さわやかお受験のススメ<保護者編>第3章(2)何といってもお正月ですね  睦月

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         「めぇでる教育研究所」発行
     2019さわやかお受験のススメ<保護者編>
         ~紀元じぃの子育て春秋~
     「情操教育歳時記 日本の年中行事と昔話」
       豊かな心を培う賢い子どもの育て方
           -第11号-
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第3章(2)何といってもお正月ですね  睦月
 
今年で33回を迎える「東京私立小学校児童作品展」は、1月31日(水)
から2月5日(月)まで、銀座の松屋で開催されます。毎年、意欲的な作品が
展示されますのでぜひ足を運んでみてください。
               
◇お節料理◇     
お雑煮を食べながらいただくのがお節料理です。木製できれいな絵や模様で飾
られ、二重から五重に積み重ね最上段にふたのある重箱にいろいろな料理を詰
めます。お節料理は、元旦の朝に神様と一緒にお祝いをして、家族が健康で良
いことがたくさんあるように、お祈りをするための食事ですから、縁起ものし
か選ばれません。
         
 「三つ肴」または「祝い肴」といって、この三種でお節料理を代表するもの
  がある。三は完全を意味し、全体を一つにまとめる働きをしている。三つ
  肴とは、関東では黒豆、数の子、五万米(ごまめ)をいい、関西では、黒豆、
  数の子、敲き牛蒡(たたきごぼう)をいう。
  (年中行事を『科学』する 永田 久 著 日本経済社 刊 P9)
 
黒は魔除けの色といわれ悪魔が嫌う色、豆は「まめに生きる」、真面目に健康
に生きる願いが、数の子は、鰊(にしん)の卵巣で、数万の卵があることから
「数多い子」、子孫繁栄の意味で縁起がよいといわれ、「春告魚」とも書き
「春よ、早く来い!」と願い、ごまめは「五万米」とも書くことで豊作を、牛
蒡(ごぼう)は、お米がたくさん取れた時に飛んでくるといわれる黒い瑞鳥を
表したものです。
この三つは、必ず食べたそうで、私は、きんとん、だて巻き、かまぼこ、海老
や鯛、八つ頭(里芋の一種)こんにゃくなどを食べていました。きんとんは
「金団」と書いて「金の塊」のこと、だて巻の「伊達」は「粋で美しい様」、
かまぼこの赤は黒と同様に「魔よけ」、白は「清浄」を表し、八つ頭は「人の
頭に立つ人になってほしいことを願っている」といったように、お節料理は縁
起を担いだ食べ物からできています。
 
正式なお節料理は、四段重ねです。上から一の重、二の重といい、一の重には
三つの肴、黒豆、数の子、ごまめ、二の重は「口取り」といい金団、ゆず玉、
だて巻などオードブルが、三の重は海老や鮑、鯛などの「海の幸」を、四の重
は「与の重」といい、八つ頭、はす、くわい、里芋などの「山の幸」を入れ、
詰める品数は奇数がよいとされ、ここまでこだわります。  
料理の中心は煮物ですが、素材をそのまま煮炊きできませんから、下ごしらえ
に手間がかかり、味付けで素材の持ち味が決まる料理ですから、暮の台所はま
さに戦場で、今のようにお節を買って済ませる時代ではなく、全部自前でこし
らえていましたから大変な騒ぎであったことを覚えています。お節料理は、三
が日の間、お母さん方から料理する手間を開放してあげる配慮があったと聞き
ましたが、その通りではなかったでしょうか。
 
ところで、祝いの膳に欠かせない尾頭付きの鯛ですが、徒然草では鯉が「やん
ごとなき魚なり」と紹介されています。世界の四大聖人の一人、孔子の子息の
名前は「鯉」といいますが、王様からお祝いに鯉を頂いたことから命名された
そうで、当時、中国での魚の王様は鯉でした。ところが、江戸時代になると鯛
が祝い膳のトップに躍進し、今に至ってもその座を他の魚に許していません。
「めでたい」の語呂だけではなく、姿、形がよく、色鮮やかで、生でも焼いて
も汁にしてもうまい、これでしょうね。しかし、親父は「鯛はいつでも食べら
れるから旬がなく、その分、損しとるのや」と言っていましたが、今では鰹や
秋刀魚も、いつでも食卓に上がります。食生活は豊かになりましたが、そのた
めに失ったものもたくさんあります。季節感が希薄になったのも、その一つで
しょう。魚に限らず旬のものは、その時にしっかりと食べ、季節感を味わいま
しょう。
 
 
◇屠 蘇◇
読み方からしてやっかいですが、「とそ」といって、山椒、肉桂(にっけい)、
桔梗(ききょう)、ぼうふうなどの薬草を、砕いて調合した屠蘇散をひたした
味醂のことで、これが正月のセレモニーの主役でした。これを杯に注いで、
「おめでとうございます」と父が言わないことには、新年の朝祝いは始まりま
せん。これは不老長寿の効き目があると言われ、正月の祝い酒でした。山椒は
うなぎを食べるときに使うものですし、肉桂はにっきのことで刺激が強く、桔
梗は根を干したものはせき止めの薬で、ぼうふうはセリの仲間です。聞いただ
けで飲むのを遠慮したくなりませんか。親父からちょっとなめさせてもらいま
したが、大人は、なぜ、こんなまずいものを飲みたがるのか不思議な気がしま
した。 
 
しかし、何事も訳ありです。
屠蘇は、「鬼気を屠絶し、人魂を蘇生させる」という意味があり、「その年の
邪気を払い、寿命をのばす働きがある」と信じられ、正月には欠かせない祝い
酒でもあったのです。屠蘇で乾杯して大人はお酒です。子どもはお節料理を食
べながら、お雑煮を頂きますが、両親とも着物です。母は着物の上に、袖付き
の前掛けというのでしょうか、割烹着をつけていました。親父は立派に見え、
母はきれいだと思ったものです。そして、なぜか子どもたちも新しい服を着せ
られていました。新しい年神様を、誠心誠意でお迎えした雰囲気がありました
ね。
 
当時は、4本足の座卓、ちゃぶ台で、正座をして食事をしていました。姿勢が
崩れると父が、恐い顔してにらみますから、おかしないい方ですが、真剣に、
真面目に食べていました。ですから姿勢もよくなり、マナーも身についたもの
です。現代っ子は、姿勢の悪い子もいますし、妙なはしの持ち方の子もいます。
ご飯をぼろぼろとこぼしても平気な子もいます。食事中はテレビを消しましょ
う。4、5歳の子には、「食べながら見る」といった二つの作業をこなすのは
難しいものです。私の子ども時代と最も違ったのは食事ではないでしょうか。
テレビはありませんから、食事は人が中心で、一家団欒の一時であり、家族の
会話があったような気がします。しかし、椅子とテーブルになって、子どもた
ちの足が長くなりスタイルもよくなりましたが、子どもに教えるべき生活習慣
やしつけの面で失ったものも、数々あります……。昔から守られてきたよき習
慣、礼儀作法などが姿を消してしまったのも、私達親が選択したのであり、子
ども達の責任ではありません。「現代っ子は……」という前に、反省すべきは、
そういう環境を作ってきた私達、大人達であることを、肝に銘じておきたいも
のです。
 
そして、年の順にお年玉を貰いますが、これが楽しみでした。でも、わずかで
したね。
現代っ子は、銀行に預けるほど貰えるようですが、これは不労所得です。汗水
を流さずに、お金をたくさんもらうのは、決してよいことではありません。子
ども時代にこそ、「分相応の精神」をしっかりと理解させるべきではないでし
ょうか。
 
 
★★初詣★★
 
朝祝いが済むと、近所の氏神さまへお参りをします。全国的に有名な神社、仏
閣に参拝しているようですが、生まれた土地の神さま、産土(うぶすな)神社
へ、神さまに失礼にならない服装に着替え、出かけるべきではないでしょうか。
そして、お子さんにも神前で、静かに頭を下げ、新年の希望や誓いなどをさせ
ましょう。目に見えない大いなる存在に畏怖を抱くのは、決して悪いことでは
ありません。親が、きちんと礼拝をする姿を見せれば、それで十分なのです。
 
我々日本人は畏怖することを忘れ、目に見えないものを敬うことを忘れ始めた
ような気がしてなりません。(「平成お徒歩日記」 宮部みゆき 著 新潮社 
刊 P193)
   
神戸で起きた小学生殺人事件の容疑者が逮捕されたときの作者の言葉ですが、
忘れられない一言となっています。今でも「透明な存在である自分」なのか聞
いてみたい。2015年6月に発売された「絶歌」、元少年A(33歳)は、
100万部売れると豪語したとか。それにしても、いつまで元少年Aで過ごす
のか。(憤怒)
 
帰りには、不幸をもたらす悪魔を払う「破魔矢」や、七転び八起きを願う「だ
るま」などの縁起物を買い、そのいわれを話してあげ部屋に飾っておきましょ
う。子どもなりに夢を育てるものです。
 
また、「初日の出」を拝む習慣がありますが、普段でも海上から昇る朝日や夕
焼けの山間に沈む夕日には、何ともいえぬ感動を覚えるものです。ましてや、
その年の初日の出となると感慨もひとしおでしょう。では、「日本でいちばん
最初に初日の出を拝めるのはどこか」ですが、国土全体では日本の最東端にあ
たる南鳥島、島を除けば富士山頂で、平地では犬吠崎です。しかし、南鳥島は
一般の人は立ち入り禁止で、そこにいる防衛庁と気象庁の職員しか拝めません
し、富士山頂は氷点下何十度という所ですから、誰でもは無理ということで、
正解は小笠原諸島の乳房山で、何と1月1日が海開きに当たり海水浴も楽しめ
るそうです。
 
ところで、ジャズのスタンダード・ナンバーに「The world is waiting for the 
sunrise」(世界は日の出を待っている)があります。アメリカ人に「太陽遥拝」
の信仰があるのではなく、第一次世界大戦後の不況から脱出したい願いをこめ
て作られた曲です。ジャズの演奏スタイルは時代と共に変わりましたが、大雑
把に分けるとデキシーランド、スイング、モダンの3つがあり、デキシーラン
ドには、ニューオーリンズ派とシカゴ派があります。ニューオーリンズ派の名
クラリネット奏者、ジョージ・ルイスの率いるバンドが、オハイオ州立大学で
行ったコンサートの中に、この曲の名演奏が入っています。バンジョーの名手、
ローレンス・マレロが、正確無比なビートで最高にスイングするソロを聴かせ
てくれます。沈んだ夕日が昇ってくるのではと思うほどアグレッシブな演奏で、
モノラルで音はよくありませんが、いつ聴いても感動を新たにさせてくれる、
ご機嫌な演奏です。私の正月は、これを聴くことから始まったものでした。
ジョージ・ルイスの素晴らしい音色を絶賛したのは、前衛ジャズの大御所、サ
ックス奏者のジョン・コルトレーン。ルイスの作曲した“Burgundy Street 
Blues”(バーガンディ・ストリート・ブルース)ではなかったでしょうか。
音楽に新しい古いはないと思います、自前の感性に訴えるものがあれば、いい
のですから。私はドラムを少しやっていますが、学生時代、ある黒人のドラム
奏者に、「なぜ、そんなにスイングできるのですか」とあほみたいな質問をし
たところ、「なぜ、あなた方は、フォークソング(民謡)をあんなにうまく歌
え、踊れるのか」と言われ、ジャズのリズム(4ビート 若い皆さんが乗れる
リズムは8ビート)に抱いていた劣等感を拭い去ることができたような気がし
ました。それぞれの民族は、長い時空を経て培われたリズム感があるというこ
とです。それから、下手の横好きですが、私流のリズムを刻むことを覚えまし
た。
ジョージ・ルイス(George Lewis)の演奏はYouTubeで視聴できます。
“Burgundy Street Blues”は、黒人独特の哀愁を奏でた名演で、いつ聴いて
も涙ぐんでしまいますね(笑)。
 
平成19年の暮れ、体力の限界を感じバンドを解散しました。何と47年間も
やっていた、とてつもない道楽でしたが、演奏の醍醐味を忘れることができず、
また23年から始めてしまい、24年11月の「新宿ジャズ祭り」で、普段は
プロしか演奏しないライブハウス、ピットインでトリを取ってしまいました 
(笑) 。再びトリを目指して頑張る予定でしたが、25年9月にバンドリーダー
の丸山が亡くなり実現しませんでした。彼とは53年来の付き合いで、彼がい
たからジャズの醍醐味を味わえたと感謝しています。26年5月に、演奏会の
度に香港から駆けつけてくれたバンジョーの名手、菅原さんが、ご自分のバン
ドを率いて「春の新宿ジャズ祭り」に来日した折、ドラムの方が参加できず、
ピンチヒッターでお手伝いさせてもらいました。かなりのテクニシャンである
外人の方が3名いて、緊張している私に、「ジャズは自分で楽しむものだよ!」
とまたしても教えられ、楽しいひと時を過ごせました。しかも、これは偶然だ
ったのですが、会場も、時間も、丸山と最後の演奏となった時と全く同じで、
追悼演奏ができたと感無量でした。冥界入りして4年、あちこち痛みの出てき
た私ですが、夢に出てくる彼は、全く年をとっていないので、うらやましくな
りますね(笑)。
 
 
★★正月の遊び★★
 
たこ上げ、羽根つき、カルタにすご六、福笑いが、正月の遊びの定番でした。
今の子どもは、やらないでしょう。テレビゲームやDSのようなポータブルゲ
ーム等、一人で遊べるゲームに人気があります。これが問題ではないでしょう
か。小学校時代に友達と遊ぶことの楽しさを覚えないと、社会性は育ちません。
社会性が育たないと、共に生きる共生の心も育まれません。人は一人では生き
られないことを、もっと教える必要があります。個性を育てるのとわがままを
助長するのは、紙一重の差です。我慢をすることのできない子が増えています。
「訓練されていない個性は野性である」と国府台女子学院の平田学院長はおっ
しゃっていますが、勘違いすると後で困るのは、お子さん自身であることを真
剣に考えましょう。             
 
ところで、昔の遊びの中にもいいものもあります。例えば、すご六です。サイ
コロを振り、出た目だけ動かなければなりません。しかも前後左右に進んだり
戻ったりしますから、混乱しがちです。5、6歳の子にとって、出た数だけ上
下、左右に移動するのは難しいものです。いわゆる「位置の確認」で、こうい
う遊びで覚えるのが効果的なのですが……。
 
このサイコロですが、2つ使うと最高12までの足し算ができます。二人で1
個ずつ振り、数の大きさで勝ち負けを競えば、引き算になります。数字を使い
ませんが、出た目を数えるだけで、簡単に答えが出ます。その上をいく優れ物
が、トランプです。ゲームは勝敗が伴いますから、真剣に遊びます。カードに
はマークと数字がありますから、算数の学習、数感の学習になっています。
 
トランプの絵札は、11はJ、12はQ、13はKとアルファベットで表され
ています。
Kはキングで王様、Qはクイーンで女王様ですが、Jは何を表しているかご存
じですか。
Jは「ジャック」という人名の頭文字からとったもので、イギリスでは、ごく
ありふれた名前の代名詞として使われ、日本でいえば「太郎」にあたり、よく
耳にする名前を付けることで、名もない一兵士を象徴させているのです。4つ
のマークは、ハートは僧侶、スペードは軍人、ダイヤは商人、クラブは農民と
身分階級を表していますが、何事も訳ありなのですね。ところで、中学生にな
り英語を習ったときの教材は「JACK AND BETTY」でしたが、べ
ティは「花子」にあたるのでしょうか(笑)。
 
 
★★春の七草★★   
 
言葉だけが、一人歩きしているようです。
七草は、せり、なずな、御形(ごぎょう 母子草)、はこべら(はこべ)、仏
の座(たびら子の別称)、すずな(かぶ あおな)、すずしろ(大根 鏡草)
のこ
とです。昔は、春を告げる七草を親子で摘み、お節料理やお餅を食べすぎて、
お腹の調子が少し悪くなった時に、消化のよいお粥に七草を入れて食べ、春を
実感していたのでしょう。ちなみに、セリは解毒・食欲増進・神経痛・リュウ
マチに、なずなは高血圧・貧血・食欲増進に、御形は咳止め・痰切り・利尿作
用に、はこべらは歯槽膿漏・催乳・健胃整腸に、仏の座は体質改善に、すずな、
すずしろは骨粗鬆症・腸内環境改善に良いという説があるそうです。(三島函
南農業協同組合「七草がゆセット」のしおり より)
 
この七草に関して、覚えやすい歌があります。
  せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、
  すずな、すずしろ、これぞ七草
     左大臣 四辻 善成(平安時代)
 
最後に、おもしろい話を紹介しましょう。間違って使われる言葉に「千六本」が
ありますが、永田先生でなくても笑えますね。
 
大根は、野菜の王様で消化によく、食べあたりしない。大根役者とは、当たら
ない役者のことである。「千六本」というのは、大根を細長く刻んだものである
が、大根を中国では「繊蘿蔔」といい、これを唐宋音でローポと発音した。細長
く刻んだ大根=繊蘿蔔(センローポ)が日本でセンロッポンと訛って千六本と書
いた。千という字によって「たくさんの」という意味を感じて細かく切り刻んで
しまう人もいれば、「人参を千六本に切って」などと料理教室で教える先生もい
る。六本というのをどう解釈しているのかと考えると、ふきだしたくなる。  
(年中行事を「科学」する 永田 久 著 日本経済新聞社 刊 P35)
 
(次回は、「1月に読んであげたい本」についてお話しましょう)
 

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