2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>★★入試問題を分析する -合否を判定する必須十項目-★★[1]巧緻性に関する問題
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「めぇでる教育研究所」発行
2025さわやかお受験のススメ<小学校受験編>
現年中児のお子様をお持ちの方々へ
2025年度入試(2024年秋に実施)を成功に導く手引きです。
<第27号>
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★★入試問題を分析する -合否を判定する必須十項目-★★
[1]巧緻性に関する問題
聞き慣れない言葉です。
「きめこまかく上手にできていること」という意味ですが、11月に詳しくお話しました「手は第二の脳」(11号から14号)を思い出してください。重複するところもありますが、大切な問題ですから繰り返します。巧緻性に関しては、「塗る・折る・切る・貼る・結ぶ・摘む・包む」といった手作業、何かを作ったり、絵を描いたり、手本と同じものを描いたりする問題があります。なぜ、出題されるのでしょうか。手作業は、誰の手も借りずに、指示されたことができるかどうかで、自立の状態がわかるからです。
[制 作]
課題制作と自由制作があります。
◆課題制作
★「今から、動物の起き上がりこぼしを作ります。
このように、画用紙を半分に折り、折り目のところが背中になるように動物を描きます。描けたら動物を、このように切り抜きます。そして、別の紙を筒のようにまるめ、それに動物をホチキスで止めます。最後に、セロテープで粘土を筒の中に貼り、出来上がりです。」
先生が、やっているのを見てから制作に取り組みます。
◆自由制作
★(空き箱、画用紙、色紙、折り紙、セロハン、リボン、ひも、モール、輪ゴムなどの材料や、はさみ、のり、ホチキス、クレヨンなどが置かれています。)
「ここにあるものを自由に使って、自分の好きなものを作りなさい。」
まず、注意しておきましょう。
子どもたちの大好きな制作ですから張り切りますが、先生の説明中に手を出す子がいます。待てないのです。きちんと聞いておかなければ、手順がわかりませんから、途中でギブアップすることになりかねません。
普段の生活態度が、そのまま正直に出がちです。お子さんに何かを頼んだときなど、最後まできちんと聞いているでしょうか。聞いていれば心配ありませんが、何といっても「話を聞き、指示どおりに行動できるか」がポイントだからです。
幼稚園は自由保育ですが、小学校は一斉授業ですから自分勝手にやるわけにはいきません。
しかも試験ですから、規則違反にチェックが入ります。
なお、制作を苦手とするお子さんの場合は、もう一度、「鍛えてほしい第二の脳」をお読みになり、早いうちに対処しておきましょう。基本作業は、幼児教室の先生にお任せではなく、家庭できちんと身につけるものです。これをおざなりにしていると、制作に興味をもてなくなりがちで、行動観察型のテストが苦手になることを、しっかりと胸に刻んでおきましょう。
[模 写]
★お手本と同じように描きましょう。
模写は、文字通り、お手本と同じものをまねて写すことです。
点図形と線や図形の模写があります。点図形は、対称図形が多く、見た目もきれいですから面白そうですね。簡単なものも手抜きをせず、きちんと線を引くことが大切です。
しかも、大人が考えるより難しい作業です。どこから始めたらよいのか迷ってしまうものや、必ずしも点と点を結ぶとは限らず、点と点の間を抜けていくのもあります。これは、納得するのに時間がかかります。
「点と点を結ぶのに、何で抜かすのですか? そんなのずるいですよ!」
と不満に思っている子がいますが、こだわるから仕掛けに気づいて間違わないわけです。
そして、この問題も根気がいります。どこがどうなっているのか、試行錯誤を積み重ねた方が、後で効果が表れます。観察力と集中力、そして持久力や忍耐力も身につきます。さらに、全体のバランス感覚を養うのにも役立ちます。なぜなら、隅から隅まで、全体をきちんと見なければならないからです。それが絵を描くときにも生きてきます。
模写の問題で見逃せないのは、性格まで姿を表すことでしょう。
点と点をつなぐ直線がよじれたり、脱線をしたり、通過すべき点を無視する子は、何をやっても雑なところがありますね。スピードを競っているようですが、描けていればいいのではありません。完成度から美醜の感覚、基本的な生活習慣、しつけ、育児の姿勢まで判定することも可能です。最初が、肝心です。ゆっくりと丁寧に、時間をかけて、美しく描くことが基本です。そして、忘れがちなことですが、姿勢が悪ければ描く線も乱れます。背筋をきちんと伸ばし、左手でペーパーをしっかりと押さえ、筆記用具をきちんと持って描く習慣を身につけましょう。
<線の模写>
はじめに、点線などで手本が示されていますから、それを指でなぞり、どのようにすればスムーズに描けるか、必ず確かめましょう。
指で何回もなぞり、脳に一筆で描ける感覚をしっかりと学習させることが大切です。
三角形が連続する鮫の歯のような直線や、半円が上下に反転しながら連続するもの、曲線では、筆記体のアルファベットの小文字「エル」の連続したものもあり、上下が逆になると、ぶどうの房のように見えますが、「エル」は下から上に左回りで描きますから、それに従い連続して描き、上からの場合は、上から下へ右回り、時計回りで描きます。房の長さや間隔が乱れないように注意を促しましょう。
しかし、いずれも難しい作業でなかなかうまく描けませんから、根気よく取り組むことが大切です。
<図形の模写>
これは、難しいですね。
線の模写と違い、四角、三角、円、菱形、ハートなどさまざまな図形が、いろいろな組み合わせで出題されますから、それを描く子どもたちには、至難の業だと思います。やってみるとわかりますが、全体の配置状態、バランスをつかむことは容易ではありません。
以前にもお話しましたが、図形の○△□は、書写、運筆の基礎トレーニングですから、正確に描けるようにすることが大切です。
○は、下から時計まわりで描きます。上から左回りに描くのは数字のゼロです。
△は、頂点から左斜め下へ、そこから頂点に戻って右斜め下へ、最後に左から右へ底辺を描きます。左斜め下から、いきなり右方向へ底辺を描き、今度は左斜め上の頂点を目指して描くのは、大人の使う簡略法で、子どもにとっては書写違反です。
□は、漢字の国がまえと同じです。左から下におりて、そのまま戻らずに、左回りで一周する子がいますが、これも書写違反になります。
文字には筆順がありますから、こういった図形をきちんと描ける子は、きれいな字を書けるようになります。
基本的なトレーニングとしてお勧めしたいのは、例えば、大きな○を描き、その中に、それより小さな形をどんどん描くことです。□△◇も同じようにやってみましょう。前のものより小さく描き、その微妙な差を脳に教えることができるからです。線の模写と同様、難しいですから、お子さんはうまく描けずに嫌がると思います。あせらず、じっくりと時間をかけ、丁寧に描けるように導いてあげましょう。
ところで、頼りない線を引く子がいますが、多くの場合、鉛筆を正しく持てていないからで、おそらく、はしの持ち方もおかしいのではないでしょうか。これを解決してから挑戦しましょう。
ただし、はしの持ち方は、食事の時にうるさく言わないことです。朝、昼、晩と三度、同じことを言われていては、気が滅入りますから、以下のようなトレーニングがいいのではないでしょうか。
Bか2Bの鉛筆で、直線や円などを殴り描きさせると効果が表れるものです。
これは、スピードを上げてもかまいません。なぜなら、速く描くには、鉛筆をしっかりと持たねばなりませんし、どの辺を持てばよいかもわかるからです。
力み過ぎは、手首を疲れさせるだけですが、力配分やバランスも、やっているうちにわかってきます。
三角軸の鉛筆を使うのもいいですね。
そして、ボール遊び、縄跳び、鉄棒など両手を使う運動をやることで握力をつけましょう。
机の上だけではないトレーニングにも、目を向けてください。はしの持ち方にも変化が出てくるはずです。
[はしを使った問題]
★(角砂糖ぐらいの大きさのプラスチックの立方体が、たくさんお椀の中にあり、はしと空のお椀が用意されている)
「お椀の中のものを、別のお椀にはしを使って、一つずつ移してください。」
「摘む」手作業の試験です。豆の他に、はしでスーパーボールや玩具のミニチュアの果物、落花生、金平糖をつかむ問題が出ています。
豆を買ってきて、割りばしを使い、懸命に練習をする話を聞きますが、何かおかしな気がします。これは、試験のために練習をして身につけるものでしょうか。体や筋肉の運動的な発達に関わることですし、基本的な生活習慣の大切な課題ですから、しつけと関係があります。
一応の目安として、3歳ぐらいからはしを使えるようになり、5歳頃には、巧みに使えるようになるといわれています。
生活習慣とは、「誰の手も借りずに自力で生活していくために身につけるもの」であることを忘れては、受験準備どころではないのではと思います。
第14号で紹介しました、立教女学院小学校の説明会での話を思い出してください。当時の教頭先生は、こうおっしゃっていました。
「鉛筆の持ち方やはしの持ち方は、一度悪い癖がつくと直しにくいので、家庭で正しい持ち方、使い方を身につけさせてほしい。あえてこの場で申し上げますが、今年度もテストの中ではしを使う場面がございましたら、はしで物を運ぶ速さを競っているのではなく、正しいはしの持ち方ができているかを見ていることをご理解いただきたい。テストの主旨はそこにあります。日本の文化でもあるはしの使い方を、きちんと身につけてほしいと考えています」
幼稚園児が、ペーパーテストに強くても、正しくはしを持ち食事のできない方が、よほど恐い話です。「九九、八十一!」とそらんじている子が、お母さんに靴をはくのを手伝ってもらっているようでは、やはり、おかしいですね。
練習しなければ、うまくはけないのは当たり前です。それを手伝うのですから、脳から司令は出ませんし、筋肉も反応しません。手をかけた分、脳も筋肉も楽をしているのですから、不器用になるわけです。
手を貸し過ぎていることはありませんか。
モンテッソーリの「敏感期」ではありませんが、幼児期には、これから使う筋肉を鍛えなければならない大切な時期があります。赤ちゃんは、なぜ、はいはいをするのか思い出してください。
ある私立の名門校では、鉛筆を削るのに「肥後守」(ひごのかみ)を使っていたという話を聞きました。「肥後守」とは、刃を収めるさやに「肥後守」と銘のある折り畳み式の小刀(こがたな)のことです。鉛筆削り器が出る前は、小刀で鉛筆を削るということは、誰もが練習をし、身につける、当たり前のことでした。しかし、全神経を手先に集中しなければ、けがをしかねない大変な作業です。危険を伴う作業は、大げさにいえば、幼いなりに危機管理が必要であることを学習していたのではないかと思います。使い方を誤れば凶器になることを教えずに、ただむやみに禁止するのは、教育的な配慮に欠けますが、こういったことはお父さん方が使って見せることもいいのではないでしょうか。
脱線しましたが、その他に、折り紙を折ったり、はさみで線や、線と線の間を切らせたり、ひもを結ばせたり、積み木をハンカチで包ませる問題もあります。
ひも結びやハンカチでものを包むのも苦手ですね、特に、男の子は。やったことがないからできないのだと思います。普段、お母さん方も風呂敷で物を包むことなど、ほとんどないでしょう。お弁当をハンカチで包むようにすれば、解決できます。第二の脳を活用すれば知力も向上しますから、一石二鳥にもなります。
巧緻性の問題には、お子さんの生活環境までわかる要素も含まれています。乱暴な線や心細い線を引くような場合、その原因は、日常生活の中で、いろいろな形でサインが出ていると思います。口うるさく注意する前に、どのようなサインが出ているかチェックしてみましょう。
(次回は、「言語の問題」についてお話しましょう)
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