2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第9章(2)七夕祭りでしょう 文月
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「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第33号-
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第9章(2) 七夕祭りでしょう 文 月
★★なぜ、仙台の七夕は、8月なのですか★★
七夕といえば、子ども達には待ちかねているのは夏祭りではないでしょうか。
以前のように祭りを存分に楽しめる日が一日でも早く戻ることを祈ってやみません。
それはともかくとして、仙台の七夕は、8月に行われています。竿燈とねぶたを合わせて、東北の三大夏祭りですから、華やかです。何しろ街中が、七夕の飾りで埋まっている感じがします。しかし、素朴な疑問ですが、何だかおかしくありませんか。七夕は、五節句の一つ「七夕」(しちせき)ですから、七月七日と、七が二つ重なるところに意味があるのではなかったでしょうか。
七夕を「たなばた」と読むのはなぜだろう。「たな」は棚で、「はた」は機である。7月7日の夜、遠来のまれびと・神を迎えるために水上に棚作りして、聖なる乙女が機を織る行事があり、その乙女を棚機女(たなばたつめ)、または乙棚機(おとたなばた)といった。「七月七日の夕べの行事」であったために「たなばた」に「七夕」の字を当てたのである。萬葉集には七夕は織女と書かれているが、新古今和歌集では七夕となっている。
「七夕」の字は平安時代に当てられたものであることがわかる。
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P121-122)
永田先生のご指摘では、仙台の七夕は「八夕」になります、何と読むのでしょうか。冗談はさておき、これも訳ありなのです。
年中行事は、日本で最後に使われた太陰太陽暦である天保暦で行われています。
現在、使われている暦は、明治6年から採用された太陽暦、グレゴリオ暦です。
この天保暦とグレゴリオ暦との日付の差が、最小21日から最大50日あって、平均すると35日、グレゴリオ暦の方が進んでいます。
ですから、天保暦による旧7月7日は、現在の8月12日前後になるわけです。
そうすると、七夕は真夏の行事になります。ところが、天保暦によると、暦の上では7月から秋、立秋です。七夕が過ぎると、秋風の吹く処暑です。
太陰太陽暦では、暦の上の月日と季節感と食い違いを起こすので、暦の月日とは別に、農作業に必要な季節の標準を示したのが、二十四節気だったことを思い出してください。仙台の七夕は、旧七夕に近い8月7日に行われ、盛夏の行事になっていますが、天保暦に従った「ひと月遅れの七夕」で、旧七夕ということではありません。
たとえば8月12日に旧七夕だとして、8月12日に七夕の行事を行うのは、どうもしっくり来ない。七夕は七月七日という「七」に意味があるのであって、8月7日ならば一ヶ月延ばして行うという感覚が働いて、何となく旧暦という言葉のなかに埋め込んでしまえばわからぬながら納得しようというものであろう。(中略)平均35日進んでいる現行暦を30日戻すことになるから、季節感としての行事は5日進んでいると考えればよいわけである。
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P134)
しかし、正月と盆の帰省ラッシュ、故郷にあるご先祖のお墓参り、何となく旧盆という感覚がありませんか。東北の三大祭りとして親しまれている行事ですから、それで不都合はないのでしょう。
子ども達も、夏休みです。大人も休みをとって、お子さんと一緒にリフレッシュする、もう夏の風物詩になっています。
ところで、この七夕のときに、雲一つない空を見上げて、天の川に感激した記憶が、ほとんどありません。日本列島は、梅雨の真最中です。天保暦を使っていた時代の人々は、大気汚染もなく、電気もありませんから、それこそ夜は、漆黒の闇です。澄み切った夜空に浮かぶ天の川をはさんだ2つの星を、見ていたのでしょう。
現代では、プラネタリウムで、完璧に再現された人工の天の川を見ることができますが、どちらに夢があるかは聞かずもがな、ですね。
★★そうめんと冷麦はどこが違うの★★
夏の風物詩の流しそうめん、何と、そうめんの1本1本が、機をおる織糸で、流れる様子は天の川を表しているそうです。江戸時代の「日本歳時記」には、七夕に索麺(そうめん)を食べる習慣があり、その由来は、中国の伝説によると記されています。何事も、訳ありなのですね。年越しそばのところで触れましたが、そばと薬味のねぎは、因果関係がありました。淡泊な口触りのそうめんには、生姜(しょうが)や茗荷(みょうが)の芳香が涼を誘い、食欲がますような気がします。
この茗荷には、おもしろい話が残っています。
お釈迦様の弟子に周梨般特(しゅりはんどく)という掃除をしながら悟りを開いたお坊さんがいました。聡明でしたが、物覚えが悪くて、朝聞いたことも夜になると忘れてしまう有様でした。その上、自分の名前も覚えられず、名前を背中に荷(にな)い、人に名前を聞かれると背中を指差し教えるほどでした。
彼の死後、墓から名前のわからない草が生えてきました。周梨槃特のお墓から生えてきたので、いつとはなしにその草を「茗荷」(名を荷う)と呼ぶようになりました。
茗荷を食べると、物忘れがひどく馬鹿になると言われるのも周梨槃特の逸話からきたものです。
(https://yakushiji.or.jp/column/20211018/ から要約)
「名前を荷う」から「茗荷」とは、しゃれた名前を付けたものですね。物忘れが激しくなることはありません、俗説です。この俗説を利用して、泊まっている金持ちから預かったお金を忘れさせようと、茗荷をたくさん食べさせるのですが、その効果がまったくなく、逆に宿泊料を貰うのを忘れてしまったという、落語のような昔話があります。
そういえば、東京メトロ丸ノ内線に「茗荷谷駅」がありますが、江戸時代には、たくさんの茗荷畑があったそうです。
ところで、そうめんといえば冷麦を連想しますが、どこが違うのでしょうか。
太さの違いと思っていましたら、そんな単純なことではありませんでした。困ったときの広辞苑によると、「冷麦は、細打ちにしたうどんを茹でて冷水でひやし、汁を付けて食べるもの」「素麺は、小麦粉に食塩水を加えてこね、これに植物油を塗り細く引き伸ばし、日光にさらして乾した食品。茹でまたは煮込んで食する」と製法の違いがありますが、うどんの仲間なのですね。うどんの乾麺には、そうめんと同じように植物油が塗られています。
でも、太さにこだわりますが、「なぜ、素麺は細いのかを正したい!」などと意気込むほどのことではないでしょうが、JAS(日本農林規格)には、きちんと、その違いがでているのには驚きました。
「切り口の直径が1.3ミリメートルより太いものが冷麦、それ未満の物が素麺」となっています。切り口は、そうめんは丸く、冷麦は角っぽく見えます。ちなみに1.7ミリメートル以上はうどんだそうです。
もう一つの疑問、冷麦には、なぜ、色のついた麺が入っているのでしょうか。
実は、食感だけではなく、見た目にも涼しさ、さわやかさを感じて食べて頂くために、数本ずつ色麺を入れているそうです。
★★七夕は、お盆の始まりの日です★★
七夕というと、何やら願い事をし、豪華な飾りものを楽しむ観光イベントという感じになっているようですが、本来は、7月は、正月と同じで、ご先祖様が帰ってくるお盆の月なのです。
7月7日を「七日盆」といって、お盆の始まりの日です。
七夕は盆の行事の一環として、先祖の霊を祭る前の禊(みそぎ)の行事であった。人里離れた水辺の機屋に神の嫁となる乙女が神を祭って一夜を過ごし、翌日に七夕送りをして、穢れを神に託して持ち去ってもらうための祓えの行事であった。盆に先立つ、物忌みのための祓えであった。
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P122)
それと同時に、七夕は、畑作物の収穫祭のイベントでもあったのです。何といっても日本は、自然まかせの農耕民族で、いたる所に神さまがいます。収穫祭は、神さまへの感謝のお祭りでした。
まだ、麦を中心としてあわ、ひえ、芋、豆が主食の時代ですから、麦の実りを祝って、きゅうり、なす、みょうがなどの成熟を神さまに感謝したのです。この時に人々は、神さまの乗り物として、きゅうりで作った馬、なすで作った牛をお供えしました。それがお盆の行事の盆飾りとして、ご先祖さまの乗るきゅうりの馬と、なすの牛に引き継がれているのです。
先程の引用に「みそぎ(禊)」と「はらえ(祓え)」が出てきましたが、「みそぎ」とは、「身滌(禊)」の略されたものといわれ、身に罪や穢(けが)れがあるときや、神さまにお祈りするときに、川や海で身を洗い清め取り除くことで、「はらえ」は、神さまに祈って罪や穢れ、災いなどを除き去ることで、神社で行われ「おはらい」です。本質的には同じことで、「みそぎはらえ」ともいわれているようです。
ところで、「お払い箱にする」という言葉がありますが、そのいわれはこれで、伊勢神宮が全国の信者に配っていた厄除けのお札を入れた箱を「御祓箱」といって、毎年、お札を新しく替えることから、「祓い」と「払い」をかけ、古いものを捨てることを「お払い箱にする」といったそうです。何事も訳ありなのですね。
(次回は「お盆って何の日ですか、ご冗談を」などについてお話しましょう)
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