力開発を、誰にもいわれずに挑戦しているにもかかわらず、
「パパ、『桃太郎』の話、知っている?」
「ああ、知っているよ。桃太郎が猿と犬と雉の家来を連れて、鬼退治にいく話だろう!」
と無造作に応じてしまっては、せっかく積んできたトレーニングの成果を試せません。
 
子どもは、話したいのです。
成果を試したいのです。
 
「うん、パパも子どもの頃は、よく知っていたけど、どういう話だったかな?」とやさしく受けてあげましょう。
お子さんは、一所懸命に話すはずです。
そして話し終えた時には一言、「よく覚えたな、偉いぞ!」とほめてあげることです。
 
お父さんにほめられて、不愉快になるはずはありません。
「よし、今度は『カチカチ山』を覚えるぞ!」
となり、新しい話に挑戦します。
 
記憶力どころか、「物事に取り組む意欲」を培うことになります。
しかも「自発的」にです。
 
30度越えの日々、自然が相手だけにどうしようもありませんが、お子さんの健康管理には十分に気を付けてください。
 
 
(次回は、「話の読み聞かせ」のすばらしい効用(2)」についてお話しましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>よく受ける質問から

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         「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
      年長児のお子様をお持ちの方々へ
 2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第58号>
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★説明会情報★
 
<東洋英和女学院小学部>
 入試説明会
  日時 9月7日(木)13時
  申込 HPから申込
  備考 本年度入学希望者の保護者限定
     
 詳しくはホームページをご覧ください。
 
 
 
雙葉小学校の説明会は、今年は対面と動画配信と2本立てとなり、渡部祐子校長、武宮和慶教頭から教育方針や入試について説明がありました。
 
さて、その雙葉小学校の河野久仁子前校長の話で、受験される方には参考になるのではという話がありますので、紹介しましょう。ただし、文言は正確ではないことをお断りしておきます。
 
 学校生活は、競争の場ではなく、共に祈り、共に学び、助け合う場です。
 「先生と子ども」「子どもと子ども」という関わり合いの中で、人間同士の信頼関係を築き、自分が愛されることを感じながら、子どもの人間としての成長を助けていくようにと考えています。一人ひとりの子どもが、人との関わりの中で自己を表現しながら、その人らしく生きることができるように祈っています。バラはバラらしく、スミレはスミレらしく、その人らしく生きる。また、自分で自由に学び、決定することができる、責任の取れる人に育てていこうといったように、子ども達が、これからの世界を支えていく人に育っていくように願っています。
 
「バラはバラらしく、スミレはスミレらしく、その人らしく生きる」。「その人らしく」は、自己中心ではなく、幼稚舎の「独立自尊」と同様「共生他尊」の心です。
 
 
 
 ■よく受ける質問から
 
 
暑い夏休み、元気でお過ごしでしょうか。
この時期によくある質問からいくつかを紹介しましょう。
 
Q.慶應義塾幼稚舎の試験では、絵がうまく描けなければ合格しないそうですね。
 
A.「うまく描けなければ」という文言は、大人の考える絵に対する評価でしょう。
  この考えが、子ども達を苦しめているようです。
  入試で絵を描かせるのは、絵の巧拙、上手、下手だけを見ているのでありません。
  大人は自分の考えを相手に伝えるのに、言葉だけで足ります。
  しかし、幼児は、言葉だけでは不十分です。
  言葉で足りなければ、体全体で表す身体表現も、大切なコミュニケーションの方法で、絵もその一つです。
  自分で思っていること、考えていることを絵で表現したいのです。
 
  子どもの絵は写生ではなく、イメージ、感じたことを描いていると思います。
 
  ですから子どもは、絵の巧拙にこだわらず、思い通りに、せっせと描きます。
  そばで見ていると、本当に楽しそうです。
  以前、幼稚舎が、画家が絵を描くときに使うイーゼルを立て、絵を描かせましたが、当時の舎長は、その目的を「子ども達の表情を見たかった」とおっしゃっていました。
 
  ですから、一つの話を聞いたあとに、「この続きの絵を描いてみましょう」といった問題に発展させ、子どもの感性を見ているのではないでしょうか。
 
  「うまい」に越したことはありませんが、それが、子ども自身の感性ではなく、誰かに教え込まれたものであれば、評価されないと思います。
  どなたがおっしゃったかわかりませんが、そういった絵を「大人の手垢のついた絵」というそうです。
 
  「お子さんは、楽しく絵を描いていますか」
 
  そうであれば、子どもらしい絵が描けていると思います。
  学校の狙いも、そこにあるのではないでしょうか。
  
  最近の傾向として、例えば、5~6人のグループに、模造紙1枚とクレヨン1箱が用意され、「弁当の絵」「水槽の絵」などのテーマが与えられ、相談しながら描くといった形式で出題されていますが、使いたいクレヨンを他の子が使っている場合、何もしないで使い終わるまで待っている子がいると聞きます。ポイントは「相談して」にあるのですが、お子さんは積極的に参加できますか。
 
 
Q.1枚の絵を見て話を作るのが苦手なのですが、うまくなる方法はないでしょうか。
 
A.「うまくなる方法」などありません。
  技術的なことを教えても、お子さんは、おそらく理解できないと思います。
  1枚の絵から話を作るのは、本当に難しいものです。
  絵を見ても、自分で体験をしたことがなければ、話せないのが幼児です。
 
  まず、4枚ほどの絵からできている「お話作り」の問題からやってみましょう。4枚の絵であれば、どういった状況か把握できるからです。
 
  そこから話を作る方法を、自分なりに考え始めるものです。
  最初は、つたない話になりがちです。
  最後まできちんと聞いてあげ、できたことを褒め、それからおかしなところは、「ママは、こう思うけれど、どうかな?」と、お子さんに考えるヒントを出してあげることです。
  「違うでしょ、こうなの!」では、お母さんの作品になってしまいます。
  これを十分にやった後に、3枚の絵、2枚の絵に進み、そして1枚の絵に挑戦しましょう。
 
  苦手なお子さんには、「お母さん(お父さん)、あのね!」方式がいいでしょう。
 
  お母さんやお父さんに話しかけるように作ることです。
  幼児の経験は、まだ狭いものですから、体験していないことを表現するのは苦手です。
  日常生活で、「ママ(パパ)、あのね!」と話しかけてきたときは、必ず、聞いてあげましょう。
  自分で体験したことを話す、これが話作りの基本でもあるわけです。
  話すチャンスをたくさん作ってあげることが大切です。
  なお、「お母さん、あのね!」方式は、某国立大学附属小学校で、作文の時間に実践していた学習方法です。
 
 
Q.問題に取り組む時に時間がかかり過ぎるのですが心配ないでしょうか。
 
A.幼児には、問題集をやるときにも、さっさと答えるタイプと、じっくりと考えて答えを出す二つのタイプがあるようで、イソップ物語の「ウサギとカメ」の話から、前者を直感が働くウサギ型、後者をじっくりと考えるカメ型と考えることもできます。
 
  難しい対称図形や回転図形の問題でも、ウサギ型は、4つの答えから正解を選び出すのにも時間がかからず、カメ型は、慎重に取り組みますから時間がかかります。一つ一つ検証して、答えを出しているからです。
  おそらくお子さんは、カメ型のタイプではないでしょうか。
  一つ一つ比べ、「これは、ここが違う」と納得しなければ、次の答えに手を出せないのですから、むやみに急がすことはありません。
  一度、仕組みや方法が理解できれば、スピードもアップします。
 
  思考派のカメさん型は、小学校の中学年を過ぎる頃から、力を発揮し始めます。
  考える力が育まれ、基礎学力がしっかりと身についているからです。
 
  直感派のウサギさん型は、この頃に、一度つまずきますが、頭の回転の速さから立ち直れます。
 
  ですから、カメさんの場合は、時間がかかってもあせらせることなく、問題は時間内に解くことを、少しずつ教えてあげましょう。
  ウサギさんは、ひらめきだけに頼らず、正解であっても、他の答えはどうして駄目なのか、その説明をさせましょう。
  どちらもお子さんの大切な能力ですから、良いところを伸ばしてあげる、賢いお父さん、お母さんになってほしいですね。
 
 
Q.文字や数字の読み書きは、できた方がいいと友達は言うのですが、やった方がいいのでしょうか。              
 
A.小学校の入学試験には、文字の読み書き、数字を使った計算はありません。
  ただし、答えをイラストではなく、書いてある文字に印をつけるテストを実施している学校もありますが、それは、その学校の方針ですから、受験する方は、そのための準備が必要です。
 
  また、暁星小学校でも、かつて年中行事と関係のある数字、例えば母の日は5月ですから5に○をつける、記憶の問題でスクリーンに映った数字と同じものに○をつける問題がありましたから、1月・正月、2月・節分、3月・雛祭り、4月・花祭り、5月・子どもの日、母の日、6月・父の日、7月・七夕、9月・お月見、10月・お祭り、運動会、11月・七五三、12月・クリスマスなど、その月と数字がわかるようにしておきましょう。
 
  やっていると思いますが、毎朝、カレンダーを見て、「今日は8月15日、日曜日」というだけで、月日と曜日も無理なく覚えるものです。
  ただし、数字を書く必要はなく、読めればいいでしょう。
 
  文字は問題用紙に氏名を書きますし、靴を脱ぎ、試験が終わった後で靴を履くときなど、書かれた名前を見て判断することもありますから、名前の読み書きはできるようにしておきたいものです。
 
  年長になる頃から、文字と数字を書きたがるようになりますが、その場合は、正しい書き順を教えましょう。
 
  自己流で覚えると、直すのに苦労するからです。
 
  文字を書くことの得意であった子が、小学校へ入ってからことごとく直され、自信を失う話をよく耳にします。
  数字は「0・5・7・8・9」、文字は「と・も・や・よ」、書きにくい「あ・お・そ・ぬ・む・め」などです。
 
  ただし、教える場合でも、テストで数字や文字で答えては得点にならないことを教え、約束してください。
 
  ところで、お子さんは、ブツブツとつぶやきながら、昔話や童話の本を読んでいませんか。「話の読み聞かせ」の効果です。話を記憶することで、教えなくても、文字が読めるようになるのです。本を読んであげるのは、大切な学習になっていることを忘れないでください。
 
 
以上の「Q&A」は当研究所発行の「さわやかお受験のススメ 小学校受験 Q&A」からピックアップしたものです。
詳しくは、ホームページをご覧ください。
 
夏はまだ続きます。「夏を制する者は秋を制する」ともいわれています。
無理は禁物ですが、頑張りましょう。
 
 
  (次回は「願書の書き方」についてお話ししましょう)
 
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2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第11章 お月見です 長月(2)

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第41号-
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第11章  お月見です   長 月(2)
  
★★秋の七草★★
 
春の七草は、色彩的には黄色が多く、それに食べられるものばかりでした。
正月の7日に食べる七草粥には、春の七草が入っています。今年1年間、息災で病気にならないようにと、払いの意味で食べたものですが、正月にご馳走を食べすぎて、弱った内蔵をいたわる意味でも食べたのでしょう。これも昔の人の生活の知恵です。
 
秋の七草は、どうでしょうか。
                
萩(はぎ)、薄(すすき)、葛(くず)、撫子(なでしこ)、女郎花(おみなえし)、藤袴(ふじばかま)、桔梗(ききょう)をいいます。見るとわかりますが、紫色が多くて観賞用です。葛は、根は解熱剤として使われていますし、粉にした葛粉は食べられますが、春の七草とは、大変な違いです。                                       
 
事の起こりは万葉集で、山上憶良が秋の七種の草花を詠んだことから、秋の七草といわれるようになったのです。
 
 秋の野に 咲きたる花を 指(おゆび)折り かき数ふれば 七草の花 芽子(はぎ)の花 尾花 葛花(くずばな) 瞿麦(なでしこ)の花 女郎花(おみなえし)また藤袴 朝貌(あさがお)が花
                                  
 (万葉集八巻 山上憶良)
                               
朝貌の花は、現在では桔梗のことです。
芽子といい瞿麦といい朝貌といい、昔の字は、秋の七草にしてはゴツゴツした感じを受けませんか。何だか花の名前の感じがしません。今の方が、親しめます。いや、もっと現実的な秋の七草があります。
 
昭和10年、菊池寛、高浜虚子などの文人や学者の推薦によって新聞社が選んだ「新秋の七草」があります。菊、葉鶏頭(はげいとう)、秋桜(コスモス)、彼岸花、赤飯(あかまんま)、白粉花(おしろいばな)、秋海棠(しゅうかいど
う)の七草です。山上憶良と比べると、色彩豊かで華やかで、人手がかかっている感じがします。
 
平成に行われたインターネット投票による「秋の七草」は、春の七草でご紹介した左大臣四辻善成(平安時代)の真似をするとこうなります。
 
  ハギ キキョウ コスモス ススキ ヒガンバナ
                リンドウ ナデシコ 秋の七草
 
しかし、本来の七草は、人の手にかかることをこばむ野草という感じが伝わってきますが、いかがでしょうか。                                     
 
話は変わりますが、秋桜(コスモス)、漢字で書くと日本産まれのようですが、何とメキシコ産です。
コスモスは、一見、葉もきゃしゃで弱々しく、花もたおやかですから、責任をもって、きちんと保護してあげなくてはと思いがちですが、茎は太く、本当は、強いのです。台風でなぎ倒されても、いつのまにか窮屈な姿勢ながらも、花を咲かせます。
 
 
 
★★重陽って、五節句の一つではないのですか★★
 
9月といえば重陽の節句、とならないのが不思議です。
3月の「ひな祭りですね」を思い出してください。9月9日を重陽といい、陰暦9月9日の節句で、「9」は陰陽道では、陽の数とされており、この2つの数を重ねた日で、菊の節句ともいわれていると紹介しました。陰陽道では、このように奇数を尊び、「9」を最高の数と考え、天の数、天子様の数として、神聖視されていました。それでしたら、大変な日ではありませんか。
しかし、何かお祝いをした記憶がないのです。
 
 この日は菊の節句である。平安時代に菊は「翁草」「千代見草」「齢草(よわいぐさ)」などといわれ、重陽の節句に寒菊の酒宴が催された。「菊酒」といって、酒に菊の花をひたして飲むと、長生きできるといわれ、また「菊の着せ綿」といって、前の晩に菊にかぶせて露にしめらせた綿で身体を拭くと長寿を保つといわれた。
 (年中行事を「科学」する 永田久 著 日本経済新聞社 刊 P180-181)
 
このように菊は、古くから薬用植物として珍重されていましたが、菊の芯を集めて作る枕を菊枕や幽人枕(ゆうじんちん)ともいって、香りが高く、頭痛を治し、邪気を払うといわれ珍重されていたそうです。
 
日本の国花は、桜と菊です。
桜に始まり菊で終わる、自然に恵まれた日本を象徴する花であり、国花にふさわしい花であることも肯けます。
 
菊は、その姿が、端整で、美しく、香りにも、何ともいえない気品があります。
古くから菊は、竹、梅、蘭と合わせて四君子(しくんし)といわれ、水墨画の画材によく使われていました。
菊の品評会などで見る菊は、華やかなムードに包まれ 十分に手間暇のかかっている感じが、匂い出ています。菊人形も、ここまでやるかと、文句のつけようのない作品もあり、うならされます。
いずれも、秋の風物詩として欠かせません。
                   
しかし、人里離れた山あいに、ひっそりと咲く、小さな野菊、あれも、いいですね。
香もふくいくとして、観賞用の人工菊に、絶対に負けません。寒さに強く、晩秋から初冬にかけて、けなげにも咲き続けています。花、ひっそりと咲いているからこそ、もののあわれを誘います。
 
ところで、皇室の菊の御紋章、あれは十六葉八重表菊で、後鳥羽上皇が、特に菊を好まれたために定められたものです。
そして、欲しい人には最高の価値がある勲章、舌をかみそうですが、大勲位菊花大綬章は、朝日と菊の花を表しています。
 
そして五十円硬貨の表のデザインは、何と菊です。さらに、兵庫県の県花は、野路菊(のじぎく)です。ご存知のことと思いますが、菊は献花に用いますから、病気の見舞いには、タブーの花となっています。
 
最後に、ことわざを一つ。
  「春蘭秋菊 ともに 廃すべからず」(両者ともに優れており捨てがたい)
 
蘭と菊は、先ほども出てきた四君子の二つです。 
 
 四君子(しくんし)とは東洋絵画の画題の一つで、蘭・竹・梅・菊を指します。これらの植物が好まれたのは、蘭は深山幽谷で人知れず香る奥ゆかしさ、 竹は真っすぐに伸びて風に折れない節操、梅は雪の中でも寒さに耐えて花を咲かせる健気さ、菊は厳しい晩秋の霜にも屈せず咲き誇る気概というように、それぞれの特徴が俗に交わらず知性や礼節を兼ね備えた理想的な人物(君子)と重ねられたためです。
        
  (福岡市博物館のホームページ
    https://museum.city.fukuoka.jp/sp/exhibition/572/)
 
5月にも紹介しました「六日の菖蒲」、それに加えて「六日の菖蒲、十日の菊」があります。菖蒲は5月5日の端午の節句に、菊は9月9日の重陽の節句に用いるもので、6日と10日では間に合わないことから、「時期に遅れて役に立たないこと」のたとえです。類義語としては「後の祭り」「夏炉冬扇」、ちなみに英語では“a day after fair”だそうです。
         (kotowaza-all guide com 故事ことわざ辞典より)
 
  (次回は、「江戸時代の時の数え方」などについてお話しましょう)

【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
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2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験>ご家庭で楽しくできる受験準備(1) 身につけてほしい話を聞く姿勢

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         「めぇでる教育研究所」発行
2026さわやかお受験のススメ<現年中児 今から始める小学校受験
      現年中児のお子様をお持ちの方々へ
 2026年度入試(2025年秋に実施)を成功に導く手引きです。
      <第6号
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ご家庭で楽しくできる受験準備
 
(1) 身につけてほしい話を聞く姿勢
 
今回からしばらく、家庭でできる受験準備の基本的なことについてお話ししましょう。
 
小学校の入学試験には、文字を使えませんから、ペーパーテストには答えは出ていますが、設問は、どこにも書かれていません。
このことです……。
 
一回で説明を理解できなければ、それまでです。
設問が書かれていれば、難しい問題は後回しにして、時間があれば挑戦できますが、小学校の試験は、これができません。
 
まず、設問を聞き、「はじめ!」の合図で取り組み、「そこまで!」と声がかかればやめて、次の設問を聞きます。
「もう少しでできるぞ!」と続けていると説明を聞き逃すことになり、次の問題に挑戦できません。
 
「約束を守る」の項目に、チェックが入る学校もあるようです。
そういったことから考えると、もっとも厳しい試験方法ではないでしょうか。
 
さらにやっかいなことには、慶應義塾幼稚舎のようにペーパーを用いない「行動観察型」のテストでは、先生の指示を聞き取り、理解し、考えをまとめ、自分自身の意見をいったり、話をしたり、思ったことを絵に描いたり、身体で表現しなければなりません。
 
しかも、生まれて初めて入った場所で、初めて会った同年代の子ども達とグループを組み、初対面の先生の指示を聞き、理解し、すぐに行動に移さなければなりません。
機敏に対応できる能力が求められます。
 
このように、話を聞く姿勢ができていなければ、小学校の入学試験には対応できません。ですから、まず、ご家庭で心がけてほしいのは、お子さんが「話をきちんと聞けるようにする」ことです。
 
それには、ご両親が「お子さんの話をきちんと聞く姿勢」を示すことが大切です。
「こうしなさい!」「こうしなければダメ!」と注文をつけるのではなく、逆に、お子さんの話に耳を傾けてあげる、話を聞いてあげることが大切なのです。
 
これは、簡単なようですが、あまりできていないのではないでしょうか。
 
幼児の話は一本道ではなく、あっちへ飛んだり、脱線したり、一回で完結せずに、予想のつかない展開となりがちです。
そこを辛抱強く聞いてあげ、
「○○君(ちゃん)、こういうことだったのね」
などと簡単にまとめてあげれば、
「何だ、そういうことか!」
と、本人は意識しなくても話の仕方の学習にもなっているのです。  
 
幼稚園や保育園から帰ってくるなり、
「ママ、あのね、きょう……」
などと話しはじめた時には、何はさておき聞いてあげましょう。
話したい意欲に燃えているのですから、「話の仕方の学習時間」と考えて、真剣に聞いてほしいのです。
 
聞いてもらうと、子ども心にも快感が生じます。
そこから、「人の話はきちんと聞かなければいけないこと」も学習できるのです。お母さんは、「話をきちんと聞きましょう!」と、柳眉を逆立て命令しているわけではありませんが、お子さん自身は「話をきちんと聞く学習の基本」を学んでいるわけです。お父さんも同様です。
 
これも「教えない教育」の一つの例です。
 
話を聞いてもらえたお子さんは、身も心もすっきりとし、
「ようし、今日は、プリントを5枚、頑張るぞ!」
となれば、一石二鳥ではありませんか。
 
お母さんにも経験ありませんか。
会社から帰ってきたお父さんに、テレビのワイドショーなどで仕入れた情報を披露しようとした時に、
「疲れているからあとにしてくれ!」
などといわれれば、ムッとしませんか。
 
お子さんも同じです。
力関係でお母さんに勝てませんから、黙るしかないのです。
せっかくの学習チャンスを無駄にしています。
この無駄は、はかり知れない大きなものであることを肝に銘じておきましょう。
スキンシップにも影響がでます。
 
お子さんの話を聞けないお父さん、お母さんは、命令と要求が多くなりがちです。
立教小学校の説明会で、「対話の反対は沈黙ではなく、命令と要求」とおっしゃったのは、田中司元校長でしたが、幼児の場合は、まさにその通りではないでしょうか。
 
お子さんが急に黙ったり、プッとふくれたり、不満げな様子を示す時は、「命令や要求が実行されている」と考えましょう。
子ども達が、もっとも嫌がるお父さん、お母さんであることに気づいてほしいですね。
 
ところで、特にお母さん、お子さんの赤ちゃん時代を思い出してください。
お子さんは、「ママ!」の一言で、一方的に会話を済ませてはいませんでしたか。
「お腹がすいた」
「水を飲みたい」
「おむつを取り替えて」
「汗をかいて気持ちが悪いの」
「日光浴をしたい」
「抱っこして」
「淋しいからそばにきて」
「テレビをつけて」
「頭が痛いの」
「お散歩に連れてって」
など、書き出すときりがありませんからやめますが、選択肢はこんなものではなかったはずです。
 
お母さん方は、「ママ!」の一言で、何を要求しているかを的確に判断し、適切な処置をしていたのではないでしょうか。
このことを思い起こせば、つたない話でも、聞いてあげるのは楽ではありませんか。
お子さんが、「ねえ、ママ!」といったときには、素直に話を聞いてあげるように心がけましょう。もちろんお父さんもです。
 
イエス・キリストも、「忙しい毎日の中で、その時にあたって最善の行動とは何かを考えなければならない」とおっしゃっていますが、子どもの話をゆっくり聞いてあげる、これもその時
に最優先すべきことと考えるべきではでしょうか。何もキリストにお出まし願うこともありませんが(笑)。
 
もう一つ、思い出してほしいのです。
 
赤ちゃんが、なぜ、話せるようになったか、このことです。
自然に話せるようになったわけではありません。
映画「ジャングルブック」は、赤ちゃんの頃から狼達に育てられ、言葉をまったく話せなかった少年が主人公でした。
言葉は、その学習時期を過ぎると臨界期といって、どうにもならなくなり、身につかないそうです。
 
ここでも、お父さん、お母さんの涙ぐましい努力が、あったはずです。
 
「ママ(パパ)、おみじゅ!」
と、お子さんがいったとします。
お母さん(お父さん)は、どのように対応されたか覚えているでしょう、それほど昔の話ではありませんから。
「のどが渇いたので、お水が飲みたくなったのね!」
こういっていたはずです。
そこで、お子さんは、
「ノドガ カワク、ミズヲ ノミタイ」
といった言語の学習をしていたわけです。
この語りが、おうむがえしが、会話の学習の基礎となり、今のように話せるようになったわけです。
「主語が『私』で、述語が『飲みたい』、目的語が『水』で、形容詞が、副詞が……」と教えたわけではありませんが、かなり、理詰めに話せるようになっています。
 
お父さん、お母さんとの学習が、苦にならなかったからです。
なぜでしょうか。
 
それは、やはりお父さん、お母さんが、話ができるように、やさしく対応してあげたからです。
その心は、「まだ、話せないから」といった配慮があり、無理に教え込まなかったからではないでしょうか。 
話をじっくりと聞いてあげ、言葉のシャワーを繰り返し浴びせかけた結果であり、これも「教えない教育」であったわけです。
  
誤解をされると困りますから繰り返し説明しますが、「教えない教育」は何も教えないのではなく、教わっている本人が、意識することなく、楽しく、大変な学習をしていることです。
 
そして、面接で、丁寧な言葉で話してほしいとお考えでしたら、お母さん自身が、響きのよい言葉を使うことです。
「ご飯よ、○○ちゃん!」ではなく、「ご飯ですよ、○○くん(さん)!」と話しましょう。
 
言葉遣いやあいさつは、一朝一夕に身につくものではありません。
親が率先して、よいお手本を見せることです。
 
さらに、指示は、正確に出すように心がけましょう。
「ねえ、○○ちゃん、あそこにある、あれとって!」
「あそこの、あれ」といわれても、わかっているのは指示を出したつもりのお父さん・お母さんだけで、聞いているお子さんには、何が何だかわかりません。
何だろうと迷っていると、
「何をぐずぐずしているの!」
と、怒気を含んだ催促になりかねません。
 
「これ、それ、あれ、どれ」といった「こ・そ・あ・ど言葉」
は、使わないことです。
「こ・そ・あ・ど言葉」は、文章が煩雑になるのをさけるために使う「代名詞」です。
代わりの言葉ではなく、名詞をきちんと使いましょう。
 
「○○くん、ダイニングのテーブルの上にある料理の本を、お母さんのところへ持ってきてください」と指示がきちんと出ていれば、「いい加減に聞いたらまずいことになるぞ!」と、お子さんもわかります。
 
   ◆話を聞いてあげる。 
   ◆きれいな言葉を使う。
   ◆指示をきちんと出す。
      
保護者に、こういった配慮があれば、お子さんも、保護者の願いに応えるはずです。
心当たりがありましたら、早速、実行しましょう。
 
暑い日が続くようです。清涼飲料水は控えめに、家で作った麦茶などで、渇きをしのぎましょう。
 
 
(次回は、「本の読み聞かせの素晴らしい効用 1」についてお話しましょう)
 
 
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