2025さわやかお受験のススメ<保護者編>第7章(2)端午の節句です 皐月

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       「めぇでる教育研究所」発行
   2025さわやかお受験のススメ<保護者編>
   「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
     豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第25号-
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第7章(2)端午の節句です 
 
★★なぜ、菖蒲湯なのでしょうか★★
 
菖蒲が邪気を払ういわれは、中国の古くからの言い伝えで、王様が殺した不忠の家来の魂が、毒蛇となって災いをもたらしたので、香りが強く、頭のところが赤く、青い葉の形が蛇に似ている菖蒲を酒に入れて飲んだところ、悪魔を降伏させる術を授かり、蛇を退治した話によるものです。
 
昔は節分の時に、玄関に柊や鰯の頭を飾りましたが、あれと同じです。鬼や悪魔は、香りの強いものを苦手としていました。そういえば、ヨーロッパのモンスターの代表ドラキュラの苦手とするものは、十字架と太陽とにんにくです。
 
また、菖蒲が侍の家で大切にされたのは、武芸、軍事などを尊ぶ「尚武(武芸、軍事などを尊ぶこと)」と同音だからでした。
 
 燕子花(かきつばた)は菖蒲(あやめ)と花がよく似ているため、「源氏物語」のなかで、―いずれがあやめか、かきつばた―と書かれて以来、酷似していることをいう雅言(がげん)となった。万葉集では加吉都播多(かきつばた)、安夜女具佐(あやめぐさ)とはっきり区別されている。
(花暦「花にかかわる十二の短編」P121 澤田ふじ子 著 徳間文庫 刊)
 
万葉仮名は、漢字本来の意味から離れて、仮名のように読みますから面白いですね。
雅言は、「洗練された言語、特に和歌などに用いられる古代、特に平安時代の言葉」(広辞苑)で、「いずれがあやめか、かきつばた」は、美人が大勢いて優劣がつけられないたとえだと、軽薄に思い込んでいたのですが、美人に限らず、選択に迷うことのたとえなんですね(笑)。かきつばたは、今は「杜若」と書きますが、難しくて読めません。
 
なお、あやめは、きれいな花を咲かせる花菖蒲のことで、葉は剣型で似ていますが、菖蒲湯として用いられることはありません。以前、「26日のクリスマスケーキ」を紹介しましたが、同じ意味で「6日の菖蒲」があります。
  
 菖蒲が6日に届いたのでは、節句に間に合わないので、そこから「時期に遅れて間に合わないこと」をいうそうです。
 (知らない日本語 教養が試される341語 P321 谷沢 永一 著 
  幻冬社 刊) 
    
 
 
★★粽(ちまき)のルーツは……?★★ 
 
物事には、何事も訳ありで、端午の節句に粽を作るのは、このような言い伝えがあるのです。(以下、抄訳です)
 
  屈原(くつげん)は、楚の時代に、人々に愛された清廉潔白な憂国の詩人で、淵に身を投げ、命を絶った人ですが、そのなきがらを守り屈原の故郷まで運んだのは鯉でした。
  その日が、紀元前278年5月5日。命日になると、楚の人々は、竹の筒に米を入れて川に投げ、屈原の霊に捧げ、無事に運んでくれた忠義な鯉に、感謝の気持ちを表したのです。
  ところが、屈原の死後、300年経った時のことです。ある人の所に他人に身をやつした屈原が現われ、投げ入れてくれる竹筒の米は、淵に棲む主である竜に全部食べられてしまうので、竜の恐れる「楝(おうち)の葉っぱ」で米を包み、五色の糸で結んでほしいと告げたのです。そこで、屈原をとむらい、鯉に感謝してつくった「楝の葉で包み、五色の糸でしばった米」が、粽の始まりです。                  
  
  楝は、栴檀(せんだん)の昔の言い方で、香りがあるので虫もつかず、竜も嫌いであったのです。粽は、古くは「茅(ちがや)」の葉で巻いたから「ちまき」といい、五色の糸は、鯉のぼりの吹流しにも出てきましたが、竜の恐れた色です。端午の節句に粽を作るのは、このような言い伝えがあるのです。
  (年中行事を「科学」する 永田久著 日本経済新聞社刊 P110-113)
  
笹の葉、ではなかったんですね。
 
そして、驚いたことに、毎年、6月の第1日曜日に長崎で行われている「竜船競渡(けいと)ドラゴンレース」は、淵に身を投げた屈原を、一刻も早く救うために、速く舟を漕ぐことを争うイベントなのです。
鯉のぼり、粽、競渡、いずれも、今からおよそ二千年前の中国の戦国時代にあった出来事が、現在まで伝えられているなどとは信じがたいのですが、本当の話です。
 
故事、ことわざ、慣用句、私たちの祖先が残してくれた英知でもあるのですが、書物の中で、イライラしながら出番を待っているのではないでしょうか。簡単に手に入り、利用できる貴重な文化遺産でもあるのですが……。
 
栴檀はビャクダンの異称ですが、「栴檀は双葉より芳し」といって、発芽の頃から早くも香気があるように、大成する人物は、幼いときから人並みはずれて優れたところがあるたとえに用います。
 
同義語として、「実のなる木は、花から知れる」や「蛇は寸にして人を呑む」があり、対義語は「大器晩成」です。ちなみに英語では、「栴檀は双葉より芳し」は“Itearly pricks that will be a thorn”(茨になる木は早くから刺す)、「大器晩成」は“Who goes slowly goes far”がわかりやすいですね。
 
 
★★柏餅のルーツも中国でしょうか★★
 
今は、粽よりも柏餅が、メインです。これも中国から伝わってきたと思っていましたが、何と、日本生まれなのです。
 
  柏の木は新芽が出ない限り古い葉は落ちないので、家系が絶えないという縁起をかついで柏の葉で包んだ柏餅を食べる。
 柏餅は、楝(おうち)の葉の代わりに柏の葉を使ったことから生まれたもので、江戸時代中期頃に作られたといわれている。柏の葉の表を外にするのが味噌入り、裏を表にするのが餡入りという。
  (年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P113)
 
 
ところで、子どもの頃に歌った懐かしい歌に「背くらべ」があります。最後に、富士山の出てくるところがすごいですね。
 
    背くらべ
      作詞 海野 厚
      作曲 中山 晋平
(一) 柱のきずは おととしの   五月五日の背くらべ
    ちまき食べ食べ 兄さんが  計ってくれた 背のたけ
    きのう比べりゃ 何のこと  やっと羽織の 紐のたけ
 
(二) 柱に凭(もた)れりゃ すぐ見える  遠いお山も 背くらべ
    雲の上まで 顔だして        てんでに背伸び していても
    雪の帽子を ぬいでさえ       一はやっぱり 富士の山
 
粽のわからない子が、増えているのではないでしょうか。鉄筋コンクリート建てでは「柱」も見あたりませんし、きずが残るほど背比べをする兄弟、姉妹もいないでしょうね。この歌もあまり歌われていないような気もします。
 
しかし、その歳、その時でなければ歌わない、大切な歌があります。それは、成長をつづる「心の歌」です。
お父さん、お母さん、思い出してください。小学校時代に歌った歌に、思い出が残っているのではないでしょうか。
 
 
 
★★鍾馗さまって、わかりますか★★
 
ひな祭りには、おひな様を飾りましたが、男の節句は、鯉のぼりだけではありません。外には旗やのぼり、家には、かぶとや武者人形も飾りました。武者人形は、男らしい姿と気性にあやかりたいと願って飾られたものですが、昔の人気者は、大きな目をして黒いひげを生やした鍾馗(しょうき)でした。今は、どうでしょうか。金太郎、桃太郎は、よく見かけますが、最近、鍾馗は見られなくなったようです。
 
鍾馗は、中国の魔除けの神さまで、かの有名な玄宗皇帝(唐の時代)が、病気にかかり夢うつつの時に、皇帝と楊貴妃が大切にしていた宝物を盗み、逃げようとした悪い鬼を退治。目を覚ました皇帝は、熱も下がり、病気も治っていたので、夢で見た姿を口述しながら描かせたのが鍾馗だそうです。三国志の英雄、関雲は鍾馗のようだと想像しています。このような豪傑は、今風ではないのでしょうね。
 
ところで、マリアの教えを建学の精神とする男子だけの学校でサッカーの強い暁星小学校は、「鍛える教育」を実践していますが、その具体的な目標として、佐藤前校長は、桃太郎や金太郎など日本昔話のキャラクターである「気は優しくて力持ち」を掲げていました。
やはり、幼いこの時期にこそ昔話をたくさん読んであげ、正義感や弱い者いじめをしてはいけないことを、きちんと学習すべきではないでしょうか。
 
(次回は、「竜とドラゴン 他」についてお話しましょう)
 
 
【本メールマガジンは、「私家版 情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話情操豊かな子どもを育てるには 上・下 藤本 紀元 著」をもとに編集、制作したものです】
 
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