2026さわやかお受験のススメ<保護者編>第1章(3)情操教育、難しく考える必要はありません-本を読んであげてください〔2〕
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「めぇでる教育研究所」発行
2026さわやかお受験のススメ<保護者編>
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第5号-
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第1章 (3) 情操教育、難しく考えることはありません
- 季節の行事、これも欠かせません -
季節折々の行事を祝うことも大切です。
昔は農耕民族でしたから、1年の生活は農作業を中心に営まれ、休みも仕事の進み具合により取るようにしていましたが、今は法律で定めた国民の祝日になっているものが多く、全国的に休暇を取るようになりました。以前は、祝祭日に日の丸を掲げたことから「旗日」ともいわれていたのですが、今はあまり見かけなくなりました。
祝祭日を家庭で祝うことも、少なくなっているのでしょう。
元日に雑煮を食べない家庭もあるそうですから、当然かも知れません。しかし、七五三や成人式は、華やかに行われていますし、ひな祭りと端午の節句、これはおじいちゃん、おばあちゃんの気張りどころでしょう。国産ではありませんが、クリスマスもきちんと祝い、ハロウィンも仲間入りしてきました。いずれも国産化され、本来の趣旨とは違ってきているようですね。
お父さん、お母さんに質問です。
「なぜ、門松は、松竹梅で飾るのでしょうか」
「なぜ、鬼は、柊(ひいらぎ)、いわしの頭、豆を嫌うのでしょうか」
「なぜ、菱餅は、白、桃色、緑の三色なのでしょうか」
「なぜ、端午の節句に、鯉のぼりを飾るのでしょうか」
これくらいにしておきましょう。
こういった四季折々の行事を、家族で祝い、その意味を両親から話してあげる機会を少しでも多く持ちたいですね。
例えば、正月の門松です。
室町時代頃から飾るようになったそうですが、これには、きちんとした科学的な根拠があるのです。詳しくは1月に説明しますが、ここでは、昔に聞き、今でも忘れられない話を紹介しましょう。
「松は、一年中、葉が青くて、冬にも色が変わらん。元気で健康な証拠や。竹は、真っすぐに伸び、雪が積もっても折れへん我慢強さがある。しかも中は空っぽやから腹に一物もなく、きれいや。『竹を割ったような性格』っていうやろ、正直や。男は、これでなきゃあかんのや。梅は、他の木がつぼみさえ持たん寒い冬に、リンと咲く強さやな。それに、咲く姿は清らかや。みんな、それぞれ、それなりの理由がある。みんな縁起もんや。
そやから、これらを飾って、新しい年神様を迎えて、健康で、辛抱強く、正直に生きて、家内繁盛を願ったのや」
こういった話を、元日の朝祝いの時に、必ず聞かされていたものです。
今の時代、「男は」とか「女は」をつけると、何やら一言ありそうですが、昔のこととして流してください。
季節折々の行事は、自然への感謝の気持ちと家族の幸せを願って、家族みんなで祝ったものです。その行事の意味を子どもに教え、楽しく祝い、一つの思い出として残してあげ、子どもが親になった時に、その楽しい思い出をわが子にも伝える、そういった風習が残っていました。何しろ今と違い、情報量の少なかった時代でしたから、これも親の大切な役目でもあったわけです。
しかし、最近は、「鬼は外、福は内!」の声など幼稚園や保育園では聞こえますが、ご家庭からは聞こえなくなりました。そんなことは迷信だといって、だんだん、影をひそめていくようです。
「月にうさぎが住んでいる」と信じている子はいないでしょうが、「サンタクロースはいる」と信じている子はたくさんいます。事実、サンタさんから送られてきた手紙を、目を輝かせ、得意そうに見せてくれた子もいました。
「迷信と切り捨てる」のと、「迷信でも子どもの夢を一緒に楽しんであげる」とでは、どちらが子どもにとって幸せでしょうか。
豆をまき、菖蒲(しょうぶ)湯に入って菖蒲で鉢巻をしたり、短冊につたない字で願い事を書いたり、お月見に薄(すすき)を飾ってお団子を食べ、素朴に祝っていたのでしょう。「素朴」、いい言葉ではありませんか。最近、あまり聞かれない言葉の一つになりましたけど……。
今のようにインターネットやテレビもなく、昔話の本などあまりなかった時代は、ほとんど両親の記憶による話でした。その話も祖父母、先祖によって語り継がれてきたもので、そういった昔話の原点が残っていました。
特に、鬼の話や地獄の話は恐かったものです。悪いことをすると地獄に落ち、針の山に追われ、血の池に放りこまれる話などは、心から信じていました。これも「情操教育」ですね。
こういった家族全員で祝うことがなくなったのも、家族の絆が薄くなった原因の一つであることは、間違いないでしょう。季節折々の行事も、心を培う「情操教育」に欠かせない、家庭でやらなければならない大切なイベントだと思います。
そこで、月々の行事を取り上げ、その行事に関係のある昔話を紹介しようと試みたのですが、日本中の行事といえば気が遠くなるほどありますし、昔話となると、とてもではありませんが手に負えない、ものすごい数です。
行事は、全国的に行われているものから選びましたが、その基本的な資料として使わせていただいたのは、永田 久先生の「年中行事を『科学』する」(日本経済新聞社 刊)です。専門用語が使われ難しいものですから、独自に解釈させていただきました。
なお、本書をご自宅用にと思われている方、今では中古本としてしか入手できなくなっていますのでご注意ください。
昔話は、独断と偏見で選んでみました。そして、解釈も独自ですから、専門家の諸先生方に一笑されるかもしれませんが、ご容赦ください。
紹介する話は、ほんの氷山の一角で、しかもダイジェスト版にしています。面白いと思われましたら、本物を読んであげてください。それも、本メールマガジンの狙いの一つです。紹介する本は、ほとんどが図書館で読めるものです。お住まいになっている図書館の子ども部屋にはあると思いますので、作者と出版社名を明記しましたから、参考になさってください。
お父さん、お母さん、頑張ってください。
情操教育は、心の教育です。心の教育は、幼児期に基本的なことを学習しておくべきです。今は学習ではなく、勉強が幼児の心をむしばんではいないでしょうか。文字の成り立ちからもわかるように、学習は「習い学ぶこと」で、勉強は「強いて勉めること」です。幼児を取り巻く環境は、何やら落ち着きません。
親が勉強せず、子どもだけに勉強を強いる傾向にあると思えてならないのです。情緒が不安定で、情操の乏しい子が増えているといわれていますが、知識を詰め込むことにこだわり、心を育てる育児が、おろそかになっていないでしょうか。
キリスト、お釈迦さま、マホメッドと共に、世界の四大聖人である孔子さまも、「論語物語」の「うぐいすの声」でいっています。
うぐいすのひな鳥が、親鳥の美しく鳴く声を聞きながら、繰り返し練習をし、やがて一人前に鳴けるようになる話です。その心は、「親鳥のようになりたい……」、このことです。
幼児期は、「強いて勉めるときではなく、習い学ぶとき」です。
心の教育は、お子さんの人生観の基礎を培う大切な学習です。お手本は、ご両親です。ご両親が、うぐいすの親のようにならなければ、迷うのはお子さん自身です。心の教育こそ、ご両親が力を合わせて、育み、培うものです。
ご両親が受けてきた教育を、そのままお子さんにも受けさせたいとお考えでしょうか。もし、不安を感じているようでしたら、教育についての考え方を、改めるべきではないかと、あえて言い切っておきましょう。
「教育とは自己学習のできる人間を育てること」であり、ご両親が作る環境から培われていくものだと考えています。
通信簿に表れた目先の結果だけにこだわらず、どのような子どもに育ってほしいのか、大らかな心をもち、お子さんの教育について考える賢いお父さん、お母さんになってあげましょう。それがご両親の役目、親の責任ではないでしょうか。
事情があってお一人で育てられている場合は、お子さんのため、とは言いつつも二人分のことを一人で行うのですから大変だと思います。心から応援しています。
最後に、落語「桃太郎」の全編を紹介しましょう。大人用は、複雑に脚色された噺が多く、長くなりますから、「こども古典落語」から選びました。
「桃太郎」は、「かちかち山」「花さか爺さん」「さるかに合戦」「舌きり雀」と共に、日本の五大お伽話といわれています。なんと、この五つの話を知らない子がいます。ご自身のお子様はどうでしょうか。
余談になりますが、落語ですから声を出して読んでみてください。
黙読とは一味違うはずです。
★★古典落語「桃太郎」の作者
乾坤坊 良斉(けんこんぼう りょうさい)の意図★★
桃太郎のお話を一席申し上げます。
近頃の子どもは学校に入る前に、大概、幼稚園や保育園に行っていますから、昔とは大変に違います。昔は親が子どもを寝かしつけるのに、「おとっつぁんが、面白い話をしてあげるから寝るんだよ。いいかい、あのね。むかし、むかし、あるところに、おじいさんとおばあさんがいてね。ある日、おじいさんは山へ芝を刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行ったんだよ。そして、おばあさんが川で洗濯をしていると、大きな桃が流れてきたから、家に持って帰って割ってみると、男の子が生まれたんだよ。桃の中から生まれたから桃太郎と名前をつけてね。大きくなると桃太郎は、犬と猿と雉を連れて、鬼が島に鬼退治に行ったんだ。そうして、鬼を退治して、宝物をたくさん持って帰ってきて、おじいさん、おばあさんを喜ばしたんだよ。どうだい、面白かったかい……。
おや、坊や……。もう寝ちまったよ。子どもなんて罪のないもんだね」
という具合だったんですが、今は、そうはいきません。
「坊や、お父さんが面白い話をしてあげるから早く寝な」
「せっかく親が面白い話をしてくれるのに、寝ちゃあ失礼だよ」
「失礼でもいいから寝なよ」
「あのね、むかしむかし」
「むかしむかしって、何年前?」
「ずうっと昔だよ」
「それじゃ、何世紀頃のお話?」
「何世紀だって、いいじゃないか!」
「あるところに、おじいさんとおばあさんがいたんだ」
「あるところって、どこ? おじいさんとおばあさんの本名は?」
「あるところはあるところさ。おじいさんとおばあさんには、名前がないんだよ!」
「でも、名前がない人っていないよ」
「貧乏だから、名前を売っちゃったんだよ」
「変なこと言ってら!」
「黙って聞きなよ!」
「おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行ったんだ。おばあさんが洗濯をしていると、大きな桃が流れてきたから、これをもって帰って割ってみると、男の子が生まれたから、桃太郎と名前をつけた。この子が大きくなると、犬と雉と猿を連れて、鬼が島に鬼退治に行ったんだ。そうして鬼を退治して、宝物をたくさん持って帰ってきて、おじいさん、おばあさんを喜ばしたんだ……。あれっ、まだ寝ないのかい?」
「お父さんの話を聞いていたら、さっきまで眠かったのに、パッと目が覚めちゃった。だってこの話は、もっと深い意味があるんだよ」
「ほう、そうかい?」
「話してあげようかい、君!」
「あれっ、親をつかまえて、“君”というやつがあるかい!まあ、話してごらん」
「むかし、むかし、あるところにというのは、何時代のどこと決めてもいいんだけど、日本中の子どもがこの話を聞くわけでしょう。だから、子どもたちの想像させるために、わざとぼかしてあるんだよ。おじいさん、おばあさんというのは、本当はお父さん、お母さんなんだけど、やわらかみを出すために、おじいさん、おばあさんにしてあるんだ。そして、それぞれ山と川に行くでしょ。あれはね、父の恩は山より高く、母の恩は海よりも深いということを表しているんだよ。そして、海のない地方もあるから、わかりいいように川にしたんだ」
「えっ……、なるほど。これは、大人が聞いてもためになるな」
「そうさ。桃の中から子どもが生まれたというけど、あれは、桃のようなかわいい赤ちゃんが生まれたということなんだよ。第一、桃の中から赤ん坊が生まれてごらん。果物屋さんは、赤ん坊だらけになっちゃうよ」
「なるほど、なるほど、それから?」
「そんなに前に乗り出してこないでよ。そしてね、鬼が島に行くというのは、つまり、父母のもとを離れて、世間に出るということなんだよ。犬、雉、猿を連れて行くというのはね、犬は思いやりというものがある。難しい言葉でいうと仁というんだよ。猿には知恵がある。雉は勇気がある。つまり人間は、世間に出たら、仁、知、勇、この3つを働かせなければいけない。そうすれば段々に偉くなってきて、世間から信用という宝物を得ることができるということなんだよ。それをお父さんみたいに、この話をしたんじゃ、このお話の作者が泣くよ。わかったかい、お父さん……。お父さん、あれぇ、お父さん寝ちゃったよ! へえー、大人なんて、罪のないもんだ!」
こども古典落語1 あっぱれ! わんぱく編
小島 貞二 文 宮本 忠夫 画 アリス館 刊
きび団子の説明が抜けていますが、きびでできた団子は美味いものではなく、人間いかなる時もおごってはいけないという戒めを表しています。桃太郎伝説のモデルといわれている岡山県の吉備津神社で食べたきび団子は美味かったので、子どもたちから「うそでしょう?」と言われるかもしれません。
いかがでしょうか、説得力があると思いませんか。
歳月を経て伝えられてきた話は、研ぎ澄まされており、実に無駄がありません。
しかも、落語であるところが愉快ではありませんか。笑いながら、人生修業をしているのですから。落語は、最後の「下げ」が勝負になりますが、これも決まっていますね。YouTubeで視聴できます。
最近、落語を聞く機会がなくなりましたが、落語は素晴らしい話芸です。疲れたときに聞いてみませんか。落語は、声を出して笑うことが、いかに大切であるかを教えてくれるからです。
「笑う門に福来る」とも言うではありませんか。ご両親の笑顔は、お子さんの健やかな成長を支える促進剤です。
ちなみに英語では、“Fortune comes in by a merry gate”、面白いのは、“Laugh and be fat”(笑えば肥る)とも言うそうで、後の方が、実感があり、納得できますね。(「故事ことば辞典」より)
ところで、あるミッション系の小学校の面接試験で、「最近、大笑いしたことがありますか」と尋ねられたことがありましたが、この質問の意図を、どのようにお考えでしょうか。
(次回は12月の年中行事についてお話しましょう)
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