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めぇでるコラム : 2017年11月 2ページ目
さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>第2号
犯罪は凶悪化し、加害者の年齢は下がってくることに、恐怖さえ感じます。
「親の顔が見たいわ!」
「どんな育て方をしたのでしょう!」
当事者でなければ、何とでもいえます。
その少年を、その親を責めるのは簡単ですが、それで済まされないほど、事件
は日常茶飯事化しています。
脅かすようですが、これは、決して人ごとではありません。
親は、いつ、同じ立場に立たせられるかわからないからです。
中学生、高校生になると、親のいうことなど煩わしくて、聞く耳を持たなくな
ります。いくら、「冷や酒と親の意見は後で利く」といっても、馬の耳に念仏
です。
馬は向かってきませんが、現代っ子は、親にさえ牙をむきます。
親も逃げ腰です。
心の拠り所であるべき家庭が、その役目を果たさなくなったとき、親子の絆は
切れます。原因は、どこにあるのでしょうか。
いろいろと指摘されていますが、その一つとして、小学校へ入る前の幼児期に
問題があるような気がしてなりません。
「三つ子の魂百まで」といいますが、昔の人は、よいことわざを残しています。
しかし、このことわざを、「お勉強は、早ければ早いほど効果がある!」と考
え、早期教育に走るお母さん方がいるようですが、そういうことではありませ
ん。3歳頃までに育てられた環境を、そのまま背負って生きていくという意味
です。3歳は、子どもが親のもとを離れ、自立の始まる時期です。
親から離れ、独り立ちするための準備期間です。
この時期に、子どもの人生を左右するものが、たくさんあるような気がします。
その一つが、お子さんを取り巻く環境です。
といっても、物質的にゆたかな環境ではありません。
自立心を育て、豊かな情操を育み、「物事に取り組む意欲と相手を思いやる気
持ち」を育てる環境です。
お子さんの成育史を考えてみましょう。
1歳は、五感を通して感じる光や音、匂いや味、肌触りなどに反応して学ぶ
「条件反射の時代」といわれています。
まだ、言葉もわからない赤ちゃんが、「これがママの匂い、何といい匂いだろ
う!」と見えない目でイメージ化が行われているそうです。
2歳になると、「ボクもやってみたいなあ。どうすれば、ママやパパのように
できるのかなぁ?」と観察が始まり、やってみようとする意欲が芽生える「模
倣の時代」といわれています。
3歳になると、「ボクが、自分でやる。お手伝いしないで!」と、何でもやっ
てみようとする自発性が培われる「自立の時代」といわれています。
ですから、目一杯、手をかけてもいいのは、3歳までです。
3歳になれば、干渉や保護の手をゆるめ、お子さん自身にさせるように仕向け
るのが、お子さんにとっては有り難い育児であり、お母さん方にとっては賢い
育児なのです。
この時に、赤ちゃん時代と同じように、過保護や過干渉な育児の環境を作って
いると、どうなるでしょうか。
少し長くなりますが、中国の話を紹介しましょう。
「五香の儀式」の意味
中国において、生れた赤ちゃんには乳をやる前に、
○まず、酢をなめさせる。
○つぎに、塩をなめさせる。
○そのつぎに、苦い薬をなめさせる。
○四番目は、とげのあるかぎかずらをなめさせる。
○最後に、砂糖をなめさせる。
この「五香の儀式」を行ったという。この世に生れ出た赤ちゃんに、人生は、
「すっぱく」「からく」「苦く」「痛い目」に遭わなければ、甘いものには
ありつけないことを、身をもって体験させるのである。今もこの習慣が残っ
ているとすれば、すばらしいことであると思う。何しろ、生れたときから過
保護に育てすぎる。親としては愛情を注いでいることになるのだろうが、ひ
よわな人間が多すぎる。ちょっと困難なことに直面すると、簡単にギブアッ
プしてしまう。
(「眼からウロコが落ちる本」p20 笠巻 勝利 著 PHP文庫
PHP研究所刊)
かまいすぎではないでしょうか……。
ですから、いつまでも親に甘えます。
親が徹底的に面倒をみてきましたから、子どもは親離れができず、親も同じよ
うに子離れができない話をよく耳にします。
小学生になっても、四六時中、子どものすることを知りたがる親、いわゆる管
理ママがいるそうですが、聞いただけでもうっとうしい限りです。
こういった親を「KYJTママ(空気読めない自己中ママ)」というそうですが、
やがてモンスター・ペアレントに変身します。
こういうお母さん方は、おそらく、「子育て」を生きがいとし、子どもが社会
人になっても、管理の手を緩めないのではないでしょうか。
迷惑するのは子ども自身で、子どもは親から離れていくものです。
皆さん方も、ご両親の愛情あふれる家庭から巣立ち、自立できたからこそ、一
家を構えられたのではありませんか。
過剰なまでの愛情をかけてもいいのは、2歳頃までだと思います。
衣服の着脱、食事、排泄などの基本的な生活習慣を取り上げてみても、お子さ
ん自身が、自分の意志で挑戦し、失敗を繰り返し、やっとの思いで身についた
ことがあったのではないでしょうか。
その時のお母さんは、決して叱り飛ばさず、「頑張れ!」と、あたたかく励ま
し続けませんでしたか。
失敗しても叱られないで励まされる、そこから自分で取り組む意欲が生れ、あ
たたかく見守ってくれるお母さんのやさしい気持ちから、お子さんの心に相手
を思いやることができるやさしさが、培われてきたのではないでしょうか。
いろいろなことに取り組み、どうしたらうまくできるかと考え、試行錯誤を積
み重ねることから、幼いなりに考える力が、実行する力がつき、体を動かすこ
とで基礎体力もついてきたのです。
「失敗は成功のもと」、育児は、まさにこのことわざの示す通りではないでし
ょうか。
失敗した悔しさが、新たな挑戦への起爆剤になります。
しかし、現代っ子は、失敗を恐がります。
親も失敗しないように仕向けているようですが、これは考え直す必要がありま
す。
何事にも親の手を借りていては、何でも自分の思うようになると勘違いをし、
わがままで、身勝手な子にならないでしょうか。
相手の気持ちを考えていませんから、思いやる心などは育ちません。
また、親が手を貸しすぎて失敗する機会が少なければ、自分でやってみようと
しても、やり方や手順がわかりませんから、積極的に取り組む意欲は育まれま
せん。
親が手を貸して上手にできるより、格好よくできなくても、時間がかかっても、
自分の力でやってできた方が、どんなに大切で、どんなに素晴らしいことか、
皆さん方は知っているはずです。
つい、この間まで、やってきたではありませんか。
その心は、「早く独り立ちしてほしい」ではなかったでしょうか。
幼稚園の受験を考えていられるお母さん方、今、赤ちゃんを育てているお母さ
ん方に、絶対に忘れてほしくないことがあります。
それは、育児は育児しながら「育自」する、自分を育てる素晴らしい仕事であ
ることです。
仕事に参加したくても参加できない人も大勢います。
辛いことも多々あったでしょうが、振り返ってみれば、楽しい思い出になって
いるのではないでしょうか。
賢いお母さんになってほしいと思います。
皆さんが希望される名門幼稚園では、「堅実な家庭を築くお父さん、それを支
える『謙虚で賢いお母さん』に育てられたお子さん」を歓迎しているからです。
合格の鍵を握るのは、「賢いお母さん」になることです。
では、どうすればよいのでしょうか、これから一緒に考えていきたいと思いま
す。
(次回は、「思い出してください、お子さんの赤ちゃん時代を……」について
お話しましょう)
さわやかお受験のススメ<保護者編>事の始まりは、ある幼稚園の進学教室からでした
私は、長い間、幼児教育のパイオニアである大手幼児教室の教育研究所でお世
話になっていました。「情操を育むために、年中行事と昔話が大切な役目を果
たしているのではないか」と模索していたのは、幼児教育の本質が少しわかり
かけてきた、50歳になった頃ではなかったでしょうか。平成元年に、「年中
行事を『科学』する」という素晴らしい本にめぐり合い、進むべき道が見えて
きました。
そして、この考えに「間違いはない」と自信らしいものが出てきたのは、ある
経験からでした。
創刊号でもお話ししましたが、当時私は、約10年間にわたり、板橋にある淑
徳幼稚園の課外保育であった進学教室を担当していたのですが、後半の5年間
は、一人で年中組と年長組を指導することになりました。この間の子ども達の
やり取りとお母さん方の反応から、年中行事と昔話を組み合わせた「情操教育
歳時記」といった何とも大仰なタイトルですが、気軽に読んでいただける本を
作ってみようと思い始めていたのです。育児の専門家ではない「わたし流の育
児書」というわけです。
私どもの研究所の教室へやってくる子ども達は、全員、「受験のために勉強に
きている」といった意識が、しっかりと培われていましたから、授業もやりや
すかったのです。「幼児教室は、こういうものだ」と思っていた私には、この
進学教室は、まさに青天の霹靂で、勝手が違い、思わぬ苦労をしました。
その日の保育が終わった後に、同じ教室でやるのですから、子ども達にとって
は、「自分たちの土俵に変な先生が入ってきた、エイリアン!」といった感じ
だったのでしょう、いつものように授業を始めることができなかったのです。
そのために、まず、授業に集中できる雰囲気を作ることからはじめました。試
行錯誤を積み重ねながらできあがったのは、授業の前に、その月の行事、11
月でしたら七五三をテーマに、昔からの言い伝えを子ども達にわかるように話
し、その月に関係ある昔話をするといった方法でした。
回を重ねる内にわかったのは、子ども達は、「フランダースの犬」や「アルプ
スの少女ハイジ」を知っていても、「一寸法師」や「花さか爺さん」などの昔
話を、あまり知らないことでした。しかし、話をしてみると、熱心に聞いてく
れるのです。それならばと、徹底的に昔話をすることにしたのですが、年長組
は週2回で月8回、1年間で、ざっと96の話をすることになり、少々心配に
なりました。「絵本を見ながら読んであげればいいか!」と気軽に考えていた
私は、子ども達から思わぬしっぺ返しを食い、悪戦苦闘が始まったのです。
それは、本を見ながら話す時と見ないで話す時では、子どもの興味を示す様子
が、微妙に違うことでした。話を覚えている場合は、子ども達の目を見ながら
話をしますから、目をそらす子はいません。「目をそらさない」は、話をしっ
かりと聞く基本的な姿勢です。本文でも紹介しますが、「大勢の子ども達に、
話を読み聞かせる重要なポイントは、話を記憶することだ」と教えてくれたの
は、進学教室の子ども達でした。
毎週2つの話を記憶するのは大変でしたが、子ども達は私の話を楽しみに待っ
てくれ、授業にもスムーズに入れるようになりました。見つけた時には私も驚
きましたが、「シンデレラ物語」とそっくりな話である「ぬかふくとこめふく」
を話した時の、子ども達の驚いた顔を忘れることができません。
ある時、椋 鳩十の動物の話をしてみました。すると、次の時間にもとリクエ
ストがあり、動物達の話に興味があることもわかりました。そこで、長編でも
ある「丘の野犬」をアレンジして話したところ、何と熱心に聞いてくれ、涙さ
え浮かべる子も出てきたのです。この時ばかりは、今、思い出しても、ぞくぞ
くするほど感激したものです。
進学教室の役目は、併設する淑徳小学校での勉強に、スムーズに対応できる力
を身につけることでした。小学校へは、受験勉強をし、力をつけてきた大勢の
子ども達が入学してきます。そういった子ども達に共通しているのは、「話を
聞く姿勢」が身についていることで、小学校の受験でもっとも大切なのは、こ
の「話を聞く力」なのです。ペーパーテストを例にとっても、プリントの上に
ダミーを含めて、答はすべて出ていますが、「設問」はどこにも書かれていま
せんから、話を聞き逃すと、解答できないわけです。
昔話や年中行事のいわれなどを聞きながら、子ども達は意識することなく、
「話を聞く姿勢」を身につけてきたのです。こうなるとしめたもので、授業は
私の仕事でしたから、後は楽なものでした。集中さえできれば、問題を解く力
もつき、面白くなりますから、取り組む意欲も違ってきます。難易度の高い問
題にも挑戦し始め、当時、毎月1回行われていた2,000名近くの子どもが
参加する公開模擬テストで、10番以内に入る子も出てきたのです。
さらに、思わぬ収穫になったのは、お母さん方の反応でした。授業終了の5分
ほど前に、お母さん方に集まっていただき、今日取り組んだ問題を解説しなが
ら、家庭学習の要点を説明し、今月の行事とその日に話した昔話を紹介してい
ました。
すると、「先生、ママが菱餅を買ってきて、何で三色なのか、先生と同じ話を
してくれたんだよ」と、女の子がいない家庭にもかかわらず、「おひな様を飾
るわけや、菱餅の色」について、子どもに話をするお母さんも出てきたのです。
話してくれる子ども達の顔は、みんなうれしそうでした。四季折々の行事の意
味を説明してきたことが、話で終わらずに、各ご家庭で祝ってくれるようにな
ったのです。このことです……。
ここからは「わたし流の解釈」ですから、軽い気持ちで読み流してください。
話を聞こうとしなかった子ども達が、なぜ、楽しみに授業を待ってくれるよう
になったのか、それは子ども達の心の中に、幼いながらも、何らかの刺激を求
める小さな芽が、しっかりと培われてきていたからだと考えました。後で詳し
くお話しますが、その小さな芽は、分化され始めた「情緒」だったのです。
「情緒とは、喜怒哀楽の感情の表れたもの」と考えていただければ、わかりや
すいと思います。きっかけを与えたのが、昔話であり年中行事であったわけで
す。育まれてきた小さな芽である情緒に刺激を与えてあげれば、素直に反応を
することもわかりました。そうでなければ、あれほど真剣に話を聞くはずがな
いからです。
私の話でさえ一所懸命に聞くのですから、ご両親の話であれば、もっと歓迎す
るはずです。「パパがね、先生が話してくれた『おぶさりてえのおばけ』の本
を買ってきてくれたんだよ!」と嬉しそうに話してくれる子ども達も増えてき
ました。創刊号でもお話しましたが、話を聞く姿勢は、幼児教室や塾で身につ
くものではなく、ご両親の「本の読み聞かせ」や「対話」から育まれるもので
す。
こういった体験を何とか記録に残し、皆様方に読んでいただきたいと考え、で
きあがったのが、このメールマガジンです。話を聞く姿勢さえ身につけば、小
学校の受験は、決して難しくありません。また、年中行事を、ご家庭で楽しむ
ことにより、楽しい思い出がたくさん残り、それが豊かな情操を育む礎になっ
ていることも否めない事実です。
小学校の入試に季節の行事が出題されるのは、なぜでしょうか。知識として知
っているかを判断しているのではありません。四季折々の行事を楽しむ、ご家
庭の文化があるかどうかを見ているのではないでしょうか。家庭の文化は、ご
両親の育児の姿勢であり、それが受験する小学校の建学の精神や教育方針と限
りなく近ければ、それが志望理由になるわけです。
この1年間、お子さんは受験勉強に励むわけですから、ご両親にも勉強をして
いただき、ご家庭の文化を築き上げてほしいと思います。話を聞く姿勢が身に
つくのも、豊かな情操が育まれるのも、ご両親の育児の姿勢次第です。小学校
の受験で必要な能力の基礎、基本は、「ご家庭で培われる」ことを学習してい
ただき、お子さんと三人四脚で、ゴールを目指して頑張ってほしいと願ってい
ます。
次回は「本の読み聞かせ」についてお話しましょう。
さわやかお受験のススメ<小学校受験編>求められる四つのパワー
-
[1]求められる四つのパワー
過去にNHKの「お入学」の放映で、全国区に昇格したかどうかはわかりませ
んが、私立の名門小学校の受験騒動、話題になりました。過熱気味であった
私立志向も、バブル経済が弾けて静かになったようです。しかし、学習指導要
領も「ゆとりの教育」から「心の教育」に改訂されるなど、公教育の指針は安
定しないことから、私立志向は根強く息吹いています。
その証といっては何ですが、埼玉県には、私立は浦和ルーテル学院小学校、
1校しかありませんでしたが、今では、4-4-4制を導入した開智小学校(岩
槻市)、水族館とプラネタリウムのあるさとえ学園、英語のシャワーで世界に
発信を目指す西武学園文理小学校(狭山市)、共学にシフトチェンジした星野
学園小学校(川越市)と5校になりました。登下校時の東上線川越駅は、スク
ールバスを待つ西武文理小と星野学園小のかわいい子ども達で混雑しています。
小江戸と呼ばれている静かな城下町川越の住人である私には、信じられない光
景です。
さらに、副都心線を利用すると、川越から渋谷まで乗り換えなしで50分、
青山学院初等部、東京女学館小学校、慶應義塾幼稚舎、聖心女子学院初等科な
どを受験する子どもたちも増えました。
また、東急東横線が副都心線と相互乗り入れを開始し、元町・中華街まで乗り
換えなしで行けるようになり、多摩川を境にして不利といわれた横浜地域の
小学校、横浜雙葉小学校などへの受験も増えているのではないでしょうか。
東京都は53校(東京農業大学稲花[とうか]小学校が平成31年4月に開校
予定)、神奈川県は28校、千葉県は10校、茨城県には開智望小学校が開校
し7校と、私学の受け入れ態勢には、目を見張るものがあります。(「お受験
じょうほう」より)
そして、書店をのぞくと入学試験問題集も、たくさん売られています。中には、
「こんな難しい問題、本当にできる子いるのかな?」と、首を傾げたくなるの
もあります。しかし、問題集を読んでいると、学校側がどのような子どもを求
めているかがわかってきます。うわさでは、何やら、椎名誠風な表現で照れま
すが、「頭脳明晰成績優秀名門家庭の子女」だけを求めているといわれている
そうですが、そんなことはありません。
「知力・徳力・体力・気力が、学齢期にふさわしく、バランスよく育っている
子」です。この4つの能力は、小学校受験に必要な基本的な力ですが、一朝
一夕に身につくものではありません。何もできなかった赤ちゃんを、根気よく、
忍の一字で育ててこられた皆さま方ですから、納得していただけると思います。
受験準備は、育児と同様、一歩一歩、確実に前進を目指す、地道な努力が必要
です。
では、学校側は、この4つの能力を、どのように判定しているのでしょうか。
第1は知力です。
これについては、わかりやすい解説がありますので紹介しましょう。
「知能の定義には、いろいろありますが、ここではその中身を、知覚力・
記憶力・言語能力・数能力・思考力としておきましょう。
知覚力は、見たり聞いたりするものを、注意深く受け止める能力です。
記憶力は、覚えこむ力・覚えている力・忘れたものを思い出す力で、
観察力・弁別力もこの中に入ります。
言語能力は、語彙力・表現力などです。
数能力は、数・量・図形・空間に関する能力です。
思考力は、推理力・構成力・判断力(洞察力・見通す能力)などを含み
ます。
思考力には、答えをいくつも考えられる拡散思考能力(創造的思考力)
もあります」
「ママ、生まれたらこんなふうに育ててね」 P224
(家庭教育システム研究会 著 横山ふさ子 画 サンマーク出版 刊)
「画」とありますように、この本は漫画です。サブタイトルが「赤ちゃんは親
を選べません」と、何とも厳しいのです。このタイトルに惹かれて買ったので
すが、内容はわかりやすく、これからママになる方に推薦したい本の一冊です。
第2は徳力です。
これは言うまでもなく、社会性や協調性といった「集団生活への適応力」です。
集団生活は人との関わりの中で培われていくものですから、自主的に取り組む
姿勢や自身をコントロールする自己統制力が養われてきます。
家では許されることでも、集団生活では認められないことを、幼稚園や保育園
での生活を通して経験し、少しオーバーではありますが、「共生、共に生きる
こと」を学んでいるはずです。
グループ別に行われる行動観察系のテストや運動テストなどで、日常の生活環
境や体験が姿を現します。過保護であればわがままに、過干渉であれば消極的
な態度になりがちです。
また、一つの例として、ペーパーテストでも、指示されたことをきちんと守ら
ないと、大きなマイナス点になります。
「始め!」 と言われる前に始めてしまったり、「止め!」 と言われても止め
られなくては、人の言うことを聞く姿勢ができていないと判定されるでしょう。
規則や約束を守ることは、集団生活をスムーズに進めるために、欠くことので
きないルールです。
公開模擬テストを受けて、「社会性や協調性に問題あり」とチェックが入った
場合は、通っている幼稚園や保育園の先生に相談しましょう。
「少し、問題がありますね!」
といった返事があった場合は、「大いに問題あり!」と受け取り、お子さんを
取り巻く環境を、ご両親で見直す必要があります。多くの場合、ご両親の育児
の姿勢に、その原因があるからです。
第3は体力です。
指示を理解し体で表現する理解力、機敏性や俊敏性を問う運動能力、どれだけ
頑張れるかといった持久力や耐久力などが判定されます。
もちろん、通学に必要な体力が培われているかも大切なポイントになります。
もやしっ子を鍛え直すために始めた暁星小学校のサッカーを持ち出すまでもな
く、現代っ子はスタミナ不足です。都会から原っぱが姿を消し、車が子どもの
足代わりとなっている生活が、スタミナをつける源を奪っているようです。
スタミナ不足は、単に体力的な面だけではなく、持久力や耐久力を培う「頑張
る意欲」にも、大きな影響を与えていることを、もっと真剣に考えるべきでは
ないでしょうか。集中力に欠け、すぐに飽きてしまうお子さんは、体力不足に
も原因があるとも言われています。
5分も歩かない内に「おんぶ!」と言うようでは心配です。夏休みから秋の試
験当日まで、大変なエネルギーを必要とします。それをクリアしなければ、小
学校の試験に挑戦できません。
ボールつきや縄跳びは、全身を使いますし、微妙なバランス感覚を養う運動で
す。目標を立てて挑戦し、続けることで力がつく、「持続こそ力を育む」こと
を、体験を通して学習させるべきだと思います。お子さんの運動能力をチェッ
クし、問題があれば、お父さんの出番です。
第4は気力です。
まだ、実感はわかないかも知れませんが、5歳の秋を制する決め手は、「気力」
です。 そして、これだけは、何十冊の問題集をこなすだけで身につくもので
はありません。本人の自覚です。本人にやる気力がわかなければ、本当に頑張
る力はつきません。モチベーションを上げる、これも、ご両親の育児の姿勢と
深い関わりがあります。
今年の早稲田実業学校初等部の説明会で校長先生は、「学校見学会には、是非、
お子様と一緒に来てほしい。この学校へ行きたいとお子さんのモチベーション
を上げることができるからです」とおっしゃっていましたが、オープンスクー
ルを実施する学校が増えてきましたから、こういった機会を利用することも大
切ではないでしょうか。
ところで、過保護や過干渉な環境で育てられていると、白百合学園小学校、立
教女学院小学校、光塩女子学院初等科のように、ペーパーの枚数が多く、限ら
れた時間内に取り組む試験には、俊敏に対応できません。
また、かつて慶應義塾幼稚舎が出題した、イーゼルを立てて絵を描くといった、
初めて経験することには、手が出ないでしょう。
成蹊小学校のように、反復運動を繰り返す運動テストに耐えられないと思いま
す。
私が言う気力とは、自分一人でやり遂げた体験、体験学習を豊富に積んでいく
ことから身についた「意慾」のことです。
ご両親が失敗を恐れずに、積極的にチャレンジさせ、自立心を身につけるよう
に心がけていれば、自ずと備わってくるものです。ご両親は、叱ることが少な
く、励ます言葉が多く、大らかな心を持っているはずです。お子さんのお手本
は、ご両親です。そういったご両親であれば、お子さんもできないからと言い
訳をすることもなく頑張ります。むやみに叱らないご両親からは、相手を思い
やる心が育ちます。
誤解されては困りますが、「何事にも叱ってはいけない」と言っているのでは
ありません。約束を守らない、嘘をついたときなどは、真剣に叱ります。「叱
るべきときは叱り、褒めるべきときは褒める」ご両親のことです。
自分でやり遂げた経験がたくさんあると、達成したときの快感を味わっていま
すから、何かに取り組もうとする意欲が育っています。
そして、いろいろなことを体験しているお子さんは、過去に出題された問題集
をやってみると、これと同じことを、普段、家庭や幼稚園で、一人遊びや仲間
遊びを通して、何らかの形でやっていることに気づくはずです。
幼児を対象にした試験は、大学などの入学試験とは違います。誤解を恐れずに
いえば、必要なのは、記憶だけに基づいた知識の量ではなく、体験をふまえて
培われた知恵の量だと思います。
すでに、公開模擬テストを受けられた方でしたら、ご存知のように、テストの
出題範囲は、ほとんどの場合、以下の10項目になっているはずです。
(1)話の記憶 (2)数量 (3)常識 (4)推理・思考 (5)記憶力
(6)構成力 (7)巧緻性 (8)社会性 (9)言語 (10)運動
先にあげた4つの力を、ペーパーテストや行動観察、面接を通して、こういっ
た項目に分けて判定しているわけです。小学校側も、この10項目内で判定し
ていると思います。来年の春には発売される今年度の問題集をお買いになると、
納得できるでしょう。10項目については、12月以降に解説する予定です。
以上の4つの力に加え、慶應義塾幼稚舎、桐朋小学校、桐朋学園小学校などを
除き、ご両親には面接があるわけです。その学校を選んだ理由をきちんと話す
ことで、合否の判定が行われます。小学校の入学試験は、試験を受けるのはお
子さん自身ですが、「判定されるのはご両親の育児の姿勢である」と言われる
のは、こういった仕組みになっているからです。推薦制度を取り入れる学校も
増えてきましたが、その条件は、やはり、育児の姿勢を重視しており、決して
安易なものではありません。
最後に、東日本大震災は、電車通学する子ども達に大きな課題を与えました。
暁星小学校の説明会では、生徒全員の寝袋を用意していることや、慶應義塾幼
稚舎では、プールの水を飲料水に還元できる機器や、自家発電装置を設置した
話などもあり、どこの学校も十分な対策を立てていると説明していますから、
心配はないでしょう。
今、子どもたちに求められているのは、災害時に対応できる気力と体力です。
東日本大震災が起きた年、成蹊小学校の説明会で8時間かけて自宅にたどり着
いた、1年生の書いた作文を披露しましたが、親切な女性3名の温かい応援が
あったとはいえ、まさに、幼いなりに、気力と体力を振り絞った「自奮、自励」
の体験談でした。
来年の学校選びには、登下校時に地震が起きたことを想定して、それに対処で
きる気力と体力を充実させる育児を心がけることも、学校選びの大切な条件に
なるのではないでしょうか。
次回からは、実際に行われている入学試験についてお話しますが、城山三郎氏
の著作、「素直な戦士たち」ではありませんが、かなり、すごいことをやって
います。
しかし、きちんと段階を踏んで学習し理解していけば、そんなに心配するもの
ではありません。
そのためにも、まず、試験の形式から説明しましょう。
(次回は、試験の形式についてお話ししましょう)
注「素直な戦士たち」 城山三郎 著 新潮社 刊 昭和53年発売
※内容は小学校の受験だけではありません。
さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>創刊号
さわやかお受験のススメ<保護者編>創刊号
の解説を担当していました。いろいろな問題に強くなるには、各種の過去問を
上手に利用することを勧めましたが、こと「話の記憶」に関しては、この方法
は通用しなかったようでした。そこで、昔話や童話をたくさん読んであげ、興
味を持って聞く姿勢を身につけるようにと考え、そのように話していました。
小学校の受験で最も大切なのは、「話を聞く姿勢が身についていること」です。
入学試験のプリントには、答えはイラストなどで描かれていますが、設問は、
どこにも書かれていませんから、話を聞き取れなければ、どうにもなりません。
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