さわやかお受験のススメ<保護者編>第7章(1)端午の節句です 皐月
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「めぇでる教育研究所」発行
2022さわやかお受験のススメ<保護者編>
~紀元じぃの子育て春秋~
「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
豊かな心を培う賢い子どもの育て方
-第24号-
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第7章(1) 端午の節句です 皐 月
物の本によると、皐月(さつき)のいわれは、この月は田植えをする時期で、
早苗(さなえ)を植える「早苗月」から「さつき」となったそうです。「五月
晴れ」と書いて「さつきばれ」と読みますが、こちらの方が親しみやすいです
ね。
★★端午の節句★★
5月といえば端午の節句、別名「菖蒲の節句」。端午の「端」は「はじめ」と
いう意味で、最初の午(うま)の日のことですが、午の音読みが「ご」であるこ
とから、最初の午の日である5月5日を端午の節句として祝われるようになり
ました。また男の子が初めて迎える端午の節句を初節句といい、健康で、たく
ましい男性に成長することを願う行事で、事の起こりは江戸時代だそうです。
昔は3月3日が「ひな祭り」で女の子の節句、5月5日を男の子の節句として
祝ったものですが、今は男の子も女の子も元気よく育つようにと祝う「子ども
の日」の方が、なじみやすいのではないでしょうか。
以前にも紹介しましたが、五節句を定めたのは江戸幕府で、端午の節句のルー
ツは、お武家さん、侍の世界です。侍の家では、立派な侍になるように、鯉の
ぼりを立て、鎧(よろい)や兜、鍾馗(しょうき)や金太郎、桃太郎のような
勇ましい人形を飾って武運長久を祈り、お家安泰を願ったのです。それがいつ
の頃か定かではありませんが、家を継ぐことになる男の子の誕生と成長を祝う
ための節句として、一般庶民の中にも定着したもので、戦いから身を守る兜や
鎧を飾り、端午の節句に欠かせない風物詩となっているのです。その経緯は、
5月に読んであげたい本で紹介しますが、伝説「コイのぼりのはじまり」に記
されています。この日に、家の屋根や軒先に、菖蒲の葉や蓬をのせたり、菖蒲
を入れた風呂に入ったりしたものです。それで、この日を「菖蒲の節句」とも
いいます。
今では、軒先に菖蒲の葉や蓬を見ることはできませんが、男の子のいる家では、
菖蒲湯をやっているのではないでしょうか。スーパーマーケットなどで菖蒲を
売っていますから。
菖蒲湯に入って、菖蒲の根っこを額に当て、鉢巻きをしたものです。こうする
と、風邪を引かなくなるし、頭もよくなるといわれたのです。
ちなみに、枕草子にも平安時代の5月5日の情景が描かれています。
節は、五月にしく月はなし。
菖蒲、蓬などのかほりあひたるも、いみじうをかし。
蓬(よもぎ) (枕草子 第四十六段)
★★なぜ、鯉のぼりなのでしょう★★
鯉は硬骨魚で、鱗(うろこ)が36枚あるといわれ、別名、六六魚(りくりく
ぎょ)と呼ばれているそうですが、実際には31枚から38枚ほどで、川や池、
沼に棲み、2本の口ひげを備え、食用、観賞魚として珍重されるばかりか、立
身出世の象徴ともされています。
「なぜ、鯉のぼりなのか」、その理由は文部省唱歌に歌われています。鯨はい
くら体が大きくても、鮫はいかに強そうだからといっても、端午の節句の主役
になる資格はありません。
その答えは、3番の「百瀬(ももせ)の滝」を昇って竜になるにありそうです。
鯉のぼり (文部省唱歌)
作詞 不明
作曲 広田 竜太郎
一、いらかの波と 雲の波 重なる波の 中空を
橘かおる 朝風に 高く泳ぐや 鯉のぼり
二、開ける広き その口に 船をも呑まん 様(さま)見えて
ゆたかに振う 尾鰭(おひれ)には 物に動ぜぬ 姿あり
三、百瀬の滝を 昇りなば 忽(たちま)ち竜に なりぬべき
わが身に似よや 男子(おのこ)ごと 空に躍るや 鯉のぼり
中国の黄河の中流にある竜門の滝には、下流からいろいろな魚が、群れをなし
てさかのぼってくるそうです。見たわけではありませんが、何しろ清流逆巻く
滝です。他の魚達は、ギブアップしても、鯉だけは滝を昇りきって、竜になる
という言い伝えがあります。そこから出世する糸口となる関門を「登龍門」と
いい、「鯉の滝昇り」として、立身出世のシンボルとなったのです。流れに水
をさすようですが、昇りきれない鯉もいたのではないでしょうか。納得できる
言葉があります。
「点額」という言葉があり、これは『額にケガをする』という意味で、流れ
を昇らずにケガをした魚にたとえ『落伍者』『落第生』のことを表していま
す。
(目からうろこ!日本語がとことんわかる本 日本社 講談社 刊 P134)
また「鯉の一跳ね」といって、水揚げされた鯉は一度跳ねるだけで、あとはじ
たばたせずに生きており、しかも「まな板の鯉」といって、まな板の上にのせ
られても、きっちり覚悟を決め、悠々と横たわっている姿から、潔い、強い魚
として、お侍さんから尊ばれていたのです。川に潜り鯉を捕まえる時は、両手
で胸に抱くようにするとじっとしている話をリバーツーリスト野田知佑氏の随
筆で読みましたが、この習性を狙ったものでしょうか。
そして「五月の鯉の吹き流し」といい、鯉のぼりの中は空っぽで、何も入って
いません。さわやかな風を腹いっぱいに流し込んで泳ぐ、はらわたのないのび
やかな姿が「腹黒く」もなく「腹に一物」もない、さっぱりとした男らしい気
性を表しています。ですから、男の子の節句には、世の中で役に立つ、たくま
しくて立派な人物になってほしいとの願いをこめて、鯉のぼりを立てたのです。
ところで、鯉のぼりの一番上に飾る「吹き流し」は、滝や雲をなぞらえたもの
で、風になびきながら泳ぐ鯉の姿を、美しく引き立てています。吹き流しは、
青、赤、黄、白、黒の五色で、木火土金水の五行を表わしています。五行とは、
簡単にいえば、古代中国で考えられていた、人間の生活に必要な材料を表した
ものですが、これにも訳があります。
五行とは、木・火・土・金・水の5つの要素で、自然界、人間界のすべて
の現象をつかさどるものとする。木から火、火から土、土から金、金から水、
水から木が生まれ、水は火に、火は金に、木は土に、土は水に勝つとする。
そして、それぞれを表す色として木に青、火に赤、土に黄、金に白、水に
黒があてられたが、後に最上の色とされる紫に変わり用いられるようになっ
た。
また、木には仁、火には礼、土には信、金には義、水には智という道徳観
があてられた。
(日本の年中行事百科3 夏 民具で見る日本人のくらしQ/A P32
監修 岩井 宏實 河出書房新社 刊)
この五行には、病気を引き起こすもとと考えられていた「邪気」を払う力があ
ると信じられていました。しかも、鯉をとって食おうとする竜は、この五色が
大嫌いだったそうです。ですから、竜は近づくことができず、鯉は五色の吹き
流しに守られ、五月の空を、さわやかな薫風にのり、悠々と泳いでいるのです。
最近は、黒に代わって緑や紫が使われていますが、黒と白では縁起が悪いから
ではなく、本来、黒でなくてはいけない理由があるわけです。そういえば、船
旅で別れを惜しむときに、五色のテープを使っていますが、もしかしたら、海
に棲むといわれていた竜から、身を守るためのセレモニーかもしれません。
しかし、最近は郊外に出ないと、悠々と泳ぐ鯉のぼりの姿を見かけなくなりま
した。端午の節句が、子どもの日と改められても、男の子の健やかな成長を願
う親心には、変わりはないと思うのですが。マンションや団地のベランダに小
さな鯉のぼりが泳いでいると、「やっているな!」とほほえましくなります。
(次回は、「第7章(2)端午の節句です 『なぜ、しょうぶ湯なのでしょうか』
などについてお話しましょう)
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