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めぇでるコラム : 2015年12月 2ページ目
さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>幼稚園の試験とは(2) 課題遊び
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「めぇでる教育研究所」発行
「2017さわやかお受験のススメ<幼稚園受験編>」
第5号
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幼稚園の入園テストとは(2) 課題遊び
マットの上でクマさんになり、高さの違うお山を3つ登り、跳び越える。
平均台を歩き、下りて、的に向かってボールを投げる。
(東京学芸大学教育学部附属幼稚園竹早園舎)
ホールをかけ足で回り「走って!」「並んで!」の合図で、走ったり並んだ
りする。 (白百合学園幼稚園)
自由遊びの中で、課題遊びが行われます。言葉はふさわしいかどうか疑問です
が、運動テストも、その一つです。先生方の目は、楽しそうに取り組んでいる
幼児に注がれています。
3~4歳頃には、運動機能の発育が盛んになります。部屋の中だけではなく、
外で遊ぶ機会も多くなり、運動量も増えてきます。危ないことでも、何気なく
やってしまいますから、うっかりできません。お母さん方なら、どなたも経験
されていると思います。「お家にいた方が手もかからないのに」と思うお母さ
んはいないでしょう。家事が一段落ついたところで、近所の公園などに出かけ、
一緒に遊んでいるのではないでしょうか。そうしたお母さんのやさしい心遣い
で、のびのび育てられた子は、先生の模範演技を見て、元気いっぱいに挑戦し
ます。
ですから、平均台でバランスを崩して落ちても、再び乗り、最後まで頑張り、
元気よく跳び下ります。こういった一連の行動から、先生の話を聞き取る力、
理解し表現する力や取り組む意欲などがわかるわけです。難しいことはさせま
せんし、先生の指示通りにできればいいのです。2~4歳児ならそなわってい
る言語や運動能力を、総合的に判定するのですから。
しかし、「横転ができない」、「30センチほどの高さから跳び下りることが
できない」のでは、年齢にふさわしい運動能力が、発育しているとは考えられ
ません。現代っ子は、骨折しやすいといわれています。最近では、「ぶらさが
る」、「転がる」、「跳び下りる」といった、簡単なことができない子が増え
ているそうです。運動能力は、自然に発達するのではなく、遊びや日常生活を
通し、体を動かす中で育まれます。もし、できないことがあるならば、そうい
った運動をする機会を与えられなかったか、十分ではなかった結果ではないで
しょうか。
体験しないと育まれないのが、運動能力です。
もし、お母さんが、「危ないから、けがするから、そんなことをしてはいけま
せん!」と過保護や過干渉になり過ぎると、体験学習に必要な好奇心の芽を摘
むばかりか、それにともなう運動機能も、正常に発育しないおそれもあります。
これは子どもの責任ではなく、親の責任でしょう。なぜなら、現在あるお子さ
んの姿は、今まで手塩にかけてきた育児の結果だからです。
「ご近所に、一緒に遊ぶお友達がいないものですから……」
「都心のマンションですので遊ぶ場所もなく、交通量も多い所ですから危なく
て……」
「恐い事件が起きているものですから……」
不幸なことですが、幼児を取り巻く環境は、決して安全ではありません。しか
し、運動能力は、健康であることと密接な関わりを持っています。お子さんが、
ゼロ歳の頃を思い出してください。“はいはい”を始めたとき、部屋にある危
ないものは片付けました。時間を決めて日光浴をさせました。歩き始めると外
へ連れていきました。こういったことの目的は、五体の健全な発育ではなかっ
たでしょうか。
幼稚園側の求めている子、それは健康な子どもです。健康な子は、元気で、明
るい子であり、情緒の安定していることは言うまでもありません。
「大きな栗の木の下で」「糸巻きの歌」「ちょうちょう」「チューリップ」
な どから選び、好きな歌を一人で歌う。 (雙葉小学校附属幼稚園)
好きな動物のお面をつけて、その動物ごとにピアノに合わせ、先生と一緒に
お遊戯をする。 (雙葉小学校附属幼稚園)
幼稚園の遊戯会などで見かけることですが、楽しく歌うお子さんばかりではな
く、嫌々ながら歌っているお子さんもいれば、黙って下を向き、まったく歌わ
ないお子さんもいます。
幼児のことですから、ちょっとしたことで気分が変わってしまうこともありま
すが、こういった様子から、育児の姿勢などもわかるものです。
たとえば、お母さんがお子さんと一緒に、楽しく歌っていれば、お子さんは歌
います。テレビに映るアイドル歌手の動きを、真似しながら歌う子どもの様子
を見ると、言葉は幼児のボキャブラリーをこえていますから、舌足らずになり
がちですが、実に楽しそうです。言葉より動作で表現する年齢ですから、屈託
のない自然な動きが表われます。身振り、手振りによる身体表現も、幼児の成
長を推し量る、重要なポイントの一つです。豊かな愛情に包まれ、のびのびと
した環境で育てられた子には、明るい、子どもらしい表現がみられます。
もちろん、巧拙は関係なく、「先生の指示に従う」「真似をする」ことは、集
団生活を送るうえに、欠くことのできないものです。「むすんでひらいて」や
「ぞうさん」「チューリップ」などの曲を、お子さんと一緒に楽しく歌い、踊
れるお母さんであってほしいですね。幼児の歌や身体表現は、心身の発達のバ
ロメーターであるからです。
過去にこんな問題もありました。
ホールから上履きを脱いで、じゅうたんのある部屋に移り、チョコとせんべ
いをもらう。(お菓子を食べる前に先生にウェットティッシュで手を拭いて
もらう)食べ終わった子どもから、ゴミを片付け、「ごちそうさま」をして、
靴をはき、並んで帰ってくる。 (白百合学園幼稚園)
先生からお菓子をいただいて食べる、おやつの時間です。基本的な生活習慣を
みているわけですが、ここでもいろいろなことがわかります。
「ありがとう」といえる子、黙っている子。「いただきます」「ごちそうさま」
が素直にいえる子。お菓子の包装紙を無造作にまとめ、机の上に置きっぱなし
にする子もいれば、部屋の隅にあるごみ箱へきちんと捨てる子、さまざまです。
家庭でおやつを食べる様子が、そのまま表れますから、どのように食べるかで、
お母さん方の子育ての姿勢がはっきりとわかります。2~4歳の幼児が、おや
つをもらった場合、「ありがとう」「いただきます」、そして食べ終えれば、
お菓子の包装紙を片付け「ごちそうさま」といえる習慣を、身につけておきた
いものです。
「しつけ」に関しては、おやつの時間を設ける他に、おみやげに、子どもの興
味をそそる「折り紙」や「あめ」を渡したこともありました。こういったこと
は、ごく自然に行われますから、幼児の態度にも、普段のありのままの姿が表
れます。つまり、テストを受けているのはお子さんですが、「評価されている
のはお母さん」なのです。
「子どもの自主性を尊重し個性的に育てたい」と、おっしゃるお母さん方がい
ます。しかし、そういった考えを持ったお母さんに育てられた子は、親の期待
とは逆に、あいさつもできない、わがままな性格になりがちです。それは、2
~4歳児ならば当然、身につけていなくてはならない「しつけ」を、なおざり
にしている場合があるからです。こういった「しつけ」は、その年齢にふさわ
しいときに、身につけるものばかりですから、お母さんの育児の方針、ご家庭
の教育方針などが、手に取るようにわかるわけです。
しかし、どの幼稚園でも、不自然な礼儀作法を身につけることを望んでいませ
ん。ある市の青少年育成運動のキャッチフレーズに「オアシス運動」がありま
した。これは「オはよう」「アりがとう」「シつれいします」「スみません」
の頭文字を並べたもので、「しつれい」はともかく、日常生活に必要なあいさ
つは、きちんとできるようにしておきたいものです。
裏返しになっている洋服をもとに戻しなさい。
洋服のボタンかけをしなさい。
トイレットペーパーを上手にちぎりなさい。 (白百合学園幼稚園)
さっさと戻してしまう子、ボタンがけが苦手な子、先生の手助けが必要ではな
いかと思える子、どうにもならなくなってしまう子など、さまざまです。なぜ、
こういったテストが行われるのでしょうか。
幼稚園は、ほとんどの子にとり、生まれて初めて集団で生活する所です。集団
生活では、他人に迷惑をかけないことが基本的な条件ですから、自力でできな
くてはならないことがたくさんあります。衣服の着脱、食事、そして排泄、こ
の3つが、他人の手を借りずにできないようでは、たとえ他の面がすぐれてい
ても、入園はおぼつかないでしょう。
その他、ハンカチ、ティッシュを持ち、それらを正しく使えるか、つめは短く
切ってあるかなどから清潔感は育っているかをみているわけです。爪はお母さ
んの手を借りますからともかくとして、ハンカチ、ティッシュの使い方は、2
歳児にはまだ難しいことです。特に男の子は、手を洗ったときにズボンで拭か
ない、はなが出た時は手で拭かないように、優しくしつけていくお母さんにな
ってほしいですね。
さらには、スモックを着たり、靴下を脱がせ、後で自分のものをはくといった
基本的な生活習慣をチェックしながら、区別、選別といった知的な能力まで判
定することも可能なわけです。こういったことは、いずれもしつけと同様、毎
日の生活と深い関わりを持ち、育児の「かなめ」となっていることです。お子
さんの反応は、お母さん方の日常生活の姿勢が、そのまま表われるものですか
ら、普段の生活がいかに大切であるか、おわかりいただけたのではないでしょ
うか。
数えることができるより、文字を読めるよりも、まず、基本的な生活習慣がき
ちんと身についていることこそ、幼稚園が求めている子ども像でもあるのです。
お子さんの一日の生活を見直してください。何かできないことはないでしょう
か。毎日、一緒にいるだけに、お母さん方は、案外、気づかないものなのです
が……。
このように、テストからは、ご家庭の育児の姿勢が、手に取るようにわかるわ
けです。
しかし、基本的な生活習慣は、月齢の差がはっきりと出やすいものです。11
月の試験の時におむつが外れていなくても、「入園する4月までに取れていれ
ば結構です」という幼稚園もありますし、「まだ、すべてがきちんとできる年
ではないことを考えてあげましょう」という幼稚園もあります。生まれ月、月
齢を無視すると、お子さんの心が歪むことも忘れてはならない、大切な育児の
心構えです。入園試験のために、心が歪むような準備だけは、やるべきではあ
りません。
最後に、白百合学園幼稚園は、平成9年6月に創立以来、初めての説明会を開
催しましたが、その時の清水園長の話を紹介しましょう。初めて園舎に入り、
かなり緊張して伺っていましたので、文言は正確ではありませんが、こうおっ
しゃったのです。
「私どもが希望しておりますのは、小さいときから入園テストですとか、面接
を受けて訓練されることではなく、むしろ日常生活の中で、特に、お父さま、
お母さまの、生きたお手本の中で育てられたお子さま方、それから、年齢相応
に基本的な生活習慣が、ある程度、これはまだ完全にできませんから、ある程
度、身についたお子さま方、明るく、素直で、イキイキとしたお子さま、そう
いった子ども達を希望しております」
「お父さま、お母さまの、生きたお手本の中で育てられたお子さま方」、これ
が全てではないでしょうか。
(次回は、「入園テストの3」についてお話ししましょう)
さわやかお受験のススメ<保護者編>季節の行事、これも欠かせません
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「めぇでる教育研究所」発行
2017さわやかお受験のススメ<保護者編>
~紀元じぃの子育て春秋~
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第5号-
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第1章 (3) 情操教育、難しく考えることはありません
季節の行事、これも欠かせません
季節折々の行事を祝うことも大切です。
昔は農耕民族でしたから、1年の生活は農作業を中心に営まれ、休みも仕事の
進み具合により取るようにしていました。今は法律で定めた国民の祝日になっ
ているものが多く、全国的に休暇を取るようになりました。以前は、祝祭日に
日の丸を掲げたことから「旗日」ともいわれていたのですが、ほとんど見かけ
なくなりました。
祝祭日を家庭で祝うことも、少なくなっているのでしょう。
元日に雑煮を食べない家庭もあるそうですから、当然かも知れません。しかし、
七五三や成人式は、華やかに行われていますし、ひな祭りと端午の節句、これ
はおじいちゃん、おばあちゃんの気張りどころでしょう。国産ではありません
が、クリスマスもきちんと祝い、ハロウィンも仲間入りしてきました。いずれ
も国産化され、「少し違うのではないかな?」と違和感を覚えますが(笑)。
お父さん、お母さんに聞いてみましょう。
「なぜ、門松は、松竹梅で飾るのでしょうか」
「なぜ、鬼は、柊(ひいらぎ)、いわしの頭、豆を嫌うのでしょうか」
「なぜ、菱餅は、白、桃色、緑の三色なのでしょうか」
「なぜ、お釈迦さまに甘茶をかけるのでしょうか」
「なぜ、端午の節句に、鯉のぼりを飾るのでしょうか」
これくらいにしておきましょう。
私は、こういった四季折々の行事を、家族で祝い、その意味を両親から話して
もらった記憶があります。
今でも忘れられないのは、正月の門松でした。いつ頃から飾るようになったの
か定かではありませんが、これには、きちんとした科学的な根拠があるのです。
その理由は後で詳しく説明しますが、ここでは、私が親父から聞いた話、アカ
デミックなものではありませんが、紹介しておきましょう。突然、大阪弁にな
って恐縮ですが、親父は関西の出身でしたから、この言葉の方が実感がわくの
です。
「松は、一年中、葉が青くて、冬にも色が変わらん。元気で健康な証拠や。
竹は、真っすぐに伸び、雪が積もっても折れん我慢強さがある。しかもや、
中は空っぽやから腹に一物もなく、きれいや。『竹を割ったような性格』
っていうやろ、正直や。男は、これでなきゃあかんのや。
梅は、他の木がつぼみさえ持たん寒い冬に、リンと咲く強さやな。それに、
咲く姿は清らかや。
みんな、それぞれ、それなりの理由がある。みんな縁起もんや。そやから、
これらを飾って、新しい年神様を迎えて、健康で、辛抱強く、正直に生き
て、家内繁盛を願ったのや」
こういった話を、元日の朝祝いの時に、必ず聞かされていました。
季節折々の行事は、自然への感謝の気持ちと家族の幸せを願って、家族みんな
で祝ったものです。その行事の意味を子どもに教え、楽しく祝い、一つの思い
出として心に残してあげ、子どもが親になった時に、その楽しい思い出をわが
子にも伝える、そういった風習が残っていました。何しろ今と違い、情報量の
少なかった時代でしたから、これも親の大切な役目でもあったわけです。
しかし、最近は、「鬼は外、福は内!」の声など、聞こえなくなりました。
そんなことは迷信だといって、だんだん、影をひそめていくようです。
「月にうさぎが住んでいる」と信じている子はいないでしょうが、「サンタク
ロースはいる」と信じている子はたくさんいます。事実、サンタさんから送ら
れてきた手紙を、目を輝かせ、得意そうに見せてくれた子もいました。
「迷信と切り捨てる」のと、「迷信でも子どもの夢を一緒に楽しんであげる」
とでは、どちらが子どもにとって幸せでしょうか。
「サンタクロースなんて迷信で、プレゼントはお父さんが買ってくるんだよ」
といった先生を許せないと、涙ながらに語る友人の話を、池波正太郎の随筆で
読んだことがあります。12月に紹介しますが、この先生には、クリスマスの
思い出は、何もなかったのでしょう。あれば、こんな残酷なことは言えません。
でも、これは許せない!
豆をまき、菖蒲(しょうぶ)湯に入って菖蒲で鉢巻したり、短冊につたない字で
願い事を書いたり、お月見に薄(すすき)を飾ってお団子を食べ、素朴に祝っ
ていたのでしょう。「素朴」、いい言葉ではありませんか。最近、あまり聞か
れない言葉の一つになりましたけど……。時の流れとはいえ、寂しいですね。
しかし、その時に、父や母から話を聞くことが、本当に楽しみでした。
今のようにテレビもなく、むかし話の本などあまりなかった戦後の貧しい時代
でしたから、ほとんど、両親の記憶によるものでした。祖父母や親によって語
り継がれる、むかし話の原点が、まだ、残っていました。
特に、鬼の話や地獄の話は恐かったものです。悪いことをすると地獄に落ち、
針の山に追われ、血の池に放りこまれる話などは、心から信じていました。こ
れも、私にとっては 「情操教育」であったと思います。こういった家族全員
で祝うことがなくなったのも、家族の絆が薄くなった原因の一つであることは、
間違いないでしょう。季節折々の行事も、心を培う「情操教育」に欠かせない、
家庭でやらなければならない大切なイベントだと思います。
そこで、月々の行事を取り上げ、その行事に関係のあるむかし話を紹介しよう
と試みたのですが、素人の悲しさですね、日本中の行事といえば気が遠くなる
ほどありますし、むかし話となると、とてもではありませんが手に負えない、
ものすごい数です。
行事は、全国的に行われているものから選びましたが、その基本的な資料とし
て使わせていただいたのは、永田 久先生の「年中行事を『科学』する」(日
本経済新聞社 刊)でした。専門用語が使われ難しいものですから、わたし流
に解釈させていただきましたが、詳しくは、最後の「おわりに」のところで説
明いたしますので、ご本家の方をお読みいただければ幸いです。
むかし話は、進学教室でうけた話を中心に、私の独断と偏見で選んでみました。
児童文学を修めたわけでもなく、系統立てて民話などを研究したこともありま
せんから、間違った解釈をしているところも多々あると思います。専門家の諸
先生方に一笑されるかもしれませんが、それは覚悟の上です。何やら強気のよ
うですが、目に触れる心配などありえませんから、気楽に考えているだけです
(笑)。
紹介する話は、ほんの氷山の一角で、しかも私の感覚で勝手に要約したダイジ
ェスト版になっています。面白いと思われましたら、本物を読んであげてくだ
さい。それも、本メールマガジンの狙いの一つです。紹介する本は、ほとんど
が川越市の県立図書館で読んだものです。何とも悲しい話ですが、閉館されて
しまい、勉強させてくれた本を再読できません。しかし、お住まいになってい
る図書館の子ども部屋にはあると思いますので、作者と出版社名を明記しまし
たから、参考になさってください。
お父さん、お母さん、頑張ってください。
情操教育は、心の教育です。
心の教育は、幼児期に基本的なことを学習しておくべきです。今は学習ではな
く、勉強が幼児の心をむしばんではいないでしょうか。文字の成り立ちからも
わかるように、学習は「習い学ぶこと」で、勉強は「強いて勉めること」です。
幼児を取り巻く環境は、何やら落ち着きません。親が勉強せず、子どもだけに
勉強を強いる傾向にあると思えてならないのです。情緒が不安定で、情操の乏
しい子が増えているといわれていますが、知識を詰め込むことにこだわり、心
を育てる育児が、おろそかになっていないでしょうか。
キリスト、お釈迦さま、マホメッドと共に、世界の四大聖人である孔子さまも、
「論語物語」の「うぐいすの声」でいっています。うぐいすのひな鳥が、親鳥
の美しく鳴く声を聞きながら、繰り返し練習をし、やがて一人前に鳴けるよう
になる話です。その心は、「親鳥のようになりたい……」、このことです。あ
る年の7月、上高地へ出かけた時、大正池で、実際に聞くことができ感激しま
した!
幼児期は、「強いて勉めるときではなく、習い学ぶとき」です。
心の教育は、お子さんの人生観の基礎を培う大切な学習です。お手本は、ご両
親です。ご両親が、うぐいすの親のようにならなければ、迷うのはお子さん自
身です。心の教育こそ、ご両親が力を合わせて、育み、培うものです。
ご両親が受けてきた教育を、そのままお子さんにも受けさせたいとお考えでし
ょうか。
もし、不安を感じているようでしたら、教育についての考え方を、改めるべき
ではないかと、赤面しながら、あえて言い切っておきましょう。私は、「教育
とは自己学習のできる人間を育てること」であり、ご両親が作る環境から培わ
れていくものだと考えています。通信簿に表れた目先の結果だけにこだわらず、
どのような子どもに育ってほしいのか、大らかな心をもち、お子さんの教育に
ついて考える、賢いお父さん、お母さんになってあげましょう。
ちょっと背伸びをし過ぎましたが、それがご両親の役目、親の責任ではないで
しょうか。
★★古典落語「桃太郎」の作者 乾坤坊 良斉(けんこんぼう りょうさい)
の意図★★
最後に、お約束しました落語「桃太郎」の全編を紹介しましょう。大人用は、
複雑に脚色された噺が多く、長くなりますから、「こども古典落語」から選び
ました。
「桃太郎」は、「かちかち山」「花さか爺さん」「さるかに合戦」「舌きり雀」
と共に、日本の五大お伽話といわれています。1940年生まれの私には信じ
がたいのですが、この五つの話を知らない子がいます。20数年ほど前の進学
教室時代の話ですが、「フランダースの犬」や「アルプスの少女ハイジ」の方
が、人気があるようでした。今は、どうでしょうか。TVのコマーシャルにハ
イジは顔を出していますが……。
余談になりますが、落語ですから声を出して読んでみてください。黙読とは一
味違うはずです。
桃太郎のお話を一席申し上げます。
近頃の子どもは学校に入る前に、大概、幼稚園や保育園に行っていますから、
昔とは大変に違います。昔は親が子どもを寝かしつけるのに、
「おとっつぁんが、面白い話をしてあげるから寝るんだよ。いいかい、あのね。
むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいてね。ある日、
おじいさんは山へ芝を刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行ったんだよ。そして、
おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてきたから、家に持って
帰って割ってみると、男の子が生まれたんだよ。桃の中から生まれたから桃太
郎と名前をつけてね。大きくなると桃太郎は、犬と猿と雉を連れて、鬼が島に
鬼退治に行ったんだ。そうして、鬼を退治して、宝物をたくさん持って帰って
きて、おじいさん、おばあさんを喜ばしたんだよ。どうだい、面白かったかい……。
おや、坊や……。もう寝ちまったよ。子どもなんて罪のないもんだね」
という具合だったんですが、今は、そうはいきません。
「坊や、お父さんが面白い話をしてあげるから早く寝な」
「せっかく親が面白い話をしてくれるのに、寝ちゃあ失礼だよ」
「失礼でもいいから寝なよ」
「あのね、むかしむかし」
「むかしむかしって、何年前?」
「ずうっと昔だよ」
「それじゃ、何世紀のお話?」
「何世紀だって、いいじゃないか!」
「ある所に、おじいさんとおばあさんがいたんだ」
「ある所って、何処? おじいさんとおばあさんの本名は?」
「ある所はある所さ。おじいさんとおばあさんには、名前がないんだよ!」
「でも、名前がない人っていないよ」
「貧乏だから、名前を売っちゃったんだよ」
「変なこと言ってら!」
「黙って聞きなよ!」
「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行ったんだ。おばあさ
んが洗濯をしていると、大きな桃が流れてきたから、これをもって帰って割っ
てみると、男の子が生まれたから、桃太郎と名前をつけた。この子が大きくな
ると、犬と雉と猿を連れて、鬼が島に鬼退治に行ったんだ。そうして鬼を退治
して、宝物をたくさん持って帰ってきて、おじいさん、おばあさんを喜ばした
んだ……。あれっ、まだ寝ないのかい?」
「お父さんの話を聞いていたら、さっきまで眠かったのに、パッと目が覚めち
ゃった。だってこの話は、もっと深い意味があるんだよ」
「ほう、そうかい?」
「話してあげようかい、君!」
「あれっ、親をつかまえて、“君”というやつがあるかい! まあ、話してご
らん」
「むかし、むかし、ある所にというのは、何時代の何処と決めてもいいんだけ
ど、日本中の子どもがこの話を聞くわけでしょう。だから、子どもたちの想像
させるために、わざとぼかしてあるんだよ。おじいさん、おばあさんというの
は、本当はお父さん、お母さんなんだけど、やわらかみを出すために、おじい
さん、おばあさんにしてあるんだ。そして、それぞれ山と川に行くでしょ。
あれはね、父の恩は山より高く、母の恩は海よりも深いということを表してい
るんだよ。そして、海のない地方もあるから、わかりいいように川にしたんだ」
「えっ……、なるほど。これは、大人が聞いてもためになるな」
「そうさ。桃の中から子どもが生まれたというけど、あれは、桃のようなかわ
いい赤ちゃんが生まれたということなんだよ。第一、桃の中から赤ん坊が生ま
れてごらん。果物屋さんは、赤ん坊だらけになっちゃうよ」
「成程、なるほど、それから?」
「そんなに前に乗り出してこないでよ。そしてね、鬼が島に行くというのは、
つまり、父母のもとを離れて、世間に出るということなんだよ。犬、雉、猿を
連れて行くというのはね、犬は思いやりというものがある。難しい言葉でいう
と仁というんだよ。猿には知恵がある。雉は勇気がある。つまり人間は、世間
に出たら、仁、知、勇、この3つを働かせなければいけない。そうすれば段々
に偉くなってきて、世間から信用という宝物を得ることができるということな
んだよ。それをお父さんみたいに、この話をしたんじゃ、このお話の作者が泣
くよ。わかったかい、お父さん……。お父さん、あれぇ、お父さん寝ちゃった
よ! へえー、大人なんて、罪のないもんだ!」
こども古典落語1 あっぱれ! わんぱく編
小島 貞二 文 宮本 忠夫 画 アリス館 刊
きび団子の説明が抜けていますが、きびでできた団子は美味いものではなく、
人間いかなる時もおごってはいけないという戒めを表しています。桃太郎伝説
のモデルといわれている岡山県の吉備津神社で食べたきび団子は美味かったの
で、子ども達から「うそでしょう?」と言われるかもしれませんが(笑)。
いかがでしょうか、説得力があると思いませんか。
歳月を経て伝えられてきた話は、研ぎ澄まされており、実に無駄がありません。
しかも、落語であるところが愉快ではありませんか。笑いながら、人生修業を
しているのですから。落語は、最後の「下げ」が勝負になりますが、これも決
まっていますね。
創刊号でも紹介しましたが、YouTubeで聞くことができます。また、関西の
落語家、桂 小米朝さんの演ずるCDを、図書館で借り、聞いたことがありま
す。最近、落語を聞く機会がなくなりましたが、落語は素晴らしい話芸です。
図書館の視聴覚室をのぞいてみましょう。古今亭志ん生師匠をはじめ、咄家の
すばらしい名人芸がCDに収録されています。疲れたときに聞いてみませんか。
落語は、声を出して笑うことが、いかに大切であるかを教えてくれるからです。
「笑う門に福来る」とも言うではありませんか。ご両親の笑顔は、お子さんの
健やかな成長を支える促進剤です。
ちなみに英語では、“Fortune comes in by a merry gate”、面白いのは、
“Laugh and be fat”(笑えば肥る)ともいうそうで、後の方が、実感があり、
納得できますね。(「故事ことば辞典」より)
ところで、あるミッション系の面接試験で、「最近、大笑いしたことがありま
すか」と尋ねられたことがありましたが、この質問の意図を、どのようにお考
えでしょうか。
(次回は12月の年中行事についてお話しましょう)
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