2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第9章(3)七夕祭りでしょう 文月

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第34号-
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  第9章(3)  七夕祭りでしょう   文 月
 
 
★★お盆って何の日、ご冗談を★★
 
人間は死ぬと仏様になり、その仏様をお迎えする行事をお盆だと思っていましたが、少し違うようでした。「盆と正月が一緒に来たような忙しさ」といいますが、これは1年を半期ずつに分けた前期の始まりが正月で、後期の始まりがお盆だから、こういう使い方をするのです。
 
 正月に、日頃お世話になった人々のところへ感謝と新たな年を迎えるにあたっての抱負を胸に、年始まわりするのと同じように、盆には健在な親、仲人、師などの親方筋を訪問し、心のこもった贈り物をする、盆礼という習慣があった。(中略)盆は満月の日、7月15日である。それが仏教の説く盂蘭盆会(うらぼんえ)と一致し、仏教国家として次第に民衆の間に浸透し、(中略)盆は7月15日の中元に吸収され、「盆と正月」は「盆暮」と姿を変えたのである。
 (年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P149)
 
日本に伝えられた盂蘭盆会は、推古天皇14年(606年)に初めて催され、聖武天皇天平5年 (733年)より、年中行事になったそうです。「盆と正月」が「盆暮」と言葉を変えたのは、1年を半期ずつに分けた前期の終わりを盆、後期の終わりを暮というようになったからです。それで盆は中元を、暮は歳末を意味するようになり、盆にはお中元を、暮にはお歳暮を、お世話になっている人に感謝の気持ちをこめて、贈り物をするようになったのです。
 
また、お正月に「お年玉」があるのと同様、お盆にも「お盆玉」があるのをご存じでしたか。江戸時代、山形県の風習がはじまりとか。
文具メーカーから盆玉のポチ袋が発売されたり、日本郵便からも「お盆玉袋」が発売されたりもしていたようです。
 
 
 
★★お盆の風物詩★★
 
お盆には、7月15日を中心に祖先の霊を迎えて送る行事、精霊祭(しょうりょうまつり)があります。 
13日に迎え火をたきますが、これは仏様が、おがら(あさの皮をはぎ取った茎のこと)を折って、たいた煙に乗り、盆灯篭(ぼんどうろう)の明かりを頼りに家に帰ってくるからだそうです。おがらの足をつけたきゅうりの馬となすの牛を内向きに並べて飾るのは、仏様は、馬に乗り、荷物を牛に背負わせて帰ってくるといわれているからです。迷子にならないように、きちんとお迎えをする意味でしょう。私のように、そそっかしい仏様もいるはずですから。                         
 
仏様を祭る棚を盆棚(精霊棚)といって、そこに真菰(まこも)を敷き、ほおずき、ききょう、おみなえし、はぎ、山ゆりなどの秋の花を飾ります。こうして久しぶりに帰ってきた仏様は、真菰にお座りになり、それを家族みんなで慰めるということでしょう。お供えは、畑でとれたものや、仏様が生きていたときに好きだった食べ物も供えます。私でしたら「越乃寒梅」(幻の銘酒といわれていた新潟の酒)を1合だけ、お願いしたいものです。
 
そして、懐かしい自分の家で過ごした仏様は、7月16日には、お帰りになります。これが送り火で、きゅうりの馬となすの牛は、今度は外向きに並べて、送り出すことになりますが、これも間違いなく彼岸の方へ帰ってもらうためでしょう。
 
広島の灯篭流しのように、送り火を小さな船に乗せて、お供え物と一緒に、川へ流すこともあります。また、地方によっては、美しく飾られた精霊船に、仏様に供えたものを乗せて、灯火をつけ、経文や屋号を書いたのぼりを立てるところもあります。      
 
送り火で有名なのが、京都の「大文字焼き」で、8月16日に行われていますが、これは8月15日を旧盆として祭る風習が、残っているからです。7月の京都は、まだ梅雨明け前です。しとしと降る梅雨空に、大文字焼きは映りがよくありません。やはり、しっかりと暑い8月だからこそ、風情があります。何やら風鈴の涼しげな音と、蚊取り線香の匂い漂ってくる、そんな感じがしませんか。
 
まだ、あります。盆踊りです。
 
これも、仏様を迎え、慰め、そして来年も間違いなく来てくださいと、送るために捧げられたもので、中央のやぐらのまわりを輪になり、鉦(しょう)と太鼓と笛に合わせて踊ったのです。今では、地域のコミュニケーションの場となり、夏に欠かせないイベントの1つになっていますね。親子で「ドラえもん音頭」に合わせて踊られてはいかがでしょうか。
 
「やっとさー!」の掛け声も楽しい徳島の阿波踊りは、ものすごい迫力で、夏の風物詩に欠かせません。東京の山の手、高円寺の阿波踊り、今ではすっかり定着して名物になっていますが、何だかおかしな気がしないでもありません。
しかし、下町の浅草では、ブラジル生まれのサンバ大会をやっていますから、おかしくないのでしょう。本場のブラジルから応援にきている女性軍団の踊り、リオのカーニバルのものすごさを想像させてくれます。
 
 
 
★★お神輿と山車の違い★★
 
浅草といえば「三社祭」、浅草寺の境内は、神輿(みこし)を担ぐ人で、ごった返します。威勢よく担ぐ神輿は、上下左右に激しくゆれ、よくぞ怪我人が出ないものだと心配になるほど殺気だち、恐いほどです。
 
この神輿のいわれですが、時代劇でよく見かけるように、昔、身分の高い人は、輿(こし)といわれた台に乗り出かけていました。神輿は、つまり、「神の輿」であって、神様の乗り物なのです。そして、お乗りになっている神様は、激しくゆさぶられるのが大好きで、激しければ激しいほどご機嫌になるといわれ、そのために、元気よく担ぐのだそうです。
 
山車は、祇園祭などでお馴染みですが、四月の桜の時に紹介しましたように、神様は、冬になると山に帰り、春になると下りてくると信じられていました。
 
 お祭りには、神様が必要ですから、来ていただくために、お迎えするための乗り物が必要だったわけです。そのため、祭りには移動式の山が作られたのです。これさえあれば、祭りに神さまを招くことができると考えられていました。その後、形が変わり「山車(だし)」になっても、山の字が残ったのです。
 (心を育てる 子ども歳時記12か月 監修 橋本裕之 講談社 刊 P66)
 
ところで、神様にも悪い神様がいたそうです。
夏祭りの神様は悪い神様で、病気や飢饉などを起こさないように、神輿を激しく揺さぶり、ご機嫌を取って、山に帰ってもらい、災いを未然に防ぐ、昔の人の知恵だったのです。日本の三大祭といえば、東京の神田祭、大阪の天神祭、コンチキチンコンチキチンのお囃子でおなじみの京都の祇園祭ですが、祇園祭の主役である牛頭(ごず)大王は、地獄にいるという牛頭人身の獄卒で、有名な悪い神様だそうです。
 
 
 
★★なぜ、土用の丑の日に、うなぎを食べるのですか★★
 
「土用」というのは、何も夏だけではありません。
 
「節分」と一緒で年に4回あります。前にもお話したと思いますが、立春、立夏、立秋、立冬はそれぞれの季節の始まりです。そして、それぞれの前の18日間を「土用」といい、その最初の日を「土用の入り」といいます。土用は、四季、それぞれにあるのですが、なぜか夏の土用だけが有名です。しかし、なぜ「丑の日」というのでしょうか。それは、それぞれの日にちには、正月で取り上げた「十二支」の動物の名前がついているからです。それで、夏の土用の内にやってくる丑の日のことを「土用の丑の日」といいます。
 
ご存知のように、この日は夏ばてしないように、良質のたんぱく質、脂肪、ビタミン、カルシュウム、鉄、亜鉛、DHA、ミネラル類などを含む、栄養のバランスのすぐれたうなぎを食べる習慣がありますが、何とその歴史は古く、何しろ「万葉集」の大伴家持の歌に、「夏バテに効果がある」と詠われています。
 
奈良時代から、この日は、うなぎにとって、まさに受難の日であったわけです。
しかし、なぜ「土用の丑の日」に、うなぎなのでしょうか。丑の日ですから、ステーキとか焼肉という感じがしますが、江戸時代ですから、まだ、牛肉は無理でしょう。
 
事の起こりは、江戸時代の学者、平賀源内が、うなぎ屋の宣伝をしたのが始まりといわれ、そのコピーは、「土用の丑の日はうなぎの日」だったそうです。
 
源内は、起電気であるエレキテルを完成させたことで知られていますが、その他、本草学者(薬用に重点をおいて、植物や自然物を研究した中国古来の学問)、劇作家、発明家、科学者、陶芸家、画家、工学者として一流でしたから驚きです。非常に多才な方で、まさに江戸のレオナルド・ダ・ヴィンチ的な存在であったわけです。
 
ところで、江戸時代は4本足の獣を食べなかったのですが、「うさぎは、ぴょん、ぴょん飛ぶから、あれは鳥だ!」といって食べていたのです。ですから、うさぎは1羽、2羽と数え、それが今も残っているのですが、子どもたちには、よく理解できない数え方になっています。哺乳類を食べることを禁じていた仏教の影響でしょうが、とんだところで、子どもたちを悩ませているようです。
 
この数詞ですが、日本語は難しいですね。1本、2本、3本、1匹、2匹、3匹とふえるに従い読み方が違い、4本、4匹以下が、また違いますし、花にしても、1本、1輪、1束、1鉢、1株などと分けて使っていますから、外国の方には、魔法のように思えるようです。それだけ、物に関する感性が、繊細だということですね。 
                               
最後に蛇足ですが、天然うなぎの旬は、産卵前の秋から冬にかけての時期で、「秋の下りうなぎ」といわれているそうです。そういえば、下り鰹(戻り鰹)も脂がのり美味しいですね。
 
  (次回は「7月に読んであげたい本」についてお話しましょう)
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
 
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